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遺産分割審判の流れと審判を有利に進めるために極めて重要なポイント

遺産分割審判の流れ
遺産分割協議が成立しない場合は、遺産分割審判によって遺産分割をすることになります。 遺産分割審判は家庭裁判所に申立てます。申立てにあたっては申立書や戸籍謄本などのいくつかの書類が必要です。戸籍謄本は、故人の出生から死亡までのすべての戸籍に加えて、相続人全員の現在の戸籍謄本なども必要です。 戸籍謄本の収集は手間がかかるので、時間と手間を省きたければ行政書士などに依頼しても良いでしょう。 今回は、遺産分割審判の申立て方法や必要書類、流れなどについて解説します。遺産分割協議がまとまらない人は是非、参考にしてください。

[ご注意]
記事は、公開日(2019年6月20日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。

遺産分割審判とは?

人が亡くなる等して相続が開始した場合に、遺言によって各財産の取得者が指定されていれば、原則として、遺言によって指定されたとおりに財産を取得することになりますし、そもそも相続人が1人しかいない場合は、遺言がなくてもその人がすべての遺産を相続します。 しかし、相続人が複数いて、遺言がない場合や、遺言があっても財産の取得者が指定されていない場合は、相続人間の遺産分割協議によって、誰がどの財産を取得するかを決めます。 遺産分割協議がまとまらない場合は、遺産分割調停や遺産分割審判といった裁判所の手続きを受けることができます。 遺産分割調停とは、家庭裁判所の調停委員会(裁判官1名と調停委員2名で構成)が、各当事者から事情や希望する分割方法を聴いたり、提出された資料を確認したり、遺産を鑑定したりしたうえで、当事者である相続人に対して解決のための助言や説得をしたり、時には法律の枠組みにかなった解決案を提示したりすることによって、相続人間の合意を目指して話合いを進める手続きです。 調停は、白黒をはっきりさせるものではありません。このため、相続人間で合意に至らない場合は、調停が不成立になることもあります。 調停が不成立になると、自動的に審判手続が開始されます。 審判手続では、当事者の主張や資料を踏まえ、裁判所の判断で結論が下されます。 なお、遺産分割調停を経ずに始めから遺産分割審判を申立てることも可能です。しかし、裁判所が調停で合意に至る余地があると判断すれば、結局、調停に付されることになります。 また、遺産分割協議や遺産分割調停では、相続人が合意すれば、法定相続分とは異なる相続分に基づいて遺産分割をすることができますが、遺産分割審判では、必ず、法定相続分に基づいた遺産分割がなされます。

審判と裁判の違い

「審判」は「裁判」に比べて聞き慣れない言葉でしょう。 遺産分割についての裁判所の手続きは、裁判ではなく、審判によることになっています。つまり、遺産分割についての裁判はできません。 それでは、審判と裁判はどう違うのでしょうか?両者には、下の表のような違いがあります。
審判 裁判
裁判官は当事者の主張や証拠以外に、独自に調査を行った結果から結論を出すことができる 裁判官は原告・被告双方の主張及び提出された証拠のみに拘束され、独自に調査を行うことができない
非公開 公開
このように、審判は非公開なので、安心して利用することができるといえます。

遺産分割審判で審理できることと審理できないこと

遺産分割審判で審理できることと審理できなことがあります。 次のようなことは審理できます。
  • 遺産分割方法
  • 寄与分
  • 特別受益
次のような点が主な争点となっている場合は、遺産分割審判を申立てることは適切ではありません。
  • 遺言書の成否
  • 遺産分割協議の成否、やり直し
  • 相続人の範囲(ある人が相続人であるかどうか)
  • 遺産の範囲(ある財産が相続財産に当たるかどうか、共同相続人によって隠された相続財産がないかどうか)
これらのような遺産分割の前提事項について争いがある場合には、それらの争点につき家庭裁判所では判断ができないため、調停や審判をすることができないからです。 これらの争点が問題となっている場合には、地方裁判所における裁判で解決する必要があります。 裁判でそのような争点自体が解決しても、遺産分割協議の成立までには至らなかったという場合には、裁判の後で改めて遺産分割調停または遺産分割審判を申立てることができます。

