車を相続する前に絶対に知っておくべき5つのポイント全解説!
自動車も相続財産の一つです。
車を相続したら、何をしたらいいでしょうか。
真っ先に脳裏に浮かぶのは名義変更かもしれません。
普通自動車と軽自動車では車の名義変更の手続きの場所が違うのはご存じでしょうか。
また、名義変更前に必ずした方がよいことがあります。
この記事では、車を相続する前に、必ず知っておくべき情報をまとめました。是非、参考にしてください。
相続問題でお悩みの方はまずは弁護士にご相談ください
[ご注意]
記事は、公開日(2019年1月23日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。
目次
《ポイント1》車の名義を確認する
被相続人(亡くなった人)が車をもっていたら、相続人は、まず、その名義を確認すべきです。
車の名義は被相続人でない場合も
被相続人の車なのですから、当然、被相続人の名義に違いないとおもわれるかもしれませんが、実はそうとは限りません。
被相続人が車を購入する際に、ローンを組んでいたら、信販会社等の名義になっていることがあるのです。
車を購入する際のローンの借り先は、主に3つあります。
信販会社、ディーラー(自動車販売会社)、銀行の3つです。
銀行でローンを組んだ場合は車の名義は本人になりますが、信販会社やディーラーでローンを組んだ場合は、車の名義が、ローンを組んだ信販会社やディーラーになることがあるのです。
車の名義の確認方法
車の名義が誰になっているかは、自動車検査証(俗にいう車検証)で確認することができます。
自動車は自動車検査証を備え付けなければ運行の用に供してならないことになっているので、自動車検査証は車の中のどこかにあるはずです。
自動車検査証の中段に「所有者の氏名又は名称」という欄があります。
その欄に記載されている人(または会社等)が、その車の名義人ということになります。
ローンの残債は借入先へ確認
名義が信販会社やディーラーになっているからといって、ローンが残っているとは限りません。
ローンを完済していても、被相続人が名義変更をしてなければ、名義はそのままになるからです。
ですので、名義が信販会社やディーラーになっている場合は、インターネット等で電話番号を調べて、電話してローン残高を確認する手続きをとりましょう。
ローンが完済されていれば、車の名義をローン会社から被相続人に変更する手続きをします。
なお、名義が被相続人になっていても、ローンを組んでいる可能性はあります。
自動車ローンに限らずですが、被相続人の借金を調べるには、被相続人宛の郵便物やメールを確認するほか、個人信用情報機関に対して、被相続人の個人使用情報の開示請求をする方法があります。
信用情報機関には以下の3つがあります。
- 株式会社日本信用情報機構(JICC)
- 株式会社シー・アイ・シー(CIC)
- 一般社団法人全国銀行協会(JBA)の運営する全国銀行個人信用情報センター(KSC)
借入れがある場合は、借入先の金融機関が加盟する信用情報機関の信用情報に登録されます。
複数に加盟している場合は複数の信用情報機関に登録されますが、1つしか加盟していないこともあるので、3つすべての開示請求を行った方がよいでしょう。
上のリストのリンク先は、それぞれ、相続人による開示請求方法の説明ページです。
開示請求を行う際の参考にしてください。
《ポイント2》ローンが残っていた場合
車のローンが残っていた場合の選択肢について説明します。
その場合の選択肢としては、主に次の4つがあります。
- 遺産でローンを一括返済する
- ローンを引き継ぐ
- 車を売却しローンの返済に充てる
- 相続放棄する
以下、それぞれについて説明します。
1.遺産でローンを一括返済する
遺産でローンを一括返済することで、車の名義を被相続人に変更することができるようになります。
ローンを完済して名義を被相続人に変更すれば、後の手続きは、後述の通常の相続手続きと同様です。
なお、遺産でローンを返済すると、相続を単純承認したことになり、後述の相続放棄や限定承認をすることができなくなるので、よく考えてから返済するようにしましょう。
2.ローンを引き継ぐ
相続人がローンを引き継いで返済することで、返済中も車を使用することができますし(使用者変更の手続きが必要)、完済後は名義変更をして自分のものにすることができます。
なお、相続人が複数いる場合は、返済中に車を使用して完済後に車を取得する人がローンを負担することにすることが多いと思いますが、そのように相続人間で決めたとしても、債権者は他の相続人に対しても法定相続分に応じた債務の弁済を求めることができます。
まずは、被相続人が亡くなったことをローン会社に伝えて、ローンの引き継ぎについて相談しましょう。
3.車を売却しローンの返済に充てる
