成年後見人の手続きを家族や自分でやる方法と代行費用

成年後見人の選任の受けるためには、被後見人(後見を受ける人)の住所地を管轄する家庭裁判所に「後見開始の申立て」をして、「後見開始の審判」において、後見開始を認容する審判を受けらなければなりません。

この一連の手続きのことを、この記事では「成年後見人の手続き」とよぶことにします。

以下では、成年後見人の手続きについてわかりやすく説明しますので、是非、参考にしてください。

[ご注意]
記事は、公開日(2021年3月5日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。

動画で説明を見たい方

文章よりも動画の方がわかりやすいという方もいるでしょうから、まず最初に成年後見人手続きについての説明動画を紹介します。

手続きの説明から始まるようにしていますが、制度の概要についても知りたい場合は、最初からご覧になるとよいでしょう。

手続は自分でできる?家族がやるの?

申立てができるのは、ご本人、配偶者、4親等内の親族等に限られています。

ただし、ご本人が自分で申立てできるのは、申立ての意味内容を理解して真意で申立てをしていると認められるときに限ります。

4親等内の親族には、一般的に「親族」といってイメージする範囲の親類は大体含まれていると考えて問題ありません。具体的には、次の人が含まれます。

  • 父母
  • 祖父母
  • 曾祖父母(ひいじいさん・ひいばあさん)
  • 高祖父母(ひいひいじいさん・ひいひいばあさん)
  • 曾孫
  • 玄孫(曾孫の子)
  • 兄弟姉妹
  • 甥・姪(おい・めい(兄弟姉妹の子))
  • 大甥・大姪(おおおい・おおめい(甥・姪の子))
  • 伯叔父母(おじ・おば)
  • 従兄弟姉妹(いとこ)
  • 伯叔祖父母(おおおじ・おおおば(祖父母の兄弟姉妹))
  • 子の配偶者
  • 孫の配偶者
  • 曾孫の配偶者
  • 兄弟姉妹の配偶者
  • 甥・姪の配偶者
  • 伯叔父母の配偶者
  • 配偶者の父母
  • 配偶者の祖父母
  • 配偶者の曾祖父母
  • 配偶者の兄弟姉妹
  • 配偶者の甥・姪
  • 配偶者の伯叔父母
  • 配偶者の連れ子
  • 配偶者の連れ子の子
  • 配偶者の連れ子の孫

一般的に交流のある親類はほとんど含まれていると思います(配偶者の兄弟姉妹の配偶者等は含まれていません)。

また、成年後見人の手続きは、弁護士に代理してもらうことできます。

また、司法書士は、手続きに必要な書類の作成代行ができますが、手続きは申立人が自分ですることになります。

弁護士に依頼した方が手間を省くことができますが、司法書士の方が安く対応してくれる傾向があります。

手間をかけたくない方や、手続きが難しそうだと感じる方は、依頼を検討するとよいでしょう。無料相談に応じている弁護士・司法書士も多いので、まずは、気軽に電話で問い合わせてみるとよいでしょう。相談したからといって依頼しなければならないわけでありません。

なお、手続きにかかる費用や弁護士・司法書士に依頼した場合の費用については、申立人が負担することになります。費用について詳しくは後述します。

手続きの概要

申立人は、申立てに必要な書類を準備し、家庭裁判所に提出します。

申立書のほか、戸籍事項証明書、(後見)登記されていないことの証明書、ご本人の財産に関する資料などが必要になります。

申立書の書式は、各家庭裁判所に用意されているほか、家庭裁判所のウェブサイトからもダウンロードできます。

また、ご本人の判断能力を医学的に確認するため、申立ての際に、診断書の提出が必要です。他の必要書類については、後述します。

申立てをするには、申立て手数料のほか、法務局の登記手数料、書類の郵送に使う郵便切手代等がかかります。

これらは、収入印紙や郵便切手で納めます。

なお、申立てをするために、弁護士等の専門家に依頼した場合、その費用は申立人ご自身が負担することになります。

費用について、詳しくは後述します。

申立てをする裁判所は、ご本人の住所地を管轄する家庭裁判所です。

管轄の裁判所がわからないときは、最寄りの家庭裁判所にご確認ください(各地の裁判所の所在地・電話番号等一覧)。

また、各家庭裁判所の管轄地域は、裁判所のウェブサイトからもご確認できます。

成年後見人はどのようにして選ばれる?

