遺産相続について無料で相談できるところはある?
遺産相続について無料で相談できるところは実はたくさんあります。すると今度は、「どこに」「誰に」「何を」相談すべきか選ぶために悩む人も多いでしょう。選び方に正解はあるのでしょうか。
この記事では、遺産相続について無料で相談できる専門家の種類を紹介したうえで、「どのような場合に・何を」「どこ・誰に」相談すれば良いかを説明します。
[ご注意]
記事は、公開日(2020年4月9日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。
相続手続きを無料で相談できる主な専門家の一覧
- 行政書士
- 税理士
- 弁護士
- 司法書士
- 相続に関する事業を行っている民間団体・個人
- 信託銀行等の金融機関
- 役所
- 家庭裁判所
- 法務局
- 税務署
1~6は民間サービスで、7~10は公的機関です。民間サービスについては、すべてが無料相談を実施しているわけではなく、有料のところもあります。
相続相談が無料の理由
公的機関は税金で運営されているので無料なのはわかりますが、民間の専門家の中にも無料で運営しているところがあるのはなぜなのでしょうか?その理由は無料相談から仕事の依頼につながる可能性があるからです。
仕事の依頼となれば料金をもらえるので、相談は無料でも元をとれると考えられるのです。そうすると、依頼する予定がない人は「無料相談だけだと申し訳ない」と思われるかもしれませんが、気にする必要はありません。
専門家も無料の相談がすべて仕事の依頼につながるとは思ってはおらず、「何件かに1件が仕事につながれば元がとれる」と考えているのです。
相談者は何か解決したいことがあるから相談するわけですが、相談だけで解決できることもあれば、専門家に依頼した方が良い結果が望めることもあります。
しかし、「相談だけで解決できる」と思っていたものの、相談してみると「どうやら専門家に依頼した方が良さそうだ」とわかることもあります。
したがって、「依頼する予定はないから無料で相談させてもらうのは申し訳ない」とは考えなくても良いのです。
以下、それぞれの専門家たちの主な特徴と相談できる事項について説明します。ご自身のお悩みごとがあてはまるときは、ぜひ気軽に相談してみてください。
専門士業に依頼できる事案の比較
相談内容 | 行政書士 | 税理士 | 司法書士 | 弁護士 |
---|---|---|---|---|
相続税申告 | ✕ | ◯ | ✕ | ✕ |
遺産分割協議書 の作成 |
◯ | △ | ◯ | ◯ |
各種保険の 相続手続き |
◯ | △ | ◯ | ◯ |
金融機関での 相続手続き |
◯ | △ | ◯ | ◯ |
相続財産の調査 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
戸籍収集 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
相続放棄 | ✕ | ✕ | ✕ | ◯ |
遺言書の検認 | ✕ | ✕ | △ | ◯ |
不動産の名義変更 (相続登記) |
✕ | ✕ | △ | ◯ |
調停・審判 での弁護 |
✕ | ✕ | ✕ | ◯ |
相続トラブル の解決 |
✕ | ✕ | ✕ | ◯ |
各士業に依頼できること
もう少し細かく、それぞれの士業に依頼できることを見ていきましょう。
行政書士
- 遺言書の作成
- 各種名義変更手続きの代行
- 家族信託契約書の作成
税理士
- 相続税の申告
- 相続財産の評価
司法書士
- 不動産の相続登記
- 各種名義変更手続きの代行
- 成年後見人
弁護士
- 遺産分割の争いに関する法律相談
- 遺産分割の代理人
- 家庭裁判所での代理人
ここから先は、それぞれの専門家の特徴と、依頼することのメリット・デメリットについて詳しく解説していきます。
行政書士
行政書士は、役所等の官公署に提出する書類や権利義務に関する書類を作成する専門家です。
行政書士が遺産相続に関してできること
相続に関して行政書士ができることとしては、次のようなことが挙げられます。
- 遺言書文案の作成
- 公正証書遺言の作成手続き
- 相続人調査
- 法定相続情報一覧図・相続情報関係図の作成、法定相続情報証明制度の利用申出手続き
- 相続財産調査、財産目録の作成
- 不在者財産管理人の候補者になること
- 遺産分割協議書の作成
- 預貯金の相続手続き(相続した預貯金の払戻し手続き)
- 有価証券の相続手続き(相続した有価証券の名義変更)
- 自動車の相続手続き(相続した自動車の名義変更)
- 遺言の執行
行政書士が遺産相続に関してできないこと
行政書士ができないこととして、例えば、次のようなことが挙げられます。
- 法律相談
- 他の相続人との交渉
- 相続放棄の申述手続き
- 遺言書の検認手続き
- 相続登記(相続した不動産の名義変更)
- 相続税申告、準確定申告
まとめると、行政書士は預貯金や有価証券、自動車などの相続手続きはできる一方で、不動産の名義変更など土地の登記手続を行うことはできないため不動産の相続手続きはできない、ということになります。
また、相続手続きは自分で行うつもりだが遺産分割協議書の作成方法がわからないという場合も、行政書士に相談すると良いでしょう。
税理士
税理士は税の専門家。税の申告や相続税対策については税理士に相談すると良いでしょう。
