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数次相続とは?数次相続の手続を損なくスムーズに進めるための全知識

祖母が亡くなり、祖母の息子である父が祖母の遺産を相続するはずだったが、相続前にその父が亡くなってしまった

そのような場合に、父が相続するはずだった祖母の遺産を相続することはできるのでしょうか?

また、祖母の遺産は相続して、父の遺産は放棄するというようなことはできるのでしょうか?

このような複雑なケースでは遺産分割協議書は、どのように記述すればよいのでしょうか?

祖母の残してくれた不動産を登記する際に、父を省略して直接自分に登記を移すことはできるのでしょうか?

相続税はどうなるのでしょうか?

父の分も含めて二重に相続税を払わなければならないのでしょうか?

減税措置はないのでしょうか?

この記事では、このような疑問を解決して、スムーズに相続手続き進めるための知識をわかりやすくお伝えします。

是非、参考にしてください。

[ご注意]
記事は、公開日(2018年7月23日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。

数次相続とは?

数次相続とは?

数次相続(すうじそうぞく)とは、被相続人(相続される人=亡くなって財産を残す人)が亡くなって(一次相続)、遺産分割協議や移転登記、名義変更等が済まないうちに、相続人が亡くなり、次の相続(二次相続)が開始されることをいいます。

数次相続の例

例えば、被相続人が亡くなり、妻Aと弟Bが相続人になったとします。

始めの相続のことを一次相続といいます。

一次相続の遺産分割協議が調わないうちに、今度はAが亡くなり、被相続人とAとの間に子供等がいなかった場合で、Aの父Cと母DがAの相続人になったとします。

2番目の相続のことを二次相続といいます。

一次相続でAが相続するはずだった被相続人の財産は、CとDが相続することになります。

そうすると、一次相続の遺産分割協議についてはB(4分の1)、C(8分の3)、D(8分の3)で、二次相続の遺産分割協議については当然ながらC、Dで行うことになります。

さらに、B、C、Dで協議中に、Bが亡くなり、別の二次相続が生じることもありえます。

その場合は、Bの相続人と、C、Dとの間で一次相続の遺産分割協議を行うことになります。

また、B、C、Dの協議中に、例えばDが亡くなった場合は、Dの相続人EとFは、B、Cと共に一次相続の分割協議を、Cと共に二次相続の分割協議を、EとFだけで三次相続の分割協議をすることになります。

数次相続はどこまで続く?

数次相続は三次相続に留まらず、四次相続、五次相続と延々と続き、相続が度重なるごとに関係が複雑になっていきます。

代襲相続、同時死亡、再転相続との違い

数次相続は被相続人の死亡後、ほどなくして相続人が亡くなるケースですが、同様に被相続人と相続人が亡くなった時間の前後によって、相続関係が複雑になるケースに、次のものがあります。

  • 代襲相続(だいしゅうそうぞく)
  • 同時死亡
  • 再転相続(さいてんそうぞく)
  • 相次相続(そうじそうぞく)

数次相続とそれぞれとの違いについて、以下説明します。

代襲相続と数次相続の違い

代襲相続とは、被相続人の子Aが被相続人よりも先に亡くなっていて、Aの子Bがいる場合に、被相続人の財産をBがAを代襲して相続する制度のことです。

数次相続では、被相続人の後に相続人が亡くなるケースですが、代襲相続は被相続人の前に相続人Aが亡くなるケースです。

数次相続と代襲相続とでは、被相続人と相続人の亡くなる順番が異なります。

代襲相続について詳しくは以下の記事をご参照ください。

同時死亡と数次相続の違い

同時死亡は、被相続人と相続人が同時に死亡するケースです。例えば、夫と妻とが同時に事故などで死亡したよう場合が考えられます。この場合、同時に死亡した人の間では相続は生じないことになっています。

つまり、被相続人の財産を同時に死亡した相続人は相続しないので、数次相続も生じません。ただし、この場合でも、代襲相続は生じます。

再転相続と数次相続の違い

再転相続は被相続人が死亡して熟慮期間中で、相続放棄あるいは相続承認を相続人らが行う前に相続人の一人等が死亡したような場合で、数次相続はすでに相続承認等(あるいは熟慮期間が経過した後に)が行われた後に、相続人が亡くなった場合です。