家庭裁判所は、後見開始の申立てに対して、認容すべきか却下すべきかについて審判しますが、認容する場合には、誰を成年後見人に選任すべきかについても審理し、決定します。

ここでは、成年後見人がどのようにして選ばれるのかについて説明します。

申立人は後見人の候補者を立てることができる

後見開始の申立時に提出する後見開始申立書には申立人が推薦する後見人候補者の記入欄があり、この欄に記入して提出することで後見人の候補者を立てることができます。

候補者は親族でも親族以外の人でもよい

後見人候補者は親族でも親族以外の人でも構いません。

親族以外の人の場合は、司法書士、弁護士、社会福祉士等の専門職でなければ認められにくいでしょう。

候補者は必須ではない

候補者は必ず立てなければならないわけではありません。

候補者が立てられなかった場合は、家庭裁判所が司法書士、弁護士、社会福祉士等の専門職後見人を選任します(後見開始を決定する場合)。

候補者が選任されるとは限らない

候補者が立てられた場合でも、その人が選任されるとは限りません。

次のいずれかに該当する場合は、候補者以外から後見人(専門職)が選任されます。

  • 欠格事由がある場合
  • 家庭裁判所が適任でないと判断した場合

欠格事由がある場合

次の欠格事由のうち、いずれか一つにでも該当する人は、成年後見人になることはできません。

  • 未成年者
  • 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
  • 破産者で復権していない人
  • 被後見人に対して訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族
  • 行方の知れない者

これらのうち、分かりにくそうなものについて説明します。

家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人

家庭裁判所で親権の喪失や財産の管理権の喪失の宣告を受けた親権者、家庭裁判所の職権で解任された保佐人や補助人がこれに該当します。

破産者で復権していない人

復権とは、破産宣告を受けて破産者に課された権利の制限を消滅させ、破産者の本来の法的地位を回復させることをいいます。破産者は、例えば、免責許可の決定が確定した時等に復権します。

被後見人に対して訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族

直系血族とは、父母、祖父母、子、孫などのことです。

つまり、被後見人に対して訴訟(裁判)をしたことのある人や、その人の妻、夫、父母、祖父母、子、孫などに当たる人は、後見人になれません。

家庭裁判所が適任でないと判断した場合

家庭裁判所は申立書に記載された候補者が適任であるかどうかを審理し、その結果、候補者ではなく、本人が必要とする支援の内容などによっては、候補者以外の人(弁護士、司法書士、社会福祉士等の専門職や法律または福祉に関する法人など)を後見人に選任することがあります。

また、候補者である親族を後見人に選任したうえで、専門職の後見監督人を選任する場合もあります。

次のいずれかに該当する場合は、候補者以外の方を後見人に選任したり、監督人を選任したりする可能性があります。

  • 親族間に意見の対立がある場合
  • 流動資産の額や種類が多い場合
  • 不動産の売買が予定されているなど、申立ての動機となった課題が重要な法律行為を含んでいる場合
  • 遺産分割協議など後見人と本人との間で利益相反する行為について、監督人に本人の代理をしてもらう必要がある場合
  • 後見人候補者と本人との間に高額な貸借や立替金があり、その清算の可否等について第三者による調査、確認を要すると判断された場合
  • 従前、後見人候補者と本人との関係が疎遠であった場合
  • 年間の収入額及び支出額が過大であったり、年によって収支に大きな変動が見込まれたりなど、第三者による収支の管理を要すると判断された場合
  • 後見人候補者と本人との生活費等が十分に分離されていない場合
  • 申立時に提出された財産目録や収支状況報告書の記載が十分でないなどから、後見人としての適格性を見極める必要があると判断された場合
  • 後見人候補者が後見事務に自信がなかったり、相談できる者を希望したりした場合
  • 後見人候補者が自己もしくは自己の親族のために本人の財産を利用 (担保提供を含む。)し、または利用する予定がある場合
  • 後見人候補者が、本人の財産の運用 (投資等)を目的として申し立てている場合
  • 後見人候補者が健康上の問題や多忙などで適正な後見の事務を行えない、または行うことが難しいと判断された場合
  • 本人について、訴訟・調停・債務整理等の法的手続を予定している場合
  • 本人の財産状況が不明確であり、専門職による調査を要すると判断された場合

被後見人に多額の財産や一定の継続的収入がある場合や、親族間に利害の衝突や対立があるような場合には、第三者の後見人が選ばれます。この場合に選ばれるのは、弁護士や司法書士等の専門家です。

なお、想定される後見人の職務が、被後見人の財産管理面ではなく、主に身上監護に関すること(住居の確保及び生活環境の整備、施設等の入退所の契約、治療や入院等の手続など)である場合は社会福祉士等の専門家が選ばれることもあります。

