弁護士監修記事

特別縁故者として財産分与を受けるために絶対に知っておくべき9のこと

身寄りのない人がなくなって、相続人が誰もいない場合、誰が財産を取得することができるのでしょうか?

この記事では、そのような場合に財産を取得できる可能性のある特別縁故者について説明します。

特別縁故者への相続財産分与の申立ては、1068(出典:2016年度 司法統計)であり、それほど頻繁に行われている手続きではありません。

特別縁故者の制度について、知らない人が多いことが、あまり利用されていないことに関係があるかもしれません。

この記事を通じて、たくさんの方に特別縁故者の制度について知ってもらい、故人の財産を引き継ぐべき人が引き継げるようになればと思います。

是非、参考にしてください。

[ご注意]
記事は、執筆日時点における法令等に基づき解説されています。
執筆後に法令の改正等があった場合、記事の内容が古くなってしまう場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをお勧めします。

特別縁故者とは? 特別縁故者になるための流れ

特別縁故者とは、次のいずれかに当てはまる人のことをいいます。

  • 被相続人と生計を同じくしていた者
  • 被相続人の療養看護に努めた者
  • 被相続人と特別の縁故があった者

被相続人とは、亡くなって財産を残す人のことです。

特別縁故者は、相続人捜索の公告期間内に相続人としての権利を主張する人がいない場合で、家庭裁判所に相続財産分与を申立てて認められた場合に、清算後に残った相続財産の全部または一部を取得することができます。

この相続財産分与の申立ては、相続人捜索の公告期間の満了後3か月以内に行わなければなりません。

相続についての基礎的な知識がないと分かりにくいでしょうから、補足します。

まず、遺言がある場合は、遺言によって指定された人が相続財産を取得する権利をもちます。

遺言がない場合や、遺言があっても一部の相続財産についてしか記載がない場合、それから、受遺者(遺言によって財産を贈られる人)が放棄した場合には、相続人が財産を取得する権利をもちます。

しかし、相続人が存在しない場合やすべての相続人が相続放棄を行った場合は、相続財産が行き場を無くしてしまいます。

そのような場合に、特別縁故者にお鉢が回ってくるのです。

特別縁故者として相続財産の分与を受けるためには、自らが家庭裁判所に財産分与を受けることが相当な特別縁故者であることを認めてもらわなければなりません。

そのための申立てのことを、特別縁故者に対する相続財産分与の申立てといいます。

この申立ては、相続開始後すぐに行うことはできません。

この申立ての前に、まずは、相続財産管理人選任の申立てが必要です(相続財産管理人については「相続財産管理人を選任すべきケースほか相続財産管理人に関する全知識」を参照)。

相続財産管理人が指定されると、まずは、家庭裁判所が、相続財産管理人が選定されたことを知らせるための公告を行います。

そして、その2か月後に、相続財産管理人が、相続債権者(被相続人の債権者)と受遺者に対して請求を申し出るべき旨を2か月以上の期間を定めて官報に公告します。

公告期間満了後、相続財産管理人は、請求を申し出た相続債権者等に対して、相続財産から弁済しつつ、6か月以上の期間を定めて、官報に相続人捜索を公告します。

相続人捜索の公告期間満了後に、特別縁故者に対する相続財産分与の申立てを行うことができるようになります。

相続財産管理人が選任されてから、特別縁故者に対する相続財産分与の申立てを行えるようになるまでに、最低でも10か月はかかります。

特別縁故者に対する相続財産分与の申立てを行うと審判が行われます。

審判によって、財産分与を受けることが相当な特別縁故者であることが認められると、財産分与を受けることができます。

相続財産の全部を取得できるとは限りません。

被相続人とのつながりの度合いに応じて、取得できる財産の割合が異なります。

特別縁故者の要件

次に、どのようなケースが特別縁故者として認められるのか、具体例を基に説明していきます。

まず、前述の通り、特別縁故者とは、次のいずれかに当てはまる人のことをいいます。

  • 被相続人と生計を同じくしていた者
  • 被相続人の療養看護に努めた者
  • 被相続人と特別の縁故があった者

以下、それぞれについて噛み砕いて説明します。

被相続人と生計を同じくしていた者

生計とは生活のための手段や方法のことですから、生計を同じくするとは、同じ財布で生活しているという意味です。

内縁関係にある人や事実上の養子などがこれに当たります。

なお、同居している方が生計を同じくしていると認められやすいですが、同居していなくても認められる場合はあります。

仕事の都合や、通学、療養などの事情がある場合には、別居していても、生活費や学費、療養費などを常に送金していたり、休みの日は一緒に生活している場合等は、生計を同じくしていた者として認められる可能性があります。

