弁護士監修記事

相続廃除の意味とは?排除は誤字!推定相続人の廃除で遺留分をなくす

相続廃除とは、どういう制度なのでしょうか?

財産を残す人にとっては、例えば虐待してくるような相続人に、財産を与えないための手段となる制度です。

相続人にとっては、廃除されてしまうと遺留分すらもらえなくなってしまう恐ろしい制度です。

また、廃除された相続人の共同相続人にとっては、廃除によって自分の相続分が増えるかもしれない制度です。

いずれの立場の人にとっても、必ず知っておくべき重要な制度です。

この記事では、廃除に関する様々な知識を網羅的にわかりやすくお伝えします。

是非、参考にしてください。

[ご注意]
記事は、執筆日時点における法令等に基づき解説されています。
執筆後に法令の改正等があった場合、記事の内容が古くなってしまう場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをお勧めします。

相続廃除の意味とは?「排除」ではなく「廃除」!

相続廃除(はいじょ)とは、遺留分をもつ推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき人)が、被相続人(亡くなった人)に対して虐待をしたり、重大な侮辱を加えたり、著しい非行があった場合に、被相続人が、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することによって、推定相続人の持っている遺留分(一定の相続人のために、相続に際して、法律上取得することを保障されている相続財産の一定の割合のことで、被相続人の贈与や遺贈(遺言によって財産を贈ること)によっても奪われることのないもの)を含む相続権を剥奪する制度のことです。

ちなみに、インターネット等で廃除について調べていると、「廃除」のことを「排除」と記述しているサイトに出くわすことがありますが、「排除」は誤字で、正しくは「廃除」です。

「排除」とは、法律用語ではなく一般用語で、押しのけて取り除くという意味です。

廃除された推定相続人は遺留分が無くなる

特定の推定相続人に遺産を渡したくないのであれば、遺言によって、全財産を遺贈したり、相続分の指定を行うことによって、特定の法定相続人に遺産を渡さないことができます(推定相続人と法定相続人の違いについては「推定相続人とは?法定相続人や相続人との違いと推定相続人の廃除方法」の「推定相続人と法定相続人、相続人との違い」の項目参照)。

しかし、遺贈によって、遺産を受け取れなかった法定相続人は、遺留分減殺請求によって、遺留分を取り戻すことができます(遺留分減殺請求については「遺留分減殺請求で相続財産を取り戻す方法と遺留分減殺請求の排斥方法」参照)。

一方、廃除された推定相続人は、遺留分減殺請求権も含めて相続権が剥奪されるため、遺留分すらも手に入れることができません。

したがって、遺留分すらも渡したくない推定相続人は、遺言によって相続させない方法でなく、廃除によって遺留分も含めた相続権を剥奪すべきでしょう。

廃除された推定相続人の代襲相続はできる

廃除された推定相続人の代襲者が相続欠格者の元々の相続人のとしての立場を代襲して相続することは可能です。

代襲者と言うのは、例えば、被相続人の子が被相続人よりも先に亡くなった場合に、被相続人よりも先に亡くなった子の子(被相続人の孫)が先に亡くなった子を代襲して相続することになるのですが、このように代襲して相続する人のことを代襲者または代襲相続人と言います。

また、孫も被相続人よりも先に亡くなっていた場合は曽孫が孫を代襲して相続人になるのですが、このように代襲者をさらに代襲する人のことを再代襲者または再代襲相続人と言います。

子の相続人としての立場は、孫、曽孫、玄孫と、延々と再代襲することが可能です。

推定相続人の廃除が認められるための要件

推定相続人の廃除について、民法には次のように定められています。

民法892条
遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

条文を元に、廃除が認められるための要件について説明します。

推定相続人の廃除は、遺留分を有する推定相続人について、家庭裁判所に請求して行わなければなりません。

遺留分を有していない推定相続人に遺産を渡したくないのであれば、遺言による方法で実現できるので、わざわざ廃除する必要はないため、廃除の対象を遺留分を有する推定相続人に限定しているのです。

