【相続放棄】親の借金が発覚したときに回避する方法

親の借金が発覚、疑われるときに知っておきたいこと

家族が亡くなった後、いきなり電話がかかってきて「親の借金が残っている」と言われれば誰だって驚くでしょう。

実際、親の借金は子が支払う義務があるのでしょうか?免れる方法はあるのでしょうか?

確かに、自己破産をしたり相続放棄をしたり…といった方法で親の借金を免れる方法はありますが、それには「相続の開始を知ったときから3ヵ月以内に手続きを行わなければならない」というルールがあります。

しかし、期限があるからといって焦って決めてしまうのはNG。相続に強い弁護士に相談するのが安心です。

今回は、親の借金が発覚したときに知っておきたい対処法について、紹介します。

[ご注意]
記事は、公開日(2018年10月17日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。

親の借金の支払いを回避する方法

相続放棄、限定承認

親の作った借金の金額が大きく、どうしても払えないときもあるでしょう。そのようなとき、3つの方法が考えられます。

親の作った借金を免れる方法

  • 自己破産
  • 相続放棄
  • 限定承認

いずれも適用条件やメリット・デメリットがあるので正しく理解しておきましょう。また、相続放棄と限定承認は、親が亡くなり財産を相続するときに行います。

自己破産

自己破産とは、「支払不能」であると裁判所に認めてもらうことで、原則として借金の支払義務が免除される手続きです。

これは、親が健在であれば親自身が、もしくは連帯保証人となった子ども自身が行う方法になります。

メリット

自己破産をすればすべての債務の返済義務がなくなり、取り立ての連絡もされなくなります。また、自己破産後に入手した財産は回収されません。

デメリット

自己破産をすると、一定期間の借り入れが不可能に。5~10年はクレジットカードの作成やローンを組めなくなります。

さらに、価値のある財産は原則としてすべて処分しなければいけません。最低限生活のために必要なものは手元に残すことができます。

また、自己破産の手続きが始まると免責許可が決定するまでは、職業や資格に制限がかかります。弁護士、司法書士、行政書士などの士業や、警備員などの職業に就くことができません。

相続放棄

相続放棄とはプラスの財産とマイナスの財産含めた、すべての財産の相続を放棄する手続きです。マイナスの財産だけ放棄することはできません。

相続放棄の手続きは家庭裁判所で行います。相続放棄が受理されると、原則として撤回できないので注意が必要です。

メリット

亡くなった親が多額の債務を残していた場合、そのようなマイナスの財産を相続しなくて済みます。また、使い途や価値のない財産…例えば田舎の不動産なども相続しなくて済むのは大きいメリットと言えるでしょう。

相続放棄をした場合、その人を除いた相続人で遺産分割協議を行います。そのため「遺産分割協議に参加したくない」という人にとっても利点と言えるでしょう。

デメリット

マイナス財産を相続しなくて済む反面、欲しい財産があってももらうことはできません。

必要書類の記入など、相続放棄の手続きが面倒だと言う人も。相続放棄の手続きは弁護士などの専門家に依頼することも可能なので、検討してみても良いでしょう。

相続放棄の手続き

相続放棄の手続き
被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に必要書類を提出すると、相続放棄の手続きが開始されます(相続放棄の申述)。相続放棄の申述の必要書類は以下の通りです。

  • 相続放棄申述書(800円分の収入印紙を貼付)
  • 相続放棄をする人の戸籍謄本
  • 被相続人の戸籍謄本
  • 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
  • 郵便切手(数百円程度)

また相続放棄は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」と期限が定められています。

相続放棄の申述までに相続財産調査や必要書類の準備があるため、意外と時間がありません。相続放棄を検討している人は早め早めに準備しておくことをおすすめします。

もし間に合わなさそうであれば、家庭裁判所に申し立てることで伸長(延長)することができます。申し立てが認められると期限が3か月延長されます。

限定承認

限定承認とは、「プラスの財産の限度でマイナス財産の弁済を行えば良い」という手続きです。プラスの財産の限度で精算すれば良く、債務が大きくてもそれ以上支払う必要はありません。

例えば1,000万の財産と1,500万の負債があった場合、1,000万円の限度で弁済を行えば良いという仕組みです。

このように聞くと便利な制度に思えますが、もちろん良い点も悪い点もあります。

メリット

相続放棄ではすべての財産を相続しないのに対し、限定承認では一部の財産を手元に残すことができます。「形見の品だけは手放したくない」などの理由があれば限定承認を活用しても良いでしょう。