被相続人の療養看護に努めた者

平たく言うと介護や看護を頑張ってくれた人のことです。

仕事として介護や看護に当たっただけの看護師や介護士、家政婦などは基本的には除かれますが、療養看護の程度が、仕事として通常期待されるサービスの程度を超えて、近親者の行う世話に匹敵するようなものであった場合は、認められる可能性があります。

例えば、風邪をひいて数日間看病してくれたという程度の看護では認められません。

被相続人と特別の縁故があった者

上の2つと同じくらい密接で、また、相続財産を分与することが被相続人の意思に合致するとみられる人のことです。

自然人に限らず、法人でも認められます。

通常の親族としての交流があったという程度では認められません。

また、被相続人の葬儀や法要を行ったとしても、それは生前の縁故には含まれないため、要件を満たすかどうかの判断には影響しません。

次のような事情は、プラスにはたらくでしょうが、これだけで認められるというものでもありません。

  • 被相続人が財産を譲りたいと言っていた
  • 形式不備で無効となった遺言に受遺者として指定されていた
  • 成年後見人になっていた
  • 身元引受人になっていた
  • 身元保証人になっていた

ケースごとの判断になるので、後述する裁判例を参考にしてください。

特別縁故者に関する裁判例

特別縁故者に関する裁判例をいくつか紹介します。

特別縁故者として認められた例

東京家庭裁判所審判 平成24年4月20日

被相続人との続柄 妻の従妹
被相続人との関係
  • 長期間にわたり被相続人夫妻と交流が続いていた
  • 被相続人が亡くなる7年ほど前からは被相続人自宅の鍵を預かっていた
  • 比較的高い頻度で被相続人自宅を訪問して家事を行い、歩行困難となった被相続人の妻の世話を続けていた
分与財産の価額 2500万円
相続財産の価額 約1億4000万円
相続財産の価額に占める割合 約18%

 

被相続人との続柄 甥の妻
被相続人との関係
  • 被相続人が申立人の夫(被相続人の甥)を唯一の近親者として気にかけ、親密な交流を継続していた
  •   十数年にわたり、被相続人所有の別荘で度々一緒に時間を過ごし、被相続人が申立人夫妻を息子夫婦のように可愛がっていた
  • 被相続人が、もし万一のことがあった場合、財産の管理処分を申立人の夫に託す遺言を書いた旨を伝えた
  • 被相続人との関係は主として申立人の夫を通じたものであった
  • 申立人の夫の死亡後は被相続人と疎遠になっていた
分与財産の価額 500万円
相続財産の価額 約1億4000万円
相続財産の価額に占める割合 約4%

 

東京高等裁判所決定 平成26年5月21日

被相続人との続柄 従兄
被相続人との関係
  •  申立人は、引きこもり状態となった被相続人のことを気にかけていた
  •   被相続人の父の葬儀を執り行った
  • 被相続人の安否確認のため被相続人宅を訪問していた
  • 害虫駆除や建物修理を行った
  • 円滑な親族関係ではなかった
  •   訪問回数、頻度は多くなかった
  • 被相続人の生活を支えていたという状況にはなかった
分与財産の価額 300万円
相続財産の価額 約3億8000万円
相続財産の価額に占める割合 約1%

名古屋高裁金沢支部決定 平成28年11月28日

被相続人との続柄 障害者支援施設の運営者(法人)
被相続人との関係
  • 約35年間入所していた
  • 施設利用料が低廉であった
  • 入所時はほとんど資産がなかった被相続人が貯蓄できた
  •   施設の行った療養看護は、社会福祉法人として通常期待されるサービスの程度を超えて、近親者の行う世話に匹敵すべきものであった
分与財産の価額 約2200万円
相続財産の価額 約2200万円
相続財産の価額に占める割合 100%

 

