相続税の配偶者控除で納税ナシ⁉制度の仕組みを知って上手に節税

相続税の計算においては、配偶者は1億6,000万円まで非課税!などと聞いたことはありませんか?

この制度、実は配偶者の相続金額が2憶円だったとしても非課税になる場合があるのです。

いったいどういうことでしょうか?

相続税の計算における配偶者の税額軽減の仕組みを理解すれば簡単にこの謎は解けます。

この制度は節税にはとても有効ですが、利用の仕方によってはかえって相続税が高くなってしまうリスクもあります。

この記事では、配偶者の税額軽減制度の内容と計算方法をわかりやくすく解説、さらにこれを利用して上手に相続税を軽減する方法について説明していきます。

[ご注意]
記事は、公開日(2018年7月23日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。

相続の配偶者控除とは

相続税の配偶者控除とは、正式には”配偶者の税額軽減”制度といいます。亡くなった方(被相続人)の配偶者が相続した正味の遺産額が、下記の1と2の金額のうちのどちらかが大きい金額までは、相続税がかからない制度のことです。

  1. 1億6,000万円
  2. 配偶者の法定相続分相当額

1.1億6,000万円より少ないと非課税とは

配偶者の正味相続分が1憶円の場合

1億円<1憶6,000万円=非課税

2.配偶者の法定相続分相当額より少ないと非課税とは

配偶者の正味相続分2億円だが、「法定相続分」が3億円の場合

2億円<3億円=非課税

つまり、配偶者が相続した財産が1億6,000万円を下回る場合や、自分の法定相続分より少ない場合には、相続税を支払う必要がないのです。

法定相続分とは?
法定相続分とは、法律で定められた相続人が遺産を受け取ることのできる割合を言います。

血縁相続人 血縁相続人の相続分 配偶者の相続分
1/2 1/2
直系尊属 1/3 2/3
兄弟姉妹 1/4 3/4

相続人ごとの法定相続分を詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

配偶者控除を受けることができる配偶者とは

配偶者控除を受けることができる配偶者は、相続開始の時点(被相続人が亡くなった時点)において、法律上婚姻関係にあった配偶者に限られます。

別居中でも婚姻関係にあれば対象

法律上婚姻関係にあればよいので、別居しているとか、離婚調停中であるような場合でも、この配偶者控除の制度を利用することができます。

同居でも内縁関係と事実婚は対象外

内縁関係にあった(事実婚状態にあった)事実上の配偶者や、被相続人が亡くなる前に離婚届を提出してしまった元配偶者は、仮に、遺言等によって財産を相続したとしても、この配偶者控除を利用することはできません。

配偶者控除の計算方法

以下の例題に沿って、配偶者控除がどのように計算され、相続税算出へどのように影響するのかをみてみましょう。

【例題】以下の条件の場合の配偶者の納税額を求めてみます。

  • 遺産額:相続財産の総額が2億円
  • 相続人の数:法定相続人が配偶者と子供2人
  • 分割割合:配偶者が2分の1、子供二人がそれぞれ4分の1ずつ相続する

ステップ1:基礎控除の額の計算する

まず、基礎控除の額は、3,000万円+600万円×法定相続人の数なので、4,800万円となります。

計算式:3,000万円+600万円×3人=4,800万円

ステップ2:課税遺産総額の計算する

基礎控除額が4,800万円なので、課税遺産総額は1億5,200万円となります。

計算式:2億円-4,800万円=1億5,200万円

ステップ3:「仮」の相続税額を計算する

各相続人が法定相続分通りに相続すると仮定して仮の相続税を計算します。

各相続人の相続税額は、以下の計算式で求めます。

(課税遺産総額)×(法定相続分)×(税率)-(控除額)

仮の相続税額は、配偶者:1,580万円、子供一人当たり560万円×2人分を合計して、2,700万円となります。

配偶者の仮の相続税額1,580万円の計算式:

