弁護士監修記事
遺品整理を自分達でする場合と業者に依頼する場合のそれぞれのポイント

親族等が死亡した後、故人が所有していた物の整理、処分等(遺品整理)をしなければならないケースがあります。
この記事では、遺品整理に関する次のような疑問を解消することを目的としています。
- 遺品整理をせずに、そのままにしておいてもよいか?
- 誰が遺品整理をすべきか?
- いつ、遺品整理をすべきか?
- どのように遺品整理を進めればよいか?
- 遺品整理業者に依頼する場合の注意点
- 遺品整理業者とトラブルになった場合はどうすればよいか?
- 遺品整理の料金相場
- 遺品整理業者の選び方
是非、参考にしてください。
[ご注意]
記事は、執筆日時点における法令等に基づき解説されています。
執筆後に法令の改正等があった場合、記事の内容が古くなってしまう場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをお勧めします。
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目次
遺品整理とは?
遺品整理とは、読んで字のごとく、遺品を整理することをいいます。
遺品とは、亡くなった人が残した家財等の物のことです。
遺品と似た言葉に「遺産」という言葉がありますが、遺産とは、亡くなった人が残した財産のことを言います。
財産的な価値のない物は、通常、遺産とは言いませんが、遺品には、財産的な価値のない物も含まれます。
なお、遺産には、物だけではなく、債権(金銭を受け取る権利等)や債務(金銭を支払う義務等)も含まれますが、遺品には、基本的には、債権や債務は含まれません。
一方、遺品整理は、家財等の物だけでなく、パソコンやスマートフォン等に保存されているデータの整理、SNS等のウェブサービスのアカウントの整理についても対象とする場合があります。
また、生前に自分の家財等を整理することを生前整理といます。
遺品整理をせずに、そのままにしておいてもよい?
遺品に経済的価値のある財産が含まれている場合がありますが、遺品整理をすることによって遺品に含まれる財産の価額が明らかになり、遺産総額を確定することができます。
遺産分割や相続税申告に当たっては、遺産総額を確定しなければなりません(遺産総額を確定しなければ遺産分割ができないわけでありませんが、確定した方が遺産分割協議をスムーズに進めることができるしょう)。
遺品整理は必ずしなければならないわけではありませんが、遺品整理をしない場合において、遺産分割または相続税申告の必要がある場合は、何らかの方法で遺品を評価しなければなりません。
遺品整理をしない場合の遺産分割
遺産分割は、遺産をもらい受ける権利のある人(主に相続人)が複数いる場合に必要になります。
遺言がない場合は、基本的には、法定相続分に基づいて遺産を分割することになります。
法定相続分とは、法律で定められた相続財産の受け取り分(割合)のことです。詳しくは「法定相続分とは。相続人の組み合わせパターン別の計算方法」をご参照ください。
遺品整理をする場合、遺品の中の経済的価値のある財産は、売却金額を見積もって売却するかどうかを相続人が決めることになりますが、売却するかどうかにかかわらず、遺品は見積もり金額で評価することができます。
もっとも、遺産分割のための遺産の評価は、相続人全員が評価額に納得していれば問題ないので、見積もり金額とは異なる金額で評価しても構いませんし、見積もりを取らずに自分たちで自由に評価しても構いません。
遺品整理をしない場合の相続税申告
相続税は、相続すると必ず課税されるわけではなく、遺産額が少ない場合(簡単に言うと基礎控除額以下の場合)は、課税されず、申告も不要です。
詳しくは、「相続税はいくらからかかるのか?いくらまで無税なのか?」をご参照ください。
遺産額が大きく、相続税がかかる場合は、遺産を評価しなければなりませんが、相続税申告にあたっての遺産の評価は遺産分割の場合とは異なり相続人が自由に評価額を決めることができず、国税庁の相続財産評価に関する基本通達に従って評価しなければなりません。
遺品整理をして不要な財産を売却した場合は、通常、売却価格で評価して問題ないでしょう。
遺品整理をしない場合や売却しない場合も、買取見積を取っていれば、見積額で評価しても通常は問題ないでしょう。
もっとも、相続税申告については、事前に相続税に精通した税理士に相談することをお勧めします。
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借家の場合は明渡しが必要
亡くなった人の住居が借家の場合は、住居を貸主に明け渡すために遺品整理が必要です。
財産的価値のある遺品を処分すると相続放棄できなくなる
財産的価値のある遺品を処分すると、相続放棄ができなくなることがあります。
また、遺品整理の費用を遺産から支払う等のように、遺産に手を付ける行為があった場合も相続放棄ができなくなる場合があります。
相続放棄とは、相続人が被相続人の権利や義務の一切の相続をしない選択をすることをいい、被相続人に権利(プラスの財産)よりも義務(支払債務等のマイナスの財産)の額の方が大きい場合に、主に選択されます。
財産的価値のないゴミ等の処分や、通常の形見分けを受け取る程度であれば、相続放棄が否定されることは基本的にはありませんが、事前に弁護士に相談するとよいでしょう。
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なお、亡くなった人が借家住まいだった場合、大家さんが相続人に対して明渡しを求めることがあります。
相続放棄をしない場合は、相続人は、遺品整理をする等して、この求めに応じる義務がありますが、相続放棄をする場合は、明渡しに関与する義務はありません。
明渡しに関与すると、相続放棄が認められなくなったり、認められた相続放棄が否定されることがあります。
明渡しやそのための遺品整理は、相続放棄をしない相続人に任せて構いません。
相続人全員が相続放棄する場合は、貸主は、相続財産管理人選任の申立てをして、相続財産管理人に対して明渡しを求めなければなりません。
しかし、相続財産管理人の選任を受けて明渡しを受けるまでには手間も時間もお金もかかるため、貸主は、相続財産管理人の選任を申し立てずに、相続放棄をした相続人に遺品整理と明渡しを求めることがあります(相続財産管理人については「相続財産管理人を選任すべきケースほか相続財産管理人に関する全知識」参照)。
このような場合でも、相続放棄した人は、遺品整理や明渡しに関与する必要はありません。
誰が遺品整理をすべき?
