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清算型遺贈(清算型遺言)の文言、遺言執行者、登記、譲渡所得税

清算型遺贈(清算型遺言)とは

「自分の財産を大切な人に遺したい」と考える場合、どのようにして渡すのか迷うところです。その際、「現金にしておきたい」という人もいるでしょう。そのようなケースでは、清算型遺贈が適しています。清算型遺贈とは、遺産の全部又は一部を売却し、被相続人の債務を弁済したうえで、残ったお金を相続させる、もしくは遺贈することを言います。遺贈とは、遺言書によって自分の財産を与える処分行為を言います。

清算型遺贈では、財産を売却したり債務を弁済したりするため、遺言執行者が必要になります。また清算型遺贈を希望する場合は、遺言書にきちんと明記しておきます。この記事では、清算型遺贈を利用するケースや遺言書への書き方などを紹介します。

[ご注意]
記事は、公開日(2020年12月8日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。

清算型遺贈とは?

清算型遺贈とは、遺産の全部又は一部を売却し、被相続人の債務を弁済したうえで、残ったお金を、相続させ又は遺贈する遺言のことをいいます。

遺贈については、関連記事をご覧ください。

清算型遺贈では遺言執行者を指定すべき

清算型遺贈では、財産を売却したり、債務を弁済したりする人(遺言執行者)が必要になります。

相続人や受遺者(遺贈によって財産をもらい受ける人)が、この役割を担うこともできますが、それであれば、換価分割(相続開始後に相続人が遺産を売却、換価して分配すること)と変わりません。

相続人らに余計な事務負担を掛けたくないのであれば、あらかじめ遺言によって遺言執行者を指定した方がよいでしょう。

清算型遺贈の対象となる財産に不動産が含まれている場合は、遺言執行者が登記をすることになるため、登記の専門家である司法書士を遺言執行者に指定することをお勧めします。

清算型遺贈のパターン

清算型遺贈には、例えば、次のようなパターンがあります。

  1. 全財産を換価し全部包括遺贈をする
  2. 全財産を換価し割合的包括遺贈をする
  3. 特定財産を換価し全部包括遺贈をする
  4. 特定財産を換価し割合的包括遺贈をする
  5. 特定財産を除いた財産を換価し全部包括遺贈をする
  6. 特定財産を除いた財産を換価し割合的包括遺贈をする

全部包括遺贈とは全財産を一人に遺贈することで、割合的包括遺贈とは複数人にそれぞれの取得分(割合)を指定して遺贈することです。

上の例の36については、清算型遺贈の対象となっていない財産が存在しますが、残りの財産の処分についても併せて定めることもできますし、遺言に定めなくても構いません。後者の場合は、遺産分割の対象となります。もっとも、せっかく遺言をするのですから、すべての財産の処分について定めておいた方が良いでしょう。

清算型遺言ともよばれる

遺言には、財産を取得させる人が相続人の場合は「○○○○に××を相続させる」と書くこともできまし「○○○○に××を遺贈する」と書くこともできますが、相続人でない人に対しては「遺贈する」の方しか使用することはできません。

相続人に対しては「相続させる」と「遺贈する」の2つの選択肢があるところ、取得させる財産が不動産の場合は「相続させる」と書いた方が、相続人が単独で登記申請することができるというメリットがありますが、清算型遺贈の場合は、相続財産に不動産が含まれていたとしても、実際に相続するのは換価後の現金であるため、「相続させる」と「遺贈する」の文言の違いによる登記手続上のメリット・デメリットはなくなります。なお、被相続人の名義のままでは不動産を売却することができないため、一度相続人名義の相続登記を行う必要がある点についてはご注意ください。

なお、「相続させる」と書いた場合は、「遺贈」ではなく「遺産分割方法の指定」になるため(相続分を指定する場合もあります)、「清算型遺贈」という表現が適切ではなくなるので、「清算型遺言」と呼ばれることもあります。

