税理士監修記事

夫婦間贈与で課税されない方法と不動産贈与の配偶者控除のデメリット

夫婦間での贈与にも贈与税は課税されるのでしょうか?

また、相続税対策として、夫婦間贈与を有効に活用する方法はあるのでしょうか?

「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」は、どのような場合に有効に活用できるのでしょうか?

この記事では、以上のような疑問を解消し、夫婦間贈与を有効に活用していただける情報を提供します。

是非、参考にしてください。

[ご注意]
記事は、執筆日時点における法令等に基づき解説されています。
執筆後に法令の改正等があった場合、記事の内容が古くなってしまう場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをお勧めします。

贈与税の基礎知識

本題に入る前に、まず、贈与税について簡単に説明します。

贈与税は、個人から財産をもらったときにかかる税金です。

夫婦間贈与でも基本的には贈与税がかかります。

ただし、贈与税がかからない場合もあり、その点については、後述します。

贈与税がかかる場合は、課税方式ごとに定められた計算方法に基づいて計算します。

贈与税の課税方式には、次の2つがあります。

  • 暦年課税
  • 相続時精算課税(夫婦間贈与には適用できない)

贈与者ごとにどちらかの方式を選択することができますが、夫婦間贈与の場合は、暦年課税で計算することになります。

暦年課税とは、1月~12月までの1年間に受けた贈与に対して課税する方式です。

暦年課税には年間110万円の基礎控除があり、年間110万円を超えた贈与が課税対象となります。

暦年課税について詳しくは「暦年課税とは?暦年課税と相続時精算課税はどちらが得か?」をご参照ください。

相続時精算課税は、贈与者が60歳以上(贈与の年の1月1日時点)の親や祖父母で、受贈者(贈与を受ける人)が20歳以上(贈与の年の1月1日時点)の子や孫への贈与に対してのみ選択することができる制度で、贈与者一人につき、累計で2500万円まで贈与税が非課税とされる制度です。

非課税とされた分は、贈与者が亡くなった時に相続税が課税されます。

夫婦間贈与については、相続時精算課税を選択することができません。相続時精算課税について詳しくは「相続時精算課税制度を迂闊に利用して大損しないために知るべきこと」をご参照ください。

夫婦間贈与で贈与税の課税対象とならない場合

次の財産の贈与は、贈与税の課税対象となりません。

  • 扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの
  • 相続や遺贈により財産を取得した人が、相続があった年に被相続人から贈与により取得した財産

なお、夫婦間の贈与ではありませんが、離婚後の財産分与や慰謝料、養育費についても贈与税の対象とはなりません。

生活費や教育費

夫婦や親子、兄弟姉妹には、互いに扶養義務があります。

扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるものについては、贈与税の課税対象となりません。

ここでいう生活費は、その人にとって通常の日常生活に必要な費用をいい、また、教育費とは、学費や教材費、文具費などをいいます。

通常の日常生活に必要な費用にどこまで含まれるかは、その人の生活レベルによって異なりますが、例えば、次のようなものが含まれると考えられます。

  • 結婚式の挙式費用
  • 家具の購入費用
  • 自家用車の購入費用(ただし、嗜好品としてのクラシックカー、スポーツカーの場合は贈与税がかかる可能性あり)

なお、贈与税がかからない財産は、生活費や教育費として必要な都度直接これらに充てるためのものに限られます。

したがって、生活費や教育費の名目で贈与を受けた場合であっても、それを預金したり株式や不動産などの買入資金に充てている場合には贈与税がかかることになります。

相続があった年に被相続人から贈与により取得した財産

相続があった年に被相続人(亡くなって財産を残す人)から贈与により取得した財産には、贈与税がかからず、相続税がかかります。

例えば、夫から妻に財産を贈与し、その年の内に夫が亡くなったとします。

その場合は、贈与税ではなく、相続税が課せられるということです。

贈与が認められず相続税がかかることがある

贈与は契約であり、贈与契約が成立するためには双方の合意が必要です。

ですので、例えば、妻に内緒で妻名義の口座に入金したような場合は、贈与があったとは認められないことがあります。

贈与が認められないと、妻名義の口座にあるお金でも夫のお金ということになります。

そうなると、夫が亡くなった時に、相続財産となり、相続税の課税対象となってしまいます。

夫婦間で口座のお金を移動させただけでも贈与税はかかる?

