弁護士監修記事

推定相続人とは|「法定相続人」や「相続人」との違いについても解説

推定相続人という言葉の意味について正確に理解できている人は意外と少ないものです。

相続について調べていると、「推定相続人」、「法定相続人」、「相続人」と、似たような言葉に出くわすことがあるでしょう。

そのとき、それぞれの意味の違いを正確に理解していなければ、頭がこんがらがってしまい、相続制度に関する理解が中々進まないことが懸念されます。

この機会に、推定相続人や似た言葉についての意味を整理しておくとよいでしょう。

この記事では、推定相続人や似た言葉の意味について、分かりやすく説明するとともに、推定相続人を廃除し、相続させない方法についても説明します。

是非、参考にしてください。

[ご注意]
記事は、執筆日時点における法令等に基づき解説されています。
執筆後に法令の改正等があった場合、記事の内容が古くなってしまう場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをお勧めします。

相続順位

相続順位とは、相続権の優先順位のことです。

相続順位のことを知らなければ推定相続人について理解しにくいでしょうから、まず、相続順位について説明します。

相続順位について理解している場合は、この項目は読み飛ばして構いません。

法定相続人には、配偶者相続人と血族相続人があります。

配偶者相続人

配偶者相続人とは、被相続人(亡くなった人)の配偶者のことです。

配偶者相続人が存在する場合、配偶者相続人は必ず相続権を持ちます。

なお、内縁の妻や内縁の夫は、配偶者ではなく、相続することはできません。

血族相続人

血族相続人とは、被相続人と血縁関係にある相続人のことです。

血族相続人の優先順位

血族相続人には下表の通り優先順位があり、先順位の血族相続人が存在しない場合でなければ、後順位の血族相続人には相続権が回ってきません。

相続順位 被相続人との関係 代襲相続
第1位 あり(再代襲もあり)
第2位 直系尊属(最も親等の近い者) なし
第3位 兄弟姉妹 あり(再代襲はなし)

被相続人の子は第1位の相続順位なので、被相続人の子がいる場合は、被相続人の子が相続人となり、後順位の直系尊属や兄弟姉妹は相続人となりません。

被相続人の子(および、その代襲者)がいない場合で、被相続人の直系尊属がいる場合は、被相続人の直系尊属が相続人となります。

なお、養子、非嫡出子(婚姻関係にない男女の間の子)、離婚後に疎遠になった子も、被相続人の子ですから、すべて相続人となります。

養子に出された子の場合は、普通養子縁組の場合は実親の相続人のとなりますが、特別養子縁組の場合は実親の相続人とはなれません。

直系尊属

直系尊属とは、父母、祖父母、曽祖父母(ひいおじいさん、ひいおばあさん)のことです。

直系尊属が複数いる場合は、被相続人と最も親等が近い人が相続人となります。

父母と祖父母では父母の方が親等が近く、祖父母と曽祖父母では祖父母の方が親等が近いです。

兄弟姉妹

被相続人の子も直系尊属もいない場合で、兄弟姉妹がいる場合は、兄弟姉妹が相続します。

代襲相続

代襲相続とは、本来相続できるはずだったけども、被相続人より先に亡くなったために相続できなかった人がいた場合、その人の子が、その人の代わりに相続することです。

例えば、被相続人の子が被相続人よりも先に亡くなった場合は、「被相続人よりも先に亡くなった被相続人の子」の子(被相続人の孫)が代襲相続します。

第1順位の子が亡くなっていても、その代襲者がいる場合は、次順位の直系尊属は相続できません。

なお、代襲者も亡くなっていて、代襲者の子が相続人となる場合を再代襲と言います。

被相続人の子の代襲者である被相続人の孫も亡くなっていて、その子である被相続人の曾孫が相続する場合が再代襲です。

再代襲は、兄弟姉妹には認められていません。

つまり、兄弟姉妹の子(被相続人の甥・姪)は代襲相続することができますが、被相続人の甥・姪の子(被相続人の大甥・大姪)は再代襲して相続人となることはできません。

推定相続人とは?

推定相続人とは、その時点において、最優先順位の相続権(代襲相続権を含みます。)を持っている人のことです。

つまり、その時点で相続が開始された場合に、相続人になると推定される人のことです。

例えば、次のような一家がいて、Bさんは2017年に、Cさんは2015年に亡くなったとします。

  • Aさん
  • Bさん(Aさんの妻):2017年死亡
  • Cさん(Aさんの子):2015年死亡
  • Dさん(Cさんの子)

この場合、2014年時点におけるAさんの推定相続人は、Bさん、Cさんの2人です。

2016年時点におけるAさんの推定相続人は、Bさん、Dさん(代襲相続)の2人です。

2018時点におけるAさんの推定相続人は、Dさんだけとなります。

推定相続人と法定相続人、相続人との違い

法定相続人とは?