相続人の誰も車を欲しくない場合は、車を売却してローンの返済に充てることを検討した方がよいでしょう。
ただし、売却による返済が認められるかどうかは、被相続人とローン会社との間の契約内容によります。
売却価格がローン残高を上回っていれば認められることが多いと思われますが、いずれにせよ、まずは、ローン会社に被相続人が亡くなったことを伝えて契約内容を確認して売却返済について相談するとよいでしょう。
なお、車を売却すると、相続を単純承認したことになり、後述の相続放棄や限定承認をすることができなくなるので、よく考えてから売却するようにしましょう。
4.相続放棄する
相続放棄をすることによって、債務も含めたすべての遺産の相続を放棄することができます。
車についてだけ相続放棄をするということできせん。
遺産のすべてについて相続放棄をするかどうかの判断になります。
財産のプラスとマイナスでどちらが多いか判断が難しい場合は、プラスの財産の限度で債務を負担すればよい「限定承認」という方法もあります。
▼相続放棄について詳しく知りたい方へおすすめの記事▼
▼限定承認について詳しく知りたい方へおすすめの記事▼
《ポイント3》相続人が複数いる場合は遺産分割協議で車を相続する人を決める
車が被相続人名義の場合は、通常の相続手続きをとることができます。
相続人が複数いる場合は、遺産分割協議によって、誰がどの財産を取得するか決めます。
《ポイント4》名義変更の手続き
車を相続する人が決まったら名義変更をします。
車の名義変更は、正式には移転登録といいますが、この記事では一般に耳馴染みのよい名義変更という呼称を使っています。
相続による名義変更の手続きは、車のディーラーや、行政書士等の相続手続きの専門家に依頼する人が多いようです。
専門家に依頼した場合の代行手数料は、ナンバープレートの変更が必要かどうか、車庫証明の取得も併せて依頼するか、車を預かった場所(被相続人の自宅等)から届け先(相続人の自宅等)までの距離等によって異なりますが、ナンバー変更不要で車庫証明を自分で取得するという最も安く済むケースなら1万5千円程度で済むこともあるようです。
相続問題でお悩みの方はまずは弁護士にご相談ください
車の名義変更はどこでする?
名義変更の手続きの場所は、車の種別が軽自動車かそれ以外かによって異なります。
軽自動車
軽自動車の場合は、新所有者が車を使用する場所(通常は住所)を管轄する軽自動車検査協会の事務所で行います。
軽自動車検査協会の事務所:軽自動車検査協会ウェブサイトでご確認ください。
普通自動車など
それ以外の場合は、新所有者が車を使用する場所(通常は住所)を管轄する運輸支局で行います。
各運輸支局の管轄地域:国土交通省ウェブサイト「全国の運輸支局等のご案内」(こちらから移動できます)
車の名義変更の費用
名義変更には、以下の費用がかかります。
- 移転登録手数料:500円
- 車庫証明取得費用:2500円~3500円(都道府県ごとに異なる)
- ナンバープレート代:1500円前後(地域によって異なる。なお、ナンバー変更がない場合は不要)
- 自動車取得税(車種やグレード、経過年数によって異なる)
- 名義変更代行料(自分で手続する場合は不要)
相続による車の名義変更の必要書類
相続による車の相続手続きに必要な書類は、まず、軽自動車かどうかによって異なります。
軽自動車は必要書類が少なくて済むようになっています。
軽自動車以外の場合は、遺言によって取得したのか、遺産分割協議により取得したのか、相続人が一人だけであって遺産分割協議は不要だったのかによって、必要な書類が異なります。
そしてさらに、遺言によって取得した場合は、遺言執行者(遺言の内容を実現するための手続きをする人)が選任されているかどうかによって、必要な書類は異なります。
また、遺産分割協議により取得した場合は、車両価値が100万円未満か100万円以上かによって、必要な書類が異なります。
分類すると、次の7つのパターンになります。
- 軽自動車を相続した場合
- 遺言により車を取得する場合で遺言執行者が選任されている場合
- 遺言により車を取得する場合で遺言執行者が選任されていない場合
- 遺産分割協議により車両価値が100万円以下の車を取得する場合
- 遺産分割協議により車両価値が100万円超の車を取得する場合
- 遺産分割調停または遺産分割審判により車を取得する場合
- 相続人が一人の場合
なお、所有者と使用者が異なる場合や、相続して売却する手続きを同時に行う場合は、以下の詳細で説明する以外の書類が必要となるので、詳しくは、軽自動車の場合は軽自動車検査協会に、軽自動車以外の場合の運輸支局にお尋ねください。
相続問題でお悩みの方はまずは弁護士にご相談ください
1.軽自動車を相続した場合の名義変更の必要書類
