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相続欠格とは?相続欠格事由とは?判例に基づいてわかりやすく説明

相続欠格とは?相続欠格事由とは

相続で不正をした人が、他の相続人と同じように相続するのは許せませんよね。

そんなとき相続欠格という制度によって相続人や受遺者(遺言によって遺産を受け取れる人)になれないようにすることができます。

どのような理由があれば、相続欠格になるのでしょうか?また、相続欠格者がいたときの相続手続きはどうすれば良いのでしょうか?

今回は、そのような疑問に答えていきます。相続欠格についての正しい知識を身に着けて、財産を渡さないための作戦を立てましょう。

相続問題でお悩みの方はまずは弁護士にご相談ください

[ご注意]
記事は、公開日(2018年12月7日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。

相続欠格とは?

相続欠格とは、ある人の相続に関して不正をはたらいた人などについて、その相続について相続人や受遺者(遺言によって遺産を受け取る人)になることをできなくする制度です。

相続欠格事由とは?

相続欠格事由とは、これに該当する場合は相続欠格者として相続人や受遺者になることができなくなる事由のことで、以下のとおり民法に定められています。

民法891条

次に掲げる者は、相続人となることができない。

一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者

二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。

三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者

四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者

五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

この中のどれか一つにでも該当する場合は、相続人や受遺者になることができなくなります。

相続欠格事由の各号について、以下、説明します。

一号

「故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者」と定められています。

これは、被相続人(亡くなって財産を引き継ぐ人)や相続順位が先順位や同順位の他の相続人に対する殺人や殺人未遂、殺人予備で有罪判決が確定した人を指しています(執行猶予期間中の人と執行猶予期間が満了した人は除かれると考えられています。)。

読んでいて怖くなるぐらい悪い人ですね。

被相続人を殺しておいてその遺産を相続するなんて許されるはずがないので、相続人になれなくて当然でしょう。

相続について先順位若しくは同順位にある者

「先順位」、「同順位」という言葉が出てきたので、相続順位について説明します。

相続順位は下表のようになっています。

第一順位 子(代襲者、再代襲者を含む)
第二順位 直系尊属
第三順位 兄弟姉妹(代襲者を含む)

第一順位の子がいない場合は、第二順位の直系尊属、直系尊属がいない場合は兄弟姉妹が法定相続人(民法で定められた相続人)となります。

配偶者は必ず法定相続人となり、法定相続人となる者がいるときは、その者と同順位となります。

代襲者と言うのは、例えば、被相続人の子が被相続人よりも先に亡くなった場合に、被相続人よりも先に亡くなった子の子(被相続人の孫)が先に亡くなった子を代襲して相続することになるのですが、このように代襲して相続する人のことを代襲者または代襲相続人と言います。

また、孫も被相続人よりも先に亡くなっていた場合は曽孫が孫を代襲して相続人になるのですが、このように代襲者をさらに代襲する人のことを再代襲者または再代襲相続人と言います。

子の相続人としての立場は、孫、曽孫、玄孫と、延々と再代襲することが可能です。

子もその代襲者もいない場合は、直系尊属が法定相続人となりますが、直系尊属とは、父母、祖父母等の直接の祖先のことです。

直系尊属もいない場合は、兄弟姉妹が法定相続人です。

兄弟姉妹の立場も代襲することができ、その場合は、被相続人の甥・姪が法定相続人となります。

兄弟姉妹の再代襲はできません。

以上が相続順位の説明です。

「先順位」とは自分よりも先の順位、つまり、被相続人の直系尊属にとっては、被相続人の子やその代襲者、被相続人の兄弟姉妹やその代襲者にとっては、被相続人の子、その代襲者、被相続人の直系尊属が、先順位にある者に当たります。

