【遺産分割協議書の書き方】相続人の一人が単独で相続する場合
遺産分割協議書とは、遺産分割協議で決まった内容を証明するために、遺産分割後に作成するものです。不動産登記や、預貯金の解約・名義変更などに使用します。
これは自分で作成することができますが、専門家に依頼することも可能です。自分で作る場合は、相続人が誰か、どの財産があるのかなどを正確に記載します。抜け漏れなどがあると大変です…。
遺産分割協議書の作成には、十分な制度の理解と、正確な財産状況の把握が必要です。今回は、相続人の一人が単独ですべての遺産を相続する場合について、遺産分割協議書の書き方を詳しく解説します。
遺産分割協議書の書き方がわからない人などは是非、参考にしてください。
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記事は、公開日(2020年6月15日)時点における法令等に基づいています。
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法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。
遺産分割協議書の書式(相続人の一人が単独ですべての遺産を相続する場合)
相続人の一人が単独で遺産をすべて相続する場合の遺産分割協議書の書式(雛形)を紹介します。
遺産分割協議書
被相続人 ○○○○(昭和〇〇年〇〇月〇〇日生まれ)
被相続人○○○○(以下「被相続人」という。)の遺産相続につき、被相続人の妻○○○○(以下「甲」という。)、被相続人の長男○○○○(以下「乙」という。)、及び被相続人の長女○○○○(以下「丙」という。)の相続人全員が遺産分割協議を行い、本日、下記のとおりに遺産分割の協議が成立した。
1.甲は、以下の遺産を取得する 所 在 東京都△△区〇〇 (2)建物 所 在 東京都△△区〇〇 ○○番○ (3)建物 (一棟の建物の表示) (敷地権の目的たる土地の表示) (4)動産 上記(2)及び(3)の建物内にある家具家財等一切の動産 (5)車両 名義人 ○○○○ (6)有価証券等 〇〇証券〇〇支店(口座番号〇〇〇〇)保護預かりの以下の有価証券等 〇〇株式会社 株式1000株 (7)預貯金 〇〇銀行〇〇支店
2.本遺産分割協議書に記載のない遺産及び本遺産分割の後に判明した遺産(負債も含む)については、甲が全て相続する。
3.甲が相続する遺産には、被相続人のすべての債務が含まれる。また、甲は、被相続人の債務の弁済について、乙及び丙に対して求償しない。
4.被相続人の葬式に係る費用はすべて甲が負担する。
以上のとおり、甲乙丙相続人全員による遺産分割協議が成立したことを証明するため、本協議書を3通作成し、甲乙丙相続人全員が署名押印のうえ、各1通ずつ所持する。
令和〇年〇月〇日(作成日の日付)
住所 東京都△△区△△○丁目○番地○
住所 神奈川県〇〇市△△町○丁目○番地○
住所 埼玉県〇〇市〇〇町○丁目○番○号 |
また、複数の相続人で分割する場合は下記の記事を参考にしてください。
遺産分割協議書の書き方のポイント
それでは、上の書式を基に、相続人の一人が単独ですべての遺産を相続する場合の遺産分割協議書の書き方について説明します。
遺産の内容を具体的に記載する
上の書式の「1.」の項目のように、遺産の内容を具体的に記載します。
遺産の内容を具体的に記載せず、「甲は、遺産の全部を単独で取得する。」というような一文にまとめることも可能ですが、そうすると、遺産を取得しなかった相続人(上の書式でいうと、乙及び丙)が後から遺産の内容を知って、「そんな遺産があるとは知らなった!それなら、その遺産は取得したい!」と言い出してトラブルになる可能性があることが考えられます。
そこで、次のように、遺産の内容をできる限り具体的に示しておいた方が安心です。
不動産については、登記簿に記載されている通りに正確に記しましょう。登記簿は全国どこの法務局(登記所)でも取得することができます。
他に遺産が見つかった場合の記載をする
列挙したもの以外に遺産が見つかった場合に備えて、「2.」のように、「本遺産分割協議書に記載のない遺産及び本遺産分割の後に判明した遺産(負債も含む)については、甲が全て相続する。」というような一文を入れておきます。
債務も一人がすべて相続することを記載する
「3.」のように亡くなった人の借金等の債務を誰がどれだけ負担するかについても、遺産分割協議書に記載することができます。
もっとも、相続債務についての取り決めがない場合は、相続分に応じて負担すべきと解されるため、一人がすべての遺産を相続する場合は、このような記載がなくても、相続債務の全額をその人が負担すべきと解されますが、記載しておいた方が分かりやすくてよいでしょう。
ただし、債権者は、各相続人に対して、相続債務の法定相続分に応じた額の弁済を求めることができます。
例えば、亡くなった人に1,000万円の借金があって、相続人が妻と子2人の計3人の場合において、仮に妻が相続債務の全額を負担する旨が遺産分割協議書に定められていたとしても、債権者は、子2人に、それぞれ250万円(1,000万円×1/4)の弁済を求めることができます。
このような場合において、子2人が相続債務を弁済した場合、子2人は、妻(子から見たら母)に対して、それぞれ250万円を求償することができます。
なお、このケースで、妻が相続債務の全額を弁済した場合は、相続人間の取り決めによって自分が負担すべき債務を弁済したに過ぎないので、他の相続人に求償することはできないのは当然のことなのですが、この点についても、分かりやすく遺産分割協議書に記載しておいた方がよいでしょう。
葬式費用を誰が負担するかについて記載する
後から葬式費用を誰が負担するかで揉めないように、話し合って、遺産分割協議書に記載しておくことをお勧めします。書式の「4.」のように記載すると良いですね。
相続人の一人がすべての遺産を相続する場合、他の相続人からすれば、葬式費用は、遺産を取得した相続人に負担してほしいでしょう。
このように、相続手続きには理解の難しい仕組みや制度がたくさんあります。正しく、そして不利益が出ないようにするために、ぜひ専門家に相談してみることをご検討ください。
他の相続人全員が相続放棄をすれば遺産分割協議書は不要
遺産を取得しない相続人の全員が、家庭裁判所で相続放棄の申述をすれば、相続人は一人だけになり遺産分割協議を行う相手もいませんから、当然、遺産分割協議書も作成する必要はなくなります。
相続放棄の申述とは、プラスの財産も債務も一切相続しないようにするための手続きのことです。
前述のとおり、遺産分割協議において自分の相続分を放棄しても亡くなった人の債権者からの請求を拒むことはできないので、亡くなった人に債務がある場合や、債務があるかどうかわからない場合は、遺産分割協議における「相続分の放棄」ではなく、家庭裁判所での「相続放棄」を選択することをお勧めします。
この記事を書いた人
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