軽自動車を相続した場合の名義変更に必要な書類は次のとおりです。
用意すべき場合 | 入手先 | |
---|---|---|
自動車検査証(車検証) | 必ず | 被相続人の保管場所(通常は車内) |
新所有者の住民票 | 必ず | 住所地の市区町村役場 |
軽自動車税申告書 | 必ず | 軽自動車検査協会の事務所等(当日でよい) |
自動車検査証記入申請書 | 必ず | 軽自動車検査協会の事務所等(当日でよい) |
新所有者の認印 | 必ず | 自分 |
2.遺言により車を取得する場合で遺言執行者が選任されている場合の名義変更の必要書類
遺言により車を取得する場合で遺言執行者が選任されている場合の名義変更に必要な書類は次のとおりです。
用意すべき場合 | 入手先 | |
---|---|---|
自動車検査証(車検証) | 必ず | 被相続人の保管場所(通常は車内) |
被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本または除籍謄本 | 必ず | 本籍地の市区町村役場 |
遺言執行者の印鑑登録証明書 | 必ず | 住所地の市区町村役場 |
遺言執行者の実印 | 必ず | 自分 |
新所有者の印鑑登録証明書 | 必ず | 住所地の市区町村役場 |
新所有者の実印 | 必ず | 自分 |
遺言書 | 自筆証書遺言または秘密証書遺言の場合 | 遺言者が保管した場所 |
検認済証明書 | 自筆証書遺言または秘密証書遺言の場合 | 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所 |
遺言公正証書謄本 | 公正証書遺言の場合 | 遺言が作成された公証役場 |
遺言執行者選任審判書謄本 | 審判によって遺言執行者が選任された場合 | 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所 |
新所有者の車庫証明 | 必ず | 警察署 |
自動車税申告書 | 必ず | 税事務所(運輸支局に隣接。当日でよい) |
手数料納付書 | 必ず | 運輸支局(当日でよい) |
移転登録申請書 | 必ず | 運輸支局(当日でよい) |
3.遺言により車を取得する場合で遺言執行者が選任されていない場合の名義変更の必要書類
遺言により車を取得する場合で遺言執行者が選任されていない場合の名義変更に必要な書類は次のとおりです。
用意すべき場合 | 入手先 | |
---|---|---|
自動車検査証(車検証) | 必ず | 被相続人の保管場所(通常は車内) |
被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本または除籍謄本 | 必ず | 本籍地の市区町村役場 |
各相続人(全員)と被相続人との関係が確認できる戸籍抄本または戸籍謄本 | 必ず | 本籍地の市区町村役場 |
遺言書 | 自筆証書遺言または秘密証書遺言の場合 | 遺言者が保管した場所 |
検認済証明書 | 自筆証書遺言または秘密証書遺言の場合 | 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所 |
遺言公正証書謄本 | 公正証書遺言の場合 | 遺言が作成された公証役場 |
相続人と受遺者全員の委任状 | 必ず | 自分 |
相続人と受遺者全員の印鑑登録証明書 | 必ず | 住所地の市区町村役場 |
相続人と受遺者全員の実印 | 必ず | 自分 |
新所有者の印鑑登録証明書 | 必ず | 住所地の市区町村役場 |
新所有者の実印 | 必ず | 自分 |
新所有者の車庫証明 | 必ず | 警察署 |
自動車税申告書 | 必ず | 税事務所(運輸支局に隣接。当日でよい) |
手数料納付書 | 必ず | 運輸支局(当日でよい) |
移転登録申請書 | 必ず | 運輸支局(当日でよい) |
4.車両価値が100万円以下の車を遺産分割により取得した場合の名義変更の必要書類
車両価値が100万円以下の車を遺産分割により取得した場合の名義変更に必要な書類は次のとおりです。
用意すべき場合 | 入手先 | |
---|---|---|
自動車検査証(車検証) | 必ず | 被相続人の保管場所(通常は車内) |
被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本または除籍謄本 | 必ず | 本籍地の市区町村役場 |
新所有者が相続人であることが確認できる戸籍謄本または戸籍抄本 | 必ず | 本籍地の市区町村役場 |
新所有者の印鑑登録証明書 | 必ず | 住所地の市区町村役場 |
新所有者の実印 | 必ず | 自分 |
新所有者の車庫証明 | 必ず | 警察署 |
遺産分割協議成立申立書 | 必ず | 「遺産分割協議成立申立書の書き方の記事」参照 |
