数次相続における遺産分割協議書の雛形と書き方は?
身近な人が相次いで不幸があったとき、相続も度重なることに。
そのような場合は遺産分割協議書の書き方に注意が必要です。
この記事では、数次相続における遺産分割協議書の雛形と書き方についてわかりやすく丁寧に説明します。
是非、参考にしてください。
[ご注意]
記事は、公開日(2020年6月18日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。
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数次相続とは?
数次相続とは、ある人が亡くなって(一次相続)、その相続の手続きが済まないうちに相続人が亡くなり、次の相続(二次相続)が開始されることをいいます。
数次相続の例と遺産分割協議書
次の2つの例を基に説明します。
- 父母が相次いて死亡した場合
- 父母のどちらかが死亡し、次に子供が死亡した場合
父母が相次いて死亡した場合
ある人が亡くなり、妻A、長男B及び長女Cが相続人になったとします(一次相続)。
そして、一次相続の遺産分割協議が調わないうちに、今度はAが亡くなり、B及びCが相続人になったとします(二次相続)。
B及びCは、一次相続について、自己の固有の相続分だけでなく、Aから承継したAの相続分についての権利をも有することになります。
そして、このようなケースでは、一次相続の相続人のうち存命の人と、二次相続の相続人がまったく同じ(B及びC)なので、一次相続と二次相続の遺産分割についてまとめて協議し、遺産分割協議書も一つにまとめることができますが、遺産分割協議書は、やはり分けた方が分かりやすいでしょう。
遺産分割協議書を分ける場合、二次相続の遺産分割協議書の書き方は通常通りです(通常の遺産分割協議書の書き方については「遺産分割協議書のひな形をダウンロードして自分で簡単に作成する方法」を参照)。
一次相続の遺産分割協議書の書き方については、以下の例をご参照ください。
遺産分割協議書
被相続人 ○○○○(昭和〇〇年〇〇月〇〇日生まれ)
相続人兼被相続人 △△△△(昭和〇〇年〇〇月〇〇日生まれ)
被相続人○○○○(以下「被相続人」という。)の遺産相続につき、被相続人の長男○○○○(以下「甲」という。)、及び被相続人の長女○○○○(以下「乙」という。)の相続人全員が遺産分割協議を行い、本日、下記のとおりに遺産分割の協議が成立した。
1.甲は、以下の遺産を取得する 所 在 東京都△△区〇〇 (2)建物 所 在 東京都△△区〇〇 ○○番○ 2階部分 ○平方メートル (3)動産 上記(2)の建物内にある家具家財等一切の動産
2.乙は、以下の遺産を取得する (1)建物 (一棟の建物の表示) (敷地権の目的たる土地の表示) 名義人 ○○○○ (3)有価証券等 〇〇証券〇〇支店(口座番号〇〇〇〇)保護預かりの以下の有価証券等 〇〇株式会社 株式1000株
3.本遺産分割協議書に記載のない遺産及び本遺産分割の後に判明した遺産(負債も含む)については、甲が全て相続する。
以上のとおり、甲及び乙の相続人全員による遺産分割協議が成立したことを証明するため、本協議書を2通作成し、甲及び乙の相続人全員が署名押印のうえ、各1通ずつ所持する。
令和〇〇年〇月〇日(作成日の日付)
住所 神奈川県〇〇市△△町○丁目○番地○
住所 埼玉県〇〇市〇〇町○丁目○番○号
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一次相続に関する遺産分割協議書は、主に次の2点が通常の遺産分割協議書と異なります。
- 被相続人(亡くなった人)についての記載欄
- 相続人の署名欄
それぞれについて説明します。
まず、被相続人についての記載欄についてですが、遺産分割協議書では、誰の遺産についての協議なのか明確にしなければなりませんので、まず被相続人の氏名、生年月日、死亡年月日、最後の住所、最後の本籍地を記述します。
そして、一次相続の相続人のうち、既に亡くなっている人の情報を記載します。
肩書は、「相続人兼被相続人」と記述します。
次に、相続人の署名欄について説明します。
遺産分割協議書に記載された内容に異存がないことを証明するために、遺産分割協議書の末尾に各相続人が署名と押印を行いますが、通常の遺産分割協議書の場合は、相続人の氏名の前に、「相続人」という肩書が入ります。
