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成年後見制度利用支援事業で申立費用と後見人報酬の助成を受ける方法

成年後見制度利用支援事業で、後見等開始の審判の申立てに関する費用と成年後見人等に対する報酬の助成を受けるための方法等について説明します。

是非、参考にしてください。

[ご注意]
記事は、公開日(2019年9月11日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。

成年後見制度とは?

高齢化が進み、認知症の方も増えていくなかで、オレオレ詐欺など、判断能力の低下した方を狙った犯罪行為が増えてきています。また、犯罪行為とまではいかなくても、判断能力が低下してしまったために、必要のない高額商品を購入してしまうなど、お一人で財産の管理をするのが難しくなってしまう方も少なくありません。

このような場合に、ご本人の財産を保護するための制度が成年後見制度です。

成年後見制度は、大きく分けると、法定後見制度と任意後見制度の2つがあります。

成年後見制度利用支援事業が関係するのは、法定後見制度です。

法定後見制度は、「後見」「保佐」「補助」の3つに分かれており、判断能力の程度など本人の事情に応じて制度を選べるようになっています。

法定後見制度と任意後見制度の違いをまとめると下の表のとおりです。

任意後見 法定後見
後見 保佐 補助
前提となる手続き 公正証書で作成された任意後見契約の登記 なし なし なし
効力を生じる時 任意後見監督人が選任された時 後見開始の審判がされた時 保佐開始の審判がされた時 補助開始の審判がされた時
対象者 判断能力が不十分な状況にある人 判断能力が欠けていることが通常の状態の人 判断能力が著しく不十分な人 判断能力が不十分な人
本人の同意 必要 ※意思表示できないときは不要 不要 不要 ※保佐人に代理権を与える場合は必要 必要
後見人等の選任者 本人 家庭裁判所 家庭裁判所 家庭裁判所
後見人等の同意が必要な行為 (同意権の範囲) なし 同意の有無にかかわらず本人は法律行為ができない(後見人が取り消すことができる) ※日常生活に関する行為はできる(同意不要) 民法13条1項所定の行為(借金、訴訟行為、相続の承認・放棄、新築・改築・増築など) ※家庭裁判所の審判により、民法13条1項所定の行為以外についても、同意が必要な行為の対象とすることができる 申立ての範囲内で家庭裁判所が審判で定める「特定の法律行為」 ※民法13条1項所定の行為の一部
後見人等による取消しが可能な行為 (後見人に等に与えられる取消権の範囲) なし 日常生活に関する行為以外の行為 同上 同上
後見人等による代理が可能な行為 (後見人等に与えられる代理権の範囲) 任意後見契約によって定めた行為 財産に関するすべての法律行為 申立ての範囲内で家庭裁判所が審判で定める「特定の法律行為」 同左
制度を利用した場合の資格などの制限 なし 医師、税理士等の資格や会社役員、公務員等の地位を失うなど 同左 なし

法定後見について詳しく知りたい場合は「成年後見人とは?成年後見制度のデメリット、家族信託という選択肢も」を、保佐については「保佐人、被保佐人とは?被保佐人と成年被後見人や被補助人との違い」を、補助については「補助人とは?被補助人とは?保佐人・被保佐人との違いをわかりやすく説明」を、任意後見については「任意後見制度・任意後見契約とは。法定後見との違いを一覧表で解説!」を、それぞれご参照ください。

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成年後見制度利用支援事業とは?

成年後見制度利用支援事業とは、認知症などにより判断能力が不十分で、かつ、身寄りがないなど、親族などによる後見等開始の審判の申立てができない方について、市区町村長が代わって申立てを行ったり、成年後見制度を利用するにあたって費用を負担することが困難な人に対して、自治体が、審判の申立てにかかる費用及び後見人等への報酬の助成を行う事業のことをいいます。

成年後見制度利用支援事業は、高齢者を対象としたものと、障害者を対象としたものとに分けられ、前者は全国1650の市区町村で(実施率:約95%(平成30年度))、後者は全国1630の市区町村で(実施率:約94%(平成30年度))実施されています。