推定相続人と似た言葉に法定相続人という言葉があります。

法定相続人とは、民法に規定された相続人のことです。

ある人が亡くなったときに、その人とどういう関係の人が相続人になるかについては、前述の通り、民法に規定されています。

推定相続人と法定相続人とでは、時系列が異なります。

推定相続人は相続開始前法定相続人は相続開始後です。

相続開始前のある時点において、その時に相続が開始されたとしたら相続人になる人が、その時点における推定相続人です。

しかし、推定相続人は、推定相続人でなくなることがあります。

例えば、次のような場合に、推定相続人は推定相続人でなくなります。

  • 相続開始前に推定相続人が死亡した場合
  • 相続開始前に推定相続人が失踪宣告を受けた場合
  • 推定相続人の廃除請求が認められた場合
  • 推定相続人が相続欠格事由に該当する場合

このような事情がないまま相続が開始され、法定相続人が確定した時に、推定相続人は法定相続人になります。

なお、失踪宣告については「失踪宣告の手続の流れと注意点、失踪者が見つかった場合の取消方法」をご参照ください。

相続人とは?

また、推定相続人でも法定相続人でもなく、単に「相続人」とよばれる場合もあります。

単に「相続人」と言う場合は、時系列が法定相続人よりも後の場合です(ただし、民法上では、法定相続人も含めて単に「相続人」という言葉が使われていますのでご注意ください。)。

法定相続人であっても、相続放棄をした場合は、相続人とはなりません。

法定相続人が、相続を承認するか、相続放棄をせずに熟慮期間が過ぎた場合は、相続人となります。

なお、相続放棄について詳しくは「相続放棄によって借金を相続しないようにする方法と相続放棄の注意点」をご参照ください。

推定相続人に相続させないようにするには?

相続させたくない推定相続人がいる場合に、その人が相続できないようにする方法について説明します。

前述の通り、推定相続人の廃除請求が認められた場合や、推定相続人が相続欠格事由に該当する場合は、その推定相続人は相続人となることはできません。

推定相続人の廃除

推定相続人の廃除の原因には、次のものがあります。

  • 被相続人に対する虐待
  • 被相続人に対する重大な侮辱
  • その他の著しい非行

これらのいずれかに当たる場合は、推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができます。

推定相続人の廃除を請求するには、次の2つの方法があります。

  • 被相続人が生前に請求する
  • 被相続人が遺言で廃除する意思を表示する

つまり、被相続人以外の人の意思で廃除を請求することはできません。

被相続人は、遺留分すらも渡したくない推定相続人がいる場合に、廃除を請求します。

なお、遺言で廃除の意思が表示された場合は、遺言執行者が家庭裁判所に請求します。

この場合、遺言執行者は必須です。

遺言執行者の選任は遺言で行うことができますが、遺言で行われていない場合は、家庭裁判所に選任を申し立てることができます。

遺言執行者について詳しくは「遺言執行者とは?どんな場合に必要?遺言執行者の選び方と役割、報酬」をご参照ください。

なお、廃除の取消を請求することもできます。

廃除の取消についても同様に、被相続人が家庭裁判所に請求するか、遺言で廃除の取消の意思を表示する方法によって行います。

遺言で廃除の取消が表示された場合は、やはり遺言執行者が家庭裁判所に廃除の取消を申し立てます。

相続欠格

相続欠格者になるのは次のいずれかに当たる場合です。

  1. 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
  2. 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
  3. 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
  4. 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
  5. 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

相続欠格事由に当たることを本人が認めている場合は、争いが再燃することがないように、欠格者であることの証明書を作成すると良いでしょう。

反対の立場からいうと、欠格者であることの証明書に署名、押印すると、欠格者として相続人であると主張することが難しくなるので、応じるかどうかは慎重に判断すべきです。

本人が認めていなくても、欠格事由に当たることが訴訟で認定され、その判決が確定した場合は、欠格者を相続人として扱う必要はありません。

推定相続人の判定が必要なケース

相続時精算課税を選択する場合の要件として、贈与時において、受贈者(贈与を受ける人)が贈与者の推定相続人であることが求められます(ただし、受贈者が贈与者の孫の場合は、受贈者が贈与者の推定相続人でなくても構いません)。

例えば、養子縁組を行っていない事実上の養子は、義父母の推定相続人ではないので、義父母からの贈与について、相続時精算課税を選択することはできません。

ただし、贈与時に推定相続人であれば、贈与後に養子縁組を解消したとしても、その贈与者からの贈与については、その後も相続時精算課税を選択することができます。

相続時精算課税について詳しくは「相続時精算課税制度を迂闊に利用して大損しないために知るべきこと」をご参照ください。

まとめ

以上、推定相続人について説明しました。

相続の用語や制度には分かりにくいものもありますが、そのままにせずに一つ一つ理解していくことが重要です。

ウェブで調べることも有用ですが、弁護士に相談してみるのも良いでしょう。

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