弁護士監修記事

自筆証書遺言を無効にしない成立要件はこの8つ!

自筆証書遺言の作成を検討する際に、まず、知っておかなければならないのが、自筆証書遺言の成立要件です。

この記事では、自筆証書遺言の成立要件について、詳しく、そして、わかりやすくお伝えします。是非、参考にしてください。

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[ご注意]
記事は、公開日時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。

自筆証書遺言とは?

遺言とは、亡くなった人が、主に自分の財産等について残した意思表示のことです。例えば、「全財産を妻に相続させる」というような意思表示のことです。

そして、自筆証書遺言とは、自筆(自書)で書かれた遺言のことです。

要件とは?

法律用語としての要件(法律要件)とは、法律効果を生じさせるための条件のことです。例えば、遺言の要件とは、遺言の法的な効果を生じさせるための条件のことです。

自筆証書遺言の要件

自筆証書遺言の要件について、遺言者についての要件と遺言書についての要件に分けて説明します。

遺言者についての要件

遺言能力を持たない人のした遺言には、遺言の効果が生じません。つまり、遺言の要件として、遺言者に遺言能力があることが求められます。

遺言能力があると認められるためには、少なくても次の要件を満たしていなければなりません。

  • 遺言時に15歳以上であること
  • 遺言時に意思能力があること

以下、それぞれについて説明します。

遺言時に15歳以上であること

遺言をすることができるのは、15歳以上の人です。15歳以上であれば、未成年であっても、法定代理人の同意なく遺言をすることができます。

15歳未満の人がした遺言は、親権者等の法定代理人が同意の有無にかかわらず無効です。

遺言時に意思能力があること

認知症等で意思能力(遺言能力)がない場合も遺言自体が無効になります。

意思能力とは、自己の行為の結果を判断することのできる能力であり、意思能力があるといえるには、一般的には7~10歳程度の知力があれば足りるとされますが、あくまで当該行為者について個別具体的に判断されます。

一般的な意思能力の説明としては以上の通りですが、遺言は普段の買い物等よりも複雑な法律行為ですし、前述の通り15歳以上でなければできないので、7歳~10歳程度の知力では遺言能力がないとされ無効となる可能性があります。

なお、遺言能力が問題となるのは自筆証書遺言の場合だけでなく、公正証書遺言の場合でも、遺言能力を欠いている状態であったことを理由に、遺言が無効となることがあります。

公証人は遺言者の遺言能力に疑いがあるときは、本人の判断能力が十分に備わっているかを確認するために質疑応答などを行ったりしますが、必ずしも遺言書の作成を拒否するわけではありません。よって、公正証書遺言であっても、後に遺言能力が否定されることがあるのです。

それでは、具体的に、どの程度の認知症から遺言が無効になってしまうのでしょうか。

この点、成年被後見人(精神上の障害により事理を弁識する能力(自己の行為の結果を判断することのできる能力)を欠く常況にあって後見開始の審判を受けた人のこと)については、遺言をするための具体的な要件が民法に定められています。

第973条  成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師二人以上の立会いがなければならない。

2  遺言に立ち会った医師は、遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して、これに署名し、印を押さなければならない。ただし、秘密証書による遺言にあっては、その封紙にその旨の記載をし、署名し、印を押さなければならない。


成年被後見人は事理を弁識する能力を欠く常況にあるため、基本的には遺言はできませんが、一時的に回復した時は遺言をすることができます。ただし、二人以上の医師に、事理を弁識する能力を欠く状態になかったことを証明してもらわなければなりません。

協力してくれる医師が都合よく見つからないこともあって、成年被後年人が遺言をすることは簡単ではありません。

それでは、成年被後見人ではない認知症の人の場合はどうでしょうか。

認知症の人がした遺言が有効かどうかは、主に次の要素から判断されます。

  • 遺言時における遺言者の精神上の障害の存否、内容及び程度
  • 遺言内容それ自体の複雑性
  • 遺言の動機・理由、遺言者と相続人又は受遺者との人的関係・交際状況、遺言に至る経緯