デメリット

限定承認の申述が受理されると、公告・精算手続きが必要になります。これを面倒だと思う人もいるようです。

公告手続きは、相続人が1人しかいない場合、限定承認の申述受理から5日以内に官報公告を出します。また、共同相続の場合には財産管理人が選任され、その財産管理人の選任審判の告知を受けてから10日以内に官報公告を出さなければいけません。

そもそも、限定承認の手続きはすべての相続人が共同で行わなければならず、面倒だと感じる人も。このデメリットもあり、限定承認を利用する人はあまりいないようです。

また限定承認では、相続開始の日に被相続人から相続人に相続財産が時価で売られたものとみなされます。そのため、その財産が値上がりしていればみなし譲渡所得税がかかってしまいます。

また、限定承認の手続きも相続開始から3か月以内と期限が決まっています。判断に迷ったときは、相続に詳しい弁護士に相談してみても良いでしょう。

親の借金を支払う義務はある?

「親が借金を残したまま行方不明になってしまった」「亡くなった親の遺産を調べていたら借金が残されていた」など、思いも寄らない借金が発覚することがあります。

このような場合、「子である自分が親の借金を肩代わりしないといけないのか?」と心配になってしまいますよね。これについては、親が生きているかどうかで変わってきます。

結論から述べると「親が生きているうちは子に支払い義務はないが、親が死亡すると相続によって債務を含むすべての財産を引き継ぐ」ことになります。

親が健在のとき

債務は、「個人に責任が帰属するものであり、他人の債務を払う義務は誰にもない」のが原則です。

この原則は親子でも同じです。したがって借金の借り主である親が健在である場合、借金の返済は親個人に課された義務となります。つまり、たとえ親子であっても親の借金を支払う義務はありません。

ただし、子どもが親の借金の連帯保証人になっていた場合は、親と同様の返済義務が生じます。

親が亡くなっているとき

親が亡くなると相続が発生します。

相続では故人のプラスの財産(現金など)だけでなく、マイナスの財産(債務など)も受け継ぐ決まりとなっているため、借金の支払い義務が生じることになります。

法定相続分に従って親の借金を相続する

民法第887条第1項に「被相続人の子は、相続人となる」とあります。すなわち、子どもは基本的には法律で定められた法定相続分に従って借金返済の義務を負うことになるのです。

法定相続分とは、法定相続人ごとに定められた相続の割合です。

親の借金を取り立てられた場合

債権者(親がお金を借りていた人)から「借金の返済はまだか」と連絡が入ることも。この場合も親が健在かどうかで対応が異なります。

親が健在のとき

上で述べたように、親が健在であれば子どもに返済義務はありません。そのため子どもが対応する必要はありません。

借金の債権者が貸金業者の場合

そもそも、貸金業者が債務者と保証人以外の者に対して債務を弁済するよう要求することは禁止されています(貸金業法第21条1項7号)。そのため、取り立ての行為自体が違法、ということになります。

さらに債務者と保証人以外の者が協力を拒否しているのに、債務者の居場所や連絡先を教えるよう重ねて要求することも禁止されています(同8号)。

このように禁止された取り立てをした貸金業者には、2年以下の懲役刑又は300万円以下の罰金刑に処せられます。この懲役刑と罰金刑の両方を同時に科すこともできます(同業法第47条の3第1項3号)。

それでもしつこく金銭を催促してきたり、親の電話番号を要求してくる場合は、速やかに警察に通報しましょう。

借金の債権者が個人の場合

債権者が知り合いのような個人の場合は、貸金業法のような規制はありません。そのため、子どもに親の借金返済を要求することが違法行為とは言えません。

しかし、子どもに支払い義務がないのは明らか。その説明を行い、今後請求に来ないよう毅然と対応しましょう。

それでも執拗に請求してくる場合は、こちらから法的措置をとるのもひとつの方法。債権者の言動が脅迫行為だと判断されれば恐喝罪で刑事告訴することができます。

親の借金額を調査する方法

親が生きていれば子どもが借金を肩代わりする必要はありません。しかし、親が亡くなって遺産を相続するとき、マイナスの財産を放っておくことはできません。現金や預貯金などを相続するつもりなら、マイナス財産の金額も把握しておく必要があります。