ですが、この記事では、「相続させる」と書く場合も含めて、便宜上、「清算型遺贈」と呼ぶことにします。

清算型遺贈が利用される主なケース

清算型遺贈は、主に次のようなケースで利用されます。

  • 現金や預貯金の割合が少なく、財産を換価しないと平等に分配することが難しい
  • 相続後に空き家となってしまう財産がある
  • 被相続人に多額の債務があるが、債務超過ではない
    ※債務超過の場合は相続放棄すべきなので
  • 相続人や受遺者に相続税の納税資金に不安がある人がいい

このような場合においても、清算型遺贈ではなく、相続人や受遺者が換価分割をする方法もありますが、相続人らに余計な事務負担を掛けたくないのであれば、換価分割よりも遺言執行者を指定して清算型遺贈をするのが良いでしょう。

清算型遺贈の文言

以下に清算型遺贈の記載例を示します。

第○条

 

遺言者は、遺言者の有するすべての財産を換価した上で、葬儀費用、遺言執行費用、売却手数料、不動産登記費用、不動産譲渡所得税等の費用及び負債を控除した残額を○山○男(昭和○年○月○日生、○○県○○市○○町○丁目○番○号)に遺贈する。

また、遺言執行者を指定する際の文例を以下に示します。

遺言書

遺言者〇〇〇〇は、次の通り遺言する。

第★条

遺言者は本遺言の執行者として下記の者を指定する。

(事務所) 東京都〇〇区〇〇▲-▲-▲

(職業)  司法書士

(氏名)  〇〇〇〇

(生年月日)昭和○年〇月〇日

清算型遺贈の登記

清算型遺贈の清算の対象の財産に不動産がある場合は、次の2つの登記が必要になります。

  1. 共同相続登記
  2. 買い主への所有権移転登記

共同相続登記とは、法定相続分に応じた持分で共有している状態を登記することです。遺言執行者に司法書士を指定していると手続きがスムーズでしょう。

清算型遺贈の譲渡所得税

清算型遺贈による換価によって譲渡所得が生じた場合は、譲渡所得税がかかります。

前掲の遺言書記載例のように、譲渡所得税控除後の残額を遺贈するようにするとよいでしょう。

また、譲渡所得税の申告(確定申告)については、相続税の申告と併せて税理士に相談するとよいでしょう。

よくある質問

以上、清算型遺贈について説明しました。最後にまとめとして、よくある質問とその回答を示します。

清算型遺贈とは?

清算型遺贈とは、遺産の全部又は一部を売却し、被相続人の債務を弁済したうえで、残ったお金を、相続させ又は遺贈する遺言のことをいいます。

清算型遺贈が利用される主なケースは?

清算型遺贈は、主に次のようなケースで利用されます。

  • 現金や預貯金の割合が少なく、財産を換価しないと平等に分配することが難しい
  • 相続後に空き家となってしまう財産がある
  • 被相続人に多額の債務があるが、債務超過ではない(債務超過の場合は相続放棄すべきなので)
  • 相続人や受遺者に相続税の納税資金に不安がある人がいい

このような場合においても、清算型遺贈ではなく、相続人や受遺者が換価分割をする方法もありますが、相続人らに余計な事務負担を掛けたくないのであれば、換価分割よりも遺言執行者を指定して清算型遺贈をするのが良いでしょう。

清算型遺贈では遺言書に何と書く?

例文を示します。「遺言者は、遺言者の有するすべての財産を換価した上で、葬儀費用、遺言執行費用、売却手数料、不動産登記費用、不動産譲渡所得税等の費用及び負債を控除した残額を○山○男(昭和○年○月○日生、○○県○○市○○町○丁目○番○号)に遺贈する。」

清算型遺贈の登記方法は?

清算型遺贈の清算の対象の財産に不動産がある場合は、次の2つの登記が必要になります。

  • 共同相続登記
  • 買い主への所有権移転登記

共同相続登記とは、法定相続分に応じた持分で共有している状態を登記することです。

遺言執行者に司法書士を指定していると手続きがスムーズでしょう。

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この記事を書いた人

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