弁護士監修記事
相続財産調査の方法や費用について、わかりやすく徹底的に解説

身近な人が亡くなって相続人となったら、早期に相続財産の調査をすべきです。
この記事では、相続財産調査の方法や費用について、わかりやすく説明します。
是非、参考にしてください。
[ご注意]
記事は、執筆日時点における法令等に基づき解説されています。
執筆後に法令の改正等があった場合、記事の内容が古くなってしまう場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをお勧めします。
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目次
相続財産調査とは?
相続財産調査とは、文字通り、相続した財産を調査することです。
相続人は、相続の手続きを進めるうえで、亡くなった人のどのような財産をどれだけ持っていたのかということについて、調査をして把握する必要があります。
相続財産調査の目的
相続財産調査の主な目的は、次のとおりです。
- 相続を承認するか放棄するか判断するため
- 財産についての権利を行使できるようにするため(例えば、存在に気が付かず時効によって権利が消滅しないようにするため等)
- 遺産分割協議のため
- 相続税申告の必要性の判断のため、相続税申告のため
以下、それぞれについて説明します。
相続を承認するか放棄するか判断するため
相続すると、現金や預貯金、不動産といった積極財産(プラスの財産)だけでなく、負債等の消極財産(マイナスの財産)も相続することになります。
積極財産の総額よりも消極財産の総額の方が高額な場合に相続すると、相続人が自分の財産で相続債務を弁済しなければならなくなってしまいます。
相続人は、必ず相続を承認しなければならないわけではなく、相続を放棄することもできます。
相続を承認すべきか放棄すべきかの判断をするためには、相続財産調査によって、相続財産の全容を把握することが必要です。
財産についての権利を行使できるようにするため(存在に気が付かず時効によって権利が消滅しないように)
相続人が相続財産の存在に気付かなければ、財産を利用することができず、宝の持ち腐れになってしまいます。
また、一定期間以上、財産についての権利を行使しない状態が続くと、権利が時効によって消滅することがあります。
亡くなった人がせっかく残してくれた財産を無駄にしないためにも、相続財産調査は必要です。
遺産分割協議のため
相続人が複数いる場合は、遺産を分割して分け合うことになります。
どのように遺産を分割するか(誰がどの財産を相続するか等)を決めるための協議を遺産分割協議と言います。
遺産分割協議をする前に、まずは遺産の全容を明らかにする必要があります。
そのためにも相続財産調査は必要です。
相続税申告の必要性の判断のため、相続税申告のため
相続税は、相続すると必ずかかるわけではありません。
遺産総額が一定額以上でなければ相続税はかからないのです。
相続税がかからなければ相続税の申告は不要です。
相続税申告の必要性の判断のためにも、相続財産調査は必要です。
また、相続税申告の際は、「相続税がかかる財産の明細書」を提出しなければならないため、この明細書を作成するためにも相続財産調査は必要です。
相続財産調査の時期
相続財産調査は、相続開始から3か月以内に完了することが望ましいです。
相続放棄の申述(手続き)ができる期間(熟慮期間)が、相続人が被相続人(財産を残す人)の死亡を知った時から3か月間だからです。
熟慮期間を過ぎてしまうと、放棄できなくなってしまうことがあります。
期間内に調査が終わらない可能性がある場合は、期間の伸長を申立てることができます。
この申立てが認められると、期間が3か月間伸長されます。
この手続きは一定程度繰り返し申し立てることができます。
なお、期限が過ぎてしまっても相続放棄が全く認められないわけではなく、相続債務が存在しないと信じており、そう信じていたことに相当の理由がある場合には、例外的に相続放棄が認められる場合があります。
相続財産調査の方法
相続財産は一度に確認する方法はなく、地道な調査が必要です。
以下では、相続財産の調査方法について、積極財産と消極財産に分けて説明します。
積極財産の調査方法
財産の種類によって次のような方法で調査を行います。
不動産
家にある権利証や固定資産税課税通知書(納付書)、市町村役場で発行してもらう名寄帳などから、被相続人がどこにどのような不動産を所有しているか調査します。
名寄帳については「名寄帳とは?相続人が知っておくべき名寄帳・固定資産課税台帳の知識」をご参照ください。
預貯金、有価証券、金融商品
通帳やキャッシュカード、銀行や証券会社からの郵便物などから、預貯金や有価証券を預けている金融機関を調査します。
銀行では、全店照会といって、その銀行のすべての支店に口座がないかどうかを一度で照会することができます。
