税理士監修記事

債務を相続した人が知っておくべき債務の分割ルールと債務控除

親や配偶者等の近親者が債務を残して亡くなり、その債務を相続することになった場合、どうすればよいのでしょうか?

相続人が複数いる場合、相続債務をどのように分割すればよいのでしょうか?

また、相続税の計算上、債務は相続財産から控除できるのでしょうか?

この記事では、債務を相続することになった人が知っておくべき知識について、網羅的に、また、わかりやすく説明します。

是非、参考にしてください。

[ご注意]
記事は、執筆日時点における法令等に基づき解説されています。
執筆後に法令の改正等があった場合、記事の内容が古くなってしまう場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをお勧めします。

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債務とは?

債務とは、ある者が他の者に対して一定の行為をすること又はしないことを内容とする義務をいいます。

被相続人の債務は相続人が承継する

被相続人(亡くなった人)が債務の履行前に亡くなった場合、その債務は、原則として相続人が引き継ぐことになります。

一身専属債務は対象外

ただし、一身専属性のある債務については、相続の対象外です。

一身専属性とは、その人でなければ成立しないか又は認められるべきでない性質のことです。

例えば、仕事をする債務などは、相続人が代わりに仕事をすればよいというものでもありませんよね。このような債務は、相続の対象とはなりません。

可分債務と不可分債務

債務は、可分債務と不可分債務という分類もできます。

可分債務は分割可能な債務のことで、不可分債務は分割ができない債務のことです。

可分債務

可分債務の例としては金銭債務が挙げられます。

金銭債務とは、金銭を弁済する債務のことです(借金の返済など)。

可分債務は、各相続人がその相続分に応じてこれを承継します(法定相続分については「法定相続分とは。相続人の組み合わせパターン別の計算方法」参照)。

例えば、400万円の金銭債務を、妻、長男、長女が相続した場合、妻が200万円、長男が100万円、長女が100万円の債務を承継することになります。

相続人間で協議して、誰か一人が全額負担することにする等、負担割合を変更することもできますが、これに債権者が同意しなければ、債権者は相続人間の決定に拘束されません。相続人の一人が自分が負担すべき金額を超えて弁済した場合は、その超えた金額を他の相続人に求償することができます。

不可分債務

一方、不可分債務の例としては、金銭以外の動産の引渡債務、不動産の明渡債務、登記移転債務、賃借物を使用収益させる義務、賃料支払債務などが挙げられます。

不可分債務については、債権者は各相続人に対して、その全部について履行を求めることができます。

相続を放棄すれば債務を承継しない

相続人は、相続を放棄することによって債務を承継しないことができますが、プラスの財産も併せて放棄することになります。

相続を放棄する場合は、相続人が相続の開始を知ってから3か月以内に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に、相続放棄申述受理申立をしなければなりません(申立手続については「相続放棄手続きを自分で簡単に済ませて費用を節約するための全知識」参照)。

この期間が過ぎてしまったり、遺産を処分した場合等は、相続を承認したものとみなされ、放棄することができなくなります。

ただし、債務があったことを知らず、知らなかったことについて相当の理由がある場合は、放棄が認められることもあります。

例外的に放棄が認められた事例には、次のようなものがあります

  • プラスの財産があることは知っていたが他の相続人が相続することから自分が相続する財産は全くなく、またマイナスの財産(債務)は全く存在しないと信じていたため、期限内に相続放棄の手続きをしなかったところ、実際にはマイナスの財産が存在した場合
  • 被相続人の借金について調査を尽くしたが、債権者からの誤った回答により債務は全くないと信じていたため、期限内に相続放棄の手続きをしなかったが、実際には債務が存在した場合
  • 被相続人と相続人が別居しており、別居後、被相続人が亡くなるまで全く没交渉であって、相続人は、被相続人の財産や借金について全く知らされておらず、被相続人の死亡後も、その財産の存在を知るのが困難であった状況下において、財産が全くないと信じており、相続放棄の手続きをしなかったが、実際には借金が存在した場合

このような場合に、裁判所に相続放棄を認めてもらうためには、提出書類の書き方や、裁判所からの照会に対する回答の仕方が重要になるので、期限を過ぎてしまった場合は、なるべく早く弁護士に相談することをお勧めします。

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相続放棄をすべきかどうかの判断方法

相続を放棄すると、プラスの財産も含めて相続できなくなってしまうので、プラスの財産と借金と、トータルでどちらの額が大きいかを調査して、放棄するかどうかを決めるとよいでしょう。

調査方法については「相続財産調査の方法や費用について、わかりやすく徹底的に解説」をご参照ください。

調査には日数を要しますし、前述のとおり、相続放棄には期限があるため、なるべく早期に取り掛かかりましょう。

調査方法がよくわからない場合や、自分で調査する時間がない場合は、早めに弁護士に相談しましょう。

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相続人がいない場合

相続人がいない場合や相続人全員が相続を放棄した場合は、債権者等の申立てによって相続財産管理人が選任され、債権者は相続財産から弁済を受けることができますが、相続財産が十分でない場合は、全額の弁済を受けられません。

相続債務が時効により消滅することもある

相続債務が時効により消滅することもあります。

2020年4月に時効に関する法改正があった

債権の消滅時効は、2020年4月1日に改正法が施行され、それより前の借金か、以降借金かによって、ルールが異なります。

2020年3月31日以前にした借金の時効期間は、商行為によって生じた債権(個人以外からの借金した場合)については5年、それ以外の債権(個人から借金した場合)については10年です。