計算式:1億5,200万円×1/2×30%-700万円=1,580万円

税率は国税庁No.4155 相続税の税率と控除額を適用。

子供一人当たりの仮の相続税額560万円の計算式:

計算式:1億5,200万円×1/4×20%-200万円=560万円

税率は国税庁No.4155 相続税の税率と控除額を適用。

ステップ4:実際の相続税額を計算する

仮の相続税額から相続税の総額を求めた後、これを各人相続人が実際に相続した割合をかけて各相続人の実際の相続税額を計算します。

【例題】では以下のように分割割合を指定していますので、

  • 分割割合:配偶者が2分の1、子供二人がそれぞれ4分の1ずつ相続する

各相続人の実際の相続税額は、配偶者:1,350万円、子供一人当たり560万円となります。

実際の相続税額算出の計算式:

配偶者の相続税額:2,700万円×1/2=1,350万円

子供一人当たりの仮の相続税額:2,700万円×1/4=675万円

ステップ5:配偶者控除額を利用して納税額を計算する

配偶者控除は、法定相続分相当額か1億6,000万円の高い方に相当する相続税額までの金額について税額控除が認められます。
例題では配偶者の正味相続分は、配偶者の法定相続分相当額は遺産総額2億円×1/2=1億円です。
配偶者控除の基準の一つ、1億6,000万円と比べるとの方が高いため、配偶者の納税額は0円という結果になります。

1,350万円-1,350万円(最大4,700円)=0円

配偶者控除を受けるためにすべきこと

配偶者控除を受けるためには、相続税の申告書において、税額軽減の明細を記載する方法で行います。

そのうえで、相続税の申告書を提出する際に、遺言書の写しや遺産分割協議書の写しなど、配偶者が取得した財産がわかる書類を添付する必要があります。

自分で試算してみて、納税不要という結果になったとしても、申告は必ずおこなう必要がありますので、気を付けましょう。

配偶者控除の使い方を間違うと納税額が増える⁉

配偶者控除の最大の落とし穴は二次相続

配偶者控除は遺産総額が1億6,000万円までか、法定相続分相当額までは相続税がかからない制度であるため、とにかく配偶者に相続税がかからない最大限相続させるのが、相続税の計算上、最も有利であるかのように考えられがちです。

確かに、その時の相続税だけを考えれば、配偶者に相続税がかからない最大限相続させることで、相続税を軽減することができます。

しかし、その後、その配偶者が亡くなったときの相続(二次相続)にかかる相続税のことまで考慮すると、配偶者に多く相続させた方が必ずしも相続税が少なくなるとは言い切れないのです。

この点について、相続税が累進課税であることや、相続人の数によって、相続税が影響を受けるという点から詳しく見てみたいと思います。

相続税が累進課税であることの影響

例えば、法定相続分に対応する相続財産が5,000万円以下であれば、税率は20%であるのに対し、法定相続分に対応する相続財産が2億円以下であれば40%となっています。

このように、日本の相続税は累進課税制度を採用しているため、配偶者に多くの財産を相続させてしまうと、その配偶者が亡くなった時の相続(二次相続)における相続財産が増えてしまうことで税率が上がってしまい、相続する子供達にかかる相続税が多くなってしまう可能性があるのです。

特に、配偶者が、最初の相続において相続した財産以外に、自分の固有の財産を保有している時には、より影響が大きいといえます。

両親が高齢で相続が続きそうなときは、節税を検討する際に重要なポイントになります。

<具体例>

仮に、被相続人に配偶者と子供が3人いて、相続財産の額が1億5,000万円であったとします。

被相続人が亡くなった際の相続(一次相続)において、配偶者控除を利用すれば1億6,000万円までは配偶者には相続税がかからないと、相続財産1億5,000万円を全て配偶者が相続すれば、一度目の相続では相続税が発生しません。

