奥行価格補正率とは?奥行価格補正率表の見方と計算方法を説明
道路から奥行が長すぎたり短すぎたりする土地は、正直使い勝手が悪いでしょう。
そのような土地の相続税評価額を計算する際には、奥行価格補正率を乗じることによって、価額を下げることができます。
奥行価格補正率表は、地区区分と奥行距離に応じて定められています。
実際にその土地の相続税評価額を計算するには、地積や奥行距離なども調べる必要があるため、思ったより複雑な計算になると言えるでしょう。場合によっては、税理士などの専門家に依頼しても良いですね。
この記事では、奥行価格補正率の見方と計算方法について説明します。
[ご注意]
記事は、公開日(2020年8月21日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。
目次
奥行価格補正率とは?
奥行価格補正率とは、土地が接している道路からの奥行が深い(又は浅い)土地の相続税評価額を計算する際に、土地の価額を減額するために乗じる(掛け算する)割合のことです。
土地が接している道路からの奥行は深すぎても浅すぎても、その土地が使いにくくなってしまい、その分、土地の価値が低くなるので、評価額も減額できるように、奥行価格補正の制度があるのです。
路線価に奥行価格補正率を乗じることによって、奥行価格補正後の1㎡当たりの価額を計算することができます。
相続問題でお悩みの方は
まずは弁護士にご相談ください
奥行価格補正は路線価地域のみ
宅地の評価方式には、路線価方式と倍率方式がありますが、奥行価格補正を行うのは路線価方式の場合のみです。
倍率地域のある土地には適用できません。
路線価地域と倍率地域の調べ方については、関連記事を合わせてご覧ください。
奥行価格補正率表
奥行価格補正率は、地区区分と奥行距離に応じて、下の表のとおり定められています。
地区区分
\ 奥行距離(メートル) |
ビル街地区 | 高度商業地区 | 繁華街地区 | 普通商業・併用住宅地区 | 普通住宅地区 | 中小工場地区 | 大工場地区 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
4未満 | 0.80 | 0.90 | 0.90 | 0.90 | 0.90 | 0.85 | 0.85 |
4以上6未満 | 0.92 | 0.92 | 0.92 | 0.92 | 0.90 | 0.90 | |
6以上8未満 | 0.84 | 0.94 | 0.95 | 0.95 | 0.95 | 0.93 | 0.93 |
8以上10未満 | 0.88 | 0.96 | 0.97 | 0.97 | 0.97 | 0.95 | 0.95 |
10以上12未満 | 0.90 | 0.98 | 0.99 | 0.99 | 1.00 | 0.96 | 0.96 |
12以上14未満 | 0.91 | 0.99 | 1.00 | 1.00 | 0.97 | 0.97 | |
14以上16未満 | 0.92 | 1.00 | 0.98 | 0.98 | |||
16以上20未満 | 0.93 | 0.99 | 0.99 | ||||
20以上24未満 | 0.94 | 1.00 | 1.00 | ||||
24以上28未満 | 0.95 | 0.97 | |||||
28以上32未満 | 0.96 | 0.98 | 0.95 | ||||
32以上36未満 | 0.97 | 0.96 | 0.97 | 0.93 | |||
36以上40未満 | 0.98 | 0.94 | 0.95 | 0.92 | |||
40以上44未満 | 0.99 | 0.92 | 0.93 | 0.91 | |||
44以上48未満 | 1.00 | 0.90 | 0.91 | 0.90 | |||
48以上52未満 | 0.99 | 0.88 | 0.89 | 0.89 | |||
52以上56未満 | 0.98 | 0.87 | 0.88 | 0.88 | |||
56以上60未満 | 0.97 | 0.86 | 0.87 | 0.87 | |||
60以上64未満 | 0.96 | 0.85 | 0.86 | 0.86 | 0.99 | ||