遺産分割審判の申立方法

遺産分割審判は、家庭裁判所に申し立てます。 家庭裁判所は全国にありますが、相手方のうち誰か一人の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所に申し立てます。 全国の家庭裁判所は裁判所ウェブサイトの「裁判所の管轄区域」のページで調べることができます。 申立てに必要な費用は次の2つです。
  • 被相続人1人につき1200円分の収入印紙
  • 裁判所からの連絡用の郵便切手代
郵便切手代については、当事者の人数などによっても変わってくるため、申立先の家庭裁判所に確認してください(概ね数千円程度です。)。 申立てに必要な書類には次のものがあります。
  • 申立書
  • 遺産目録
  • 当事者目録
  • 戸籍謄本等
以下、それぞれについて説明します。 申立書と各種目録の用紙は家庭裁判所で入手することができます。 また、以下のリンクからダウンロードすることができるので、印刷して利用しても構いません。 家庭裁判所の上記用紙では、遺産目録は財産の種類ごとに分かれて用意されていますが、該当する遺産がない目録の提出は不要です(家庭裁判所の上記用紙を使わず、すべての種類の遺産を1通の遺産目録にまとめて提出しても構いません。)。 作成に当たっては、こちらの記入例を参考にしてください。 申立書と目録は、原本のほか、写しを相手方(申立人となった相続人以外の他の共同相続人等)の人数分用意して提出します。 このほか、相続人を確定させるために、戸籍謄本等の添付が必要です。 なお、法定相続情報一覧図の写しを提出する場合は、戸籍謄本等の提出は基本的には不要です。 法定相続情報一覧図の写しを提出しても、一部の戸籍謄本等の提出を求められることがあるので、その場合は、裁判所の指示に従ってください。 法定相続情報一覧図の写しを提出しない場合に必要な戸籍謄本等には、どのケースでも必要なものと、ケースに応じて必要なものがあるので、以下、それぞれについて説明します。 まず、どのケースでも必要な書類は次の5です。
  • 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 相続人全員の現在の戸籍謄本(3か月以内のもの)
  • 被相続人の子(および、その代襲者)で死亡している人がいる場合、その子(および、その代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 相続人全員及び被相続人の住民票、または、戸籍附票(個人番号(マイナンバー)の記載がないもの。被相続人分については住民票の除票または戸籍の除附票となる場合があります。)
  • 遺産に関する証明書(不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書、預貯金通帳の写しまたは残高証明書、有価証券写し等)
そして、相続人に被相続人の直系尊属(親や祖父母等)が含まれる場合には、次の戸籍謄本が必要です。
  • 被相続人の直系尊属(相続人と同じ代及び下の代の直系尊属に限る(例:相続人が祖母の場合、父母と祖父))で死亡している人がいる場合,その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
また、相続人が被相続人の配偶者のみの場合、または、相続人に被相続人の兄弟姉妹やその代襲者である甥や姪が含まれる場合には、次の戸籍謄本が必要です。
  • 遺言者の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 遺言者の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 遺言者の兄弟姉妹に死亡している人がいる場合、その兄弟姉妹の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 代襲者としての甥や姪に死亡している人がいる場合,その甥または姪の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
そのほか、次のような書類の提出を求められることがあります。
  • 事情説明書
  • 進行に関する照会回答書
  • 連絡先等の届出書
  • 資料説明書
  • 遺言書がある場合には遺言書の写し
裁判所の指示に従って、書類を作成し、提出してください。 このように、相続手続きには理解の難しい仕組みや制度がたくさんあります。正しく、そして不利益が出ないようにするために、ぜひ専門家に相談してみることをご検討ください。

他の相続人の住所が分からない場合に公示送達はできる?

公示送達とは、相手方の住所等が分からない場合等に、裁判所からの文書を送達することができないので、代わりに、文書の内容を裁判所に掲示したり官報に掲載したりして、送達したこととみなす制度です。 遺産分割調停の申立てに当たっては、公示送達を利用することはできませんが、遺産分割審判の場合には公示送達を利用できる場合があります。 ただし、裁判所の判断によって公示送達を行わない場合もあるので、相続人の中に住所が分からない人がいる場合には、不在者財産管理人の選任等の手続きをとる必要がある場合もあります。