とはいえ、数次相続にしても、再転相続にしても、法律で明確に要件等が定義されているわけではありません。

ですので、たまに、人によって違った意味で使用しているケースもあり、再転相続と数次相続を同じような意味で使用しているケースも目にしますのでご注意ください。

相次相続と数次相続の違い

相次相続とは、続から10年以内に相続人が亡くなり、新たな相続が生じることで、主として相続税制上の観点から問題となる場合です。具体的には、相次相続の場合には、相続税の控除制度があります(後述)。

数次相続では協議や登記が未了かどうかが基準となりますが、相次相続では協議や登記が未了かどうかは関係ありません。

数次相続の場合の相続放棄

数次相続の場合の相続放棄について説明します。

なお、相続放棄全般について詳しく知りたい場合は、以下の記事をご参照ください。

一次相続人が相続放棄した場合

まず、一次相続人が亡くなる前に相続放棄をした場合にどうなるかという点について説明します。

一次相続人が相続放棄した場合は、その時点で、一次相続人は相続権を失います。

ですので、二次相続人は、被相続人の財産を数次相続によって相続することはありません(数次相続にはなりません)。

二次相続人が相続放棄した場合

次に、二次相続人が相続放棄した場合について説明します。

いくつかのパターンがありえるので、次のケースに分けて説明します。

  • 被相続人と一次相続人の両方の財産について放棄したい
  • 被相続人の財産については放棄して、一次相続人の財産については相続したい
  • 被相続人の財産については相続して、一次相続人の財産については放棄したい

以下、それぞれの場合について説明します。

被相続人と一次相続人の両方の財産について放棄したい場合

このケースは何ら問題ありません。可能です。

なお、相続放棄ができる期間は、通常は相続の開始があったことを知った時から3か月以内ですが、二次相続の場合は、一次相続の相続についても、一次相続人が亡くなってから3か月以内で大丈夫です。

被相続人の財産については放棄して、一次相続人の財産については相続したい場合

これも問題なく可能です。

相続放棄の期間は、前述の通り、一次相続人が亡くなってから3か月以内です。

被相続人の財産については相続して、一次相続人の財産については放棄したい場合

これについては、できません。

数次相続の場合の遺産分割協議書の書き方

数次相続の場合の遺産分割協議書の書き方について説明します。

遺産分割協議書の基本的な書き方については以下の記事をご参照ください。

遺産分割協議書の作成は、行政書士などの専門家に依頼することもできます。

ここでは、数次相続があった場合の遺産分割協議書の書き方で、通常の場合と異なる点について説明します。

数次相続の場合の遺産分割協議書では、1通にまとめる方法と2通に分ける方法があります。

2通に分ける方法では、一次相続の被相続人の遺産についてのものと、二次相続の被相続人の遺産についてのものとをそれぞれ作成します。

三次相続の場合は3通、四次相続の場合は4通になります。

基本的には2通に分ける方が分かりやすくてお勧めですが、一次相続と二次相続とで相続人が重複する場合は1通にまとめても問題ないでしょう。

以下では、2通に分けることを前提に書き方を説明します。

二次相続に関する遺産分割協議書は、通常の遺産分割協議書と何ら変わるところはありません。

一次相続に関する遺産分割協議書は、主に次の2点が通常の遺産分割協議書と異なります。

  • 被相続人についての記載欄
  • 相続人の署名欄

それぞれについて説明します。

被相続人についての記載欄

遺産分割協議書では、誰の遺産についての協議なのか明確にしなければなりませんので、まず被相続人の氏名、生年月日、死亡年月日、最後の住所、最後の本籍地を記述します。

数次相続では、それぞれの相続について、それぞれ被相続人がいるので、すべての被相続人についての情報を記述します。

二次相続の被相続人の肩書は、「相続人兼被相続人」と記述します。

少し不思議な感じがするかもしれません。

例えば、冒頭の例のAは、二次相続についての被相続人ではあるものの、一次相続についての被相続人ではありません。

にもかかわらず、一次相続についての遺産分割協議書において、「相続人兼被相続人」と書くのは、違和感があるかもしれません。

正確に書くとすれば「一次相続人の相続人兼二次相続の被相続人」ということなのですが、まどろっこしいので、実務では「相続人兼被相続人」という記述が定着しています。

相続人の署名欄

遺産分割協議書に記載された内容に異存がないことを証明するために、遺産分割協議書の末尾に各相続人が署名と押印を行います。

相続人の氏名の前に、通常の遺産分割協議書の場合は、「相続人」という肩書が入ります。

しかし、数次相続の場合は相続人でない人も署名します。

相続人が亡くなっており、その相続人の相続人も遺産分割協議に参加するからです。

その場合の署名の肩書は、「相続人Aの相続人」と記述することが多いです。

数次相続の場合の遺産分割協議書のひな型のダウンロード

ひな型を見たほうが分かりやすいでしょうから、以下のリンクからひな型をダウンロードしてください。

数次相続の場合の遺産分割協議書のひな型のダウンロードはこちら

数次相続の場合の登記

次に、数次相続の場合の不動産登記について説明します。

中間省略登記が可能な場合は?

