土地にかかる相続税の計算方法を使って相続税を節税する方法
土地を相続する際に、気になる点は以下のようなことでしょう。
相続税がいくらかかるのか。
相続税を安くする方法はないのか。
また、土地と現金ではどちらを相続するのがお得なのでしょうか。
この記事では、土地にかかる相続税の計算方法と土地を使って相続税を節税する方法について説明します。
是非、参考にしてください。
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[ご注意]
記事は、公開日(2018年10月18日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。
相続税の計算方法
相続税は、財産ごとに計算されるわけではありません。
例えば、遺産に土地と現金があったとして、土地に対する相続税と現金に対する相続税と別々に計算するのではありません。
すべての遺産に対する相続税の総額を計算し、これを相続分に応じて各相続人に按分します。
相続税の計算は、次の手順で行います。
- 遺産総額(課税価格)を算出する
- 相続税の基礎控除額を差し引いて課税対象額を算出する
- 法定相続分に基づき各法定相続人の相続税額を算出し、それらを合計する
- 相続税総額を実際の相続分に基づき按分する
- 各相続人の事情に応じて税額を増減する
遺産総額1億円の場合の計算例
例えば、遺産が6000万円の土地と4000万円の現金で、法定相続人が被相続人(亡くなって財産を残す人)の子であるAとBの2人で、Aが土地をBが現金を相続したとします。
遺産総額は6000万円+4000万円=1億円です。
基礎控除額は、「3000万円+600万円×法定相続人の数」で計算できます。
今回の基礎控除額は、法定相続人は2人なので、3000万円+600万円×2人=4200万円です。
課税対象額は、1億円-4200万円=5800万円です。
法定相続分は2分の1ずつなので、AとB、それぞれの課税対象額は5800万円×1/2=2900万円です。
これを以下の相続税の速算表に当てはめます。
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法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1000万円以下 | 10% | - |
1000万円超3000万円以下 | 15% | 50万円 |
3000万円超5000万円以下 | 20% | 200万円 |
5000万円超1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
A、B共に、「法定相続分に応ずる取得金額(各法定相続人の課税対象額)」の列が「1000万円超3000万円以下」の行を確認すればよいので、税率は15%、控除額が50万円です。
上記計算により、相続税総額は770万円となります。
これを実際の相続分に基づき按分します。
そうすると、
Aの相続税額は770万円×6000万円/1億円=462万円、
Bの相続税額は、770万円×4000万円/1億円=308万円となります。
そして、各相続人に、控除や2割加算の適用等、税額を増減する事情がある場合は、その事情に応じて計算します。
相続税の計算方法について詳しくは以下の記事で詳しくご紹介しています。
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相続税計算時における不動産の評価方法
先ほどの例では、土地の価格を6000万円としましたが、そもそも土地や建物といった不動産の価額はどのように評価すべきでしょうか。
以下、土地と建物に分けて説明します。
相続税計算時における土地の評価方法
まず、相続税の計算の土地の評価方法について説明します。
相続税評価額を使用
土地の評価方法には主に次の3つがあります。
- 実勢価格
- 相続税評価額
- 固定資産税評価額
相続税の計算の際の土地の評価には、その名の通り、「相続税評価額」が用いられます。
相続税評価額の計算方法
相続税評価額の計算方式には、路線価方式と倍率方式があります。
相続税評価額の計算方法について詳しくは以下の記事でご紹介しています。
相続評価額が減額される場合
次のような土地には、評価額が減額されます。
- いびつな土地の評価減
- 地積規模の大きな宅地の評価減
- 借地権の評価減
- 貸宅地の評価減
- 貸家建付地の評価減
- 私道、セットバックの評価減
- がけ地等を有する宅地の評価減
中でも貸家建付地(かしやたてつけち)の評価額を減額する制度は、大きな節税効果を期待できるので、説明します。
他の方法について、地積規模の大きな宅地の評価、その他の方法などは以下の記事で詳しくご紹介しています。
貸家建付地の概要
貸家建付地とは、貸家の目的とされている宅地、すなわち、所有する土地に建築した家屋を他に貸し付けている場合の、その土地のことをいいます。
賃貸アパート等が典型的なケースです。
賃貸アパートは収益性が期待できますが、賃貸アパートは地域によって供給過多の状態になっており、収益性が期待できない場合があります。
節税メリットだけでなく、事業として収益性が期待できるかという点を厳しい目で見定める必要があります。
貸家建付地の評価額は、「自用地とした場合の価額-自用地とした場合の価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合」で計算することができます。
「自用地とした場合の価額」、「借地権割合」、「借家権割合」、「賃貸割合」等の用語が出てきましたので、それぞれ説明します。
自用地とした場合の価額
自用地とは自分で使う土地のことです。
貸地は自用地よりも制限が多く、評価額が低くなります。
そのために貸家建付地の上記の計算式があるのです。
借地権割合
借地権(しゃくちけん)とは、土地を借りる人に認められている権利で、借りた土地の返還をいきなり求められない権利、借りた土地の上に建物を建てる権利のことです。
借地権も財産として評価され、課税対象となりますが、土地の利用に制限があり自用地とした場合よりも価値が低いので、自用地とした場合の評価額に一定の割合を掛け算して、借地権を評価します。
その掛け算する割合のことを借地権割合(しゃくちけんわりあい)といいます。
つまり、借地権割合は、言い換えれば、借地権を自用地とした場合に何%の価値を持つのかということを示しています。
逆に、借地権が設定されている貸宅地の場合の評価額は、自用地とした場合の評価額から借地権の評価額を差し引いて算出します。
