離婚した子供は相続できる?事例でわかりやすく解説!
離婚しても、いつでも子供が気がかりな親心…。自分が亡くなったとき、きちんと子供が遺産を相続されるか、心配かと思います。一般的に、離婚しても親の財産を相続できます。親が先に亡くなったときでも、祖父母の財産を相続することも可能です(代襲相続)。その一方、後妻の立場からすると、離婚した前妻の子どもに遺産を渡したくない場合もあるでしょう。そうなると生前贈与や遺言書によって、前妻の子に渡す財産を少なくする方法が考えられます。
この記事では離婚した子供の相続について、事例を交えて詳しく解説します。今後の遺産相続について早めに準備したい人は是非、参考にしてください。
[ご注意]
記事は、公開日(2019年7月19日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。
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目次
離婚した親の遺産は相続できる
親が離婚していて疎遠になっていたとしても、その親の遺産を相続することはできます。法定相続分も離婚していない場合の子供とまったく変わりません。
設例
A男とB子は結婚していて、二人の間には子供Cがいました。
しかし、A男とB子が離婚して、CはB子に引き取られ、A男とは疎遠になりました。その後、A男が亡くなりました。
この場合、B子はA男と既に離婚して配偶者ではないので相続人となることはできません。
しかし、Cは、A男とB子が離婚しても、A男の子供であることには変わりないので、A男の相続人となるのです。
そして、A男が亡くなる前にB子が再婚する等して、B子にさらに子供Dがいたとします。そうすると、CとDは、2分の1ずつの相続分を有する共同相続人となります。
離婚した親の代襲相続もできる
次に、離婚した親が既に亡くなっていて、その後、その親の親である祖父母が亡くなった場合に、代襲相続することはできるのでしょうか?この答えは、代襲相続はできます。
代襲相続とは、相続人となるべき者(被代襲者)が、相続開始以前に死亡しているときや、相続欠格又は廃除により相続権を失ったときにおいて、その被代襲者の直系卑属(代襲者)が被代襲者に代わって、その受けるはずであった相続分を相続することをいいます。
法定相続分も離婚していない場合の子供とまったく変わりません。
設例
A男が亡くなった後、A男の母E子が亡くなりました。E子の夫(A男の父)は既に亡くなっており、E子にはA男のほかに子供はいません。
このケースでは、E子の相続人は、A男の代襲相続人であるCとDで、それぞれ2分の1ずつの法定相続分を有します。
親の再婚相手の養子になっても実親の遺産を相続できる
親が再婚した場合はどうでしょうか。?親が再婚しても、子は元夫の相続人となります。ただし特別養子をしていた場合は、相続人になることはできません。
設例
A男が亡くなる前に、B子がF男と再婚し、CはF男の養子になりました(普通養子縁組)。その後、A男が亡くなりました。
このような場合でもCはA男の相続人となります。ただし、CとF男が特別養子縁組をしていた場合は、CはA男の相続人となることはできません。
特別養子縁組とは
特別養子縁組とは、実親との親子関係を解消され、養親のみが法律上の親となる制度です。実親の財産を相続する権利や、実親から扶養を受ける権利は、特別養子縁組をすることによって無くなります。
実親との親子関係を完全に断絶させた方が子にとって良いケースとしては、実親が、子を全く育てる気がないとか、虐待しているとか、経済的に極めて困窮していて育てようがないというようなケースがあり得ます。
具体的には、児童相談所や民間の養子縁組あっせん機関によるあっせんを受けて、親元で養育されていない子と特別養子縁組をするケースや、親が育てることができない親戚の子を引き取るケース、配偶者の連れ子で、もう一方の実親が養育費を一切支払わず危害を加えるおそれすらあるような場合に、再婚相手と連れ子の間で特別養子縁組をするケース等があります(連れ子のケースは実親が余程ひどくない限りは認められないようです)。
ちなみに、Cは養親であるF男が死亡した場合であっても、相続人となります。養子と実子の相続分に差はありません。
つまり、F男に実子Gがいた場合、GとCの法定相続分は同じになります。
相続手続きには理解の難しい仕組みや制度がたくさんあります。正しく、そして不利益が出ないようにするために、ぜひ専門家に相談してみることをご検討ください。
被相続人の前婚の子供に遺産を渡したくない場合の対策
亡くなった人(被相続人)に前婚の子供がいた場合、相続人となりますが、他の共同相続人が、被相続人の前婚の子供に遺産を渡したくないと考えた場合に、何かとりうる対策はあるのでしょうか?
以下、説明します。
生前贈与や遺贈を受ける
相続開始前であれば、生前贈与や遺贈(遺言によって財産を与えること)を受けることによって、前婚の子供に渡る遺産を少なくすることはできます。
贈与や遺贈によって、前婚の子供の遺留分を侵害した場合は、遺留分侵害額請求を受けて、遺留分侵害額を弁済する等しなければならなくなることがありますから、遺留分に配慮した方がよいでしょう。
また、贈与を受けた財産には贈与税がかかります。
場合によっては、相続の場合よりも税額が高くなってしまうことがあるので、税理士に相談して贈与を受けた方がよいでしょう。
また、遺言を書いてもらう際は、弁護士等の専門家に相談の上で進めることをお勧めします。遺言書の書き方については関連記事をご覧ください。
廃除や相続欠格者に該当する場合は相続人ではなくなる
相続人の廃除や相続欠格者に該当する場合は、相続人ではなくなりますが、稀なケースでしょう。
相続人の廃除は、次の要件のいずれかを満たす場合に認められます。
- 推定相続人が被相続人に対して虐待をしたとき
- 推定相続人が被相続人に重大な侮辱を加えたとき
- 推定相続人に著しい非行があったとき
相続欠格者となるのは、次のいずれかに該当する者です。
- 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
- 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
- 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
- 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
- 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
相続放棄してもらう
遺産を渡したくない特別な事情がある場合は、その事情を話して相続放棄してもらうという方法が考えられます。
その際、騙したり脅したりして相続放棄させることは絶対にいけません。
余程の事情でもない限り、そう簡単には相続放棄してもらえないので、一応打診してみるぐらいの気持ちで臨んだ方がよいでしょう。
被相続人の前婚の子供と連絡がつかなくても遺産分割を進める方法
親や配偶者が亡くなると、戸籍謄本等を収集して相続人調査をしますが、その際に、被相続人に離婚歴があり、前婚の子供がいることが発覚することがあります。
そのような場合は、前婚の子供と後婚の配偶者や子供との間で遺産分割協議をすることになります(遺言がない場合等)。
しかし、戸籍の附票や住民票上の住所に連絡しても、一向に連絡がつかず、ほかに連絡先の当てもないため連絡の取りようがないことがあります。
そのような場合は、不在者の従来の住所地または居住地の家庭裁判所に、不在者財産管理人の選任を申立てましょう。これが認められて不在者財産管理人が選任されると、さらに権限外行為許可の申立てをし、これが認められると、不財産者財産管理人と遺産分割協議をすることができます。
不在者財産管理人は原則として、法定相続分より少ない遺産額で同意することはできないため、基本的には法定相続分に則って遺産分割をすることになります。
この記事を書いた人
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