遺留分を有する推定相続人は、被相続人の妻、子(および、その代襲相続人)、直系尊属(父母、祖父母、曽祖父母等のこと)です。

兄弟姉妹(および、その代襲相続人)は、遺留分を有していません。

推定相続人の廃除は、次の要件を満たすときに認められます。

  • 推定相続人が被相続人に対して虐待をしたとき
  • 推定相続人が被相続人に重大な侮辱を加えたとき
  • 推定相続人に著しい非行があったとき

虐待とは、一般的な意味で考えて差し支えないのですが、肉体的、精神的に、耐え難い苦痛を与えることです。

侮辱とは、これも一般的な意味で考えて差し支えないのですが、人の名誉や感情を害するような言動を行うことです。

「重大な」と付いているので、この要件を満たすためには、侮辱の程度が重大でなくてはなりません。

その他の著しい非行とは、虐待や侮辱以外で、被相続人に対して損害や精神的な苦痛を与える行為であって、虐待や重大な侮辱に匹敵する程度のもののことです。

被相続人に向けられた行為でなくても構いません。

廃除が認められた事例

廃除が認められた事例を、実親子、夫婦、養親子に分けて紹介します。

実親子間で廃除が認められた事例

実親子間の場合、推定相続人の言動が家族間の共同生活を破壊する程度である場合は、廃除が認められる傾向にあります。

具体的には、次のような事例で廃除が認められたことがあります。

  • 多額の借金を親に肩代わりさせた(肩代わりした金額、借金をした経緯、取り立てによる精神的苦痛、被相続人の生活状況等を総合考慮)
  • 継続的に親に暴言を吐いていた(実例として「千葉に行って早く死ね、80まで生きれば十分だ」)
  • 犯罪を犯して迷惑をかけた(罪の性質、前科前歴、罪を犯した時点での年齢、被害弁償等のため被相続人が支出した費用負担、謝罪等による精神的負担等を総合考慮)
  • 親の反対を無視して暴力団員と結婚をした
  • 親の介護をしなかった(介護を必要とする事情、被相続人・相続人の従来の生活関係、相続人の財産状況等を総合考慮)
  • 不当に親の会社を乗っ取った

夫婦間で廃除が認められた事例

夫婦間の場合、推定相続人の言動が、婚姻を継続しがたい重大な事由と同程度以上である場合は、廃除が認められる傾向にあります。

具体的には、次のような事例で廃除が認められたことがあります。

  • 長期にわたる浮気、駆け落ち
  • 妊娠中絶の強制
  • 継続的な激しい暴力
  • 継続的な暴言(実例として「気狂い」「年上の女に用がない」)
  • 預金を無断で引き出して着服した

ところで、婚姻を継続しがたい重大な事由がある場合、廃除よりも離婚の手続きがとられることが多いでしょう。

廃除の場合は、相続権だけですが、離婚の場合は、相続権だけでなく、扶養の権利義務もなくなります。

養親子間で廃除が認められた事例

養親子間の場合、推定相続人の言動が、縁組を継続しがたい重大な事由と同程度以上である場合は、廃除が認められる傾向にあります。

具体的には、次のような事例で廃除が認められたことがあります。

  • 不動産を無断で売却し移転登記
  • 著しい忘恩行為(居宅・賃貸用家屋の贈与を受けておきながら扶養をしない等)
  • 縁組が形骸化していて養親子関係の実体がない

縁組を継続しがたい重大な事由がある場合、廃除よりも離縁の手続きがとられることが多いでしょう。

廃除の場合は、相続権だけですが、離縁の場合は、相続権だけでなく、扶養の権利義務もなくなります(離縁について詳しくは「養子縁組を解消する方法と養子縁組の解消で損しないためのお金の話」参照)。

推定相続人の廃除の手続き

民法891条に定める廃除原因があるからといって、自動的に廃除されるわけではありません。

推定相続人を廃除するためには、次の手続きが必要です。

  • 推定相続人廃除審判申立
  • 推定相続人廃除届

以下、それぞれについて説明します。

推定相続人廃除審判

推定相続人廃除審判申立は、被相続人が生前に自分で行っても構いませんし(生前廃除)遺言書に廃除する旨を記載すると共に遺言執行者を指定しておき、相続開始後、遺言執行者が行っても構いません(遺言廃除)(遺言執行者について詳しくは「遺言執行者とは?どんな場合に必要?遺言執行者の選び方と役割、報酬」参照)。

遺言廃除による場合の遺言書の記載例を以下に示します。

遺言書

遺言者○○○○は、次の通り遺言をする。

 

第1条 遺言者は、遺言者の長男○○○○(昭和**年**月**日生)を、下記の原因により、相続人から廃除する。

 

廃除の原因:

 

第2条 遺言者は、本遺言の執行者として、二男○○○○(昭和**年**月**日生)を指定する。

 

平成**年**月**日

○○県○○市○○町〇丁目〇番〇号

遺言者 ○○○○ 印

記載例では、廃除についての条項と遺言執行者の指定についての条項だけ記載していますが、相続分の指定についての条項など、ほかの条項を記載しても構いません。

家事審判手続では、調停前置主義といって、原則として、民事訴訟を提起する前に調停手続を行うことになっていますが、推定相続人廃除については、調停前置主義はとられず、調停を経ずに審判が行われます。

廃除か廃除ではないかという二者択一になるので、妥協案的な着地点を見つけ出すこともできず、調停に付したところで成立が通常見込めないためです。

また、推定相続人廃除審判申立の手続きは、生前廃除でも遺言廃除でも大きな違いはありません。

申立先は、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所です。

全国の家庭裁判所の管轄区域は、裁判所ウェブサイトの「裁判所の管轄区域」のページから調べることができます。

申立書に次の書類等を添付して提出します。

  • 生前の場合、申立人(被相続人)の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 遺言による場合、遺言者の死亡が記載された戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本(全部事項証明書)
  • 相手方の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 遺言による場合、遺言書写し又は遺言書の検認調書謄本の写し
  • 遺言による場合で家庭裁判所で選任された遺言執行者が申し立てる場合、執行者選任の審判書謄本

