賃借権も相続の対象!知っておくべき賃貸住宅居住者の権利

賃借権も、相続の対象となることは、ご存知でしょうか?

「部屋を賃りているだけだから、相続財産にはならないでしょ」こう思っている方は意外と多いようです。

この記事では、建物の賃借権の相続について、わかりやすく説明します。

借主の相続人にとっても、貸主にとっても、役立つ内容となっています。是非、参考にしてください。

[ご注意]
記事は、公開日(2020年11月4日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。

賃借権とは?賃貸借契約とは?

賃借権とは、賃貸借契約に基づく賃借人の権利のことで、「ちんしゃくけん」と読みます。

賃貸借契約とは、当事者の一方(貸主)がある物の使用及び収益を相手方(借主)にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することを内容とする契約のことをいいます。読み方は「ちんたいしゃくけいやく」です。

賃貸借契約は、あらゆる物を目的とすることができますが、この記事では、建物の賃貸借を念頭に置いて説明します。

賃借権も相続の対象となる

賃借権も相続の対象となります。

つまり、賃貸借の借主が死亡したら、借主の相続人は、賃借人の地位を承継することになります。

そうすると、借主の相続人は、当該賃貸借契約について、次のような権利と義務を有することになります。

【権利】

  • 使用収益権
  • 修繕請求権
  • 必要費、有益費償還請求権
  • 造作買取請求権
  • 賃料減額請求権
  • 敷金返還請求権(明渡後)

【義務】

  • 賃料支払義務
  • 用法遵守義務
  • 善管注意義務
  • 原状回復義務

簡単に言うと、借主の相続人は、その部屋に住み権利がある一方、賃料を支払う義務があるということであり、そして、賃貸借契約を解約して退去する際は、原状回復義務(入居時の状態に戻す義務)を負い、借主が差し入れた敷金の返還を明渡後に求める権利があるということです。

賃貸借契約書に「借主が死亡した場合は本契約を終了する」という趣旨の記載があったとしても、このような約束は無効であると解されており、相続人は賃借し続けることができます。

賃貸借を継続する必要がない場合はどうすればいい?

相続人にとって賃貸借を継続する必要がないというケースも多いでしょう。

そのような場合は、契約を解約するとよいでしょう。貸主に解約したい旨を伝えれば、所定の手続きを案内してくれるでしょう。

遺品を整理して、部屋を明け渡し、原状回復費用等の精算をして残額あった場合敷金の返還を受けることができます。

このように、相続手続きには理解の難しい仕組みや制度がたくさんあります。正しく、そして不利益が出ないようにするために、ぜひ専門家に相談してみることをご検討ください。

相続人が数人いる場合は誰が引き継ぐことになる?

相続人が数人いる場合は誰が引き継ぐことになるのでしょうか?

以下、順を追って説明します。

相続開始と同時に相続人全員の準共有状態になる

相続人が数人いる場合は、その全員が借主の地位を承継することになり(「準共有」といいます)、全員が賃貸物件の全部について持分(相続分)に応じて使用することができます。

準共有状態では使いにくいので、通常は、解約するか、遺産分割協議で賃借権を承継する人を誰か一人決めるかのどちらかになるでしょう。

賃料は?

準共有状態の時は、貸主は、相続開始後の賃料を、どの相続人に対しても請求することができます。

賃料を支払った相続人は、他の相続人に対して、それぞれの法定相続分に応じた金額を求償することができます。

また、家賃滞納などの理由で貸主から解約通知をする場合は、相続人全員に対して行わなければなりません。

敷金は?

なお、返還された敷金については各相続人にそれぞれの相続分に応じた額を取得する権利があります。

遺産分割によって承継する人を決めることができる

相続人は遺産分割協議によって誰がどの財産を取得するかを決めることができますが、賃借権も遺産分割の対象となります。

賃料は?

遺産分割後は、遺産分割によって賃借権を取得した相続人のみが当該賃貸物件を使用することができ、賃料を負担します。

貸主は、賃借権を承継することなった相続人に対してのみ、賃料を請求することができ(ただし、賃借権の承継人が誰なのか、貸主に明示又は黙示で示されている必要があります)、家賃滞納などによって解約する場合は、その相続人に対しても通知すれば足ります。

敷金は?

敷金についても、賃借権の承継人のみが受け取ることができます。

借主に家賃の滞納があった場合は誰が負担するのか

遺産分割協議書について

相続開始前に借主が滞納していた家賃は、全員が賃料支払債務全額を負担することになります。

これについても、遺産分割協議によって負担する人を決めることができますが、この取り決めは相続人間のみ有効で、負担することになった人以外も貸主から請求があった場合は、滞納賃料全額を支払うことになります(遺産分割協議で負担することが決まった人に求償可能)。

また、賃借権を誰も承継せずに解約することになった場合に原状回復費用が生じた場合の負担者についても同様です。

相続放棄する場合の注意点

借主の相続人が相続放棄する場合に、賃貸借契約の解約の申入れをしたり、形見分けの範囲を超えて残置物を処分したりすると、相続を承認したものとみなされて相続放棄ができなくなるおそれがあります。

貸主から解約書類の押印を求められたり、残置物を処分して明け渡すように求められるケースがありますが、このような求めに応じると、相続放棄ができなくなる可能性があるのです。

相続放棄したい場合は、貸主からのこのような依頼は断らなければなりません。

また、支払期限の到来していない家賃を、亡くなった借主の財産から支払った場合も、相続放棄ができなくなるおそれが生じます。

支払期限が過ぎている場合は、家賃を支払っても相続放棄に影響を及ぼさないと解されますが、あえてリスクを冒して支払う必要もないでしょう。

相続放棄の手続きについては以下の記事で詳しくご紹介しています。

建物賃借権の相続税評価額は0

財産を相続等によって取得した場合、相続税の計算上、相続財産の価額を評価しなればなりませんが、建物の賃借権の相続税評価額は0です。

相続税について不明な点は相続税に強い税理士に相談するとよいでしょう。

『遺産相続ガイド』のオススメ【税理士】はコチラ >>

よくある質問 Q&A

以上、賃借権の相続について説明しました。

最後にまとめとして、よくある質問とその回答を示します。

Q:賃借権も相続の対象なの?

賃借権も相続の対象となります。つまり、賃貸借の借主が死亡したら、借主の相続人は、賃借人の地位を承継することになります。

Q:賃借する必要がない場合はどうすればいい?

相続人にとって賃貸借を継続する必要がないというケースも多いでしょう。そのような場合は、契約を解約するとよいでしょう。貸主に解約したい旨を伝えれば、所定の手続きを案内してくれるでしょう。遺品を整理して、部屋を明け渡し、原状回復費用等の精算をして残額あった場合敷金の返還を受けることができます。

Q:相続財産に賃借権が含まれているときに相続放棄で気を付けることはある?

借主の相続人が相続放棄する場合に、賃貸借契約の解約の申入れをしたり、形見分けの範囲を超えて残置物を処分したりすると、相続を承認したものとみなされて相続放棄ができなくなるおそれがあります。貸主から解約書類の押印を求められたり、残置物を処分して明け渡すように求められるケースがありますが、このような求めに応じたり、支払期限の到来していない家賃を亡くなった借主の財産から支払った場合も、相続放棄ができなくなる懸念が生じます。

Q:建物の賃借権の相続税評価額は、どのように計算すべき?

建物の賃借権は、相続税の計算上、評価しません。相続税評価額は0です。

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