連年贈与とは?基礎控除を最大限に活用するために知っておくべきこと
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記事は、公開日(2019年8月2日)時点における法令等に基づいています。
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法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。
連年贈与とは?
「連年贈与」という言葉は、法律用語ではないので、法律上の定義はなく、税理士等の専門家の間でも使われ方が統一されていないように思われます。 「連年贈与」は、主に、次の2つのいずれかの意味で使用されています。- 複数の年に分割して履行された一つの贈与
- 独立した毎年の贈与
贈与税の課税方法と基礎控除
連年贈与の詳しい説明に入る前に、贈与税の課税方法と基礎控除について簡単に説明しておきます。 贈与税の課税方法には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあり、相続時精算課税制度は一定の要件を満たすことで選択することができます(ただし、一度、相続時精算課税を選択した贈与者からの贈与については翌年以降暦年課税を選択することはできません)。 基礎控除の適用を受けることができるのは、暦年課税方法を選択した場合のみです。 相続時精算課税については、「相続時精算課税制度を迂闊に利用して大損しないために知るべきこと」をご参照ください。 暦年課税方法では、贈与税は、一人の人が1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。 つまり、3人の子供に、年間110万円ずつ20年間にわたって贈与すると、110万円×20年×3人=6600万円となり、子供たちに合計6600万円を税負担なく譲り渡すことできます。 このように、暦年課税の基礎控除の適用を受けて贈与することを「暦年贈与」といいます。暦年贈与ではなく連年贈与と判断されると基礎控除が適用されない
暦年贈与として基礎控除の枠内で贈与を受けたつもりでも、税務署が連年贈与と判断した場合は、贈与税が課税されます。 例えば、毎年110万円ずつ20年間にわたって合計2200万円の贈与を受けたつもりでも、税務署が、2200万円の一つの贈与を110万円ずつ履行したに過ぎないと判断すると、贈与税は最初の履行があった年(書面によるものについてはその契約の効力の発生した年)にまとめて課税されます。 1年間に控除できる金額は110万円なので、連年贈与としてまとめて課税されると、「2200万円-110万円=2090万円」に対して贈与税がかかることになります。連年贈与と判断されることを回避する方法
税務署に連年贈与の疑いをかけられたときに、連年贈与ではなく暦年贈与であることが証明できれば問題ありません。 この点、贈与の度に贈与契約書を作成することによって、連年贈与ではなく暦年贈与であることが証明しやすくなります。 そして、贈与契約書に公証役場で確定日付を付してもらうことによって、その日にその契約書が存在していたことを証明することができ、バックデート(契約を行った日のうちに日付を書き込まず、実際に契約を行った日よりも遅れてその日付を書き込むこと)で契約書を作成したのではないかと疑われることを避けることができます。 公証役場は全国にあります。 日本公証人連合会の公証役場一覧ページからお近くの公証役場を探すことができます。 なお、連年贈与を疑われることを回避するための他の対策として、契約日や金額を毎年変更するとか、110万円超の贈与を受けて少額の贈与税を納めるといったことが考えられますが、そこまでしなくても、内実が暦年贈与であって、かつ、そのことを証明するための確定日付のある贈与契約書が保管されていれば問題ないように思われます。 不安な点は相続税対策に精通した税理士に相談して、周到に用意を進めることをお勧めします。まとめ
以上、連年贈与について説明しました。 基礎控除を利用して非課税で贈与を受けるためには、税務署に連年贈与と判断されることを回避することも重要ですが、他にも注意点があります。 「非課税で暦年贈与する方法と暦年贈与のつもりでも課税されるケース」の記事も参考にしてください。この記事を書いた人
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