定期贈与とみなされると暦年贈与の基礎控除が初年度だけしか使えない⁉
[ご注意]
記事は、公開日(2019年12月24日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。
定期贈与とは?
定期贈与とは、定期金給付契約に基づいて、定期金に関する権利を贈与することをいいます。 例えば、太郎さんが、長男の一郎さんに対して、毎年100万円ずつ10年間で合計1,000万円を贈与することを約束したとします。 このような場合は、毎年100万円の贈与を10年間にわたって10回したことにはならず、約束した年に、定期金給付契約に基づく定期金に関する権利(10年間にわたり100万円ずつ合計1,000万円の給付を受ける契約に係る権利)の贈与を受けたことになります。 なお、定期贈与のことを「連年贈与」ということもあります。定期贈与は税金が余分にかかることがある
税務署に定期贈与とみなされ、税金が余分にかかることがあるので注意が必要です。 どういうことか説明します。 まず、個人から贈与を受けた財産には贈与税がかかりますが、贈与税には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つの課税方式があり、どちらの方式で贈与税を計算するかを贈与者ごとに贈与税の申告時に選択することができます(ただし、一度、相続時精算課税を選択した贈与者からの贈与については翌年以降暦年課税を選択することはできません)。定期贈与と暦年贈与の違い
例えば、毎年100万円ずつを10年間にわたって贈与すれば、贈与税がかからずに合計1,000万円を贈与できます。このように、基礎控除を利用して毎年贈与をすることを「暦年贈与」といいます。 この点、定期贈与は1,000万円の贈与を10回に分けて給付します。定期贈与の贈与税は、最初の履行があった年(書面によるものについてはその契約の効力の発生した年)にまとめて課税されます。 つまり、最初に100万円を給付した年(契約書を作成した場合は契約の効力の発生した年)に、1000万円に対して贈与税がかかるのです。 したがって、1,000万円から110万円を控除した残額、890万円について贈与税がかかることになります。定期贈与と判断されることを回避する方法
税務署に定期贈与の疑いをかけられたときに、定期贈与ではなく暦年贈与であることが証明できれば問題ありません。 この点、贈与の度に贈与契約書を作成することによって、定期贈与ではなく暦年贈与であることが証明しやすくなります。 贈与契約書の作成方法についてはこちらの記事を参考にしてください。 そして、贈与契約書に公証役場で確定日付を付してもらうことによって、その日にその契約書が存在していたことを証明することができ、バックデート(契約を行った日のうちに日付を書き込まず、実際に契約を行った日よりも遅れてその日付を書き込むこと)で契約書を作成したのではないかと疑われることを避けることができます。 公証役場は全国にあります。日本公証人連合会の公証役場一覧ページからお近くの公証役場を探すことができます。 なお、定期贈与を疑われることを回避するための他の対策として、契約日や金額を毎年変更するとか、110万円超の贈与を受けて少額の贈与税を納めるといったことが考えられますが、そこまでしなくても、内実が暦年贈与であって、かつ、そのことを証明するための確定日付のある贈与契約書が保管されていれば問題ないように思われます。 不安な点は相続税対策に精通した税理士に相談して、周到に用意を進めることをお勧めします。まとめ
以上、定期贈与について説明しました。 基礎控除を利用して非課税で贈与を受けるためには、税務署に定期贈与と判断されることを回避することも重要ですが、他にも注意点があります。こちらの記事もあわせてご覧ください。この記事を書いた人
相続専門のポータルサイト「いい相続」は、相続でお悩みの方に、全国の税理士・行政書士など相続に強い、経験豊富な専門家をお引き合わせするサービスです。
「遺産相続弁護士ガイド」では、遺産分割や相続手続に関する役立つ情報を「いい相続」編集スタッフがお届けしています。また「いい相続」では、相続に関連する有資格者の皆様に、監修のご協力をいただいています。
▶ いい相続とは
▶ 監修者紹介 | いい相続