夫名義の口座から妻名義の口座にお金を移動させるだけでも贈与税はかかるのかという質問を受けることがあります。

口座の移動に贈与税がかかるかどうかの判断には、その口座が名義の話ではなく実質的に誰のものかという点が関係します。

例えば、夫名義であれ、妻名義であれ、夫婦の共有財産を管理するための口座なのであれば、口座の移動があっても、夫婦の共有財産であることに変わりがなく、贈与が行われたわけではありませんので、当然、贈与税もかかりません。

これに対して、夫の財産を管理する口座から妻の財産を管理する口座に、双方の合意の下でお金が移動された場合は、贈与税がかかります。

へそくりには贈与税がかかる?

例えば、夫が働いていて、妻が専業主婦で、毎月、夫が妻に生活費を渡していたとします。

その場合に、余った生活費を妻がへそくりとして貯めていた場合は、そのお金には贈与税がかかるのでしょうか?

贈与税がかかるどうかを判断するためには、そのお金が誰のものかという点が重要です。

妻が夫に内緒でへそくりを貯めていた場合は、へそくりが妻の管理下にあっても、夫の財産と考えられます。

したがって、贈与税はかからず、夫が亡くなった時に相続税の対となります。

他方、生活費が余った場合に妻の小遣いとすることに夫が同意していた場合は、余った生活費について夫から妻への贈与があったと考えられるので、贈与税の課税対象となります。

現金の場合でも夫婦間贈与を申告しないとばれる?

法律上は贈与税がかかることになっていたとしても、現金での贈与の場合は、贈与税を申告しなくても、税務署にばれることはないのではないかということを考える人がいます。

確かに、ばれなかったケースもゼロではないでしょうけども、基本的にはばれると考えおいたほうがよいでしょう。

現金での贈与であっても、相続税の申告の際に、税務署は、被相続人の収入の割に相続財産の額が少なくないかをチェックします。

税務署が怪しいと感じた場合は、税務調査が入ることになります。

税務調査が入ると、過去の口座の履歴なども含めて、収入、支出、資金移動等について細かく調査され、整合性がとれない部分があぶりだされます。

その際に、何年も前の贈与についても発覚するのです。

申告漏れが発覚すると、延滞税や加算税が課せられたり、場合によっては刑事罰の対象となることもあります。

そのようなことにならないように、「現金で贈与すれば、ばれないかもしれない」という考えは捨てるべきでしょう。

贈与税の配偶者控除

「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」とは?

夫婦間贈与の贈与税は、「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」の適用を受けられる場合があります。

この制度は、「おしどり贈与」、「夫婦間贈与の特例」とよばれることもありますが、この記事は、「贈与税の配偶者控除」とよぶことにします。

贈与税の配偶者控除は、婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、「居住用不動産」または「居住用不動産を取得するための金銭」の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除できるという特例です。

贈与税の配偶者控除の要件

贈与税の配偶者控除を受けるためには、次の要件を満たさなければなりません。

  • 夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと
  • 配偶者から贈与された財産が、自分が住むための国内の居住用不動産であることまたは居住用不動産を取得するための金銭であること
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した国内の居住用不動産又は贈与を受けた金銭で取得した国内の居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること

なお、贈与税の配偶者控除は同じ配偶者からの贈与については一生に一度しか適用を受けることができません。

贈与税の配偶者控除を受けられる居住用不動産とは?

贈与税の配偶者控除を受けられる居住用不動産とは、贈与を受けた配偶者が居住するための国内の家屋又はその家屋の敷地です。居住用家屋の敷地には借地権も含まれます。

なお、居住用家屋とその敷地は一括して贈与を受ける必要はありません。

したがって、居住用家屋のみあるいは居住用家屋の敷地のみ贈与を受けた場合も贈与税の配偶者控除を適用できます。この居住用家屋の敷地のみの贈与について贈与税の配偶者控除を適用する場合には、次のいずれかに当てはまることが必要です。

  • 夫か妻が居住用家屋を所有していること。
  • 贈与を受けた配偶者と同居する親族が居住用家屋を所有していること。

具体的な事例を2つ説明します。

  • 妻が居住用家屋を所有していて、その夫が敷地を所有しているときに妻が夫からその敷地の贈与を受ける場合
  • 夫婦と子供が同居していて、その居住用家屋の所有者が子供で敷地の所有者が夫であるときに、妻が夫からその敷地の贈与を受ける場合

