贈与税の基礎控除を最大限に活用⁉非課税で贈与するための重要知識
[ご注意]
記事は、公開日(2019年8月23日)時点における法令等に基づいています。
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贈与税の基礎控除
贈与税の課税方式には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあり、贈与を受けた人が、どちらの方式で贈与税を計算するかを贈与者ごとに贈与税の申告時に選択することができます(ただし、一度、相続時精算課税を選択した贈与者からの贈与については翌年以降暦年課税を選択することはできません)。 年間110万円の基礎控除の適用を受けることができるのは、暦年課税方式を選択した場合のみです。 相続時精算課税については以下の記事で詳しく説明しています。暦年課税
暦年課税方式では、贈与税は、一人の人が1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。 つまり、3人の子供に、年間110万円ずつ20年間にわたって贈与すると、110万円×20年×3人=6600万円となり、子供たちに合計6600万円を税負担なく譲り渡すことできます。 ただし、複数人から贈与を受けた場合でも、基礎控除額は110万円で変わりありません。 例えば、同じ年に、父と母からそれぞれ100万円の贈与を受けた場合、100万円+100万円-110万円=90万円となり、90万円に対して贈与税がかかります。 また、贈与税の対象となる財産は、金銭だけではありません。 経済的な価値のある財産であれば、基本的に贈与税の対象となります。 贈与税の計算の基礎となる財産の評価は、「相続税評価額」によって行われます。 相続税評価額については以下の記事で詳しく説明しています。 そして、金銭以外の財産を贈与した場合も、基礎控除の適用を受けることができます。 例えば、相続税評価額が1000万円の土地の贈与を受けた場合、「1000万円-110万円=890万円」が、贈与税の課税価格となります。 なお、土地の場合は、評価額が110万円を超えることが多いと思われますが、その場合でも、持分を分けて贈与することによって、1年間当たりの贈与額を110万円以下に抑えることができます。 例えば、評価額が2200万円の土地であれば、20分の1ずつの持分を毎年贈与することで、贈与税がかからなくなります。 しかし、贈与契約書を毎年作成して贈与しても、贈与による持分の変動を毎年登記しなければ、贈与の成立を税務署に認めてもらうことは難しいでしょう。 贈与の成立が認められなければ、贈与したつもりの土地の所有権は元の所有者の元に留まったままであり、相続が開始されれば相続税の対象となってしまいます。 かといって、毎年贈与契約書を作成して持分変動を登記するとなると、司法書士報酬・登記費用等それなりの費用と手間がかかります。 税理士に相談のうえ、検討するとよいでしょう。 なお、暦年課税の基礎控除の適用を受けて贈与することを「暦年贈与」といいます。相続開始前3年以内の贈与は相続税がかかる
贈与を受けた財産については、原則として、贈与税が課されます(暦年課税の場合) しかし、相続又は遺贈により財産を取得した者に対して、亡くなる前の3年間に行われた贈与は、相続税の計算に足し戻されるため、相続税が課されます。 このときに足し戻す額は、基礎控除後の課税価格ではなく、基礎控除前の贈与財産の価額です。 なお、既に贈与税を支払っている場合は、相続税も課されることとなり、贈与税と相続税の2重課税となってしまいます。そこで、相続税の税額から既に支払った贈与税の税額を差し引いた額を相続税として納めればよいこととなっています。 ただし、贈与税として支払った金額が、課されるべき相続税よりも大きかったとしても、差額の贈与税は還付されません。 なお、相続開始前3年以内に贈与された財産であっても、次の財産については相続税の計算に足し戻す必要はありません。- 贈与税の配偶者控除の特例を受けている又は受けようとする財産のうち、その配偶者控除額に相当する金額
- 直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金のうち、非課税の適用を受けた金額
- 直系尊属から一括贈与を受けた教育資金のうち、非課税の適用を受けた金額遺産相続弁護士ガイド遺産相続弁護士ガイド
https://isansouzoku-guide.jp/kyouiku-shikin-zouyo遺産相続弁護士ガイド - 直系尊属から一括贈与を受けた結婚・子育て資金のうち、非課税の適用を受けた金額
