被相続人とは?被相続人の財産を引き継ぐ前に知っておくべき6のこと
家族が亡くなったとき、だれがどのように相続するか気になる人も多いでしょう。
実際、民法によって誰が相続人になれるかは決まっています。しかし、養子がいたり相続人の誰かが亡くなっていたりすると、また少し複雑に…。
また、遺産をどのように分けるかは、遺産分割協議で決定されます。民法で定められた相続割合に従うか、協議で配分を決定します。
ちなみに遺産に不動産や株式などが含まれていた場合、その価値を評価して遺産の総額を正確に出さなければいけません。それから相続税を計算します。
まずは相続の基礎知識として、法定相続人の範囲や、家族が亡くなったときの流れについて解説していきます。
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[ご注意]
記事は、公開日(2018年9月6日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。
被相続人とは?
被相続人とは、相続される人、つまり、亡くなって財産を残す人のことです。英語では「inheritee」(インヘリティー)といいます。
相続は、財産をもっている人が亡くなった時に開始されます。
少しでも財産がある人は皆、亡くなったら被相続人になります。さらに、亡くなっていなくても被相続人になる場合もあります。
それは失踪宣告を受けた場合です。失踪宣告とは、生死が不明の人に対して、法律上亡くなったものとみなす効果を生じさせる制度です。
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相続の対象となる財産
被相続人がもっていた財産や権利義務は、およそすべて相続の対象となります。
例えば、次のような財産・権利が相続の対象となります。
- 現金
- 預貯金
- 有価証券(株式など)
- 不動産(土地、家屋)
- 自動車
- 貴金属、骨董品
- ゴルフ会員権
- 賃借権
- 著作権、特許権、商標権
- 売掛金
- 損害賠償請求権
また、借金などのマイナスの財産も相続の対象となります。
一方、相続の対象とならない権利義務もあります。
一身専属的な権利義務
それは、一身専属的な権利義務です。一身専属とは、ある人にだけ帰属し、他の人には帰属しないことです。
一身専属的な権利義務は、被相続人にだけ帰属し、相続することはできません。
一身専属的な権利義務には次のようなものがあります。
- 扶養請求権
- 生活保護受給権
- 身元保証人としての地位
- 離婚請求権
- 離婚時の財産分与請求権
- 慰謝料請求権
一身専属的な権利義務は、例外的に相続の対象となりませんが、例外の例外で、慰謝料請求権は相続の対象となります。
また、離婚時の財産分与請求権については、少なくとも既に財産分与の協議が行われていれば、相続の対象となり得ます。ただし、財産分与のうち、相手方の離婚後の生活を扶養する意味で算出された部分は、相手方が死亡した場合には不要となることから相続を否定する立場が一般的です。
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被相続人の財産は誰が相続する?
被相続人の財産は、相続人が相続します。
誰が相続人になるかは、民法に定められています。この民法で定められた相続人のことを法定相続人といいます。
誰が法定相続人となるのかについて、以下、説明します。
法定相続人の基本ルール
まず、被相続人の配偶者がいれば、配偶者は必ず相続人となります。
被相続人の子もそうです。被相続人に子がいれば、子も必ず相続人となります。被相続人の直系尊属(親や祖父母)は、子がいない場合に相続人となります。
その場合に、配偶者はいてもいなくても、直系尊属が相続人になるかどうかには影響はありません。
配偶者がいれば配偶者と直系尊属が相続人となり、配偶者がいない場合は直系尊属だけが相続人となります。
直系尊属が相続人となる場合は、被相続人に近い方から優先的に相続人となります。
つまり、親がいれば親が、親がいなければ祖父母が、親も祖父母もいなければ曽祖父母(ひいお爺さん、ひいお婆さん)が相続人になります。
子も直系尊属もいない場合は、兄弟姉妹が相続人になります。
この場合も配偶者はいてもいなくても、兄弟姉妹が相続人になるかどうかには影響はありません。
なお、兄弟姉妹以上に遠い親族は基本的には法定相続人にはなりません。おじ、おば、いとこ等は、ほかに被相続人に近い親族がいなくても相続人になれません。
代襲相続とは?
ただし、代襲相続という制度によって孫や曾孫、甥や姪は相続人となることができます。
代襲相続とは、自分の亡くなった親が生きていいたら相続人になれたという場合に、子が親の代わりに相続人になれる制度のことです。
事例
例えば、被相続人よりも前に被相続人の子Aが亡くなっていたとします。そして、AにはBという子(被相続人との関係でいうと孫)がいたとします。
このような場合に、BはAの相続人としての立場を代襲して相続人となることができるのです。
このような親の相続人としての立場を代襲しての相続のことを代襲相続というのです。
そしてさらに、被相続人が亡くなるよりも先にBも亡くなっていて、Bの子C(被相続人との関係でいうと曾孫)がいる場合は、さらにCがBの被相続人としての立場を代襲して、相続人となります。
このような相続を再代襲相続といって、理屈の上では、再々代襲相続も、さらにその先の代襲も無限に認められています。
同じように兄弟姉妹の相続人としての立場を代襲して甥や姪が相続人となることもあります。
ただし、兄弟姉妹については再代襲は認められておらず、甥・姪の子(大甥、大姪)は相続人にはなれません。
なお、孫の代襲相続や曾孫の再代襲相続があると、それ以降の相続順位である直系尊属や兄弟姉妹は相続人にはなれません。
配偶者の範囲は?内縁関係もOK?