相続税は、相続財産の中に不動産がある場合は特に、種々の税の軽減制度を駆使することで大幅に安くすることができる場合があります。
また、不動産がない場合でも、自分で相続税を申告すると、税額を間違って税務調査の対応に追われたり追徴課税されたりするおそれがあるため、税理士に相談することをお勧めします。
弁護士
弁護士に相談すべき主なケースは、次のとおりです。
- 相続人等の関係者の間で主張が対立している、意見が割れている
- 相続人の1人が遺産を渡さない、使い込んでいる、遺産の内容を明かさない
- 遺留分を侵害された、遺留分侵害額請求を受けた
- 推定相続人を廃除したい、相続欠格を主張したい、廃除審判を申立てられた、相続欠格を主張された
- 相続放棄、相続分の放棄、遺留分の放棄を求められる
- 遺言の有効性に疑いがある
- 相続を放棄したい
- 遺言書を作成したい
相続人同士で揉めているなら弁護士
弁護士は、本人を代理して、他の相続人等の相手方と協議したり、訴訟追行したりすることができる唯一の専門家です。
相続人間で主張が対立している場合などは、弁護士に相談することで、協議を有利に進めることができるでしょう。
遺言書内容の相談は弁護士
遺言文案の作成については、司法書士や行政書士も相談先の候補となります。
遺言を作成する際は、遺留分や特別受益の持戻し等、注意すべきことがいくつもありますが、弁護士はどのような遺言内容にすべきか、法律の専門家の視点から相談者に的確なアドバイスをすることができます。
相続放棄で弁護士が適している場合
相続放棄の申述について、司法書士は申述書の作成・提出や必要書類の収集については対応することができます。
相続債務に法外な金利が設定されていて過払い金が生じていたとか、交渉などで借金額を減額できる場合、結果として相続放棄をする必要がない場合もありますが、弁護士には、相続放棄をすべきかどうかということも含めて相談できます。
また、司法書士に依頼した場合は、照会書は申述者本人の住所に届くので、照会書を司法書士にメールやファクシミリ等で送って、回答書の記入する内容について指示を受けることになりますが、弁護士に依頼した場合は、照会書は弁護士の元に届き、弁護士が回答書を作成して送ってくれるので、より手間がかかりません。また、稀に、家庭裁判所から出頭要請がある場合がありますが、司法書士は代わりに出頭することはできませんが、弁護士は代わりに出頭することができるという違いもあります。
司法書士
不動産の名義変更は司法書士
司法書士は、主に登記の専門家です。
不動産を相続した場合は、所有権の移転登記(名義変更)をした方がよいのですが、一般の人が独力で登記手続きを行うことは大変難しいので、司法書士に相談することをお勧めします。
預貯金、有価証券、自動車等の不動産以外の財産の相続手続きについても対応している司法書士は多いので、一括して依頼すると面倒がないでしょう。
相続放棄にも対応
司法書士は、相続放棄申述書等の裁判所への提出書類の作成を依頼することもでき、弁護士よりも司法書士の方が費用が安い傾向にあります。
相続に関する事業を行っている民間団体・個人
「相続○○センター」等のような屋号・商号で、相続に関する事業を行っている民間団体(株式会社、一般社団法人、NPO法人、行政書士法人、司法書士法人、税理士法人等)や個人(行政書士、司法書士、税理士等)があります。
消費者が公的な機関と誤認しやすい名称のものもありますが、「相続○○センター」のような名称のものはすべて、民間の団体または個人によって運営しています。
名称に惑わされずに運営元や代表者の保有資格等を確認するとよいでしょう。
信託銀行等の金融機関
信託銀行等の金融機関の中にも相続に関する無料相談を実施しているところがありますが、その金融機関に資産運用を依頼している人以外は、あまり利用するメリットはないように思われます。
信託銀行等が実施している遺言や相続手続きに関するサービスは、行政書士や司法書士に比べて費用が高い傾向にあります。
役所
役所が弁護士を招いて無料法律相談を実施していることがあります。
家庭裁判所
家庭裁判所は、相続放棄の申述や遺産分割調停等を行う裁判所で、支部や出張所も合わせると全国330か所にあります。
家庭裁判所では、家庭裁判所を利用する場合の申立手続きの概要や、申立書の記載方法、申立費用、添付書類等の案内を受けることができます。
判断を伴う事項の相談や、法律相談、身上相談はできません。
法務局
相続に関して法務局に相談できる主な事項は、次のとおりです。
- 相続登記の手続き方法
- 登記簿の閲覧方法
- 遺言書の保管制度の利用方法
- 遺言書の照会および証明書の請求の方法
税務署
税務署には相続税などの税の申告方法について相談することができます。
なお、相続税は、相続財産の中に不動産がある場合は特に、種々の税の軽減制度を駆使することで大幅に安くすることができる場合がありますが、税務署では、税額を安くする方法についてアドバイスをもらうことはできないので、不動産がある場合は特に、税理士に相談した方がよいでしょう。
また、不動産がない場合でも、自分で相続税を申告すると、税額を間違って税務調査の対応に追われたり追徴課税されたりするおそれがあるため、税理士に相談することをお勧めします。
この記事を書いた人
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