申立書の用紙は家庭裁判所で入手することができます。

申立てに必要な費用は800円分の収入印紙と、裁判所からの連絡用の郵便切手代(裁判所によって異なりますが、1000円~4000円程度)です。

審判が下ると審判書謄本と確定証明書の交付を受けることができます。

推定相続人廃除届

推定相続人廃除の審判が下ったら、次は、推定相続人廃除届を提出します。

届出人は、生前廃除の場合は廃除した人(後に被相続人となる人)で、遺言廃除の場合は遺言執行者です。

届出先は、廃除される推定相続人の本籍地または届出人の住所地の市区町村役場です。

審判確定の日から10日以内に届け出なければなりません。

次のものが必要です。

  • 推定相続人廃除届書
  • 審判書謄本
  • 確定証明書
  • 届出人の印鑑(認印可で、シャチハタ不可の場合が多い)

推定相続人廃除届書の用紙は市区町村の役場で入手可能ですが、こちらからダウンロードして印刷して利用しても構いません。

印刷の際はA4サイズで印刷してください。

また、記入の際は以下の春日部市作成の記入例が参考になるでしょう。

推定相続人の廃除を受けた人の戸籍

推定相続人の廃除を受けた人の戸籍(全部事項証明書)には、身分事項の欄に「推定相続人廃除」と記載され、その右の欄に【推定相続人廃除の裁判確定日】【被相続人】【届出日】【届出人】【届出を受けた日】【受理者】が記載されます。

このように、戸籍を見れば推定相続人の廃除を受けたことが一目瞭然なので、相続登記等の相続手続の際には、通常の手続きと同様に、法定相続人全員の戸籍謄本(または全部事項証明書)を提出すればよいのです。

廃除の取消し

被相続人はいつでも推定相続人の廃除の取消を家庭裁判所に請求することができます。

廃除の取消も、廃除と同様、生前に自分で家庭裁判所の申立てる方法と、遺言によって行う方法(遺言執行者が申立て)の2つの方法があります。

流れも同様で、推定相続人廃除取消審判申立をし、廃除取消の審判が下ったら、市区町村の役場で推定相続人廃除取消届を行います。

このように、廃除した人が、生前に廃除取消の手続きを行っていたり、廃除取消の遺言をした場合は、よいのですが、問題となるのは、廃除取消の意思はあるものの、廃除取消の手続きをしないまま亡くなってしまったり、廃除の遺言を書き換えないまま亡くなってしまった場合です(後者の場合は取消の問題ではなく、廃除申立を却下してもらえるかという問題)。

廃除取消の手続きをしないまま亡くなってしまった場合は、これを後から取消すことは極めて難しいと思われます。

一方、廃除の遺言を書き換えないまま亡くなってしまった場合は、最高裁判所の判例に「家庭裁判所は、推定相続人の行為が形式上廃除要件に該当する場合であっても、被相続人が許していたかどうか、相続人が改心しているかどうかなど、諸般の事情を総合的に考察して、廃除することが相当であるかどうか判断することができる。」(最決昭59.3.22)というものがあります。

したがって、被相続人が許していて、相続人が改心していることが証明できる場合は、廃除の申立てを却下してもらえる余地はあるものと思われます。

このような複雑な状況になった場合は、相続に強い弁護士を探して早めに相談すべきでしょう。

廃除と相続欠格との違い

廃除と似た制度に、相続欠格があります。

相続欠格とは、ある人の相続に関して不正をはたらいた人について、その相続について相続人や受遺者(遺言によって遺産を受け取る人)になることをできなくする制度で、次の事由に該当する場合に相続欠格となります。

民法891条

次に掲げる者は、相続人となることができない。

一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者

二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。

三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者

四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者

五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

このように相続欠格と廃除は、該当する事由(原因)が異なるという違いがありますが、ほかにも制度的な違いもあります。

両者の制度的な違いをまとめると下表のようになります。

相続欠格 推定相続人の廃除
被相続人の意思表示 不要 必要
家庭裁判所の審判 不要 必要
取消し 両説あり できる
戸籍 記載なし 記載あり
確認・証明 欠格者作成の証明書・確定判決謄本 戸籍謄本・全部事項証明書

なお、遺留分も剥奪されるが、代襲相続は可能という点は、両者の共通です。

相続欠格について詳しくは「相続欠格とは?相続欠格事由とは?判例に基づいてわかりやすく説明」をご参照ください。

まとめ

以上、推定相続人の廃除について説明しました。

廃除に当たるかどうかでトラブルになった場合は、相続に強い弁護士を探して早めに相談しましょう。

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