続いて、「同順位」について説明します。

配偶者にとっては、血族相続人(子(代襲者含む)、直系尊属、兄弟姉妹(代襲者含む))は必ず同順位になります。

血族相続人にとっても配偶者相続人は必ず同順位になります。

子にとっては、被相続人の他の子(自分から見て兄弟姉妹)やその代襲者も同順位です。

故意に、死亡するに至らせ、又は至らせようとした

故意に死亡するに至らせたとは、端的に言うと、殺したということです。

傷害致死、遺棄致死、過失致死は含まれません。

故意に死亡するに至らせようとしたとは、殺人未遂や殺人予備があったということです。

この場合の予備とは、犯罪の準備行為を指します。

殺人の目的で凶器や毒物を購入したといった行為が殺人の予備に該当する可能性があります。

刑に処せられた

刑に処せられたとは、実刑判決が確定したこと等を指します。

罰金刑でも刑に処せられたことになりますが、殺人罪で罰金刑はありません。

執行猶予の付かない実刑判決が確定した時と、執行猶予が取り消された時に、刑に処せられたことになります。

執行猶予期間中と執行猶予期間満了の場合は刑に処せられたことにはならないと考えられています。

なお、実刑判決が確定するまでは相続欠格になりませんが、判決が確定し相続欠格になったら、相続開始時に遡って相続欠格の効果が生じます。

つまり、相続欠格者は元々相続人となることができなかったことになります。

相続に関して不当な利益を目的としているか

この号に該当するような行為があったとしても、相続に関して不当な利益を目的とするものではなかったときは、相続欠格者には当たらないと解釈する専門家もいます。

二号

「被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。」と定められています。

告発も告訴も、捜査機関に対して犯人の処罰を求める意思表示のことです。

被害届の提出は告発や告訴ではないので、ご注意ください。検察官が被疑者(犯罪の嫌疑を掛けられている人)を起訴すれば、告発や告訴をする必要がないので、その場合は、告発や告訴をしていなくても、二号に該当しません。

また、「是非の弁別がないとき」とは、年齢的に未熟であったり、精神疾患があったり、知的障害があったり、認知症であったりして、殺害されたことを知ったら告発や告訴をすべきであるということが分からない場合のことを指します。

直系血族とは、祖父母、父母、子、孫などのことです。

三号

「詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者」と定められています。

詐欺とは、欺いて勘違いさせることです。

強迫とは、肉体的・精神的に追い詰めて怖がらせることです。

また、「相続に関する遺言」とありますが、遺言は、大抵、相続に関することなのですが、中には付言事項と言って、「兄弟仲良くしなさい」というような、相続に関係のない内容も含まれます。

相続に関しない付言事項を書こうとすることを妨げたとしても三号に該当しません。

なお、一号と同様に、この号に該当するような行為があったとしても、相続に関して不当な利益を目的とするものではなかったときは、相続欠格者には当たらないと解釈とする専門家もいます。

四号

「詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者」とあります。

三号は「妨げた者」について定めていましたが、こちらは「させた者」について定めています。

また、一号、三号と同様に、この号に該当するような行為があったとしても、相続に関して不当な利益を目的とするものではなかったときは、相続欠格者には当たらないと解釈する専門家もいます。

五号

「相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者」とあります。

遺言書の偽造とは、名義を偽って被相続人名義の遺言書を作成することです。

遺言書の変造とは、被相続人の遺言書に変更を加えることです。

遺言書の破棄とは、遺言書を破いたり、捨てたり、燃やしたりして、遺言書の効力を消滅させることです。

遺言書の隠匿とは、遺言書を隠して、遺言書の発見を妨げることです。

この号に該当するような行為があったとしても、相続に関して不当な利益を目的とするものではなかったときは、相続欠格者には当たりません。

一号、三号、四号では、そのように解釈する専門家もいるという話ですが、五号については、このことを示した判例があります(最高裁平成9年1月28日第三小法廷判決)。

したがって、例えば、遺言書の形式不備を発見して、遺言者の意思を実現するために、不備を是正したというような場合は、相続欠格者にはなりません(最高裁昭和56年4月3日第二小法廷判決)。

また、公正証書遺言の正本を託されていた相続人が、他の相続人に遺言書の存在と内容を告げないまま遺産分割協議を成立させた事案で、遺言書の存在を知っている相続人が他にもいたこと、遺言執行者がいたことなどの事情から、公正証書遺言の存在と内容を告げないだけでは、隠匿には当たらないと判示した事例もあります(最高裁平成6年12月16日第二小法廷判決)。

相続欠格者は遺留分も認められない

相続欠格者は相続人となることができないので、遺留分も認められません。

遺留分とは、一定の相続人のために、相続に際して、法律上取得することを保障されている相続財産の一定の割合のことで、被相続人の贈与や遺贈(遺贈によって財産を贈ること)によっても奪われることのないもののことです。

相続欠格者の代襲相続はできる

相続欠格者の代襲者が相続欠格者の元々の相続人のとしての立場を代襲して相続することは可能です。

相続欠格者の宥恕は可能か?

相続欠格者を被相続人となる人が生前に宥恕(ゆうじょ。赦すこと)することは可能なのでしょうか?

