弁護士監修記事

二次相続対策をシミュレーションして万全にするために必要な全知識

夫婦のどちらかが亡くなった際に、残された配偶者と子が、どのような配分で相続するべきか、悩ましいところでしょう。

この配分を最適化することによって、相続税の節税効果を最大化させることができます。

この記事では、このような場合に、遺族がどのような配分で相続するべきか判断するために必要な全知識をご紹介します。

是非、参考にしてください。

[ご注意]
記事は、執筆日時点における法令等に基づき解説されています。
執筆後に法令の改正等があった場合、記事の内容が古くなってしまう場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをお勧めします。

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二次相続とは?

二次相続という言葉は、法律用語ではないので、正確な定義はなく、様々な意味で使用されていますが、一般的な意味としては、配偶者に先立たれた人が亡くなった際の相続のことをいいます。

例えば、夫が先に亡くなり、次に妻が亡くなったとします。

この場合、夫の相続を一次相続、妻の相続を二次相続といいます。

より広い意味では、夫婦に限らず、ある相続の相続人が亡くなった際の相続について、二次相続ということがあります(初めの相続を一次相続といいます)。

例えば、ある人が亡くなって相続が生じ、被相続人の子が相続人となったとします(一次相続)。

一次相続の相続人がさらに亡くなって生じた相続のことを二次相続という場合があります。

しかし、この記事では、前者の、夫婦間に限定した意味で、「二次相続」という言葉を使用することにします。

なお、後者の意味での二次相続については「数次相続とは?数次相続の手続を損なくスムーズに進めるための全知識」をご参照ください。

二次相続対策

相続財産は、相続税の課税対象となりますが、相続税は賢く対策することで節税することができます。

ところが、一次相続時に行った相続税対策のために二次相続の相続税が高額になり、トータルすると、何も対策しなかった方がむしろ相続税が安く済んだというケースも起こりえます。

一次相続の相続税をできるだけ低くするためには、「配偶者の税額軽減」(相続税の配偶者控除)を最大限活用するために、配偶者が遺産の多くを取得すべきなのですが、そうすると、二次相続の相続税が高額になってしまうのです。

「配偶者の税額軽減」を活用すると一次相続の相続税の節税になる

配偶者の税額軽減」(相続税の配偶者控除)を活用することで、一次相続の相続税の節税になります。

「配偶者の税額軽減」(相続税の配偶者控除)とは、配偶者相続人だけが利用できる制度で、遺産分割や遺贈により取得した遺産額から、配偶者の法定相続分か16千万円のいずれか大きい方の金額を差し引いて、残った金額にのみ課税するという制度です。

差し引く金額の方が大きい場合は、課税されません。

つまり、法定相続分の範囲内で遺産分割や遺贈を受ける分においては、相続税が課されることはなく、また、法定相続分を超えて遺産を取得したとしても16000万円までは課税されないということです。

そうすると、一次相続の相続人の組み合わせが配偶者と子(子が複数でも同じ)であれば、一次相続の節税だけを考えれば、次の表のように遺産を分配すると最も節税になることになります。

課税価格の合計額 一次相続の相続税額が最も低くなる配偶者の取得する課税価格
16千万円 課税価格の合計額の全額
16千万円 ~ 32千万円 16千万円
32千万円 ~ 課税価格の合計額の2分の1に相当する額

つまり、最低でも16千万円までは配偶者に取得させた方が、一次相続の相続税額は低くなるわけです。

一次相続で配偶者の取得分が多いと、二次相続で相続税が高くなる

このように、一次相続で節税するためには配偶者が遺産の多くを取得すべきなのですが、そうすると、二次相続の相続税が高額になってしまいます。

これには、次の2つの事情が関係します。

  • 二次相続では一次相続よりも法定相続人の数が減ることで、相続税の基礎控除額も減り、税率が高くなる可能性が高い
  • 二次相続の被相続人に固有の財産(一次相続の相続財産以外の財産)がある場合、二次相続の相続税率が一次相続よりも高くなる可能性が高い

以下、それぞれについて説明します。

二次相続では法定相続人が減ることで基礎控除額が減り税率が高くなる

一次相続だけを見ると、配偶者の税額軽減を最大限活用した方が節税になりますが、前述のとおり、二次相続まで考えると、一次相続で配偶者に多くの遺産を取得させることは、得策ではありません。

なぜなら、二次相続では法定相続人の数が通常1人減るので、それに伴って、基礎控除額が減り、また、税率が高くなるため、基礎控除額が高く税率が低い一次相続の際に、子に財産を渡してあげた方がトータルで見ると相続税が低く抑えられるのです。

なぜ、法定相続人が減ると、基礎控除額が減り税率が高くなるのでしょうか。その仕組みについて説明します。

まず、基礎控除額の仕組みから説明します。

相続税額を計算する際は、課税価格の合計額から基礎控除額を差し引いて、課税される遺産の総額を計算します。

相続税の基礎控除額は、「3000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。

つまり、法定相続人の数が多ければ、その分、基礎控除額も高くなります。

そして、基礎控除額が高くなれば、課税される遺産の総額が低くなり、課税される遺産の総額が低くなれば、相続税額も低くなります。

すなわち、法定相続人の数が多ければ、相続税額が低くなるわけです。

夫婦の間に子が1人という家庭の例で考えてみましょう。

まず、夫が亡くなったとします(一次相続)。

夫の相続の法定相続人は、妻と子の2人で、基礎控除額は4200万円(=3000万円+600万円×2人)になります。

次に、妻が亡くなったとします(二次相続)。

妻の相続の法定相続人は、子の1人だけで、基礎控除額は3600万円(=3000万円+600万円×1人)になります。

次に、税率について説明します。

相続税の税率は、法定相続分に応ずる取得金額に応じて、下表のようになっています。

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1000万円以下 10
1000万円超3000万円以下 15 50万円
3000万円超5000万円以下 20 200万円
5000万円超1億円以下 30 700万円
1億円超2億円以下 40 1,700万円
2億円超3億円以下 45 2,700万円
3億円超6億円以下 50 4,200万円
6億円超 55 7,200万円