また、近年ではネット上の銀行に口座等を保有している場合もあり、通帳やキャッシュカードが発行されていない場合もあるので、被相続人のメール等を確認することも大切です。
また、銀行や証券会社で金融商品を保有している場合は、運用報告書等が届いている場合もあるので、確認してみるとよいでしょう。
株式の調査方法については「株式を相続する前に知っておくべき株式相続の流れをわかりやすく説明」の「株式を含めた相続財産の調査を行う」の項目をご参照ください。
動産
動産も相続の対象となります。
動産にはほとんど価値のないものも多いことから忘れがちですが、車や宝石、貴金属、美術品等、一定の価値を有するものもあるので、きちんと調査する必要があります。
消極財産の調査方法
信用情報の照会によって、金融機関からの借入額を調べることができます。
信用情報機関には以下の3つがあります。
借入れがある場合は、借入先の金融機関が加盟する信用情報機関の信用情報に登録されます。
複数に加盟している場合は複数の信用情報機関に登録されますが、一つしか加盟していないこともあるので、3つすべてに開示請求を行った方がよいでしょう。
上のリストのリンク先は、それぞれ、相続人による開示請求方法の説明ページです。
開示請求を行う際の参考にしてください。
また、他人の債務の保証債務については「連帯保証人の地位を相続しない方法と相続してしまった場合の対処法」をご参照ください。
相続財産の評価方法
相続財産の調査が済んだら、各相続財産の価額をいくらで計算するのか、相続財産を評価しなければなりません。
相続税申告の際は、相続税評価額で評価します。
相続税評価額の評価方法は複雑なので、現金と預貯金以外の遺産があって、相続税の申告が必要な場合は、税理士に依頼することをおすすめします。
『遺産相続ガイド』のオススメ【税理士】はコチラ >>
遺産分割協議のために財産の評価をする場合は、相続人全員が納得していればどのように評価しても構いません。
一般的には、時価(市場価格)で評価するとよいでしょう。
不動産を評価する場合は、固定資産税評価額を参考にするとよいでしょう。
土地の場合は、固定資産税評価額を0.7で割った値が公示価格になります。
公示価格は市場価格を参考にして付けられているので、時価に近い金額となるでしょう。
建物は固定資産税評価額で評価するとよいでしょう。
固定資産税評価額は、次のいずれかの書類で確認することができます。
- 固定資産評価証明書
※固定資産課税台帳登録事項証明書または固定資産課税台帳記載事項証明書という名称になっている自治体もあります - 固定資産税・都市計画税の課税明細書
固定資産評価証明書を取得するには交付手数料が必要ですが、証明書で確認する方が確実ですし、相続税の申告や登記の際には固定資産評価証明書が必要なので取得しても無駄にはなりません。
固定資産評価証明書の取得方法については「固定資産評価証明書について相続人が知っておくべき取得方法や見方」をご参照ください。
登記申請を司法書士に依頼する場合は、固定資産評価証明書は司法書士が取得してくれることが多いでしょう(相続税申告の場合は税理士)。
取り急ぎ、評価額だけ知りたいということであれば、評価証明書を取得しなくても、固定資産税・都市計画税の課税明細書で確認することができます。
課税明細書は、毎年4月~6月頃(市町村によって異なります)に納税義務者に届く「固定資産税・都市計画税 納税通知書」に同封されています(別送の場合もあります)。
課税明細書の「価格」または「評価額」の欄に記載されている金額が、固定資産税評価額です。
なお、マンションの場合は、価格欄は一棟丸ごとの評価額になっており、自分の所有している部屋の固定資産税評価額は課税標準額の欄に記載されています。
相続財産調査の費用
財産調査も単体で依頼されることは通常なく、相続手続きの前提業務として相続手続きと併せて依頼されるケースが多いでしょう。
単体で依頼した場合の費用は、20万~30万円くらいが相場だと思われます。
相続手続きも含めて依頼すると、財産の数や額にもよりますが、平均すると60万~80万円くらいが相場だと思われます。
なお、弁護士の場合は、弁護士会を通じて金融機関や行政機関等に対して情報開示を求める「弁護士会照会」(23条照会)が可能なので、自分で調査するよりも、詳細な調査が可能です。これは、司法書士等の他の専門家にはない特徴です。
まとめ
以上、相続財産調査について説明しました。
相続放棄の検討や、遺産分割協議・相続手続きのための相続財産調査は、弁護士、司法書士等の専門家に依頼するとよいでしょう。
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相続税申告のための相続財産調査は、税理士に依頼するとよいでしょう。
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