この点、専門家の間でも見解が分かれていたのですが、最近、宥恕できるとした裁判例が示されました(広島家裁呉支部平成22年10月5日審判)。

この裁判例によって、宥恕を受ければ相続欠格者ではなくなることがあり得ることが示されましたが、宥恕を受ければ必ず相続欠格者ではなくなるかと言うと、そこは事案ごとの判断になるでしょう。

専門家の間でも見解の分かれる難しい判断ですので、相続欠格者が宥恕を受けたことを主張している場合は、相続に強い弁護士を探して早めに相談した方がよいでしょう。

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相続欠格者であることは戸籍には記載されない

相続欠格者であることは戸籍には記載されません。

相続欠格者がいる場合の相続手続と、相続欠格者であることの証明書・確認方法

前述の通り、相続欠格者であっても、そのことは戸籍には記載されません。

したがって、相続登記等の相続手続きの際に、戸籍謄本を提出したところで、相続欠格の証明にはなりません。

法定相続人の中に相続欠格者がいる場合は、相続手続きの際に、次のいずれかを添付することになります。欠格者自身が作成した民法第891条所定の欠格事由が存する旨を記した証明書と、相続欠格者の印鑑証明書が必要になります。

  • 欠格者自身が作成した民法第891条所定の欠格事由が存する旨を記した証明書(相続欠格者の印鑑証明書付き)
  • 欠格事由を証する確定判決の謄本(確定証明書付き)

欠格者が欠格者であることを認めている場合は、上の証明書で対応した方が手っ取り早いでしょう。

証明書作成の際は、以下の雛形を参考にしても構いません。

相続欠格証明書

私、○○○〇は、被相続人○○○○(20**年**月**日死亡)の相続に関し、民法891条第○号に規定する欠格者に該当する。

以上のとおり、相違ないことを証明します。

平成〇〇年〇〇月〇〇日

〇〇県〇〇市○○町〇丁目〇番〇号

○○○○ 実印

印は実印でなくてはなりません。

相続欠格者の印鑑証明書の添付が必要です(証明書に押印したものと同じでなくてはなりません)。

欠格者が欠格者であることを認めず、証明書の作成に協力しない場合は、「欠格事由を証する確定判決の謄本」によって証明することができます。

「欠格事由を証する確定判決の謄本」には、刑事か民事の次の2つの種類があります。

  • 当該欠格者の相続権不存在を確認する判決の謄本(民事)
  • 当該欠格者に民法第891条各号の一に該当する刑事裁判がされている場合の裁判所の謄本(刑事)

確定判決の謄本には、確定証明書の添付が必要です。

一号事由に該当する場合は刑事判決が下りますが、二号から五号事由の場合は刑事事件でないケースの方が多いでしょうから、その場合は、相続権不存在確認訴訟を起こす必要があります。

なお、遺産分割調停や遺産分割審判では、相続欠格事由の該当性や相続権の不存在は判断できません。

相続権不存在確認訴訟の提起を検討する場合は、相続に強い弁護士を探して早めに相談しましょう。

相続欠格者が相続してしまっている場合の対処法

相続欠格事由に該当する場合は、相続開始時に遡って、相続欠格の効果が生じます。

しかし、相続欠格事由に該当することが明らかになった時には既に欠格者が相続してしまっていることもあります。

そのような場合、真正な相続人は相続財産を取得した欠格者に対して相続回復請求をすることができます。

具体的には、相続した財産の引渡を求めたり、所有権移転登記抹消登記を求めたりします。

欠格者が相続回復請求に応じない場合は、訴訟などを提起して、その訴訟の中で被告が相続欠格事由に該当することを主張していくことが考えられます。

欠格者が請求に応じない場合は、相続に強い弁護士を探して早めに相談しましょう。

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推定相続人の廃除と相続欠格の違い

推定相続人の廃除とは、遺留分をもつ推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき人)が、被相続人に対して虐待をしたり、重大な侮辱を加えたり、著しい非行があった場合に、被相続人が、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することによって、推定相続人の持っている遺留分を含む相続権を剥奪する制度です。

相続欠格とは、該当する事由が異なるという違いはありますが、ほかにも制度的な違いもあります。

両者の制度的な違いをまとめると下表のようになります。

相続欠格 推定相続人の廃除
被相続人の意思表示 不要 必要
家庭裁判所の審判 不要 必要
取消し 両説あり できる
戸籍 記載なし 記載あり
確認・証明 欠格者作成の証明書・確定判決謄本 戸籍謄本・全部事項証明書

なお、遺留分も剥奪されるが、代襲相続は可能という点は、両者の共通です。

廃除について詳しくは、関連記事をご覧ください。

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この記事を書いた人

株式会社鎌倉新書 いい相続

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