倍率地域とは?近傍宅地の評価額の調べ方【評価例付き】
土地を相続したとき、その土地の相続税評価額を算出する必要があります。そして、遺産の総額から相続税がかかるかを判断します。
しかし土地は形も区分もさまざまであり、評価を行うのは大変です。また、路線価地域と倍率地域かどうかで計算方法も異なります。
今回は、土地のなかでも「近傍宅地」について解説します。
近傍宅地とは、倍率地域にある市街地農地、市街地周辺農地、市街地山林、市街地原野、市街地雑種地を評価する際に、その評価額を基準とするための、評価しようとする土地に最も近接し、かつ、道路からの位置や形状等が最も類似する宅地のことです。
少々わかりづらいので、この記事で詳しく見ていきましょう。土地を相続する予定の人は是非、参考にしてください。また、土地の評価について不明点があれば、税理士などの専門家に相談するのもおすすめです。
[ご注意]
記事は、公開日(2020年8月26日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。
近傍宅地とは?
近傍宅地とは、倍率地域にある市街地農地、市街地周辺農地、市街地山林、市街地原野、市街地雑種地を評価する際に、その評価額を基準とするための、評価しようとする土地に最も近接し、かつ、道路からの位置や形状等が最も類似する宅地のことです。
読み方は、「きんぼうたくち」です。
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倍率地域とは?
近傍宅地の評価額が必要になるのは、倍率地域にある市街地農地、市街地周辺農地、市街地山林、市街地原野、市街地雑種地を評価する場合です。
倍率地域
倍率地域とは、土地の相続税評価額を倍率方式によって計算すべき地域のことです。
路線価地域にある市街地農地、市街地周辺農地、市街地山林、市街地原野、市街地雑種地を評価する場合は、路線価により評価するので、近傍宅地の評価額は必要ありません。
評価対象地の地域が倍率地域であるか路線価地域であるかは、次の手順で確認できます。
- 国税庁の「財産評価基準書」のサイトにアクセス
- 相続又は贈与によって土地を取得した年のボタンをクリック
- 土地のある都道府県をクリック
- 「評価倍率表」欄の下の「一般の土地等用」をクリック
- 土地のある区市町村をクリック
- 「町(丁目)又は大字名」欄と「適用地域名」欄で土地がある地域を探し、その地域の「宅地」欄の表示を確認する
出典:国税庁「路線価図・評価倍率表」
数字(評価倍率)が記載されていれば倍率地域、「路線」と記載されていれば路線価地域です。
倍率地域の市街地農地等の評価方法
倍率地域の市街地農地、市街地周辺農地、市街地山林、市街地原野、市街地雑種地の相続税評価額は、次の算式で求められます。
近傍宅地の評価額の調べ方
近傍宅地の1平方メートル当たりの固定資産税評価額を調べるには、評価対象地の役所に、評価対象地の固定資産税評価証明書の交付を申請する際に、近傍宅地の評価額を備考欄に記載するように依頼します。
そうすると、備考欄に近傍宅地の評価額が記載された固定資産税評価証明書が交付されます。
近傍宅地の画地補正の割戻しと評価対象地の画地補正
前述のとおり、倍率地域の市街地農地等を評価する際は、近傍宅地の固定資産税評価額に評価倍率を乗じ、近傍宅地の画地補正率を割戻して、評価対象地の画地補正率を乗じます。
画地補正率(画地調整率)
画地補正率(画地調整率ともいいます)とは、路線価を基礎として各画地の評価額を求める場合に、その土地の奥行、形状、利用上の法的制限等画地の現状に応じた補正を行うための率です。
固定資産税評価額は既に画地補正済みの価額になっているので、近傍宅地の評価額を画地補正前のものに戻すために画地補正率を割り戻したうえで、評価対象地の画地補正率を乗じる必要があるのです。
画地補正については様々なものがあるので、一般の方が自分で漏れなく適用するのは難しいでしょう。
各種画地補正については、以下の記事で詳しく説明しています。
倍率地域の市街地農地の評価例
次の設例に基づき、倍率地域の市街地農地を評価してみます。
- 近傍宅地の1平方メートル当たり固定資産税評価額:10,000円
- 評価倍率:1.1
- 近傍地の画地補正率:0.97
- 評価対象地の画地補正率:0.90
- 地積:400平方メートル
次の算式で計算することができます。
まとめ
以上、近傍宅地について説明しました。
一般の方がご自分で土地の評価をしたがために、土地の評価方法を間違ってしまい税務調査によって過少申告が指摘され追徴課税がなされたり、反対に高く評価してしまい税額も高くなってしまったり(この場合、税務署は「もっと安くなりますよ」とは言ってくれません)といったケースが多数生じています。
また、税理士でも、土地の評価に精通した税理士と、そうでない税理士では、評価額に大きな差が生じます。
土地の評価に精通した税理士なら、あらゆる評価減の制度を駆使して、評価額を目一杯下げることが可能です。
土地を相続や贈与によって取得した場合、税の申告は、土地の評価に精通した税理士に相談して進めることを強くお勧めします。
この記事を書いた人
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