特別縁故者として認められなかった例

東京高等裁判所決定 平成25年4月8日

被相続人との続柄 内縁の夫
被相続人との関係
  •   被相続人が全財産を申立人に遺贈する意思はなかった
  • 全財産を申立人に遺贈する旨の被相続人名義の遺言書を偽造して相続財産を不法に奪取しようとした
分与財産の価額 なし

 

東京高等裁判所決 平成26年1月15日

被相続人との続柄 従姉の養子
被相続人との関係
  • 被相続人の遺骨を引き取り、供養を行っていた
  •   被相続人との間に本家・分家の親戚付き合いがあった
  •   被相続人に後事を託されたことがあった
  • 被相続人の葬祭や供養等を行うため多額の費用を支出した
  • 被相続人宅の庭木の伐採を行っていた
  • 上の点を考慮しても、特別の縁故があったといえる程度に被相続人との身分関係及び交流があったということはできない
分与財産の価額 なし

 

特別縁故者であることの証明方法

審判で特別縁故者であることを認めてもらうためには、その旨の陳述書を提出するだけでは足りず、客観的な証拠が必要です。

前述の通り、特別縁故者といえるためには、①生計を同じくしていた、②療養看護に努めた、③その他特別縁故があった、のいずれかに該当しなければなりません。

どの要件に該当するのかによって、必要な証拠も異なります。

療養看護に努めたことを主張するなら、次のようなものが証拠として考えられます。

  • 医療費や介護費用の領収証
  • 療養看護のための交通費の領収証
  • 訪問時の写真
  • 献身的に療養看護していたことがわかる手紙やメールのやり取り

その他特別縁故があったことを主張するなら、次のようなものが証拠として考えられます。

  • 密接な関係であったことがわかる手紙やメールのやり取り、写真、日記等
  • 一緒に旅行に行った時などの領収証
  • 被相続人が財産を譲ろうと思っていたことがわかる手紙やメール、日記、形式不備の遺言書

いずれの場合にしても、一つの証拠だけでは証明力が不十分なことが多いでしょうから、できるだけたくさんの証拠を集めることが重要です。

特別縁故者に対する相続財産分与の申立て

特別縁故者に対する財産分与の申立ては、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に対して、相続人捜索公告期間満了後3か月以内に行います。

申立てができるのは、次のいずれかに該当する人です。

  • 被相続人と生計を同じくしていた者
  • 被相続人の療養看護に努めた者
  • その他被相続人と特別の縁故があった者

費用は、収入印紙800円分と、裁判所からの連絡用の切手代約1000円(裁判所によって金額は異なります。)です。

申立てには、申立書、財産目録と、申立人の住民票か戸籍附票が必要です。

申立書と財産目録のフォーマットは、以下のリンクからダウンロードしてご利用ください。

また、記入例はこちらを参考にしてください。

弁護士に依頼した場合の費用

特別縁故者の財産分与請求を弁護士に依頼した場合の費用には、主に、着手金と報酬金があります。

着手金は20万前後、報酬金は分与された財産の価額の15%前後が多いようです。

弁護士を選ぶ際は、料金だけで比較することなく、特別縁故者の財産分与請求に精通しているかどうかや、信頼できるかどうか、相談しやすいかどうか等の観点から総合的に判断して選ぶようにしましょう。