以下、それぞれについて説明します。

遺言時における遺言者の精神上の障害の存否、内容及び程度

遺言時における遺言者の精神上の障害の存否、内容及び程度は、次の観点から考察されます。

  • 精神医学的観点
  • 行動観察的観点

以下、それぞれについて説明します。

認知症患者の遺言能力の有無を精神医学的観点から判断する指標として、長谷川式スケールの点数が重視されています。

長谷川式スケールでは、点数に応じて、下表の通り、簡易的な診断をすることができます。

20点以上 異常なし
16~19点 認知症の疑いあり
11~15点 中程度の認知症
5~10点 やや高度の認知症
4点以下 高度の認知症

大まかな目安として15点以下の場合は遺言能力に疑いが生じ、10点以下の場合は遺言能力がないとする見解もありますが、遺言能力の有無の判断は精神医学的観点のみから行われるものではなく、裁判例でも4点で遺言が有効となったものから、15点で無効となったものまで様々です。

次に、行動観察的観点についてですが、行動観察観点からは、医療記録、看護記録、介護記録や、それらの作成者等の供述等から知ることができる遺言者の当時の行動等によって遺言能力の有無が判断されます。

遺言内容それ自体の複雑性

障害の程度が大きくても遺言内容が単純であれば遺言能力が認められやすくなりますし、反対に、障害の程度が小さくても遺言内容が複雑であれば遺言能力は認められにくくなります。

遺言の動機・理由、遺言者と相続人又は受遺者との人的関係・交際状況、遺言に至る経緯

例えば、親族や同居人を差し置いて、親戚関係も、深い付き合いもない人に全財産を遺贈(遺言によって財産を贈ること)しているようなケースでは、このような遺言をする動機や理由がなく、遺言に至る経緯も不自然であるので、遺言能力があったことに疑問が生じるでしょう。

自筆証書遺言の遺言書についての要件

遺言書についての要件には、遺言書全体の成立にかかわる要件と、その箇所の有効性にかかわる要件があるので、それぞれに分けて説明します。

なお、相続法改正によって自筆証書遺言を法務局で保管する制度が新設されますが、この制度を利用する場合は、法務局で保管する際に形式不備の有無が確認されるので、形式不備によって遺言が無効となることは基本的には無くなるはずです。

▼相続法改正について詳しく知りたい方へおすすめの記事はこちら▼

また、形式不備によって遺言として無効となったとしても、死因贈与が成立していると解釈する余地があります。

死因贈与とは、自分の死後に財産を譲ることを、財産を譲り受ける者との間で生前に約束しておくことをいいます。

▼死因贈与について詳しく知りたい方へおすすめの記事はこちら▼

遺贈(遺言によって財産を与えること)の場合は受遺者(遺贈を受ける人)の事前の承諾は不要ですが、死因贈与は契約なので、贈与内容について、贈与者の生前に双方の合意があること必要です。

自筆証書遺言として認められるためには、きちんと要件を満たしていることが必要です。もし難しいようであれば専門家に相談してみましょう。

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遺言書全体の成立にかかわる要件

遺言書全体の成立にかかわる要件には、次のものがあります。

  • 全文自書であること
  • 作成した日付があること
  • 署名があること
  • 押印があること

以下、それぞれについて説明します。

全文自書であること

遺言者が、遺言書の全文、日付および氏名を自書しなければならないとされています。したがって、誰かに代筆してもらったり、パソコンなどで全文を作成して氏名だけ自書したりしたようなものは無効とされます。

なお、遺言を記載する紙や筆記用具については特に法律による定めはありません。鉛筆やシャープペンシル等の消えやすいものは、改ざん(書換え)のおそれがあるため避けましょう。また、ボールペンの場合は水性よりも油性の方が、万が一、水に濡れてしまった場合にも滲みにくいのでお勧めです。万年筆の場合は、顔料インクが滲みにくいと言われています。

