弁護士監修記事

相続の期限と遅れた場合のデメリットや対処法を手続きごとに説明

家族が亡くなられて悲嘆にくれているときには、相続などの法律的な手続きには思いが及ばないものです。

ですが、ご家族が亡くなられた時から遺産相続が始まります。

相続だけでなく、人が死亡した後には、様々な法的手続きが必要です。

重要な手続きには、法律で期限が定められています。

万一の事態に、うっかり期限を過ぎて不利益を被らないよう、各手続きの期限について確認しておきましょう。

[ご注意]
記事は、執筆日時点における法令等に基づき解説されています。
執筆後に法令の改正等があった場合、記事の内容が古くなってしまう場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをお勧めします。

相続手続きの流れ

最初に、家族が亡くなられた後に必要となる相続など法的手続きの各期を、順番に簡単にまとめました。

そのうち重要な事項は、後にこの記事でポイントを説明します(なお、ここでは、家族の死亡と同時にその事実(相続開始の事実)を知ったことを前提として説明しています)。

なお、相続の手続きについて詳しく知りたい場合は、「相続手続きをミスなくスムーズに自分で行うための簡単完全マニュアル」をご参照ください。

死亡届の提出(死亡地の戸籍課等へ)

7日以内(国外での死亡は3ヶ月以内)。

違反すると5万円以下の科料(戸籍法86条、135条)。

遺言書の検認手続(家庭裁判所へ)

開封前に遅滞なく行うことが要求されています。

違反は5万円以下の科料(民法1004条、1005条)。

相続放棄又は限定承認

3か月内(民法915条1項)。

準確定申告と所得税の納付

4ヶ月以内(所得税法124条、125条)。

違反については後に説明します。

遺産分割協議書の作成と預金、有価証券、不動産等の名義変更

これらは、期限が決まっているわけではありませんが、放置すると後に説明するような不利益があります。

共同相続人の間で遺産分割の内容について争いがないのであれば、相続税の申告期限前に済ませてしまうことが望ましいでしょう。

相続税申告と納付

10ヶ月以内(相続税法27条)。

違反については後に説明します。

死亡保険金等の請求

3年以内(保健法95条1項)。

期限を過ぎると時効により権利を失います。

遺族年金の請求など年金関係

5年以内。ただし、例外あり(会計法30条)。

期限を過ぎると時効により権利を失います。

特別縁故者の財産分与請求

家庭裁判所の行う相続人の捜索公告の期間満了後3ヶ月以内(民法958条の3第2項)

相続するか否かを決めるための熟慮期間

熟慮期間とは?

相続は、プラスの財産だけでなく、借金などマイナスの負債も引き継ぐというデメリットがあります。

このため相続人には、相続するかどうかを選択する手続きが用意されています。

相続放棄と限定承認です。

相続放棄がなされると、相続人は、最初から相続人でなかったと取り扱われます。

限定承認がなされると、相続人は、プラスの遺産の範囲内でマイナスの負債を返済すれば足りると取り扱われます。

相続人は、相続開始を知ったときから3ヶ月以内に相続放棄又は限定承認の手続きをしなくてはなりません。

この期間を熟慮期間といいます。

相続放棄の手続き

相続放棄は、必要書類(被相続人(亡くなって財産を残す人)の住民票除票や戸籍謄本など)を添えて、家庭裁判所に対し、相続放棄の申述書を提出して行います。

相続するかどうかは自由ですから、相続放棄の申し立てに理由は不要です。

また、個々の相続人は、他の共同相続人と無関係に単独で相続放棄をすることができます。

相続放棄について詳しくは「相続放棄によって借金を相続しないようにする方法と相続放棄の注意点」をご参照ください。

限定承認の手続き

限定承認は、遺産の財産目録を作成し、必要書類(被相続人の住民票除票や戸籍謄本など)を添えて、限定承認の申述書を家庭裁判所に提出して行います。

なお、限定承認は、相続放棄と異なり、共同相続人の全員が一緒に行わなくてはなりません。

限定承認について詳しくは、「限定承認のメリット・デメリットと利用すべき場合や手続きの流れ」をご参照ください。

熟慮期間を伸長するには?

