弁護士監修記事

形見分け前に知っておくべきマナー・トラブル事例・時期等の全知識

身近な人が亡くなった時には形見分けを受けたり、あるいは、遺族として形見分けをおこなったりすることがあるでしょう。

頻繁に機会のあることではないので、形見分けをどのように進めるべきか、意外と知られていません。

そこで、この記事では、形見分け前に知っておくべき形見分けに関する知識をわかりやすくお伝えします。

形見分けには、実は、法律が関係するポイントもあります。

知らずに、相続税や贈与税の申告漏れが生じたり、相続放棄ができなくなったり、遺産分割で揉めることがないように、参考にしてください。

[ご注意]
記事は、執筆日時点における法令等に基づき解説されています。
執筆後に法令の改正等があった場合、記事の内容が古くなってしまう場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをお勧めします。

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形見分けとは?形見分けの意味

形見分けとは、故人の近親者や故人と特に親しかった人の間で、故人の愛用品や故人との思い出の品(形見)を、故人との思い出をいつまでも大切に温めておくために分配することをいいます。

それを見ると故人の姿形が思い起こされるような物なので、故人の「形見」というわけです。

そして、その形見を分けるので、形見分けというのです。

形見分けはいつする?形見分けの時期

形見分けの時期について、ルールはありませんが、一般的には、四十九日法要等で親戚縁者が集まった時に行われることが多いようです。

また、最近は、稀に、生前に形見分けをする人もいるようです。

形見分けに自分の意向を反映できるというメリットがあるようです。

ただし、年間110万円を超える価額の贈与を受ける場合には、贈与税がかかりますので、ご注意ください(「贈与税がかからない方法や贈与税の計算方法等の贈与税に関する全知識」参照)。

また、自分が形見分けしたい物が、相手にとって喜ばしい物とは限らないので、生前に形見分けをする際には、相手の意向も確認して行うとよいでしょう。

形見分けの対象者

形見分けの対象者についても、ルールはありませんが、通常は、故人の近親者や、故人と特に親しかった人に対して行われます。

形見分けは、前述のとおり、いつでも故人をしのぶことができるように行われるものですから、故人に対して、そのような気持ちを持っている人であれば、対象となると考えて差し支えないでしょう。

配偶者や子は勿論のこと、孫、嫁(息子の妻)、友人でも構わないわけです。

ただし、法的には故人が所有していた物品はすべて遺産分割の対象となるため、厳密にいうと形見分けには法定相続人全員の同意が必要であり、自分は故人との親しかったからと言って、近親者の反対を押し切って形見を持っていくようなことは認められません。

法定相続人とは、民法の定めに従って相続人となる人のことで、故人に配偶者と子がいれば、彼らが法定相続人となります(法定相続人については「法定相続分とは?相続人の組み合わせパターン別法定相続分の計算方法」参照)。

また、相続人以外の人が形見分けを受けた場合は、贈与税の対象となり、前述のとおり、年間110万円を超える価額の贈与には、贈与税がかかります(もっとも、110万円を超える物を形見分けでもらうことは、ほとんどないとは思いますが)。

形見分けの対象となる遺品

形見分けの対象となる遺品は、法定相続人全員が形見分けの対象とすることに同意した物に限定しておくべきでしょう。

通常は、形見分けは、経済的価値のほとんどないような物に限定し、経済的価値があるものは、遺産分割の対象とすることが多いですが、法定相続人全員の同意があれば、経済的価値があるものを遺産分割協議前に形見分けしても構いません(遺産分割協議については「遺産分割協議を揉めずに有利に進めるために知っておくべきポイント」参照)。

「形見分けの対象としてよい遺品の目安となる金額はいくらか」と質問を受けることがありますが、金額よりも法定相続人全員の同意の有無の方がより重要です。

宝石や指輪等のアクセサリーや着物等の衣類は、故人が身に付けていた(身にまとっていた)イメージが脳裏に焼き付いていますから、形見としてのニーズが高く、かつ、経済的価値が高い場合もあるため、形見分けの対象とするか、遺産分割の対象とするかでトラブルになることがあります。

形見分けすることに反対する法定相続人がいる場合は、形見分けとせず、遺産分割の対象とすべきでしょう。

なお、形見分けという名目であれ、遺産分割という名目であれ、故人の所有する財産を相続人が取得した場合は、相続税の対象となりますので、ご注意ください(「相続財産とは何?相続の対象となる財産と相続税の対象となる財産」参照)。

また、お金(現金)を形見分けする人がいますが、お金を形見分けすることはやめておいた方がよいでしょう。

お金などの財産的価値のあるものを形見分けすると、相続放棄ができなくなるおそれがあるためです。

相続放棄とは、故人に借金等の債務があった場合等に利用される手続きで、故人の財産を借金も何もかも一切相続しないというものです(「財産放棄と相続放棄の違いを理解して財産放棄で損しないための全知識」参照)。

相続財産を処分すると、相続を承認したとみなされて、相続放棄ができなくなりますが、財産的価値のないものについての形見分けの範囲であれば、形見分け後に相続放棄をすることも可能です。

