非課税で暦年贈与する方法と暦年贈与のつもりでも課税されるケース
「暦年課税だったら年間110万まで贈与税がかからない」は、聞いたことのある人も多いのでは?
はい、原則その通りです。しかし、やり方を間違えると暦年贈与が認められず税金が課されることがあります。例えば暦年贈与でなく連年贈与として扱われるパターンです。
連年贈与とは、複数の年に分割して履行された一つの贈与のことです。これだと、贈与の総額に対して贈与税が課されてしまいます。
今回は、連年贈与と見なされないための対策や、暦年贈与をサポートする暦年贈与信託のサービスについて詳しく解説します。
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[ご注意]
記事は、公開日(2018年10月23日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。
暦年贈与とは?
暦年贈与とは、暦年課税の適用を受ける贈与のことです。
暦年課税とは、1月~12月までの1年間に取得した贈与財産に対して課税する制度です。
「暦年」は「れきねん」と読み、この場合の暦年とは、1月~12月までの1年という意味です。
4月~翌年3月までの年度における1年と区別するために、1月~12月までの暦(こよみ)における1年のことを暦年と言うことがあるのです。
暦年贈与は毎年110万円まで非課税
暦年贈与を受けて取得した財産は、贈与税の課税対象となります。
贈与税の納税義務者は受贈者(贈与を受けた人)です。贈与者(贈与をした人)ではありません(ただし、贈与者には連帯納付義務があり、受贈者が納税しない場合は贈与者が納税しなければなりません。)
基礎控除とは?
暦年課税には年間110万円の基礎控除があります。
贈与税は課税価格(贈与税の課税対象となる1年間に受けた贈与の総額)から基礎控除の110万円を差し引いた金額に対して課税されます。
年間110万円までは、贈与を受けても贈与税が課されず、110万円を超えた場合は、その超えた分に対してのみ贈与税が課されます。
つまり、3人の子供に、年間110万円ずつ20年間にわたって贈与すると、110万円×20年×3人=6,600万円となり、子供たちに合計6,600万円を税負担なく譲り渡すことできます。
ただし、複数人から贈与を受けた場合でも、基礎控除額は110万円で変わりありません。
例えば、同じ年に、父と母からそれぞれ100万円の贈与を受けた場合、100万円+100万円-110万円=90万円となり、90万円に対して贈与税がかかります。
贈与税の計算方法については、関連記事をご覧ください。
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暦年贈与のつもりでも課税されてしまうケース
暦年贈与の基礎控除を利用して非課税で贈与を受けたつもりでも、税務署から暦年贈与と認めてもらえず、課税されてしまう場合があります。
課税されてしまう主なケースには次の2つがあります。
- 贈与を税務署に認めてもらえず、相続時に相続税が課せられる
- 暦年贈与ではなく連年贈与として扱われる
以下、それぞれについて説明します。
贈与を税務署に認めてもらえず、相続時に相続税が課せられる
贈与を税務署に認めてもらえないケース
次のような場合は、税務署に贈与があったとは認めてもらえない可能性があります。
- 贈与について双方の同意がない場合
- 贈与が履行されていないと判断される場合
以下、それぞれについて説明します。
贈与について双方の同意がない場合
贈与は契約であり、双方の意思の合致により贈与契約が成立します。
つまり、贈与者が贈与の意思を表示し、受贈者が受贈の意思を表示していなければ、贈与契約は成立しません。したがって、親が子に知らせずに勝手に入金したような場合は、贈与が成立していないと判断される可能性があります。
贈与が履行されていないと判断される場合
贈与が履行されていないと判断される場合も、贈与があったと税務署に認めてもらえない可能性があります。
例えば、次のような場合には、贈与が履行されていないと判断される可能性があります。
- 入金先の口座を贈与者が管理している場合
- 名義変更していない場合
子供名義ではあるけども、親が通帳、届印、キャッシュカードを管理していて、子供が自由に引き出すことができない口座に入金したような場合は、贈与が履行されたとは判断されない可能性があります。
また、不動産、自動車、船舶、有価証券などを贈与したつもりでも、名義変更していない場合は贈与があったと判断されない可能性があります。
贈与の事実が認められないと相続時に相続税が課せられる
贈与があったと認められないということは、子供名義の口座にあるお金でも、実態は親のお金のままということです。
親が亡くなって相続が発生した場合、その子供名義の口座のお金も相続財産となり、相続税の課税対象となります。
暦年贈与ではなく連年贈与として扱われる
暦年贈与ではなく連年贈与として扱わると、課税される可能性があります。連年贈与とは、複数の年に分割して履行された一つの贈与のことです。