64以上68未満 | 0.95 | 0.84 | 0.85 | 0.85 | 0.98 | ||
68以上72未満 | 0.94 | 0.83 | 0.84 | 0.84 | 0.97 | ||
72以上76未満 | 0.93 | 0.82 | 0.83 | 0.83 | 0.96 | ||
76以上80未満 | 0.92 | 0.81 | 0.82 | ||||
80以上84未満 | 0.90 | 0.80 | 0.81 | 0.82 | 0.93 | ||
84以上88未満 | 0.88 | 0.80 | |||||
88以上92未満 | 0.86 | 0.81 | 0.90 | ||||
92以上96未満 | 0.99 | 0.84 | |||||
96以上100未満 | 0.97 | 0.82 | |||||
100以上 | 0.95 | 0.80 | 0.80 |
なお、奥行価格補正率は平成30年に改正されています。
更新されていないウェブサイトでは改正前の奥行価格補正率が掲載されていることがあるので、改正前のものを参照してしまうことがないように、こちらのページをブックマークしておくとよいでしょう。
路線価図の開き方
奥行価格補正を行うためには、その土地の路線価や地区区分を調べなければなりません。
路線価や地区区分は、路線価図で確認することができます。
路線価図は、次の手順で開くことができます。
-
-
- 国税庁の「財産評価基準書」のサイトにアクセス
- 相続又は贈与によって土地を取得した年のボタンをクリック
- 土地のある都道府県をクリック
- 「路線価図」という文字をクリック
- 土地のある市区町村をクリック
- 土地のある町丁の右の数字(路線価図ページ番号)をクリック
※一つの町丁に対して右の数字が複数ある場合は、順にクリックして土地が掲載されている路線価図ページを探す
-
出典:国税庁「路線価図・評価倍率表」
不動産の評価は理解の難しい仕組みや制度がたくさんあります。正しく、そして不利益が出ないようにするために、ぜひ専門家に相談してみることをご検討ください。
地区区分の確認方法
前掲の奥行価格補正率表のとおり、奥行価格補正率は地区区分と奥行距離によって決まります。
地区区分は、路線価図上の、土地の接している道路に付されている記号によって確認できます。
地区区分は、下の表のとおり、7つあります。
地区区分 | 路線価図の記号 |
---|---|
ビル街地区 | |
高度商業地区 | |
繁華街地区 | |
普通商業・併用住宅地区 | |
普通住宅地区 | |
中小工場地区 | |
大工場地区 |
なお、記号の上部又は下部(路線の向きによっては右又は左)が「黒塗り」又は「斜線」で表示されていることがありますが、その場合の地区区分は、次のルールに基づいて判定します。
- 「黒塗り」の場合、その地区区分は「黒塗り」側の路線の道路沿いのみが該当します。
- 「斜線」の場合、その地区区分は「斜線」側の路線には該当しません。
- 「黒塗り」又は「斜線」ではない「白抜き」の場合、その地区区分はその路線全域に該当します。
奥行距離の求め方
続いて、奥行距離の求め方について説明します。
奥行距離
奥行距離とは、原則として、正面路線に対して垂直的な距離のことをいいます。
ただし、奥行距離が一様でない場合は、不整形地にかかる想定整形地の奥行距離を限度として、地積を間口距離で除した(割り算した)平均的な奥行距離によります。
算式で表すと、「平均的な奥行距離=地積÷間口距離」となります。
奥行距離が一様でない場合の例の奥行距離を図示すれば次のようになります。
間口距離
このように奥行距離が一様でない場合は、奥行距離を求めるために間口距離が必要になるので、間口距離の求め方についても併せて説明しておきます。
間口距離は、原則として道路と接する部分の距離によります。
次の図のような形状の宅地の間口距離はいずれによるのでしょうか。
Aの場合はa、Bの場合はa+cによります。Cの場合はbによりますが、aによっても差し支えありません。
また、Aの場合で私道部分を評価する際には、角切で広がった部分は間口距離に含めません。