3ヶ月では遺産の内容を調査しきれず、相続するべきかどうかの判断がつかない場合もあります。

その場合は、家庭裁判所に対し、熟慮期間の伸長を請求することができます。

これには理由が必要であり、何故、調査が進まないのかなどの具体的事情を書面にして提出します。

裁判所は比較的緩やかに伸長を認めてくれます。

なお一度の請求で伸長できる期間は3ヶ月であり、さらに伸長を望むときは、3ヶ月毎に請求を繰り返す必要があります。

相続放棄の期限について詳しくは「相続放棄の期限に間に合いそうにない場合や期限が過ぎた場合の対処法」をご参照ください。

遺産分割の期限

遺産分割には決められた期限がありません。

実際、遺産分割協議がまとまらず、10年以上、裁判所で争っているようなケースは珍しくありません。

格別の争いがない場合であっても、遺産が少なく相続人も少ない場合には、分割しないまま事実上放置しているケースも数多く存在します。

しかし、遺産分割を行わずに、遺産の名義を被相続人のままにしておくと、次に説明するような各種の不利益を被る危険があります。

したがって、分割内容に争いがないのであれば、早く分割を行い、名義も変更するべきです。

遺産の名義変更の期限

預金や有価証券など

預金や株式の有価証券などの名義書換(名義変更)には、格別、法的な期限はありません。

しかし、これを放置しておくと、例えば、次のような不利益を受ける危険があります。

  • 5年の時効によって、預金の払い戻しを請求できなくなる。
  • 利益配当などの株主としての権利は、その時点の株主名簿上の名義を基準とするので、これらの利益を受け取れなくなる事実上の危険がある。

上の2点を少し詳しく説明しましょう。

預金

銀行に対して預金の払い戻しを請求する権利は、商事債権(商取引にかかわる債権)として、権利を行使できる時から5年間の消滅時効にかかり、権利は消滅します。

もっとも、銀行側は、元帳などで預金の存在が確認できる限りは払い戻しに応じ、消滅時効を主張することは控えてくれます。

しかし、銀行が支払いを拒絶することは法的に可能ですし、実際に銀行側が時効を主張して支払いを拒んだ裁判例もあります。

有価証券

株式の名義が変更されていなくても、相続した以上は、株主としての権利は相続人が取得しています。

しかし、株式会社では、大量に存在する株主の取扱を画一化する必要から、株主名簿の名義を基準として法律関係を処理すればよいことになっています。

そこで、株式を相続したにもかかわらず、名義書換をせずに放置しておくと、せっかくの利益配当の通知などを受け取ることができず、事実上、配当を受け取ることができない場合があります。

しかも、会社は株主に対する通知などが5年間にわたり届かない場合は、所在不明の株主の株式として競売で売却するか、会社が買い取ってしまうことが許されます。

もちろん、法律的には、その売却した代金は、相続人のものであり、会社に対して支払いを請求することが可能ですが、その請求権自体も売却又は買い取りから5年間の消滅時効にかかります。

また、売却又は買い取りによって、株主としての地位は失ってしまいます。

預金も有価証券も速やかに名義変更を行うべき

したがって、遺産分割協議がまとまったならば、速やかに名義変更を行うべきです。

名義変更の方法ですが、たとえば預金であれば、各銀行が遺産相続による名義変更の申請書類の書式を用意してあります。

これらに戸籍謄本(全部事項証明書)、遺産分割協議書、印鑑証明書など、各銀行が要求する必要書類を添えて申請します。

株式の名義書換請求なども、その会社独自の書式と必要書類を定めています。

まずは銀行や会社のホームページや電話や窓口を利用して、これらの手続きを確認することが大切です。

不動産

次に相続不動産の登記(名義変更)の期限について説明します。

なお、相続登記全般については、「相続登記を自分でスムーズに行うため全知識と司法書士報酬の相場」をご参照ください。

相続登記の期限

不動産の相続登記は、期限が設けられておらず、登記をするかどうかは権利者の自由です。

ただし、遺産分割協議によってある不動産を取得したのにその登記を放置しておくと、例えば、次のような不利益を被る場合があります。

  • 共同相続人に勝手に不動産を売却されてしまい権利を失う危険
  • 2次相続、3次相続が発生し、利害関係人が増加して手続きが複雑化する危険

この2点を少々詳しく説明しましょう。

まず、前者の例です。

遺産が不動産で、遺産分割協議で共同相続人ABCのうち、Aが不動産を単独で相続をしましたが、登記をしませんでした。

すると、Bが、自分は不動産の持ち分3分の1を法定相続していると称して、持分3分の1を第三者Dに売却してしまいました。

Dは、すぐに持ち分を登記してしまいました。

この場合、法的には、Aは不動産の全部を相続したことをDに主張することはできないとされています(最高裁判例)ので、3分の1を失うことになります。

次に後者です。

名義を変更しないまま年月が経ち、相続人が亡くなると、2次相続、3次相続が発生して、共同相続人がどんどん増加します。

その時点でようやく名義を変更しようとしても、関係者の数が多くなり(数十人から百人を超える場合も珍しくはありません)、手続きが複雑となって、費用も時間もかかってしまう危険性があります。