市区町村長による後見等開始の審判の申立て

成年後見制度利用支援事業の一つである、市区町村長による後見等開始の審判の申立てについて説明します。

法定成年後見制度では、後見等開始の審判(後見開始の審判、保佐開始の審判又は補助開始の審判)がされなければ後見等の効力が生じません。

後見等開始の審判の申立てができるのは、本人、配偶者、四親等以内の親族等に限られます。

判断能力が十分でない本人が自ら申立てをすることは難しいケースが多く、また、身寄りがない場合は親族等からの申立ても期待できません。

そのような場合でも成年後見制度を利用できるように、本人の住所地の市区町村長が後見等開始の審判の申立てをすることができるようになっているのです。

市区町村長による後見等開始の審判の申立てに至るまでと、申立てから後見等開始までの流れは、概ね以下のようになります。

  1. 後見ニーズ(対象者)の発見
    訪問介護員や介護支援専門員、社会福祉協議会職員、民生委員、家族・親族などからの報告、連絡、相談、要請により、情報が入る。
  2. ケース検討会議の開催
    市町村は、寄せられた情報の事実確認を行うとともに、地域包括支援センターや相談支援事業所、社協等と、日常生活自立支援事業の利用検討や成年後見等申立て(本人・親族・市区町村長による申立て)などの支援策について検討する。
  3. 本人調査
    本人の心身・日常生活の状況・資産状況(わかる範囲)等を把握。
  4. 親族調査
    2親等以内の親族(他の申立権者)を確認するため戸籍謄本、附票などを取り寄せる。親族がいる場合は、2親等以内の親族に申立ての意思を確認し、申立て意思がある、または既に4親等以内で申立てを行う予定の者が明らかな場合は、その者に申立てに関する支援を行う。※但し、2親等以内の親族がいるが「申立てを拒否している」「本人への虐待がある」又は「連絡がつかない」等の場合は、2親等以内の親族はいないものとして扱う。
  5. 成年後見登記事項の確認
    成年後見等の登記の有無について確認する。登記ありの場合は、成年後見人等に対応を依頼する。
  6. 診断書の作成依頼、申立て類型の検討
    診断書(家庭裁判所の指定様式)の作成を医師に依頼する。医師は精神科医が望ましいが、本人の状況をよく分かっているかかりつけ医でもよい。医師の作成した診断書等を参考に、申立ての類型(後見・保佐・補助)を検討する。
  7. 成年後見人等候補者の検討
    特別な事情等がある場合は、その後の手続き等を円滑に行うため候補者を検討する。
  8. 市町村長申立ての要否を検討・決定
    市町村長申立ての要否について、検討会議(審査会)を開催して最終的に判断する。
  9. 申立て書類の作成等
    申立てに必要な書類(申立書、本人の状況説明書、財産目録、親族関係図など)を作成する。
  10. 家庭裁判所への申立て
    本人の住所を管轄する家庭裁判所へ申し立てる。申立費用(収入印紙、登記印紙、郵便切手及び鑑定費用)を予納する。緊急を要する場合には、審判前の保全処分の申立ても併せて行う。
  11. 審理
    調査官による調査(本人、支援者、後見人候補者らも可能な限り同席)。医師による鑑定(必要な場合のみ)
  12. 審判の確定
    審判書が成年被後見人等に届いてから2週間以内に不服申立てがなされなければ、後見等開始審判の法的効力が確定する。家庭裁判所は、東京法務局に審判内容を登記するよう依頼。
  13. 後見等の開始
    申立費用について本人負担の審判が出ている場合は、本人へ求償する(成年被後見人等宛てに納付書を送付)。本人負担の審判が出ていない場合は、成年後見制度利用促進支援事業の対象となる可能性が高いため、同制度の案内を行い、成年後見人等からの申込みに基づき助成手続きを行う。

手続きにかかる期間について、17の調査・検討・決定の過程に約23か月、89の申立準備に約1か月、1012の家裁での審判に原則として約12か月、合計で原則として約46か月かかります。

申立費用と後見人等への報酬の助成

成年後見制度を利用する際に必要な経費として大きく分けて、以下の2があります。

  • 申立てに関する費用
  • 成年後見人等に対する報酬

これらの助成については、市区町村長による後見等開始の審判の申立ての場合に限らず、本人や親族が申し立てた場合であっても対象になりえます。

ただし、自治体によって対応はまちまちであり、市区町村長による申立ての場合のみ対象としている自治体もあります。

助成を受ける場合は、成年後見人等が市区町村の役所で申込みをします。

以下、それぞれの費用について説明します。

申立てに関する費用

申立てに関する費用については、概ね下の表のとおりです。

項目 費用
申立手数料 ※収入印紙 後見/保佐/補助開始 800
保佐(補助)開始+代理権(または同意権)付与 1,600
保佐(補助)開始+代理権+同意権付与 2,400
登記手数料 ※収入印紙 2,600
家庭裁判所からの郵送費用 ※郵便切手 数千円程度 ※家庭裁判所によって異なる
鑑定費用 ※家庭裁判所から求められた場合のみ 10万円程度

成年後見人等に対する報酬

親族以外の第三者が成年後見人等に就任した場合、成年後見人等は1年に1回程度、家庭裁判所に報酬付与審判の申立てを行い、同裁判所がその報酬額を決定します。

もっとも、被後見人(成年後見制度による保護を受ける人)の資力が乏しい場合、被後見人の財産から報酬を確保できない場合がありますので、その際に成年後見制度利用支援事業を利用します。

なお、成年後見人等に対する報酬の助成金額は、厚生労働省が参考単価として示した金額を月額上限としている自治体が多いようです。

【成年後見人等に対する報酬助成の参考単価】

居住種別報酬助成額(月額・上限)
施設入居者18千円
在宅者28千円

まとめ

以上、成年後見制度利用支援事業について説明しました。

成年後見制度利用支援事業について不明な点は、本人の住民票上の住所地の市区町村の役所に相談するとよいでしょう。

成年後見でお悩みの方は
まずは弁護士にご相談ください

この記事を書いた人

株式会社鎌倉新書 いい相続

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