下の図のように、宅地が屈折路に面している場合の間口距離はどのようにして求めるのでしょうか。
屈折路に面する不整形地の間口距離は、その不整形地に係る想定整形地の間口に相当する距離と、屈折路に実際に面している距離とのいずれか短い距離となります。
このことから、Aの場合にはa(<「b+c」)が、Bの場合には「b+c」(<a)がそれぞれ間口距離となります。
なお、屈折路に面する不整形地に係る想定整形地は、いずれかの路線からの垂線によって又は路線に接する両端を結ぶ直線によって、評価しようとする宅地の全域を囲むく形又は正方形のうち最も面積の小さいものとします。
図面の入手方法
奥行距離と間口距離の求め方がわかっても、土地を正確に計測した図面がなければ、実際に計算することはできません。
この点、図面は法務局で入手できる場合があります。
法務局で入手できることがある図面には、地図、地積測量図、公図の3つがあります。
左から順に精度が高いので、その優先順位で確認するとよいでしょう。
なお、土地の形状が複雑な場合は、一般の方には図面から奥行距離や間口距離を正確に測るのは難しいでしょう(CADというプロ用のソフトを使いこなす必要があります)。
また、図面がない場合は測量しなければなりませんが、一般の方が自分で正確に測量することは難しいでしょう。
したがって、図面がない場合や、図面があっても土地の形状が複雑な場合は、相続税の申告を税理士に依頼することをお勧めします。
土地の評価に精通した税理士に依頼すれば、あらゆる評価減を駆使して、税額を最大限に下げることが可能です。
路線価の調べ方
地区区分と奥行距離が分かれば、奥行価格補正率表から奥行価格補正率が分かります。
その土地の路線価に奥行価格補正率を乗じれば、奥行価格補正後の1㎡当たりの価額を計算することができます。
路線価は、路線価図に記載されています。
地区区分を調べる際に確認した、路線価図上の記号を改めてご覧ください。
記号の中央に、数字とアルファベットの組み合わせが記載されているでしょう。
この数字が千円単位の路線価を表しています。
例えば、「12,500C」と記載されていれば、その土地の路線価は、12,500,000円ということになります。
奥行価格補正による評価方法
それでは、以下の設例を基に、奥行価格補正による評価方法を説明します。
- 地区区分:普通住宅地区
- 奥行距離:5メートル
- 路線価:100,000円
- 地積:100㎡
まず、奥行価格補正率を確認します。
地区区分が普通住宅地区で奥行距離が5メートルなので、前掲の奥行価格補正率表を確認すると、奥行価格補正率が0.92であることが分かります。
路線価100,000円に奥行価格補正率0.92を乗じると、「100,000円×0.92=92,000円」となり、奥行価格補正後の1㎡当たりの価額が92,000円であることが求められます。
1㎡当たりの価額に地積を乗じれば、奥行価格補正後の土地の価額を求めることができます。
この土地の奥行価格補正後の価額は、「92,000円×100㎡=9,200,000円」となります。
地積の調べ方
地積は固定資産評価証明書又は固定資産税の課税明細書で確認できます。
登記地積と現況地積が記載されていますが、現況地積の方を参照してください。
記載されている現況地積と本当の現況地積が異なる場合は、本当の現況地積に基づいて評価します。
固定資産評価証明書を取得するには交付手数料が必要ですが、登記の際には固定資産評価証明書が必要なので取得しても無駄にはなりません。
固定資産評価証明書の取得方法については、関連記事を参考にしてください。
登記を司法書士に依頼する場合は、代行して取得してくれることが多いでしょう。
また、固定資産税の課税明細書は、毎年4月~6月頃(役所によって異なります)に納税義務者に届く「固定資産税納税通知書」に同封されています(別送の場合もあります)。
2つ以上の路線に接する土地の奥行価格補正
2つ以上の路線に接する土地の奥行価格補正については、関連記事にまとめています。
この記事を書いた人
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