そして、すぐに二次相続が発生したとしましょう。

子供3人が配偶者独自の財産がなくても1億5,000万円の財産を相続することになります。

子供3人が法定相続分で分配し、3分の1の5,000万円ずつ相続したとすると、子供が支払わなければならない相続税は、合計1,440万円(一人当たり480万円)となります。

これに対し、一次相続の際に、配偶者は法定相続分である2分の1(7,500万円)だけ相続し、子供たち3人が6分の1(2,500万円)ずつ相続したとすると、一次相続の際の相続税は、合計で570万円(配偶者:0円、子供一人当たり190万円)となります。

そして、二次相続で、子供3人が、配偶者の相続財産7,500万円を3分の1(2,500万円)ずつ相続したとすると、相続税の合計額は270万円(一人当たり90万円)で、一次相続と二次相続の相続税を合わせても、合計840万円(子供一人当たり280万円)となります。

一次相続で配偶者控除で非課税にし、二次相続での納税額=1,440万円

一次相続で配偶者控除を有効利用したときの一次相続と二次相続との合計納税額=840万円

後者の方が合計で、600万円も安くなります。配偶者はどちらのケースでも相続税は0円で済みますが、相続人である子供は納税額が増えてしまうことがあるのです。

申告期限に間に合いそうにないときは?

先述の通り、配偶者控除については、原則として、相続税の申告期限までに遺産分割の協議がまとまっている必要があります。

相続税の申告期限は、「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内」とされています。

ただ、例外的に、申告の際に、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付する方法によって、申告期限までに遺産分割の協議がまとまっていなくても、申告期限から3年以内に分割することができれば、配偶者控除を適用することができます。

なお、相続税の申告期限から3年以内に分割できなかった場合でも、分割できなかったことにやむを得ない事情がある場合で、税務署長の承認を受けた場合は、そのやむを得ない事情がなくなった日の翌日から4か月以内に分割することができれば、配偶者控除を適用することができます。

配偶者控除と二次相続について相談は誰にすればいい?

相続税の節税の相談はやっぱり税理士!

配偶者控除は、一見すると、配偶者が相続する財産が1億6,000万円までであれば、相続税が発生しないため、配偶者にできるだけ相続させた方が有利な制度に思えます。

しかし、上記の具体例で示したように、二次相続まで考慮にいれると、必ずしも、配偶者にできるだけ多くの財産を相続させることが相続税の軽減にはならない場合があるのです。

ただ、配偶者控除によって軽減できる相続税額は大きいので、全く利用しないというのも得策ではなく、二次相続まで考えて最も有利なように利用するのがベストな選択といえるでしょう。

また、相続税の算定においては、配偶者控除以外にも、小規模宅地の特例等様々な軽減措置があります。それらを加味しての試算は、一般の方には容易ではありませんが、相続税をできるだけ軽減するには、これらの軽減措置も考慮して、誰がどの財産を相続するかを決めることが大切です。

節税対策の効果を発揮させるための強力なツールは遺言

節税対策をしっかり検討するうえで、財産を誰に相続させるかを決めたのなら、遺言を作成しましょう。それがないと、法定相続分で分配することになります。

自分で作成することもできますが、法的に細かい決まりがあり、それに則っていないと無効になるおそれがあります。専門家に作成をお願いすることで、そのような心配のなくなります。

遺言書を作成や、相続税のシュミレーションを税理士などの専門家に相談されることをおすすめします。

まとめ

長年連れ添ってきた配偶者が自分の死後の生活に困らないよう、できる限り財産を残してあげたいと思われる方は多いと思います。

また、これまでの配偶者の貢献に対する感謝の気持ちとして、一定の財産を相続させたいという方もおられるでしょう。

配偶者控除はそのような配偶者に対する相続について、相続税を軽減する制度ですが、一見簡単なようで落とし穴もあるため、その適用を検討する際には十分注意することが必要です。

使い方次第では、相続税を上手に軽減することができますので、専門家と相談しながら配偶者控除の制度をうまく利用されることをおすすめします。

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この記事を書いた人

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