根抵当権付き不動産を相続したときの、検討すべき4つの選択肢

相続の手続きには期限があり、考える時間は案外少ないものです。

特に不動産の権利関係については複雑で時間がかかりがち。

相続不動産に根抵当権が設定されていた場合は、どうすればよいのでしょうか?

どのような選択肢があり、それぞれ、どのような場合に選択すべきなのでしょうか?

是非、参考にしてください。

[ご注意]
記事は、公開日(2020年11月19日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。

相続不動産に根抵当権が設定されていた場合の選択肢

相続不動産に根抵当権が設定されていた場合に、相続人が採ることできる主な選択肢と、その選択をすべき主なケース等についてまとめると、下の表のようになります。

選択肢 想定されるケース 手続き 手続き期限
相続放棄 プラスの財産の総額よりもマイナスの財産の総額の方が大きい場合 相続放棄の申述 自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内
根抵当権が設定されたままにしておく 被相続人が個人事業主であり、相続人がその事業を承継するために新たに資金が必要な場合等、相続人において新規借入が必要な場合 次の3つすべての登記

・相続人への所有権移転登記
・相続人全員を債務者とする根抵当権の債務者変更登記
・指定債務者の合意の登記

相続開始後6か月以内
元本確定 相続人において新規借入が不要な場合 不要 相続開始後6か月以内に指定債務者の合意の登記をしない場合は相続開始時に元本が確定したものとみなされる
根抵当権の抹消 ローンを完済していて、当該不動産を売却したい又は他のローンを利用したい
※未済の場合は、元本確定、完済後に抹消
抹消登記 無期限
※売却や他のローン申込の予定がある場合はそれまでに行う

これらの選択肢について、以下、それぞれ説明します。

相続放棄

相続放棄とは、相続人が被相続人(亡くなった人)の権利や義務を一切承継しない選択をすることをいいます。

つまり、相続放棄をすると、根抵当権付き不動産やその被担保債務に限らず、すべての財産・債務を承継しません。

したがって、相続放棄をすべきかどうかを検討するに当たっては、相続財産全体において、プラスの財産の総額とマイナスの財産の総額を比較すべきです(当然ながら、マイナスの財産の総額の方が大きい場合は、相続放棄をした方が相続人にとって得です)。

そして、相続放棄をすべきかどうかを判断するに当たっては、相続財産について調査し、その全容を把握しておくべきです。

▼相続財産の調査について詳しく知りたい方へおすすめの記事▼

相続放棄ができる期間は、原則として、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内です。

「相続の開始」とありますが、相続は死亡によって開始するので、要するに、被相続人の死亡を知った時から3か月以内が相続放棄することのできる期間です。

「自己のために」とありますが、これは相続順位の先順位者全員が相続放棄をしたことによって自分が相続人となった場合などに特に関係してくる文言で、この場合は先順位者全員が相続放棄をしたことを知った時が「自己のために相続の開始があったことを知った時」となります。相続順位については以下の記事をご参照ください。

相続放棄ができる期間は、相続人等の請求によって家庭裁判所において伸長(延長)することができます。

相続放棄手続については以下の記事で詳しく説明しています。

相続手続きには理解の難しい仕組みや制度がたくさんあります。正しく、そして不利益が出ないようにするために、ぜひ専門家に相談してみることをご検討ください。

 

根抵当権が設定されたままにしておく

被相続人が個人事業主で相続人がその事業を承継する場合は、承継後に事業資金の借入が必要になることがあるでしょう。

借入が必要になる場合に備えて根抵当権が設定されたままにしておくと、事業を承継する相続人が根抵当権者から極度額の範囲内で借入をすることができます。

相続後も根抵当権が設定されたままにするためには、次の3つの登記が必要です。

  • 相続人への所有権移転登記
  • 相続人全員を債務者とする根抵当権の債務者変更登記
  • 指定債務者の合意の登記

相続開始後6か月以内に、これらすべての登記を完了しなければ、相続後も根抵当権を設定したままにしておくことはできません。

元本確定

相続開始後6か月以内に、合意の登記を完了しなかったときは、相続開始時に元本が確定したものとみなされます。手続きは特に必要ありません。

根抵当権の元本が確定すると、その根抵当権は抵当権となります。

根抵当権の場合は一つの契約の中で極度額の範囲内で何度でも借入と返済を繰り返すことができますが、抵当権の場合は一つの契約の中で追加の借入をすることはできません。

前述のとおり被相続人の個人事業を承継した場合等のように繰り返し借入の必要性が生じる場合は根抵当権が設定されたままにしておくと便利ですが、そうでない場合は、相続時に元本を確定させ、完済後に根抵当権を抹消できるようにしておいた方がよいでしょう。

一たび合意の登記がなされると、根抵当権者が元本確定請求をする等の事由がなければ元本を確定することはできません。つまり、相続時は、根抵当権者の意向にかかわらず、相続人の意思のみで元本を確定させることができる機会なのです。

元本を確定させなければ、債務を完済して根抵当権を抹消することもできません。

根抵当権を抹消しなければ、当該不動産を売却する場合に買い手が付かず価格が安くなってしまう場合がありますし、他のローンの審査を組む際に審査に通りにくくなります。

根抵当権の抹消

根抵当権が設定された不動産は買い手が付きづらく、買い手が付いたとしても根抵当権が設定されていない場合と比べて価格が低くなってしまう場合があります。

また、根抵当権が残ったままであれば、他のローンを組もうとしたときに審査に通りにくくなります。

したがって、当該不動産の売却を予定している場合や、他のローンを組む予定がある場合は、根抵当権を抹消しておく方がよいです。

相続時に既に被担保債務が完済されている状態であれば、抹消登記をすることで根抵当権を抹消させることができます。

被担保債務が完済されていない場合は、まず、相続開始後6か月待って元本を確定させ、完済して抹消登記をします。

よくある質問 Q&A

以上、根抵当権付き不動産の相続について説明しました。

最後にまとめとして、よくある質問とその回答を示します。

Q:根抵当権付き不動産を相続したらどうすればいい?

根抵当権付き不動産を相続した場合の選択肢として、4つの選択肢があります。

  1. 相続放棄
  2. 合意の登記(相続後の根抵当権が有効な状態を維持)
  3. 元本確定
  4. 抹消登記

相続財産が債務超過なら“1”、繰り返し借入をしたい場合は“2”、繰り返し借入をする必要がない場合は“3”、既に完済している場合は“4”を選択するとよいでしょう。

Q:根抵当権付き不動産を相続した場合に相続放棄すべきケースは?

相続財産について、プラスの財産の総額よりもマイナスの財産の総額の方が大きい場合は、相続放棄をした方がよいでしょう。

Q:合意の登記をすべきケースは?

合意の登記をすると、特定の相続人が根抵当権設定契約を引き継ぐかたちになります。当該相続人が根抵当権設定契約を維持することによって繰り返し借入をしたい場合、すなわち、当該相続人が被相続人の事業を承継する場合等は、合意の登記をするとよいでしょう。

Q:根抵当権付き不動産を売却した場合は?

根抵当権付き不動産を適正価格で売却するためには、根抵当権を抹消しなければなりません。根抵当権を抹消するためには、元本を確定させて、被担保債務を完済しなればなりません。相続開始後6か月以内に合意の登記をしなければ、元本を確定させることができます。債務を完済したら、抹消登記をすることで根抵当権を抹消できます。

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