審判期日

遺産相続審判の申立てが受理されると、審理が開始されます。 調停の場合は、通常、他の相続人が同席した状態になることはありませんが、審判は、他の相続人と一緒に審理されます。 審判期日は通常1日では終わらず、1か月~1か月半くらいの頻度で、複数回にわたって開かれます。1回の審判期日では、まず、争点の整理が行われます。 争点整理が済むと、事実の調査が必要かどうかが判断されます。 事実の調査は、当事者に対する審問や、調査官による調査等によって行われます。 遺産分割審判では、法定相続分に基づいた遺産分割方法が審判されるため、法定相続分以上の財産を求めても、その主張が認められること基本的にはありません。 しかし、寄与分や特別受益の主張をして認められれば、取得できる財産を増やすことができることがあります。 寄与分や特別受益の主張が認められるようにするためには、法的な知識が不可欠なので、寄与分や特別受益が争点となりそうな場合は、事前に弁護士に相談することを強くお勧めします。 また、裁判所は、必要に応じて、遺産を売却して換価(お金に換えること)を命じることがあります。 全遺産の価額に占める特定の遺産の価額の割合が高い場合は、その遺産を換価するか、その遺産の取得する人が他の相続人に対して代償金を支払うかしなければ、法定相続分通りに財産を取得することが難しいことがあります。 このようなケースは、不動産以外に主だった財産がないというような場合に生じます。 相続人の中に、代償金を支払うだけの資力のある人がいない場合や、代償金を支払ってまで当該不動産を取得したいという人がいない場合は、当該不動産を換価して遺産分割する以外に選択肢はありません。 このような場合には、裁判所は、不動産の換価を命じます。換価する場合は、まずは、競売ではなく、任意売却(市場での売却すること)が検討されます。 通常、競売よりも任意売却の方が高く売れます。 相続人の中で一人でも競売を希望する人がいる場合は、任意売却をすることはできず、競売をすることになります。 なお、審判期日に欠席しても罰則はありませんが、自分の意見を主張したり、他の相続人の主張に反論することができないため、望んでいた内容の審判が下される可能性を下げることになり、大変不利です。 この点、弁護士を代理人に立てることができ、その場合は、期日に欠席しても問題ありません。 審理が尽くされると審判が下されますが、それまでに23年かかることもあります。 審判が下る前に、相続人の間で遺産分割方法について合意に至れば、調停が成立しものとされ、合意内容を記載した調停調書が交付され、審判手続きは終わります。

審判の終結と不服申立て

審判が終結する期日には、相続人全員に対して審判内容が記載された審判書が交付されます。 審判の内容に不服がある場合は、審判の告知を受けた日から2週間以内に、家庭裁判所に抗告状を提出して「即時抗告」をします(審判の告知を受けた日が相続人ごとに異なる場合は、最も遅く告知を受けた人が告知を受けた日を基準にします)。 即時抗告が受理されると、審判をした家庭裁判所を管轄する高等裁判所で抗告審が開かれます。

審判の確定

審判の告知から即時抗告がなく2週間が経過すると、審判が確定します。 審判が確定すると、審判の確定証明書の交付を受けることができます。

審判確定後の相続手続き

審判が確定すると、審判によって遺産を取得する人は、預貯金の払戻しや不動産の所有権移転登記といった相続手続きをすることできます。 その際には、審判書や確定証明書が必要になります。

強制執行

審判結果に従わずに財産を引渡さない人がいる場合は、強制執行によって強制的に引渡しをさせることができます。 強制執行が必要なケースでは、弁護士に相談することをお勧めします。

審判を有利に進めるポイント

遺産分割審判を有利に進めるためには、遺産分割審判に精通した経験豊富な弁護士を代理人に立てることです。 闇雲に無理な主張を押し通そうとしても認められるものではなく、裁判官の心証を悪くし、返って不利になってしまうこともあります。 弁護士に依頼することで、適切な証拠に基づいて、適切な主張をすることが可能になるのです。 なお、2016年度に終局した遺産分割調停12,188件のうち、8割弱の9,369件に代理人弁護士が関与しています。 審判となると調停よりも益々弁護士を立てる割合が増えるでしょう。 このように相手方も弁護士を立ててくるケースが多く、それにもかかわらず、こちらだけ弁護士を立てなければ著しく不利になるおそれがあります。 また、弁護士を代理人に立てると、自分は審判期日に欠席しても問題ないというメリットもあります。

遺産分割審判の代理人を弁護士に依頼した場合の報酬の目安

弁護士への報酬には着手金と報酬金があります。 着手金は、弁護士に事件を依頼した段階で支払うもので、事件の結果に関係なく、つまり不成功に終わっても返還されません。 報酬金は、事件が成功に終わった場合、事件終了の段階で支払うものです。 成功というのは一部成功の場合も含まれ、その度合いに応じて支払いますが、まったく不成功(例えば1円も遺産が得られない等)の場合は支払う必要はありません。 着手金と報酬金は、経済的な利益の額に応じて変動するのが一般的で、裁判になった場合の相場は次の表のとおりです。 表中の「%」は、経済的利益の額に対する割合です。
経済的利益の額 着手金 報酬金
300万円以下 8% ※ただし最低10万円 16%
300万円超3,000万円以下 5%+9万円 10%+18万円
3,000万円超3億円以下 3%+69万円 6%+138万円
3億円超 2%+369万円 4%+738万円
裁判にならずに、交渉で決着した場合は、上表によって算定された額の3分の2程度になる場合があります。

この記事を書いた人

株式会社鎌倉新書 いい相続

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