借金額の調査方法は、お金を借りたところが銀行なのか、消費者金融なのか、もしくはクレジットカードの信販会社かによって異なります。

「銀行からの借金」

銀行からの借金

銀行からの借金は、全国銀行協会「全国銀行個人信用情報センター」へ照会を行うことで、金額が確認できます。

契約期間中および契約終了日(完済されていない場合は完済日)から5年を超えない期間などの登録期間が決まっていますが、ローンやクレジットなどの返済状況や取引履歴なども確認できます。

照会の申し込みはインターネットでは不可。郵送のみ対応可となっており、その際には以下の書類が必要になります。(法定相続人の場合)。

  • 登録情報開示申込書
  • 手数料
  • 開示請求書の本人確認資料
  • 開示対象者の死亡を証する資料
  • 開示請求者が法定相続人であることを証する資料

登録情報開示申込書は、全国銀行協会のホームページからダウンロードできます。必要書類を郵送し、協会側にそれが到着した後、通常1週間から10日程度で開示報告書が送られてきます。

「消費者金融・クレジットカードの信販会社からの借金」

消費者金融やクレジットカードの信販会社からの借金の場合、信用情報機関へ照会を依頼します。信用情報機関としては、以下の2か所が挙げられます。

  • 株式会社シー・アイ・シー(CIC)
  • 株式会社日本信用情報機構(JICC)

こちらも先程と同じように必要書類を揃えて手続きを行います。ちなみにCICとJICCへの照会は郵送だけでなく、インターネットからの申込みにも対応しています。

借金に時効は?

借金の時効はある?
借金は家族にも内緒にしている場合が多いので、死後しばらく経ってから借金が発覚することも。故人が生前、長期に渡って返済していなかったりすると、資料や請求書もなかなか見つからないことも。

そのような場合、時効が成立している可能性があります。借金は「最後の返済期日(の翌日)から5年」という時効期間が完成されていれば、借金は消滅します。同時に返済義務もなくなります。

しかし、返済期日から5年経過したからといって自動的に返済義務がなくなるわけではありません。時効によって借金を消滅させるには、債務者自身で「時効援用」と呼ばれる手続きが必要です。

時効援用とは時効援用とは、「時効の効果によって利益を受ける(借金の返済を免れる)」という意思を債権者に示すことです。決められた方法はありませんが、トラブルなどを防ぐためにも、内容証明郵便を送付するのが一般的です。

よくある質問

親の借金が発覚したときのよくある質問をまとめました。

親の借金を子どもが払う必要がある?

親が生きているうちは子に支払い義務はありませんが、親が死亡すると相続によって債務を含むすべての財産を引き継ぐことになります。

親の借金の支払いを回避する方法としては、自己破産、相続放棄もしくは限定承認などが挙げられます。

亡くなった親が組んでいた住宅ローンを子どもが必要がある?

親が住宅ローンを組んでいた場合は、住宅に金融機関の抵当権が設定されています。親が支払えなくなったときや、子供が相続で住宅ローンを引き継ぎながら約定の支払いができないときは、住宅は競売にかけられてしまいます。

この事態を回避したければ、支払いを継続するしかありません。ただし相続によって返済する方の信用力に変化が生じるため(子供のほうが経済力があるなど)、返済方法についてはあらためて金融機関と協議した方が良いでしょう。

奨学金を払ってくれていた親が亡くなりましたが、残りは自分で完済しないダメ?

奨学金には、返済不要の給付型と返済が必要な貸与型があります。貸与型奨学金は子どもが債務者で親が連帯保証人なので、親が払えなくなれば子どもが責任をもって支払います。

ただ、親の死亡や失業などで返済が難しくなった場合には、猶予措置や減免措置の制度が利用できる可能性も。貸与機関に相談することをおすすめします。

両親が離婚して疎遠になった父の債務は、相続しなければいけませんか?

両親が離婚していたとしても、親と子どもの関係は消滅しません。したがって子どもの相続権は残っているため、離婚した親の借金であっても債務は相続されてしまいます。

生前ほとんど関わりがなかったとしても、突然債権者から取り立てがあるかもしれません。早めに相続放棄の手続きを進めたほうが良いでしょう。

この記事を書いた人

株式会社鎌倉新書 いい相続

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