例えば、2,200万円の贈与をする約束をして毎年110万円ずつ20年間にわたって履行したような場合は連年贈与になります。
連年贈与は、約束をした年か最初の履行があった年にまとめて課税されます。1年間に控除できる金額は110万円なので、連年贈与としてまとめて課税されると贈与税がかかってしまいます。
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暦年贈与を税務署に認めてもらうための対策
以上のとおり、暦年贈与を受けたつもりでも、連年贈与だと判断されたり、そもそも贈与が有効に行われていないと判断された場合は、課税対象となってしまいます。
暦年贈与を税務署に認めてもらうためには、次のような対策が有効です。
- 贈与契約書を作成する(確定日付つき)
- 受贈者が管理している口座に振り込む
- 登記や登録の制度のある財産については名義を変更する
以下、それぞれについて説明します。
贈与契約書を作成する(確定日付つき)
贈与契約書を作成することによって、贈与について双方の同意があったことを証明することができます。
毎年贈与する場合は、毎年契約書を作成することによって、連年贈与ではなく暦年贈与だということが証明しやすくなります。
契約書には、記名と押印が必要ですが、その際に、自筆で署名し、かつ、実印で押印すると、本人が契約を締結したことを証明しやすくなります。
贈与契約書のひな形は、こちらの記事のものを利用してください。
また、公証役場で確定日付を付してもらうことによって、その日にその契約書が存在していたことを証明することができ、バックデートで契約書を作成したのではないかと疑われることを避けることができます。
公証役場は全国にあります。日本公証人連合会のホームページからお近くの公証役場を探すことができます。
受贈者が管理している口座に振り込む
前述の通り、入金先の口座の通帳、届印、キャッシュカードを贈与者が管理していた場合、たとえ、名義が受贈者のものであっても、贈与が履行されたとは認められない可能性があります。
受贈者が管理している口座に入金するようにしましょう。
登記や登録の制度のある財産については名義を変更する
不動産、自動車、船舶、有価証券といった登記や登録の制度がある財産については名義変更をします。
課税制度の選択
取得した贈与財産に対する課税制度には暦年課税のほかに相続時精算課税があります。
どちらの制度に基づいて納税額を計算するのか納税者が選択することができますが、相続時精算課税は一定の要件を満たす場合でなければ選択することができません。
相続時精算課税を選択する場合は、選択をしようとする贈与を受けた年の贈与税の申告書の提出期間内に、納税地の税務署長に対して、「相続時精算課税選択届出書」等の必要書類を提出します。
相続時精算課税を選択しない場合は、暦年課税を選択したことになります。
つまり、暦年贈与を選択するのにアクションは不要です。
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暦年贈与信託
暦年贈与を信託銀行が贈与者に代わって手続してくれる暦年贈与信託というサービスがあります。
証券会社にも類似のサービスを提供している会社があり、こちらは、暦年贈与サービスというような名称で提供されているようです。
暦年贈与信託のメリット
暦年贈与信託には次のようなメリットがあります。
- 信託銀行が代行してくれるので手間がかからない
- 贈与のし忘れがない
- 誰にいくら贈与したか履歴を管理してもらえる
- 税務署から贈与を否認されたり、連年贈与と判断されるリスクが低くなる
暦年贈与信託のデメリット
暦年贈与信託のデメリットは、信託銀行に口座を開いたり、サービスに申し込んだりする手間が最初にかかることです。
一度だけ贈与する場合は、暦年贈与信託によって削減できる手間よりも、サービスに申し込む手間の方が大きいので、毎年贈与する予定がある人向けのサービスといえます。
管理手数料は?
管理手数料はかからないケースが多いようです。
信託銀行にとっては、信託口座を開設してお金を預けてもらうことがメリットなので、管理手数料は不要なのかもしれません。
手数料がかかる信託銀行もあるかもしれないので、申込前に確認しましょう。なお、証券会社の類似サービスでは管理手数料がかかる場合が多いようです。
お金が戻らないリスクはある?
信託銀行にお金を預けると運用に回されるわけですが、暦年贈与信託の場合は、元本が保証されているものが多いようです。
元本が保証されていないケースもあるかもしれないので、申込前に確認しましょう。
まとめ
以上、暦年贈与について説明しました。
暦年贈与によって確実に非課税で贈与するためには、相続税対策に精通した税理士に早めに相談しておくことをお勧めします。
また、暦年贈与以外の相続税対策については、こちらの記事をご覧ください。
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この記事を書いた人
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