遺品整理は、相続する権利を有する人がすべきです。
法的に有効な遺言がある場合は、原則として、遺言で指定された人が遺産を取得する権利を有しますが、法的に有効な遺言が無い場合は、法定相続人(民法の定めに従って相続人となる人)が財産を相続する権利を有します。
なお、法的に有効な遺言がある場合でも、遺言によってすべての遺産の処分が指定されていない場合は、指定されていない遺産については、法定相続人が相続する権利を有しますし、また、受遺者(遺言によって遺産を取得する人)によって遺贈(遺言によって遺産を与えること)が放棄された場合でも、放棄された遺産については法定相続人が相続する権利を有します。
配偶者は必ず法定相続人となり、子がいる場合は子も必ず法定相続人となります。
法定相続人については、「法定相続人の範囲と順位や法定相続分について図でわかりやすく説明!」をご参照ください。
前述のとおり、相続放棄をした場合は、遺品整理をしなくてもよいですし、むしろ、しない方がよいでしょう(遺品整理をしたことによって相続放棄が否定されるおそれがあるため)。
なお、遺品整理業者を利用しても構いません。
遺品整理業者の費用は、遺産からではなく、相続人自身が負担します。
相続人が複数いる場合は、基本的には相続分(相続割合)に応じて負担すべきですが、相続人間の話し合いによって、相続分とは異なる割合で負担しても構いません。
いつ遺品整理をすべき?
遺品整理は、遺産分割協議を開始する前に、済ませた方がよいでしょう。
遺品整理中に新たな財産が見つかった場合は、遺産分割協議をやり直さなければならないことがあるからです。
遺産分割に期限はありませんが、宙に浮いた状態で遺産を放置しておくことはよくないので、気持ちの整理がついた段階で早めに遺品の整理にとりかかることをお勧めします。
また、亡くなった人が借家に住んでいた場合は、遺品整理をして明渡しが済むまでに家賃がかかるため、一層、早めに取り掛かった方がよいでしょう。
遺品の分類
遺品整理は、一つ一つの遺品を、次のいずれかに分類することから始めます。
- 相続するもの
- 売却したいもの
- 寄付するもの(寄付する予定がある場合)
- 貴重品(預金通帳等)
- 形見となるようなもの
※「形見分け前に知っておくべきマナー・トラブル事例・時期等の全知識」参照 - 処分するもの
段ボール箱を用意して、分類していくとよいでしょう。
すぐに決められないものがある場合は、「未定のもの」の箱に入れておいて、後から分類するとよいでしょう。
また、値が付くなら売却したいが、値が付くかどうか分からないものについては、「売却」に仕分けするとよいでしょう。
遺品の売却
遺品の売却方法としては、次のような方法が考えられます。
- フリーマーケットサイトやオークションサイトに出品する
- リサイクルショップに持ち込む
- 遺品の買取業者にまとめて売却する
一概には言えませんが、上から順に高値で売れる可能性が高い半面、手間がかかるでしょう。
安くてもよいから手間を掛けたくない場合は、買取業者にまとめて売却した方がよいでしょう。
遺品の買取業者に依頼する場合は、通常、遺品の仕分けからやってもらえます。
なるべく高値で売りたい場合は、一品一品、フリーマーケットサイト等に出品するとよいでしょう。
お勧めの折衷案としては、一旦、遺品の買取業者から買取見積もりを取って、見積もり金額よりも高値で売れそうなものについては、買取対象から外して個別にフリーマーケットアプリ等で売却する方法です。
遺品の処分
遺品には、粗大ごみとして処分しなければならないものが含まれていることが多いです。
粗大ごみの収集日は自治体によって異なりなりますが、多くの自治体では月に2回程度しか収集日がなく、事前予約が必要なことが多いです。
また、家の中から収集場所までは、自分で移動させなければなりません。
収集日以外の日に粗大ごみを処分したい場合は、自らごみ処理施設に持ち込まなければなりません。
このような対応が難しい場合は、費用は割高になりますが、遺品整理業者に依頼するとよいでしょう。
遺品整理業者に依頼すると、前述のとおり、通常、遺品の処分だけでなく遺品の整理からやってもらうことができます。
遺品整理業者に依頼する際の注意点
遺品整理業者に依頼する際は、次のような点に注意しましょう。
- 複数社から見積もりを取るなど、業者を慎重に選定すること
- 作業内容や費用を明確に出してもらうなど、見積書の内容を十分に確認すること
- 料金やキャンセル料、具体的な作業内容について事前に確認すること
- 残しておく遺品と処分する遺品を明確に分けておくこと
以下、それぞれの点について説明します。
複数社から見積もりを取るなど、業者を慎重に選定すること
遺品整理サービスに関する料金や作業内容は業者によりさまざまです。
