葬祭費とは。国民健康保険や後期高齢者医療の加入者が死亡したら
身近な方が亡くなって、葬祭を行った場合、葬祭費を受給できることがあります。
この記事では、葬祭費に関して知っておくべきことをわかりやすく説明します。
是非、参考にしてください。
目次
[ご注意]
記事は、公開日(2020年2月18日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。
葬祭費とは?
葬祭費とは、国民健康保険(国保)、国民健康保険組合(国保組合)または後期高齢者医療制度の被保険者(加入者)が亡くなったときに、その葬祭を行った方に支給される給付金のことです。
国民健康保険は、社会保険組合(協会けんぽ、組合健保または共済組合)に加入していない方が加入する公的医療保険で、例えば、次のような方が加入するものです。
- 自営業の方
- 農業・漁業に従事している方
- パート、アルバイトなどで、職場の健康保険に加入していない方
- 退職して職場の健康保険をやめた方
- 3ヶ月を超える在留資格が決定された住所を有する外国籍の方
国民健康保険組合は、同種の職業に就いている方を被保険者(加入者)とする公的医療保険です。
後期高齢者医療制度は、75歳以上の方と、65歳以上75歳未満で一定の障がいがあり、運営主体の保険者である広域連合の認定を受けた方が加入する医療制度です。
お勤めの方(会社員、公務員、団体職員等)は、これら(国民健康保険、国民健康保険組合または後期高齢者医療制度)の被保険者(加入者)ではないので、葬祭費給付制度の対象とはならず、代わりに、埋葬料給付制度の対象となります。
ただし、お勤めだった方が退職する等してお勤め先の社会保険組合の被保険者資格を喪失した後に亡くなった場合でも、次のいずれかに該当する場合は、葬祭費ではなく埋葬料の支給対象となります。
- お勤め先の社会保険組合の被保険者資格の喪失後3か月以内に亡くなったとき
- お勤め先の社会保険組合の被保険者資格の喪失後の傷病手当金または出産手当金の継続給付を受けている間に亡くなったとき
- お勤め先の社会保険組合の被保険者だった方が、2の継続給付を受けなくなってから3か月以内に亡くなったとき
このように、亡くなった方が加入していた公的医療保険の種類に応じて、自ずと葬祭費と埋葬料のどちらを受給できるかが決まるため、これらの両方を受給することはできません。
埋葬料については、「埋葬料とは?いつ振り込まれる?請求方法や支給申請書の書き方は?」をご参照ください。
葬祭費の金額
葬祭費の給付額は、亡くなった方が加入していた公的医療保険の種類と保険者によって異なります。
国民健康保険に加入していた場合は、5万~7万円です(市町村(特別区の場合は区)によって異なります)。
後期高齢者医療制度に加入していた場合は、3万~7万円です(市町村(特別区の場合は区)によって異なります)。
国民健康保険組合に加入していた場合は、5万~10万円程度のことが多いようです(組合によって異なります)。
生活保護を受けている場合は葬祭扶助が受けられる場合がある
遺族が生活保護を受けていて、葬祭費用をまかなえない場合や生活保護受給者の葬祭を遺族以外の人が手配する場合等は、葬祭扶助制度を利用できる場合があります。葬祭扶助制度については「葬祭扶助とは?受けられるのは喪主が生活保護受給者の場合だけ?」をご参照ください。
火葬のみ場合は葬祭費が受けられないことがある
お通夜や告別式を行わず火葬のみ行う直葬の場合は、葬祭費が支給されないことがあります。直葬の場合でも葬祭費が支給されることが多いのですが、保険者によっては支給されないこともあるため、亡くなった方の加入する公的医療保険の保険者(国民健康保険または後期高齢者医療制度に加入していた場合は亡くなった方の住所地の市区町村、国民健康保険組合に加入していた場合はその組合)にご確認ください。
相続放棄をしても葬祭費が受けられる
葬祭費は相続財産ではないので、相続放棄をしても受給できます。
また、葬祭費を受給したからといって相続放棄ができなくなることもありません。
葬祭費の時効は葬祭の翌日から2年
葬祭費を請求する権利は、葬祭を執行した日の翌日から起算して2年を経過すると時効によって消滅してします。
葬祭費の請求(申請)手続き
葬祭費は、亡くなった方が加入していた公的医療保険の保険者に対して請求します。
保険者(=葬祭費の請求先)は、公的医療保険の種類に応じて、下の表のとおりです。
公的医療保険の種類 | 保険者(=葬祭費の請求先) |
---|---|
国民健康保険または後期高齢者医療制度 | 住所地の市区町村 |
国民健康保険組合 | 加入していた国民健康保険組合 |
手続きの方法や必要書類は、保険者によって異なるため、保険者のウェブサイト等で確認するとよいでしょう。
支給申請書のフォーマットも保険者によって異なります。
なお、保険者によっては郵送で請求することもできます。
葬祭費は、いつ振り込まれる?
葬祭費は、通常、申請書に記入した金融機関口座に振り込んで支給されます。
申請してから振り込まれるまでの期間は、保険者によって異なりますが、通常、1~2か月ほどです。
なお、亡くなった方が保険料を未納だった場合、葬祭費が未納だった保険料に充当されることがあります。
その場合、残金があれば、残金が保険者(市区町村等)の窓口で現金で支給されます。
葬祭費に相続税はかからない
葬祭費は「相続財産」または「みなし相続財産」には該当しないので、葬祭費に相続税はかかりません。
また、相続税の計算にあたって葬儀費用から葬祭費を控除する必要もありません。
葬祭費は確定申告が不要
葬祭費には所得税もかからないため、確定申告も不要です。
もっとも、葬祭費とは関係なく確定申告が必要な人は確定申告が必要ですが、その場合も葬祭費を申告する必要はありません。
まとめ
以上、葬祭費について説明しました。
家族が亡くなった後の相続手続きやその他の手続きについては、種々の手続きがあり非常に煩雑ですが、一括して代行してくれる専門家も存在します。
申請漏れによってもらえるはずだったお金がもらえないなどということがないように、専門家を上手に活用しましょう。
まずは、気軽に相談してみるとよいでしょう。
この記事を書いた人
相続専門のポータルサイト「いい相続」は、相続でお悩みの方に、全国の税理士・行政書士など相続に強い、経験豊富な専門家をお引き合わせするサービスです。
「遺産相続弁護士ガイド」では、遺産分割や相続手続に関する役立つ情報を「いい相続」編集スタッフがお届けしています。また「いい相続」では、相続に関連する有資格者の皆様に、監修のご協力をいただいています。
▶ いい相続とは
▶ 監修者紹介 | いい相続