弁護士監修記事
相続した土地の名義変更について絶対に知っておくべきこと

この記事では、相続した土地の名義変更に関する次のような疑問について、わかりやすく説明します。
- 相続した土地の名義変更は義務?しなくてもいい?期限はある?
- 相続した土地の名義変更をするメリットは?(名義変更をしないデメリットは?)
- 相続した土地の名義変更にかかる費用は?(自分でやった場合と司法書士に依頼した場合)
- 相続した土地の名義変更を自分でやる方法は?(申請書の書き方は?必要書類は?)
是非、参考にしてください。
[ご注意]
記事は、執筆日時点における法令等に基づき解説されています。
執筆後に法令の改正等があった場合、記事の内容が古くなってしまう場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをお勧めします。
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目次
相続した土地の名義変更は義務ではない
相続した土地の名義変更は義務ではありません(義務化が検討されていますが、この点については「相続登記の義務化はいつから?罰則についてもわかりやすく説明!」参照)。
したがって、期限もありません。
相続した土地の名義変更をしないデメリット
相続した土地の名義変更をしないと、次のようなデメリットがあります。
- 他の相続人の持分を差し押さえられたり、売却されたりするおそれがある
- 売却や抵当権設定ができない
- 権利関係が複雑になる
- 次の相続時に2倍の費用がかかる可能性がある
以下、それぞれについて説明します。
他の相続人の持分を差し押さえられたり、売却されたりするおそれがある
土地の名義変更をしなければ、他の相続人の債権者等から家を差し押さえられるおそれがあります。
相続した土地は、遺産分割が済むまでは、すべての相続人が相続分に応じて共有している状態です。
遺産分割協議で誰がどの財産を取得するかを決めて遺産分割を行うと、協議で決まった相続人がその財産を取得することになります。
しかし、土地を取得した相続人が名義変更をしなければ、その土地の権利を第三者に対して主張することはできません。
名義変更をしていない状態は、第三者から見れば、まだ遺産分割が済んでいない共有状態になるのです。
他の相続人に債務がある場合、債権者は、債務が弁済されなければ、相続財産についてのその相続人の持分を差し押さえることができるのです。
また、他の相続人に債務がある場合だけでなく、他の相続人が勝手に共有登記(名義を共有に変更すること)をして共有持分を売却することもできてしまいます。
この状態を解消して不動産を単独で所有するには、共有持分を買い取ることになるでしょう。
共有持分の買い取りに要した費用は、債務者であった相続人に求償することができますが、差し押さえを受けるくらいなので、求償に応じる程の資力がなく、回収することは難しいケースがほとんどでしょう。
このように、名義変更をしないと、余計な出費がかかるおそれがあります。
売却や抵当権設定ができない
名義変更をしないと、売却したり、抵当権を設定したりすることができません。
それでは、売却したり抵当権を設定したり場合に名義変更をすればよいではないかと思われるかもしれませんが、お勧めできません。
その理由は2つあります。
一つは、前述の通り、その間に家を差し押さえられるおそれがあるからで、もう一つは、名義変更をしようと思った時には、権利関係が複雑化して、名義変更をすることが大変になっていることがあるからです。
権利関係が複雑になる
名義変更をしないと権利関係が複雑化するとはどうことか説明します。
例えば、被相続人(亡くなった人)の妻Aと被相続人の姪Bが共同相続人のケースで、遺産分割協議で土地をAが取得することになったとします。
Aが登記を行わずにいたところ、Bが亡くなり、Bの夫CがBの財産を相続したとします。
その後、Cも亡くなり、Cの甥姪D、E、F、G、H、I、J、Kの7人がCの財産を相続したとします。
その後、Aは家を売却するために、名義変更をしようとしても、そのためには、自分の夫の姪の夫の甥・姪という見ず知らずのD~Kの7人の同意が必要になります。
その7人が気の良い人たちであれば、同意してくれるかもしれませんが、お金に困っていたりすると、同意に応じる代償としてのハンコ代を求めたり、共有持分の買い取りを請求してくることも考えられます。
次の相続時に一気に2回分の費用がかかる可能性がある
名義変更をしないと、自分が名義変更費用を節約できても、自分の相続人が、自分の分まで登記費用を負担しなければならない可能性があります。
どういうことか説明します。
例えば、不動産の所有者が亡くなって(一次相続)、相続人がその不動産について名義変更をしないまま亡くなったとします(二次相続)。
二次相続の相続人が名義変更をする場合には、2回分の名義変更をしなければならず、倍の費用がかかってしまうのです。
したがって、費用の節約のために名義変更をしないということは、次の世代に自分の分の名義変更費用を押し付けているという言い方もできます。
なお、2018年4月1日から2021年3月31日までの時限措置として、一代前の相続登記にかかる登録免許税を免税にする特例がスタートしていますので、当該措置の適用が受けられれば、必ずしも2倍の費用がかかるというデメリットが当てはまらない場合もあります(詳しくは「相続登記の登録免許税の免除・免税措置と計算方法をわかりやすく説明」の「相続により土地を取得した方が相続登記をしないで死亡した場合の登録免許税の免税措置」の項目参照)。
相続した土地の名義変更費用