また、財産管理を行う後見人と身上監護を行う後見人が複数選ばれる場合もありますし、社会福祉法人等の法人が選ばれる場合もあります。

なお、後見人の選任に関する判断については、不服の申立てはできません(後見開始の申立てが却下された場合は不服申立ができます)。

また、候補者以外の人が後見人に選任されたり監督人が選任されたりすることに不満がある場合に申立ての取下げを申し出たとしても、本人の利益に配慮して、許可されない可能性が高いと考えられます。

手続きの流れ

次に、実際の手続きの流れを見てみましょう。

申立てに必要な書類が揃ったら、家庭裁判所に提出します。

なお、窓口での待ち時間を短くするために、受付や手続案内について、あらかじめ電話で予約することにしている家庭裁判所もあるので、事前にご確認ください。

ここで、注意していただきたいことがあります。

一旦、申立てを行った後、その申立てを取り下げるには、家庭裁判所の許可が必要です。

家庭裁判所は、取下げの理由やご本人の状況等を踏まえて、取下げを許可するかどうかを判断します。

申立人の希望する方が後見人に選任されないことを理由とした取下げは、原則として認められません。

審理(調査・鑑定等)

申立てを受けた家庭裁判所は、申立人やご本人、後見人の候補者等から事情を伺います。

また、ご本人の親族から意見を伺うこともあります。

ご本人の判断能力について慎重に判断するため、申立ての際に提出していただいた診断書とは別に医師による鑑定を行うことがあります。

鑑定を実施する場合には、鑑定料が必要になります。

金額や納め方については、申立てをした家庭裁判所にご確認ください。

これらの手続きの後、家庭裁判所は、ご本人について後見を開始する必要があるか、誰を後見人に選任すべきかを判断し、審判をします。

審判

審判書が後見人に届いてから2週間以内に不服申立てがされない場合には、後見開始の審判が確定します。

ご本人、配偶者、4親等以内の親族は、後見開始の審判に不服のある場合には、この2週間の間に不服申立ての手続きを行うことができます。

ただし、誰を後見人に選任したかという点については、不服申立てはできません。

例えば、申立人の希望する人が後見人に選任されなかったことを理由とする不服申立てはできません。

審判の確定後、家庭裁判所から法務局に審判内容の登記を依頼します。

選任された後見人は登記事項証明書を取得し、金融機関等で必要な届出や手続きをすることになります。

必要書類

標準的な申立添付書類は次のとおりです。

  • 本人の戸籍謄本(全部事項証明書)(発行から3か月以内のもの)
  • 本人の住民票又は戸籍附票(発行から3か月以内のもの)
  • 成年後見人候補者の住民票又は戸籍附票(発行から3か月以内のもの)
    ※ 成年後見人候補者が法人の場合には、当該法人の商業登記簿謄本(登記事項証明書)
  • 本人の診断書(発行から3か月以内のもの)
    書式等については「成年後見制度における診断書作成の手引・本人情報シート作成の手引」をご覧ください。
  • 本人情報シート写し
    書式等については「成年後見制度における診断書作成の手引・本人情報シート作成の手引」をご覧ください。
  • 本人の健康状態に関する資料
    介護保険認定書、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、身体障害者手帳などの写し
  • 本人の成年被後見人等の登記がされていないことの証明書(発行から3か月以内のもの)
     東京法務局後見登録課または全国の法務局・地方法務局の本局で発行するもの。取得方法、証明申請書の書式等については最寄りの法務局・地方法務局にお尋ねいただくか、法務省のホームページをご覧ください。
     なお、本人が成年後見制度の利用及び任意後見契約の締結をしていない場合には、証明事項が「成年被後見人、被保佐人、被補助人、任意後見契約の本人とする記録がない。」ことの証明書を請求してください。
  • 本人の財産に関する資料
    ・預貯金及び有価証券の残高がわかる書類:預貯金通帳写し、残高証明書など
    ・不動産関係書類:不動産登記事項証明書(未登記の場合は固定資産評価証明書)など
    ・負債がわかる書類:ローン契約書写しなど
  • 本人の収支に関する資料
    ・収入に関する資料の写し:年金額決定通知書、給与明細書、確定申告書、家賃、地代等の領収書など
    ・支出に関する資料の写し:施設利用料、入院費、納税証明書、国民健康保険料等の決定通知書など