車両価格が100万円未満であることを証明する書類(査定書) | 必ず | 自動車買取業者等 |
自動車税申告書 | 必ず | 税事務所(運輸支局に隣接。当日でよい) |
手数料納付書 | 必ず | 運輸支局(当日でよい) |
移転登録申請書 | 必ず | 運輸支局(当日でよい) |
5.車両価値が100万円超の車を遺産分割により取得した場合の名義変更の必要書類
車両価値が100万円超の車を遺産分割により取得した場合の名義変更に必要な書類は次のとおりです。
用意すべき場合 | 入手先 | |
---|---|---|
自動車検査証(車検証) | 必ず | 被相続人の保管場所(通常は車内) |
被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本または除籍謄本 | 必ず | 本籍地の市区町村役場 |
各相続人(全員)と被相続人との関係が確認できる戸籍抄本または戸籍謄本 | 必ず | 本籍地の市区町村役場 |
新所有者の印鑑登録証明書 | 必ず | 住所地の市区町村役場 |
新所有者の実印 | 必ず | 自分 |
新所有者の車庫証明 | 必ず | 警察署 |
遺産分割協議書(相続人全員が実印で押印) | 必ず | 自分 |
相続人全員の印鑑登録証明書 | 必ず | 住所地の市区町村役場 |
自動車税申告書 | 必ず | 税事務所(運輸支局に隣接。当日でよい) |
手数料納付書 | 必ず | 運輸支局(当日でよい) |
移転登録申請書 | 必ず | 運輸支局(当日でよい) |
6.遺産分割調停または遺産分割審判により車を取得する場合の必要書類
遺産分割調停または遺産分割審判により車を取得する場合に必要な書類は次のとおりです。
用意すべき場合 | 入手先 | |
---|---|---|
自動車検査証(車検証) | 必ず | 被相続人の保管場所(通常は車内) |
調停調書謄本 | 調停によって預金を取得する人が決まった場合 | 家庭裁判所 |
審判書謄本 | 審判によって預金を取得する人が決まった場合 | 家庭裁判所 |
審判確定証明書 | 審判によって預金を取得する人が決まった場合で、かつ、審判書に確定表示がない場合 | 家庭裁判所 |
新所有者の印鑑登録証明書 | 必ず | 住所地の市区町村役場 |
新所有者の実印 | 必ず | 自分 |
新所有者の車庫証明 | 必ず | 警察署 |
自動車税申告書 | 必ず | 税事務所(運輸支局に隣接。当日でよい) |
手数料納付書 | 必ず | 運輸支局(当日でよい) |
移転登録申請書 | 必ず | 運輸支局(当日でよい) |
7.相続人が一人の場合の名義変更の必要書類
相続人が一人の場合の名義変更に必要な書類は次のとおりです。
用意すべき場合 | 入手先 | |
---|---|---|
自動車検査証(車検証) | 必ず | 被相続人の保管場所(通常は車内) |
被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本または除籍謄本 | 必ず | 本籍地の市区町村役場 |
新所有者が相続人であることが確認できる戸籍謄本または戸籍抄本 | 必ず | 本籍地の市区町村役場 |
新所有者の印鑑登録証明書 | 必ず | 住所地の市区町村役場 |
新所有者の実印 | 必ず | 自分 |
新所有者の車庫証明 | 必ず | 警察署 |
自動車税申告書 | 必ず | 税事務所(運輸支局に隣接。当日でよい) |
手数料納付書 | 必ず | 運輸支局(当日でよい) |
移転登録申請書 | 必ず | 運輸支局(当日でよい) |
《ポイント5》車の保険・税金・駐車場手続き
車を相続する場合は、以上の手続きのほか、次の3点について、確認しましょう。
- 自動車保険の契約者変更・解約(被相続人が自動車保険に加入していた場合)
- 駐車場の契約者変更・解約(被相続人が駐車場を借りていた場合)
- 自動車税の納付漏れがないかの確認
まとめ
以上、車の相続に関する情報について説明しました。
車の相続手続きについて不明な点は、自動車ディーラーに相談しても構いませんが、車以外の相続手続きも含めて、行政書士等の専門家に相談すると、一層手間がかからずよいでしょう。
相続問題でお悩みの方はまずは弁護士にご相談ください
この記事を書いた人
相続専門のポータルサイト「いい相続」は、相続でお悩みの方に、全国の税理士・行政書士など相続に強い、経験豊富な専門家をお引き合わせするサービスです。
「遺産相続弁護士ガイド」では、遺産分割や相続手続に関する役立つ情報を「いい相続」編集スタッフがお届けしています。また「いい相続」では、相続に関連する有資格者の皆様に、監修のご協力をいただいています。
▶ いい相続とは
▶ 監修者紹介 | いい相続