しかし、お金は形見分けの範囲外とみなされ、その後、思わぬ債務が発覚した場合にも相続放棄できなくなるおそれがあります。

何らかの事情があってどうしてもお金を渡したい場合は、故人のお金ではなく、自分のお金を渡した方が無難です。

何かのお礼をしたい場合は、形見分けではなく、香典返しに色を付ける等、別の方法を検討するとよいでしょう。

いらない物の処分方法

形見分けでもらったいらない物の処分方法について、質問を受けることがあります。

形見とは、本来、故人をしのぶための物であって、実用品ではないので(実用しても構いませんが)、「いる」「いらない」といった問題は生じえないのですが、故人との関係がそれほど深くないにもかかわらず、形見分けを受けることがあり、処分に困ることがあります。

場所を取るようなものでなければ取っておいて、命日にでも取り出して故人をしのぶとよいと思いますが、まったく故人と交流がなかったような場合は、遺族の方に正直に話して、丁重にお断りするとよいでしょう。

遺族の方で遺品整理はするでしょうから、もらわないと遺族が処分に困るということはないでしょう。

既に形見分けを受けてしまって今更返すこともできず、置き場所に困るような場合は、自分で処分することもやむを得ないでしょう。

遺品整理の業者がありますが、単品の形見を依頼すると、処分費が割高になってしまうでしょうから、自分で処分した方がよいかもしれません。

捨てることは気が引ける場合は、中古品売買ウェブサイトに出品する等して、大切に使ってくれる人を探すという方法もあります。

形見分けのマナー

形見分けのマナーには、それほど細かいものはありません。

目上の人に形見分けをしてはいけないというようなマナーも耳にすることがありますが、現代では気にする人はあまりいないでしょう。

目上の人に形見分けをしたい場合は、「よろしければ……」と打診して意向を確認してから形見分けするとよいでしょう。

また、包装は、基本的には不要です。

剝き出しでは渡しにくい場合は、半紙に包んで「遺品」(仏式)または「偲ぶ草」(神式)と表書きします。

郵送してもマナー違反ではありませんが、事前に形見を送ることの了承を得てから送るとよいでしょう。

また、形見を送る際は一筆添えた方がよいですが、封をした文書を宅配便に同梱すると郵便法に抵触するおそれがあるため、添え状は封をせずに同梱するか、信書を送ることができるサービスを利用しましょう。

また、嵩張る物を形見分けするともらった方が困ることがあるので、着物等の遺品をリフォーム店等に持ち込み、小物入れ等に加工して形見分けすることもあります。

そうすると、同じ物を複数の人に形見分けできるので、不公平も生じません。

形見分けにお礼は必要?

形見分けを受けたことへのお礼は、基本的には不要ですが、どうしてもお礼をしたい場合は、お墓や仏壇に手向けるお花やお供えする果物、線香や蝋燭がよいでしょう。

形見分けで取得した財産に相続税はかかる?

故人の所有していた財産は、基本的にはすべて相続財産となります。

前述のとおり、相続人が、経済的価値のある相続財産を取得した場合は、形見分けという名目であっても、相続税の対象となります。

しかし、相続税には基礎控除があり、遺産の課税価格が基礎控除額以下なら相続税はかかりません(「相続税の基礎控除額の計算方法と控除額を増やして節税する実践的な方法」参照)。

また、相続人以外の人が受けた形見分けは、贈与税の対象となりますが、贈与税にも基礎控除があり、前述のとおり、年間110万円以下の価額の贈与には贈与税は掛かりません。

形見分けのトラブル事例と回避方法

 

形見分けの主なトラブル事例には次のようなものがあります。

  • 形見分けを受けたら相続放棄をできなくなった
  • 高価な形見の取り合いになった
  • 形見分けを受ける前に遺品整理されてしまった
  • 相続税や贈与税の申告が漏れてしまった

以下、それぞれの事例について、トラブル回避方法を説明します。

形見分けを受けたら相続放棄をできなくなった

相続人が客観的にみて形見分けを超える範囲と量の遺品を持ち帰ったような場合は、相続を承認したとみなされて、相続放棄ができなくなってしまいます。

既に、相続放棄をした後でも同様に相続放棄の効果が否定されてしまいます。

相続放棄をする可能性がある場合(故人が債務超過の場合等)は、経済的に少しでも価値のある形見を受け取ることは控えておいた方がよいでしょう。

形見分けの範囲と量を超えているかどうかの判断については、弁護士に相談するとよいでしょう。

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高価な形見の取り合いになった

高価な形見の取り合いになるような場合は、形見分けの対象とせず、前述のとおり、遺産分割の対象とすべきでしょう。

遺産分割の対象となる遺産は、遺産分割協議によって、誰が相続するかを決めます。

協議が紛糾して決着しない場合は、弁護士に相談するとよいでしょう。

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形見分けを受ける前に遺品整理されてしまった

このような事態を避けるために、遺族は、故人と親しかった人に、遺品整理前に、形見分けの希望を尋ねておくとよいでしょう

また、故人と親しかった人は、遺族に、故人との思い出の品などについて、それとなく伝えておくとよいでしょう。

相続税や贈与税の申告が漏れてしまった

形見分けという名目であっても、相続税や贈与税の対象となります。

うっかり申告漏れが生じないように、高額な形見分けを受け取る際は、税理士に相談するとよいでしょう。

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まとめ

以上、形見分けについて説明しました。

形見分けには、マナーだけでなく、法律が関係する問題もあります。

必要に応じて弁護士や税理士等の専門家に相談して進めるとよいでしょう。

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