2020年4月1日以降にした借金の時効期間は、個人からの借金か否かにかかわらず5年に統一されました。

債務を承認すると時効期間がリセットされる

時効には「更新」(法改正前までは「中断」とよばれていました)と「完成猶予」(法改正前までは「停止」とよばれていました)という制度があります。

更新(中断)事由があると、時効期間のカウントがリセットされ0日に戻ります。

完成猶予(停止)事由があると、それが解消された後一定期間が経過する時点まで時効の完成が延期されます。

細かい話は割愛しますが、債務者が特に気を付けるべき点としては、債務を承認した場合は、時効は更新(中断)事由となるということです。

債務の一部でも弁済したり、支払いの猶予を申し入れたりすると、債務を承認したとして、時効期間のカウントが0日からやり直しになってしまいます。

相続前に進行していた時効期間は引き継げる

相続後も被相続人の生前に進行していた時効期間を引き継ぐので、例えば、相続開始の3年前に最後の返済があり、この時点から時効期間がスタートしていたとしたら、相続後2年で時効が完成することになります(時効期間が5年の場合)。

時効を援用しなければ消滅しない

時効期間が過ぎて時効が完成しても、時効を援用しなければ、債権は消滅しません。

時効の援用とは、債権を時効によって消滅させるという意思を債権者に対して表示することです。

相続税の計算上、債務は控除できる

相続した遺産の総額が一定額を超える場合には、相続税がかかります。

相続税を計算するときは、被相続人が残した借入金などの債務を遺産総額から差し引く(控除する)ことができます。

例えば、遺産総額が1億円で、控除できる債務が1000万円あるとしたら、相続税は「1億円-1000万円=9000万円」に対してかかることになります。

差し引くことができる債務は、被相続人が死亡したときにあった債務で確実と認められるものです。

なお、被相続人に課される税金で被相続人の死亡後相続人などが納付又は徴収されることになった所得税などの税金については被相続人が死亡したときに確定していないものであっても、債務として遺産総額から差し引くことができます。

ただし、相続人などの責任に基づいて納付したり、徴収されることになった延滞税や加算税などは遺産総額から差し引くことはできません。

また、被相続人が生前に購入したお墓の未払代金など非課税財産に関する債務は、遺産総額から差し引くことはできません。

そして、保証債務は原則として債務控除の対象となりません。

これは、保証債務は、保証債務を履行した場合は求償権の行使により補てんされるという性質を有するため、確実な債務とはいえないからです。

ただし、主たる債務者が弁済不能の状態にあるため、保証人がその債務を履行しなければならない場合で、かつ、主たる債務者に求償権を行使しても弁済を受ける見込みのない場合には、その弁済不能部分の金額については、債務控除の対象となります。

また、連帯債務については、ケースによって対応が異なります。

連帯債務者のうちで債務控除を受けようとする人の負担すべき金額が明らかとなっている場合には、当該負担金額を控除します。

連帯債務者のうちに弁済不能の状態にある人がおり、かつ、求償して弁済を受ける見込みがなく、当該弁済不能者の負担部分をも負担しなければならないと認められる場合には、その負担しなければならないと認められる部分の金額も当該債務控除を受けようとする人の負担部分として控除します。

債務控除の対象となる債務として、例えば、次のようなものが挙げられます。

  • 借入金、住宅ローン(団体信用生命保険で補填される金額を除く)
  • 被相続人に課される税金で被相続人の死亡後相続人などが納付又は徴収されることになった所得税、住民税、固定資産税、個人事業税などの公租公課(税金)
  • 医療費などの未払金
  • 立替金(例えば、相続開始前に相続人が立て替えた医療費)
  • 預かり敷金の返還債務
  • 保証債務(保証人がその債務を履行しなければならない場合で、かつ、主たる債務者に求償権を行使しても弁済を受ける見込みのない場合における弁済不能部分のみ)
  • 連帯債務(前述の要件を満たすものに限ります)

債務控除の対象とならない債務としては、例えば、次のようなものが挙げられます。

  • お墓や仏壇などの非課税財産に関する債務(未払金)
  • 団体信用生命保険で補填される住宅ローン
  • 税理士報酬等の相続税申告に関する費用
  • 司法書士報酬等の相続登記や相続手続き、遺言執行等に関する費用
  • 遺産分割協議や遺留分減殺額請求等に関する弁護士報酬
  • 戸籍謄本等の相続手続きの必要経費
  • 保証債務、連帯債務(前述の要件を満たす場合を除く)
  • 遺品整理費用

相続税では、債務控除以外にも様々な控除制度があるので、一度、相続税に精通した税理士に相談することをお勧めします。

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まとめ

以上、相続債務について説明しました。

相続財産が債務超過になっている場合は、相続を放棄した方が相続人にとって得です。

相続放棄できる期間が限られており、かつ、相続財産の調査には時間がかかります。

早めに弁護士又は司法書士に相談することをお勧めします。

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また、相続債務は相続税の計算上控除することができます。

相続税には債務控除以外にも多くの控除制度があるので、相続税に精通した税理士に相談し、控除制度をうまく活用して損しないようにしましょう。

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