ここで、配偶者の範囲について、説明しておきます。
配偶者とは妻や夫のことですが、これには内縁の妻や内縁の夫といった事実婚の間柄は含まれません。
結婚届を出した法的な夫婦だけが対象です。
法的な夫婦関係であれば、婚姻期間は問われません。結婚してわずか1日であっても配偶者であり、相続人となることができます。
非嫡出子は相続人になれる?
非嫡出子とは、法的な婚姻関係にない男女の間に生まれた子のことです(なお、法的な夫婦の間に生まれた子は嫡出子といいます)。
法的な婚姻関係にない場合とは、例えば、内縁関係や恋人関係、行きずりの恋などが挙げられます。
このような男女の間に生まれた非嫡出子も、父が認知することにより、嫡出子と同様に相続人となることができます。
父が認知する前に亡くなった場合は、死後認知によって、相続人になることができます。
養子は相続人になれる?
養子も相続人となることができます。養子に来た子のほか、養子に出された子も相続人になれます。つまり、養子は実親と養親の両方の遺産の相続人になれます。
ただし、特別養子縁組の場合は、実親との親子関係がなくなるため、実親の遺産の相続人にはなれません。
また、養子がたくさんいたとしても、全員相続人となれます。この点は勘違いしやすい点なので注意してください。
というのは、相続税との関係では、法定相続人にカウントできる養子の数に制限があるのです。
相続税には基礎控除という非課税枠があるのですが、法定相続人の数が増えれば増えるほど、非課税枠も増えるのです。
そうすると、養子をたくさんとることによって、税金逃れができてしまうので問題です。
そうならないように、非課税枠の計算の元となる養子の数には上限が設けられているのです。しかし、それはあくまで税金の計算上の話です。養子は何人でも相続人となることができます。
法定相続人が必ずしも相続人になるとは限らない
以上、法定相続人について説明しましたが、法定相続人が必ず相続するとは限りません。
法定相続人が相続権を放棄したり、遺言や廃除、相続欠格によって相続できなかったりすることもあります。
遺言については、詳しくは後述します。
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亡くなった人から財産を引き継ぐ方法
亡くなった人から財産を受け継ぐ方法には次の3つがあります。
- 相続
- 遺贈
- 贈与
以下、それぞれについて説明します。
相続
被「相続」人というくらいなので、被相続人の財産は相続によって受け継がれます。
相続は、被相続人の死亡によって開始されます。
被相続人の遺産は、基本的には法定相続人が相続します。誰が法定相続人になるかは、民法で定められています。
遺贈
遺贈とは、遺言によって、遺産を受け継がせることです。
相続では法定相続人が遺産を受け継ぎますが、遺贈では、どの財産を誰に受け継がせるか、遺贈者が決めることができます。
なお、相続の場合は亡くなって財産を残す人のことを被相続人といいますが、遺贈の場合は遺贈者といいます。自然人だけでなく、法人に対して遺贈することもできます。
遺贈者が、遺贈の際にどの財産を誰に受け継がせるか決めた内容のことを遺言といいます。
遺言は、一般的には「ゆいごん」と読むことが多いと思いますが、法律用語としては「いごん」と読みます。遺言は、遺言書にしたためて残します。
贈与
贈与によって、財産を受け継がせることもできます。生前に贈与することも勿論できますが、贈与者が亡くなった時に行われる贈与を死因贈与といいます。
贈与は相続や遺贈と違って契約です。契約は双方の合意に基づいて行われます。
死因贈与であっても、生前に、贈与者と受贈者(贈与によって財産を受け取る人)の間で、「この財産を死亡時に贈与する」ということに合意が必要です。
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被相続人が亡くなったら何をすべき?
被相続人が亡くなったら次のような手順で相続手続きを進めます。概ね早期に行うべきものから順に並べてあります。
また、期限の定めがある手続きについては、法定期限を括弧書きで併記してあります。
- 死亡届の提出(亡くなってから7日以内)
- 葬儀の執行
- 銀行等の金融機関への連絡
- 死亡保険金の受け取り
- 健康保険、遺族年金の手続き
- 遺言書の確認、検認
- 相続人の調査
- 相続財産の調査
- 相続放棄、限定承認の手続き(亡くなってから3か月以内)
- 所得税の準確定申告(亡くなってから4か月以内)
- 遺産分割協議、遺産分割協議書の作成
- 預貯金等の払い戻し(亡くなってから10年以内)、名義変更、登記移転
- 相続税の申告、納付(亡くなってから10か月以内)
- 遺留分減殺請求(亡くなってから1年以内)
- 更正の請求、修正申告、期限後申告
もっとも、すべてのケースで、これらすべての手続きが必要になるわけではありません。
また、順序についても、上記の通りではなく、前後して構わない手続きもあります。
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