なお、同じ書類は1通で足ります。

また、各裁判所によって申立時にその他の書面の提出を求められることや、審理のために必要な場合に追加書類の提出を求められることがあります。

各書類の書式及び記載例については、裁判所のウェブサイトのこちらのページをご参照ください(再掲)。

費用

成年後見制度の利用にかかる費用・報酬をまとめると下の表のようになります。

項目 必要な場合 金額 負担者
申立手数料 必ず 800円 申立人又は本人
連絡用の郵便切手代 必ず 3千~5千円程度 申立人又は本人
後見登記手数料 必ず 2,600円 申立人又は本人
本人の戸籍謄本の交付手数料 必ず 450円 申立人
本人の住民票又は戸籍附票の交付手数料 必ず 300円 申立人
本人の診断書の作成手数料 必ず 1万円程度 申立人
本人の成年後見等に関する登記がされていないことの証明書の交付手数料 必ず 300円 申立人
鑑定費用 家庭裁判所によって鑑定が必要と判断された場合 10万円程度 申立人又は本人
成年後見人候補者の住民票又は戸籍附票の交付手数料 自然人の成年後見人候補者がいる場合 1通300円 申立人
成年後見人候補者の商業登記事項証明書の交付手数料 法人の成年後見人候補者がいる場合 1通600円 申立人
本人が権利を有する不動産の登記事項証明書の交付手数料 本人が登記済み不動産についての権利を有する場合 1通600円 申立人
本人が権利を有する不動産の固定資産評価証明書の交付手数料 本人が未登記不動産についての権利を有する場合 1通400円 申立人
申立報酬 申立てを委任した場合 10万~30万円程度 申立人
成年後見人への報酬 報酬付与の申立てが認められた場合
※通常は認められる
月額2万~9万円程度 本人
成年後見監督人への報酬 選任された場合 月額1万~3万円程度 本人
後見制度支援信託に関与する専門職後見人への報酬 後見制度支援信託を利用する場合 10万~30万円程度 本人
必要経費 後見事務等に関して経費がかかった場合 実費 本人

負担者欄が「申立人又は本人」となっている項目(申立費用)については、申立人が負担することが原則です。ただし、東京家庭裁判所では、審判確定後、選任された後見人に対し、本人の財産の中から本人負担とされた手続費用の償還を求めることができます。また、大阪家庭裁判所では、申立手数料、後見登記手数料、連絡用の郵便切手代及び鑑定費用については、上申書を提出した場合には、これらの費用の全部又は一部について、本人負担とすることができる場合があります。このように家庭裁判所ごとに取扱いが異なるので、申立てをする家庭裁判所に確認するとよいでしょう。

費用について詳しくは「成年後見人の費用・報酬のすべてについてわかりやすくまとめました」をご参照ください。

手続きにかかる期間

手続きにかかる期間は、多くのケースでは、1~2か月程度ですが、6か月以上かかることもあります。

2019年に終局した事件(後見開始、保佐開始、補助開始及び任意後見監督人選任)の審理期間別の割合は下の図のとおりです。

相談窓口

手続き関する相談は、申立先の家庭裁判所にするとよいでしょう。

また、成年後見制度についての相談は、各市区町村の地域包括支援センターにするとよいでしょう。地域包括支援センターとは、市町村が設置主体となり、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員等を配置して、3職種のチームアプローチにより、地域住民の健康の保持及び生活の安定のために必要な援助を行うことにより、その保健医療の向上及び福祉の増進を包括的に支援することを目的とする施設です。各地の地域包括支援センターは、以下のリンクからご確認ください。

北海道 青森県 岩手県 宮城県 秋田県 山形県
福島県 茨城県 栃木県 群馬県 埼玉県 千葉県
東京都 神奈川県 新潟県 富山県 石川県 福井県
山梨県 長野県 岐阜県 静岡県 愛知県 三重県
滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県
鳥取県 島根県 岡山県 広島県 山口県 徳島県
香川県 愛媛県 高知県 福岡県 佐賀県 長崎県
熊本県 大分県 宮崎県 鹿児島県 沖縄県

手続きが難しいと感じた場合や、手続きに時間を取られたくない場合

手続きが難しいと感じた場合や、手続きに時間を取られたくない場合は、弁護士か司法書士に依頼するとよいでしょう。

成年後見人の手続きは、弁護士に代理してもらうことでき、司法書士は、手続きに必要な書類の作成代行ができますが、手続きは申立人が自分ですることになります。

弁護士に依頼した方が手間を省くことができますが、司法書士の方が安く対応してくれる傾向があります。

手間をかけたくない方や、手続きが難しそうだと感じる方は、依頼を検討するとよいでしょう。無料相談に応じている弁護士・司法書士も多いので、まずは、気軽に電話で問い合わせてみるとよいでしょう。相談したからといって依頼しなければならないわけでありません。

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この記事を書いた人

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