また、居住用家屋の敷地の一部の贈与であっても、贈与税の配偶者控除を適用できます。

なお、居住用家屋の敷地が借地権のときに金銭の贈与を受けて、地主から底地を購入した場合も、居住用不動産を取得したことになり、贈与税の配偶者控除を適用できます。

贈与税の配偶者控除の適用を受ける方法

贈与税の配偶者控除の適用を受けるためには、次の書類を添付して、贈与税の申告をすることが必要です。

  • 財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍謄本または抄本
  • 財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍の附票の写し
  • 居住用不動産の登記事項証明書その他の書類で贈与を受けた人がその居住用不動産を取得したことを証するもの

上記の書類のほかに、金銭ではなく居住用不動産の贈与を受けた場合は、その居住用不動産を評価するための書類(固定資産評価証明書など)が必要となります。

不動産の贈与のデメリット(相続との比較)

贈与税の配偶者控除を受けられるからといって、不動産を生前贈与することは、相続した場合と比べて、必ずしも得になりません。

なぜなら、不動産の贈与を受けると、相続の場合よりも余計に税金がかかってしまう場合があるからです。

余計にかかる税金は、不動産取得税と登録免許税です。

不動産取得税は、不動産を取得した場合にかかる税金です。

相続で取得した場合には不動産取得税はかかりませんが、贈与で取得した場合は、固定資産税評価額に対して、宅地は1.5%、家屋は3%の不動産取得税がかかります。

登録免許税は、不動産を登記する際に課税される税金です。

相続の場合の税率は0.4%ですが、贈与の場合は2%かかります。

贈与税の配偶者控除を受けても得にならないケース

このように、贈与の場合は、相続と比べて、余計に不動産取得税や登録免許税がかかることがあります。

しかし、不動産取得税や登録免許税の分以上に、生前贈与するメリットがあれば、生前贈与する意味があるといえます。

この点、配偶者に自宅を生前贈与する目的の多くは、相続税対策でしょう。

しかし、贈与税の配偶者控除を受けて自宅を生前贈与しても、まったく得にならないケースがあります。

それは、相続税がかかるほどの財産がないケースです。

基礎控除額を上回る財産がなければ相続税はかかりません。

相続税の基礎控除額は「3000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。

相続税の基礎控除額について詳しくは「相続税の基礎控除額の計算方法と控除額を増やして節税する実践的な方法」をご参照ください。

また、相続税には、「配偶者の税額の軽減」制度(「相続税の配偶者控除」ともよばれます。)があります。

「配偶者の税額の軽減」とは、亡くなった方(被相続人)の配偶者が相続した財産が、下記の1と2の金額のうちのいずれか多いほうの金額以下である場合には、相続税がかからない制度のことです。

  • 1億6000万円
  • 自身(配偶者)の法定相続分相当額

つまり、配偶者が相続した財産が、自分の法定相続分相当額より少ない場合か、法定相続分より多くても1億6000万円を下回る場合には、相続税を支払う必要がないのです。

「配偶者の税額の軽減」について詳しくは「相続税配偶者控除で1億6千万円を非課税にする方法とそのデメリット」をご参照ください。

また、相続の場合は、「小規模宅地等の特例」の適用を受けることによって、被相続人等の事業用の宅地や、被相続人の居住用の宅地のうち、限度面積までの部分については、相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、一定の割合が減額されます。

居住用の宅地の場合は、330平方メートルまでの部分について、80%が減額されます。

「小規模宅地の特例」について詳しくは「小規模宅地等の特例で8割減で大幅に節税する方法と意外な落とし穴」をご参照ください。

以上から、配偶者に相続税がかかるケースは、配偶者が法定相続分を超えて相続し、かつ、多額の資産があるというケースであることが分かります。

贈与税の配偶者控除を利用すべきケース

贈与税の配偶者控除を利用すべきケースは、次のすべてを満たすような場合です。

  • 配偶者に法定相続分を上回る財産を残す場合
  • 相続税の基礎控除、配偶者の税額の軽減、小規模宅地等の特例を駆使しても、相続税がかかるほどの財産がある場合
  • 贈与税の配偶者控除を利用した生前贈与による節税メリットが、前述の不動産取得税や登録免許税の増加分よりも大きい場合

まとめ

以上、夫婦間贈与について説明しました。

贈与税や相続税がかかるかどうかはケースによりけりなので、少しでも不安な場合は申告前に贈与や相続に強い税理士に相談することをお勧めします。

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