土地の名義変更にかかる費用は、次の3つに分類することができます。
- 司法書士報酬
- 必要書類の交付手数料
- 登録免許税
土地の名義変更は、自分で手続きすることも不可能ではありませんが、司法書士に依頼することが一般的であり、法務局(登記所)で相談しても手取り足取り教えてもらえるわけではく、自分でやろうと思って手間と時間をかけたものの、結局断念して司法書士に依頼するケースも少なくないので、余程時間と自信がある方以外は、始めから司法書士に依頼した方が無難でしょう。
なお、必要書類の交付手数料と登録免許税は、司法書士に依頼した場合でも、自分で手続きした場合でも、必要な費用です。
以下、それぞれの費用について説明します。
司法書士報酬
司法書士報酬は、司法書士によっても異なりますし、不動産の数・評価額・地域等によっても異なります。
相続登記や周辺事務に精通した司法書士にいくつか問い合わせて料金を確認するとよいでしょう。
司法書士に依頼する場合、通常、次のような周辺事務も併せて依頼することができます。
- 不動産の調査
- 相続人調査や戸籍謄本等の収集(「相続に必要な戸籍謄本を自分で簡単に収集するための重要なポイント」参照)
- 法定相続情報一覧図の作成や法定相続情報証明制度利用申出の代行(「法定相続情報証明制度を利用すべき場合と利用すべきでない場合の基準」参照)
- 遺産分割協議書の作成(「相続登記で遺産分割協議書が必要なケース、使いやすいひな形」参照)
周辺事務も併せて依頼を検討する場合は、どこまでの対応が料金に含まれているのか確認しましょう。
相場としては、名義変更のみの場合は、6万~9万円程度、周辺事務も併せて依頼する場合は、9万~15万円程度となるようです。
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必要書類の交付手数料、作成費用
登記の必要書類の中には、その交付を受けるために手数料が必要なものと、作成しなければならないものがあります。
交付を受けるためには手数料が必要なものとしては、例えば、次のものが挙げられます。
- 登記事項証明書(登記簿謄本)
- 相続登記申請書
- 住所証明情報(住民票の写し又は戸籍の附票の写し)
- 固定資産税評価証明書
これらの書類の交付を受けるために1通ごとに数百円の手数料がかかります。
必要書類を揃える費用を合計すると、通常、数千~3万円ほどになります。
名義変更の必要書類は、他の相続手続きとも共通するものが多いので、法定相続情報証明制度や原本還付制度を利用することで、相続手続きの必要経費を安くすることができます(詳しくは後述)。
また、作成しなければならないものとしては、例えば、遺産分割協議書(遺産分割によって土地を取得した場合)が挙げられます。
このような書類の作成を専門家に依頼する場合は、専門家への報酬が必要になります。
もっとも、司法書士に依頼する場合は、遺産分割協議書等の必要書類の作成費用込みの料金設定になっていることが多いです(前述の登記簿謄本等の交付手数料の実費は別途必要)。
登録免許税
不動産の名義変更の際には、登録免許税という税金がかかってきます。
相続登記の登録免許税は、「不動産の価額の0.4%」です。
不動産の価額は下3桁を切り捨てて計算します。
例えば、不動産の価額が111万1,111円であれば、111万1,000円として計算します。
この場合の登録免許税の税額は、「111万1,000円×0.4%=4,444円」となりますが、税額の下2桁は切り捨てて計算します。
そうすると、税額は4,400円ということになります。
なお、このようにして計算した税額が1,000円未満(0円を含む)になった場合は、税額は1,000円になります。
課税標準となる「不動産の価額」は、市町村役場(東京23区は都税事務所)で管理している固定資産課税台帳の価格(固定資産税評価額)がある場合は、その価格です。
市町村役場(または都税事務所)で証明書を発行しています。
登録免許税には免税措置がありますので、適用を受けられないか検討してみるとよいでしょう(詳しくは後述)。
また、登録免許税について詳しくは「相続登記の登録免許税の免除・免税措置と計算方法をわかりやすく説明」をご参照ください。
なお、登記手続きを司法書士に依頼する場合、登録免許税の計算は司法書士がしてくれるため、自分でする必要はありません。
相続した土地の名義変更を自分でやる方法
相続した土地の名義変更を自分でやる方法については「相続登記申請書の書き方を分かりやすく解説!相続登記は自分でできる」をご参照ください。
よくある質問
以上、相続した土地の名義変更について説明しました。
最後にまとめとして、よくある質問とその回答を示します。
相続した土地の名義変更は義務なの?
現在のところ義務ではありません。ただし、義務化に向けて検討がなされているので、将来的には義務化される可能性があります。
相続した土地の名義変更をしないと、どんなデメリットがある?
名義変更しないと、次の4つのデメリットがあります。(1)他の相続人の法定相続分に基づく持分が差し押さえられたり売却されたりするおそれがある。(2)売却や抵当権の設定ができない。(3)権利関係が複雑になる。(4)次の相続時に一気に2回分の名義変更費用がかかる可能性がある。
相続した土地の名義変更は自分でもできる?
不可能ではありませんが、まったく知識のない方が一度きりの手続きのために、登記のことを一から勉強して対応するのは、大変でしょう。司法書士に依頼することをお勧めします。
土地の名義変更を司法書士に依頼した場合の料金は?
相場としては、名義変更のみの場合は、6万~9万円程度、周辺事務も併せて依頼する場合は、9万~15万円程度でしょう。