そのため、後々トラブルにならないためにも、業者を選ぶ際は、最低限、必ず複数の業者から見積もりを取り、料金、契約内容を比較検討しましょう。
また、廃棄物の処理について、お住まいの市町村に処理ルールを確認しましょう。
見積もりの際に出張料や見積料などの名目で料金を請求される場合があります。
トラブルにならないためにも、業者を呼ぶ前に、見積もりにあたって料金が発生するのか確認するようにしましょう。
作業内容や費用を明確に出してもらうなど、見積書の内容を十分に確認すること
整理、搬出等のさまざまな作業が行われる遺品整理サービスの性質上、作業内容について業者と十分に確認することが必要となります。
どの作業にどのくらいの費用がかかるのか、当日の作業によっては追加料金がかかる契約なのか等、作業内容とその費用を明確に出してもらい、見積もりの段階で業者と作業の具体的な話をするようにしましょう。
また、見積金額が他よりも低いことだけを理由にすぐに契約せずに、サービス内容と料金が自身の要望と合っているのか等、十分な検討をするようにしましょう。
料金やキャンセル料、具体的な作業内容について事前に確認すること
業者と実際に契約する場合には、見積書を取った後であっても、改めて作業日、作業内容、料金について確認しましょう。
追加料金が発生する可能性があることを契約時に納得していたとしても、思いがけない高額な追加料金を請求されることもあるので、事前に確認するようにしてください。
また、事情により契約をキャンセルした場合に、キャンセル料の金額を巡ってトラブルになることがあります。
キャンセル料は事業者によって異なりますので、契約の際に、キャンセル料の発生時期、金額についてあらかじめ確認しておきましょう。
残しておく遺品と処分する遺品を明確に分けておくこと
遺品整理の作業中、処分しない物を処分されてしまったり、破損されたりする場合があります。
大切な遺品を紛失、破損されることがないよう、残しておきたい大切な遺品は作業が行われる部屋等からあらかじめ運び出しておきましょう。
自身で運び出すことが難しい場合には、残す遺品と処分する遺品を分け、作業員が分かるように印をつけるなど明確にしておきましょう。
遺品整理業者とのトラブルになった場合は消費生活センターに相談
見積もりを取るつもりで自宅等に訪問してもらった事業者から契約を勧められた場合など、特定商取引法上の訪問販売に該当する場合には、クーリング・オフ等ができる場合があります 。
クーリング・オフは不備のない正しい記載がなされている契約書面を受け取った日から8日以内であれば無条件で行使可能であり、既に契約代金の一部を支払ってしまっている場合であっても、その返還を請求することができます。
また、契約の大切な部分について事実と違うことを告げられた等の場合に、そのことに気付いてから1年以内であれば、契約の取消しを行うことができます。
キャンセルの際にトラブルになったり、作業当日に予定外の請求を受けたりするなどして事業者とトラブルになった場合には、すぐに最寄りの消費生活センターに相談しましょう。
消費生活センターの消費者ホットラインの電話番号は、全国共通の「188」番です。
お住まいの地域の市町村や都道府県の消費生活センター等の案内を受けることができます。
消費生活センターに相談しても解決しない場合は、弁護士に相談するとよいでしょう。
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遺品整理の料金相場と業者の選び方
遺品整理の料金相場は確立されているとは言えません。
したがって、前述のとおり、複数社から見積もりを取る等して、自ら相場観を持つことが重要です。
また、見積もりに含まれる作業内容を確認し、追加料金がかからないようにするとよいでしょう。
そして、単純に金額だけで決めるべきではないでしょう。
信頼のおける業者かどうかという点も加味して、慎重に選定をすべきです。
パソコンやスマートフォン内のデータも整理する
パソコンやスマートフォン内のデータも、ある意味で遺品といえるでしょう。
パソコンやスマートフォンを処分する前に、保存されているデータを確認してバックアップを取っておくとよいでしょう。
また、Facebook等のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)等のアカウントについても、必要に応じて何らかの整理をするとよいでしょう。
まとめ
以上、遺品整理について説明しました。
相続放棄を検討している方や、遺品整理方法について相続人間で意見がまとまらない場合等は、弁護士に相談のうえ、進めるとよいでしょう。
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