父母が相次いで亡くなった数次相続のケースでは、相続人である子供たちは、一次相続について、元々相続人ですが、後に亡くなった親の相続分についても承継しています。
このような場合の肩書は「相続人兼△△△△の相続人」と記載します。
「△△△△」は二次相続の被相続人の名前が入ります。
遺産分割協議書については、正しく、不利益が出ないように作成する必要があります。専門家に相談してみることをご検討ください。
父母のどちらかが死亡し、次に子供が死亡した場合
ある人が亡くなり、妻A、長男B及び長女Cが相続人になったとします(一次相続)。
そして、一次相続の遺産分割協議が調わないうちに、今度はBが亡くなったとします(二次相続)。
このようなケースについて、Bに配偶者及び子供がいない場合と、いる場合とに分けて説明します。
Bに配偶者及び子供がいない場合
Bに配偶者や子供がいない場合は、二次相続の相続人はAとなり、一次相続の相続人のうち存命の人と、二次相続の相続人が重なっているので、前述の父母が相次いで死亡した場合の説明をご参照ください。ただし、二次相続でBの相続人となるのはAだけですので、署名欄は、
相続人兼Bの相続人A
相続人C
となりますので、ご注意ください。
Bに配偶者及び子供いる場合
Bに配偶者D及び子供Eがいる場合は、二次相続の相続人は、D及びEです。
D及びEは、二次相続の相続人であるだけでなく、一次相続についても、Bの相続分を承継しています。
このような場合、一次相続の遺産分割協議は、A、C、D及びEで行うことになり、一次相続と二次相続とで、遺産分割協議に参加するメンバーが異なるので、遺産分割協議書を分けて作成します。
二次相続の遺産分割協議書の書き方は、通常通りです(通常の遺産分割協議書の書き方については「遺産分割協議書のひな形をダウンロードして自分で簡単に作成する方法」を参照)。
一次相続の遺産分割協議書については、以下の例をご参考にしてください。
遺産分割協議書
被相続人 ○○○○(昭和〇〇年〇〇月〇〇日生まれ)
相続人兼被相続人 △△△△(昭和〇〇年〇〇月〇〇日生まれ)
被相続人○○○○(以下「被相続人」という。)の遺産相続につき、被相続人の妻○○○○(以下「甲」という。)、被相続人の長男○○○○(以下「乙」という。)、被相続人の長女△△△△の相続人○○○○(以下「丙」という。)の相続人全員が遺産分割協議を行い、本日、下記のとおりに遺産分割の協議が成立した。
1.甲は、以下の遺産を取得する (2)建物 所 在 東京都△△区〇〇 2階部分 平方メートル (3)動産 上記(2)の建物内にある家具家財等一切の動産
2.乙は、以下の遺産を取得する (1)建物 (一棟の建物の表示) (敷地権の目的たる土地の表示) 名義人 ○○○○ (3)有価証券等 〇〇証券〇〇支店(口座番号〇〇〇〇)保護預かりの以下の有価証券等 〇〇株式会社 株式1000株 (途中略) 6.本遺産分割協議書に記載のない遺産及び本遺産分割の後に判明した遺産(負債も含む)については、甲が全て相続する。
以上のとおり、甲、乙及び丙の相続人全員による遺産分割協議が成立したことを証明するため、本協議書を3通作成し、甲、乙及び丙の相続人全員が署名押印のうえ、各1通ずつ所持する。
令和〇〇年〇月〇日(作成日の日付)
住所 東京都△△区△△○丁目○番地○
住所 神奈川県〇〇市△△町○丁目○番地○
住所 埼玉県〇〇市〇〇町○丁目○番○号 |
このケースの場合も、通常の遺産分割協議書と異なる点は、前述の父母が相次いで死亡した場合と同様に、主に、被相続人についての記載欄と、相続人の署名欄です。
被相続人の記載欄については、前述のケースと同様なので、前述の説明をご参照ください。
そして、相続人の署名欄について、二次相続の相続人が一次相続の遺産分割協議に参加する場合の肩書は、「相続人○○の相続人」というように記載します。
数次相続の場合の登記と相続税申告
数次相続の場合の登記と相続税申告については、「数次相続とは?数次相続の手続を損なくスムーズに進めるための全知識」をご参照ください。
まとめ
以上、数次相続の場合の遺産分割協議書について説明しました。
数次相続の場合は、遺産分割協議書が複雑になるので、専門家に依頼することをお勧めします。
また、数次相続では特に、どのように分割するかによって相続税の税額が変わってくることがあります。
相続税対策を見越した分割方法については、相続税に精通した税理士に相談するとよいでしょう。
この記事を書いた人
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