紙についても、極端の話、メモ帳の切れ端やチラシの裏に書いても有効です。ですが、破損のリスクがあるので、ある程度の強度のある紙に記すべきでしょう。

なお、財産目録を、遺言書に添付することができますが、現状は、財産目録も手書きで作成しなければなりません。

改正法施行後は、財産目録をパソコンで作成することが認められるようになり、また、預貯金の通帳や不動産の登記簿謄本のコピーを添付することもできるようになります。

▼財産目録の作成方法については詳しく知りたい方へおすすめの記事▼

作成した日付があること

自筆証書遺言には、必ず作成日を記載しなければなりません。そして、この日付も「自書」しなければならないので、スタンプ等を利用すると無効になってしまいます。

また、「平成〇〇年〇月吉日」というような書き方も、作成日が特定できず、無効となってしまうので、必ず、年月日をきちんと記載することが大切です。

署名があること

自筆証書遺言には、遺言者が、必ず、氏名を自書しなければなりません。

署名をするのは、必ず遺言者1名のみとされており、夫婦二人で共同で遺言をするということはできないので、注意が必要です。

押印があること

全文、日付、氏名の自書に加えて、押印することが要件とされています。

印は、実印でなくても構いません。認印でも、拇印や指印でもよいことになっています。シャチハタですら、実務上、認められる場合がありますが、念のため避けたほうがよいでしょう。

その箇所の有効性にかかわる要件

その箇所の有効性にかかわる要件には次の2つがあります。

  • 所定の方式で変更されていること
  • 遺言の趣旨が解釈可能であること

以下、それぞれについて説明します。

所定の方式で変更されていること

自筆証書遺言の記載内容を訂正する場合もそのやり方が厳格に決められています。

必ず、訂正した場所に押印をして正しい文字を記載した上で、どこをどのように訂正したのかを余白等に記載してその場所に署名しなければなりません。

具体的には、訂正したい箇所に二重線等を引き、二重線の上に押印し、その横に正しい文字を記載します。そして、遺言書の末尾などに、「〇行目〇文字削除〇文字追加」と自書で追記して署名をする、ということになります。

このように、訂正方法もかなり厳格なので、万が一、遺言書を訂正したいときは、できる限り始めから書き直した方がよいでしょう(訂正前のものは無用な混乱を避けるため必ず破棄するようにしましょう)。

遺言の趣旨が解釈可能であること

遺言書の内容は、遺言者が亡くなった後に他人が読んで明確に意味がわかるように記載する必要があります。

記載の内容が曖昧であったり、誤記があったりした場合、遺言書を開封したときには、遺言者は既に亡くなっているので、その意味を遺言者本人に確認することはできません。

裁判例においては、「遺言書に表明されている遺言者の意思を尊重して合理的にその趣旨を解釈すべきであるが,可能な限りこれを有効となるように解釈する」と判断されており、遺言書の内容に曖昧な部分や不明確な部分があっても、それだけで無効になるわけではありませんが、趣旨を解釈することが難しいくらい曖昧な記述については、効力が生じない可能性があります。

また、相続人間に無用なトラブルを生む可能性があるので、曖昧な表記等には気を付ける必要があります。

▼自筆証書遺言の正しい書き方を知りたい方へおすすめの記事▼

まとめ

以上、自筆証書遺言の要件について説明しました。

自筆証書遺言は、要件が厳しく無効になりやすい形式の遺言です。遺言書作成の際は、弁護士に一度相談することをお勧めします。

また、遺言の内容によって、相続人らにかかる相続税が変わってきます。多額の財産がある場合は相続税も多額になるので、相続税対策も考えて遺言内容を決めたほうがよいでしょう。相続税対策については、税理士に一度相談してみることをお勧めします。

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