まずは、相続関係に強い事務所に電話で問い合わせたうえで、法律相談に行くとよいでしょう。

安心して任せられそうだと感じた場合は、そのまま依頼しても構いませんし、不安な点があれば、他の事務所にも問い合わせるとよいでしょう。

特別縁故者が相続財産分与を受けた場合に課される税金

相続税

特別縁故者が相続財産分与を受けた場合には、相続税が課されます。

この場合の相続税額は、死亡時ではなく、分与時(裁判所から分与の告知を受けた日)の相続税評価額に基づいて計算します。

例えば、分与時の相続税評価額が1億円の土地を財産分与により取得したとします。

法定相続人はいませんから、基礎控除額は3000万円になります。

1億円-3000万円=7000万円に対して相続税が課されます。

7000万円に対する相続税率は30%、控除額は700万円ですから、7000万円×30%-700万円=1400万円となります。

そして、特別縁故者は、被相続人の一親等の血族には当たらないため、相続税額に2割が加算されます。

1400万円×1.2=1680万円

この場合の相続税額は1680万円になります。

なお、相次相続控除や障害者控除は、特別縁故者の場合は適用を受けることはできません。

相次相続控除について詳しくは、「数次相続とは?数次相続の手続を損なくスムーズに進めるための全知識」の相次相続控除の欄をご参照ください。

また、内縁関係者は相続税の配偶者控除の適用を受けることはできません。

相続税の配偶者控除について詳しくは、「相続税配偶者控除で1億千万円を非課税にする方法とそのデメリット」をご参照ください。

また、この場合の相続税の申告および納付期限は、財産分与があったことを知った日の翌日から10か月以内です。

被相続人の最後の住所地を所轄する税務署で行います。

譲渡所得税、住民税、復興特別所得税

分与された不動産を譲渡した場合に、分与された時よりも価値が上がっていたときは、譲渡所得税と住民税、それから復興特別所得税が課せられる場合があります

これらの税は、譲渡価額から取得費と譲渡費用を差し引いた金額に対して課されます。

※課税価格=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)

分与を受けた場合の取得費は、裁判所から分与の告知を受けた日の時価により評価し、譲渡費用には、鑑定料、仲介手数料、測量費、立退料、取壊し費用などが含まれます。

なお、相続や遺贈、贈与によって取得した場合の取得費は、被相続人や遺贈者、贈与者が取得した時に払った土地や建物の購入代金等から減価償却費相当額を差し引いた金額となります。

また、所得税の税率は、長期譲渡所得か短期譲渡所得かによって異なります。

売却した年の1月1日時点で5年超の所有期間がある場合は長期譲渡所得、5年以下の場合は短期譲渡所得となります。

長期譲渡所得の場合は、所得税率15%、住民税率5%となり、短期譲渡所得の場合は、所得税率30%、住民税率9%となります。

復興特別所得税は、それぞれの所得税率の2.1%です。

3つの税率を合算すると、長期譲渡所得の場合は20.315%、短期譲渡所得の場合は、39.63%となります。

なお、分与の場合は、分与により財産を取得した日から譲渡した時点までの期間によって、短期か長期かを判定し、相続や遺贈、贈与によって取得した場合は、被相続人や遺贈者、贈与者が取得した時点から、相続人や受遺者、受贈者が譲渡した時点までの期間によって、短期か長期かを判定します。

不動産取得税、登録免許税

不動産取得税と登録免許税は、固定資産税評価額に対して、それぞれ4%と2%です。

不動産取得税については、2021年3月31日までに取得した土地及び住宅については3%に税率が軽減されます。

不動産取得税については、ほかにも様々な軽減措置があるので、各都道府県の税金に関する問い合わせ窓口で確認するとよいでしょう(不動産取得税は国税ではないので、税務署では答えられません。)。

 

特別縁故者として認められなかった場合、相続財産はどうなる?

特別縁故者として認められなかった場合、相続財産は国庫に帰属することになります。

特別縁故者として認めてもらうよりも確実な方法

亡くなった後に特別縁故者として財産分与を請求するよりも、生前に、次のようなことをしておくことで、確実に財産を取得することができます。

  • 婚姻
  • 養子縁組
  • 遺言書

事実婚関係の場合は、婚姻届を出して、法定婚の関係になっておくことで、確実に財産を受け取ることができますし、税金対策としても、基礎控除額が増えたり、配偶者や控除を受けられたり、2割加算がなくなるので、有用です。

事実上の養子の場合は、法的に養子縁組を行っておくことが対策になります。

事実婚や事実上の養子ではない場合は、遺言書によって遺言を受けることで、確実に財産を受け取ることができます。

遺言書について詳しくは、「遺言書の正しい書き方とは?思いどおりに財産を承継させるポイントを解説!」をご参照ください。

まとめ

以上、特別縁故者について説明しました。

家族同然の付き合いある高齢の方に身寄りがない場合、なるべく生前に遺言などの対策をとれれば、それがベストです。

遺言などの話をこちらからするのは気が引けるかもしれませんが、向こうからしてきた場合は、遠慮してはぐらかさずに、真剣に耳を傾けて対応すべきでしょう。

対策をとる前に亡くなってしまった場合は、この記事を参考に、特別縁故者として財産分与の請求を検討するとよいでしょう。

不明な点は、相続に強い弁護士に相談するとよいでしょう。

 

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