このように、法定相続分に応ずる取得金額が低くければ、税率も低くなります(このような税制を「累進課税」といいます 

この速算表の詳しい見方については「相続税早見表で税額が一目瞭然!「配偶者と子」「子のみ」等の4種類」の記事中の「相続税速算表」の項目をご参照ください。

相続人が多ければ、各相続人の法定相続分に応ずる取得金額も自ずと低くなるので、税率も低くなります。

このように、二次相続よりも一次相続の方が基礎控除額が高くなるので、一次相続で配偶者の税額軽減を目一杯活用しようとすると、二次相続まで含めて考えると相続税が高くなる可能性が高いのです。

例を挙げてシミュレーションしてみましょう。

先ほど例の家族構成で課税価格の合計額が16千万円であったとします。

この場合に、一次相続の妻と子の相続分を次の3つのパターンに分けて、それぞれ相続税をシミュレーションしてみます。

  • 妻が全額
  • 子が全額
  • 妻が3600万円、子が12400万円

なお、以下の前提でシミュレーションします。

  • 妻の固有の財産はないものとします
  • 一次相続で妻が相続した財産は、二次相続までの間に目減りしないものとします
  • 一次相続から二次相続までの期間は10年以上とします(つまり相次相続控除の対象外)
  • 子は成年者とします(つまり、未成年者控除の対象外)
  • 障害者控除と贈与税額控除の適用はないものとします
妻が全額

まず、妻が全額を取得するパターンから計算します。

一次相続の相続税:0円(配偶者の税額軽減により全額が控除されるため)

二次相続の相続税:3260万円

一次相続と二次相続の相続税の合計額:3260万円

子が全額

次に、子が全額を取得するパターンについて計算します。

一次相続の相続税額:3020万円

二次相続の相続税額:0円(相続財産がないため)

一次相続と二次相続の相続税の合計額:3020万円

妻が3600万円、子が12400万円

最後に、二次相続の基礎控除額を最大限活用するために、妻が3600万円、子が12400万円を取得するパターンについて計算します。

一次相続の相続税額:1658.5万円

二次相続の相続税額:0円(相続財産が基礎控除額の枠内に収まるため)

一次相続と二次相続の相続税の合計額:1658.5万円

このように、二次相続の基礎控除額分だけ、一次相続で配偶者が相続し、それ以外は子が相続すると、一次相続と二次相続の相続税の合計額が最も低くなることが分かります。

配偶者に固有の財産がある場合、二次相続では税率が高くなる可能性が高い

二次相続では法定相続人が減るため税率が高くなることは先ほど説明しました。

加えて、配偶者に固有の財産がある場合に、一次相続で配偶者が多くの遺産を取得すると、さらに、二次相続では税率が高くなります。

前述のとおり、相続税は累進課税になっていて、遺産が多ければ多いほど、税率も高くなります。

配偶者に固有の財産がある場合に、一次相続において配偶者が多くの遺産を取得すると、配偶者の固有の財産に一次相続の相続財産が加わって、二次相続における税率が高くなってしまうのです。

小規模宅地等の特例を適用する土地は子が相続した方が節税効果が高い

「小規模宅地等の特例」とは、亡くなった人の自宅の土地や、亡くなった人が事業に使っていた土地を相続する場合に、一定の条件を満たせば、相続税を計算する際の土地の評価額を最大8割引にしてくれる制度です。

小規模宅地等の特例は、居住用宅地の場合、330平方メートルまで適用を受けることができます。

居住用宅地が複数あり合計の面積が330平方メートルを超える場合は、どの土地に特例を適用させるかを、相続人が決めることができます。

配偶者が相続する土地と、子が相続する土地がある場合は、子が相続する土地に特例を適用させた方が節税になるケースが多いです。

配偶者には「配偶者の税額軽減」があるため、配偶者の相続する土地に特例を適用させなくても、配偶者には相続税がかからないケースが多いからです。

例えば、330平方メートルの居住用宅地が2筆あった場合(土地は1筆、2筆と数えます)、一つは配偶者が相続して、もう一つは子が相続し、子が相続する方の土地に特例を適用させた方がよいです。

配偶者が相続した方の土地は、多くのケースでは、「配偶者の税額軽減」によって相続税がかかりません。

そして、二次相続が生じた際には、配偶者が相続した土地を子が相続し、その時、小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。

つまり、二次相続まで考えると、660平方メートルの居住用宅地について、小規模宅地等の特例の適用を受けることができるのです。

ただし、子が相続した土地に小規模宅地等の特例の適用させるためには、一定の要件を満たす必要があります。

詳しくは「小規模宅地等の特例で8割減で大幅に節税する方法と意外な落とし穴」をご参照ください。

生命保険金の受取人は配偶者でなく子に

生命保険は相続税対策として活用することが可です。

保険金の受取人が相続人の場合は、保険金のうち一定額までは非課税となるためです。

非課税限度額は、次の式で計算することができます。

500万円×法定相続人の数

受取人を配偶者にしていると、二次相続まで含めると相続税が高くなる可能性が高いので、相続税対策として生命保険を活用する場合は、受取人を子にした方がよいでしょう。

まとめ

以上、二次相続対策について説明しました。

二次相続について不明な点は、相続税対策に精通した税理士に相談するとよいでしょう。

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