途中の相続人を省いて、被相続人から最終相続人に所有権移転登記をすることも可能な場合があります。

それは、中間の相続が単独相続の場合です。

例えば、被相続人が亡くなって、その相続人が妻しかおらず、相続不動産の所有権移転登記が未了のうちに妻も亡くなって妻の父が相続したような場合です。

そのような場合は、妻を省略して、被相続人から直接、最終相続人である妻の父に所有権移転登記を行うことができます。

このように中間相続の相続人が元から一人しかいなかった場合に限らず、相続放棄者が出て、相続人が一人になった場合や、相続人は複数いたが、他の相続人が特別受益者で相続分がなかった場合や、遺産分割によって単独所有した場合も中間省略登記が可能です。

なお、中間省略登記の場合、省略した登記の分の登録免許税(8万円)は課されません。

登記申請書の書き方

数次相続の場合の登記申請書様式と記載例については、法務局のウェブサイトの「不動産登記の申請書様式について」のページからダウンロードできます。

それぞれ、Microsoft Word版とPDF版があります。

記載例には、相続関係説明図の記載例と、委任状の記載例もついています。

数次相続の場合の相続税

数次相続の場合に、相続税の計算や申告について何か変わった点はあるのでしょうか?

以下、説明します。

一次相続人が納めるべき相続税はどうなるか?

一次相続人が相続税を納める前に亡くなった場合には、二次相続人がその相続税を代わりに納めなければなりません。

ですので、二次相続人は、一次相続の相続税と、二次相続の相続税の両方を納めなければならないのです。

そうすると、税負担が大きくなってしまいます。

その点については、相次相続控除という救済措置がありますので、後述します。

申告期限

二次相続の被相続人の一次相続分の相続税の申告期限は延長されます。

相続税の申告期限は、通常、被相続人が亡くなってから10か月ですが、一次相続人が亡くなってから10か月に延長されます。

つまり、一次相続の相続税の申告期限が、二次相続分の相続税の申告期限と同時期にスライドするということになります。

亡くなっていない一次相続人の申告期限は、延長されない事に注意が必要です。

基礎控除

基礎控除には影響はありません。

一次相続の基礎控除額は、一次相続の法定相続人に基づいて算出されますし、二次相続の基礎控除額も当然、二次相続の法定相続人に基づいて算出されます。

相次相続控除

数次相続だけに適用されるものではありませんが、数次相続では相次相続控除の適用を受けることができる場合があります。

相次相続控除の要件

相次相続控除を受けるための要件は次の通りです。

  • 一次相続の際、一次相続人(二次相続の被相続人)が相続税を納めていること
  • 一次相続の開始と二次相続の開始の間が10年以内であること
  • 申請者が二次相続の相続人であること(遺贈を受けた受遺者や、相続放棄して死亡保険金のみ受け取った人はNG)

相次相続控除の計算方法

相次相続控除額は次の式で計算することができます。

A × C ÷(B - A)× D ÷ C ×(10 - E) ÷ 10

※C>B-Aなら、C=B-Aとします。

  • A:二次相続の被相続人の一次相続における相続税額
  • B:二次相続の被相続人の一次相続における相続額
  • C:二次相続における遺産総額
  • D:二次相続における相次相続控除適用者の相続額
  • E:一次相続の開始から二次相続の開始までの経過年数(端数切捨て)

その他の税額軽減制度

二次相続の相続人は一次相続の相続分について、二次相続の被相続人が一次相続の相続人として要件を満たしていた税額軽減制度の適用を受けることができます。

よく対象となる制度としては、次の2つがあります。

    • 配偶者の税額の軽減(相続税の配偶者控除)
  • 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)について、詳しくは以下の記事をご参照ください。

まとめ

以上、数次相続とは?数次相続の手続を損なくスムーズに進めるための全知識について説明しました。

記事を読んでもわからないことについては、税金については税理士に、登記については司法書士に相談するとよいでしょう。

この記事を書いた人

株式会社鎌倉新書 いい相続

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