贈与税の基礎控除が受けられないケース
暦年贈与の基礎控除を利用して非課税で贈与を受けたつもりでも、税務署から暦年贈与と認めてもらえず、課税されてしまう場合があります。 課税されてしまう主なケースには次の2つがあります。- 贈与を税務署に認めてもらえず、相続時に相続税が課せられる
- 暦年贈与ではなく連年贈与として扱われる
贈与を税務署に認めてもらえず、相続時に相続税が課せられる
贈与を税務署に認めてもらえないケース
次のような場合は、税務署に贈与があったとは認めてもらえない可能性があります。- 贈与について双方の同意がない場合
- 贈与が履行されていないと判断される場合
贈与について双方の同意がない場合
贈与は契約であり、双方の意思の合致により贈与契約が成立します。 つまり、贈与者が贈与の意思を表示し、受贈者が受贈の意思を表示していなければ、贈与契約は成立しません。 したがって、親が子に知らせずに勝手に入金したような場合は、贈与が成立していないと判断される可能性があります。贈与が履行されていないと判断される場合
贈与が履行されていないと判断される場合も、贈与があったと税務署に認めてもらえない可能性があります。 例えば、次のような場合には、贈与が履行されていないと判断される可能性があります。- 入金先の口座を贈与者が管理している場合
- 名義変更していない場合
贈与の事実が認められないと相続時に相続税が課せられる
贈与があったと認められないということは、子供名義の口座にあるお金でも、実態は親のお金のままということです。 親が亡くなって相続が発生した場合、その子供名義の口座のお金も相続財産となり、相続税の課税対象となります。暦年贈与ではなく連年贈与として扱われる
暦年贈与ではなく連年贈与として扱わると、課税される可能性があります。 連年贈与とは、複数の年に分割して履行された一つの贈与のことです。 例えば、2200万円の贈与をする約束をして毎年110万円ずつ20年間にわたって履行したような場合は連年贈与になります。 連年贈与は、約束をした年か最初の履行があった年にまとめて課税されます。 1年間に控除できる金額は110万円なので、連年贈与としてまとめて課税されると贈与税がかかってしまいます。贈与税の基礎控除を税務署に認めてもらうための対策
以上のとおり、暦年贈与を受けたつもりでも、連年贈与だと判断されたり、そもそも贈与が有効に行われていないと判断された場合は、課税対象となってしまいます。 暦年贈与を税務署に認めてもらうためには、次のような対策が有効です。- 贈与契約書を作成する(確定日付つき)
- 受贈者が管理している口座に振り込む
- 登記や登録の制度のある財産については名義を変更する
贈与契約書を作成する(確定日付つき)
贈与契約書を作成することによって、贈与について双方の同意があったことを証明することができます。 毎年贈与する場合は、毎年契約書を作成することによって、連年贈与ではなく暦年贈与だということが証明しやすくなります。 契約書には、記名と押印が必要ですが、その際に、自筆で署名し、かつ、実印で押印すると、本人が契約を締結したことを証明しやすくなります。 贈与契約書のひな形は「贈与契約書の注意点とすぐに使える豊富な種類のひな形一覧(Word、PDF)」でダウンロードすることができます。 是非、ご活用ください。 また、公証役場で確定日付を付してもらうことによって、その日にその契約書が存在していたことを証明することができ、バックデートで契約書を作成したのではないかと疑われることを避けることができます。 公証役場は全国にあります。 日本公証人連合会の公証役場一覧ページからお近くの公証役場を探すことができます。受贈者が管理している口座に振り込む
前述の通り、入金先の口座の通帳、届印、キャッシュカードを贈与者が管理していた場合、たとえ、名義が受贈者のものであっても、贈与が履行されたとは認められない可能性があります。 受贈者が管理している口座に入金するようにしましょう。登記や登録の制度のある財産については名義を変更する
不動産、自動車、船舶、有価証券といった登記や登録の制度がある財産については名義変更をします。贈与税の計算方法
贈与税の計算方法については以下の記事で詳しく説明しています。まとめ
以上、贈与税の基礎控除について説明しました。 贈与税の基礎控除を最大限に活用して、無駄なく節税するためには、贈与税に精通した税理士に一度相談してみることをお勧めします。この記事を書いた人
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