つまり、「貸宅地の評価額=自用地としての価額-自用地としての価額×借地権割合」となります。
「自用地の所有権の評価額=借地権の評価額+貸宅地の所有権の評価額」というふうに理解すると分かりやすいかもしれません。
借地権割合は、路線価ごとに、30%~90%の数値が指定されています。
都会の方が田舎よりも借地権割合が高い傾向にあります。
路線価ごとの借地権割合は、路線価図で確認することができます。
▼相続税路線価について詳しく知りたい方へおすすめの記事▼
借家権割合
借家権(しゃっかけん、しゃくやけん)とは、家を借りる人に認められている権利のことです。
借家権割合は、後述の建物の評価方法の項目で説明します。
賃貸割合
賃貸用の物件でも実際に賃貸していなければ、評価減は認められません。
賃貸割合は、独立部分(居住部分)の床面積のうち、原則として課税時期(相続税であれば相続開始時)に賃貸されている部分の床面積の割合で計算されます。
計算例
次の条件の貸家建付地の相続税評価額を計算してみましょう。
- 相続税路線価:40万円
- 敷地面積:100平方メートル
- 借地権割合:40%
- 借家権割合:30%
- 各独立部分の床面積の合計:200平方メートル
- 課税時期に賃貸されている各独立部分の床面積の合計:180平方メートル
貸家建付地の評価額は、前述の通り、「自用地とした場合の価額-自用地とした場合の価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合」で計算することができます。
自用地とした場合の価額は「相続税路線価×敷地面積」で計算することができます。
上の条件をこの式に当てはめると、自用地とした場合の価額は、40万円×100平方メートル=4000万円となります。
賃貸割合は、「課税時期に賃貸されている各独立部分の床面積の合計÷各独立部分の床面積の合計」で計算することができます。
上の条件をこの式に当てはめると、賃貸割合は、180平方メートル÷200平方メートル=90%となります。
そうすると、貸家建付地の評価額は、4000万円-4000万円×40%×30%×90%=3568万円となります。
相続税計算時における建物の評価方法
建物の相続税評価額は、固定資産税評価額を適用します。
固定資産税評価額は、固定資産税の納税通知書に添付されている課税明細書に記載されています。
固定資産税の納税通知書は、毎年送付されてきますが、納付が済んでも保管しておきましょう。
納税課税明細書に「価格」か「評価額」という欄がありますが、そこに金額が記載されています。
マンションの場合は、価格欄は一棟丸ごとの評価額が記載されています。
自分の所有している部屋の固定資産税評価額は、課税標準額の欄に記載されています。
建物を自分で使用している場合には、固定資産税評価額がそのまま相続税計算時の評価額にもなりますが、建物を賃貸に出している場合は、借家権割合を差し引くことができます。
借家権割合は、都道府県ごとに決められていますが、2018年現在、すべての都道府県で3割となっています。
例えば、固定資産税評価額が1000万円の建物を貸している場合は、3割引いて、700万円が課税価格になります。
なお、無償で貸している場合や、著しく低廉な価格で貸している場合は、借家権割合の適用を受けることはできません。
最低でも固定資産税の2倍~3倍の家賃をもらっていなければ借家権割合の適用を受けることはできないでしょう。
また、借家権割合は、今後、変更になる可能性があります。
借家権割合を調べたい都道府県(建物が建っている都道府県)のクリックし、次に、「借家権割合」の文言をクリックすると、その都道府県の借家権割合を示したページにたどり着くことができます。なお、借家権割合は、「100分の30」のようなかたちで表しますが、3割のことです。
ちなみに、建築途中の家屋も相続税の課税対象になります。
建築途中の家屋の評価額は、費用原価の額×70%です。
費用原価の額とは、課税時期(相続の場合は被相続人の死亡の日)までに建物に投下された建築費用の額を課税時期の価額に引き直した額の合計額のことをいいます。
また、門や塀、庭園設備等も相続税の課税対象となります。
これらの評価方法については、税理士に相談するとよいでしょう。
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不動産を使った相続税対策
財産をなるべく不動産に換えておくことは相続税対策になります。
相続税評価額は実勢価格よりも低く見積もられるからです。
1億円の現金 VS 1億円で土地を購入して賃貸アパートを建てた土地の税金
例えば、1億円の現金を持っていたとします。
現金のまま相続すると、1億円が課税価格となります。
ところが、この1億円で、土地を購入して賃貸アパートを建てたとします。
土地も建物もそれぞれ5000万円だったとします。
相続税評価額は、市場価格の約8割程度になります。
固定資産税評価額は、市場価格の約7割程度になります。
市場価格5000万円の土地の相続税評価額は、5000万円×80%=4000万円程度になります。
さらに賃貸アパートのような貸家建付地の場合は、前述の通り、評価をさらに減額することができます。
具体的には、以下のように計算することができます。
借地権割合が40%、借家権割合が30%、賃貸割合が90%としたとき、上記式にあてはめると、貸家建付地の評価額は、
4000万円-4000万円×40%×30%×90%=3568万円となります。
また、市場価格5000万円の建物の固定資産税評価額は、5000万円×70%=3500万円程度になります。
建物については、賃貸用なので、借家権割合の30%を差し引いて、3500万円×70%=2450万円となります。
土地と建物の評価額を合算すると、3568万円+2450万円=6018万円となり、現金のまま持っていた場合に比べて4割近く評価額を削減することができました。
まとめ
以上、土地にかかる相続税の計算方法と土地を使って相続税を節税する方法について説明しました。
土地の相続税評価額には様々な減額制度がありますが、すべてを正確に理解して適切に適用することは、一般の人には難しいでしょう。
相続税の基礎控除額以上の相続財産がある場合は、税理士に一度相談することをお勧めします。
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この記事を書いた人
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