したがって、遺産分割協議が終わったら、できるだけ早く登記名義の変更をしておくべきです。

不動産の相続登記は、所在地の法務局に、遺産分割協議書(調停調書、審判書)を提出して行いますが、登記手続きは、専門家である司法書士に依頼するべきでしょう。

相続登記を義務化する動き

不動産の相続登記は義務ではないため、相続人が名義を書き換えないままの不動産がたくさんあります。

年月が経ち、真の所有者が不明なまま放置された不動産が増加し、用地買収などに支障をきたすという問題が多発しています。

このため、政府は不動産の相続登記を義務化するよう不動産登記法を改正することを検討し始めました。

早ければ2019年に改正法を国会に上程する予定という報道がなされています。

遺留分減殺請求の期間

遺留分とは

遺留分は、遺族の生活保障の観点から、兄弟姉妹を除く法定相続人(法律で定められた相続人のこと)に最低限保障された遺産の割合です。

被相続人といえども、遺贈や生前贈与によって遺留分を侵害することはできません。

なお、遺留分について詳しくは、「遺留分とは?遺言や贈与で持っていかれた相続財産を取り戻す方法を説明」をご参照ください。

遺留分減殺請求権の行使方法とその時効期間

例えば、父親が死亡し、1000万円の現金が残され、相続人として長男Aと次男Bの2名がいたとします。

父親は、1000万円の全部を次男Bに相続させるという遺言書を残していました。

この場合、長男Aには遺留分として遺産の4分の1が保障されていますので、AはBに対して、遺留分減殺請求権を行使して、250万円の支払いを求めることができるのです。

具体的には、AはBに対して、内容証明郵便で、「遺留分減殺請求権を行使します。」という意思表示を行います。

この意思表示は、相続の開始と自分の遺留分が侵害されたことを知った時から1年以内に行わなくてはなりません。

また、相続の開始と自分の遺留分が侵害されたことを知らないままでも、相続開始から10年を経過すると権利を失います。

これらの期間内に、「権利を行使する」という意思だけを伝えておけばよいのです。

具体的な請求、上の例で言えば、「250万円を支払え」などの請求は期限後に行ってもかまいません。

特別縁故者の財産分与の請求期間

特別縁故者とは?

相続人が不明な場合、裁判所が選任した相続財産管理人が相続人を探すための公告を行います。

それでも相続人が判明しないときは、遺産は国庫に入ることが原則です。

この場合、例外として、内縁の妻や故人の療養看護に努めた者のように、相続権を有しないけれども、故人と特別な関係(縁故)があった者には、裁判所が相当と認めれば、遺産の全部又は一部を与えることができます。

これが「特別縁故者」に対する相続財産分与制度です。

特別縁故者について詳しくは、「特別縁故者として財産分与を受けるために絶対に知っておくべき9のこと」をご参照ください。

特別縁故者の財産分与請求の手続きとその期間

財産分与を希望する者は、家庭裁判所へ分与の申立をする必要があります。

これは、家庭裁判所が定めた相続人を捜索する公告の期間の満了から3ヶ月以内に行う必要があります。

この公告は官報に掲載されますが、一般の方が、毎日官報に注意を払っておくことは現実的ではありません。

しかし、通常のケースでは、裁判所が相続財産管理人を選任した時点で、財産管理人は、相続人を調査するためにも特別縁故者とコンタクトをとります。

したがって、財産分与の手続きについては、事実上、財産管理人に相談しながら進めることができますので、期限などを自分で心配する必要はまずありません。

準確定申告と納税の期間

準確定申告とは

被相続人の所得税の確定申告は、相続人が行う義務があります。

これが準確定申告です。

準確定申告について詳しくは「準確定申告が不要なケースとは?必要書類の書き方もわかりやすく説明」をご参照ください。

準確定申告の手続きとその期間

被相続人が死亡した年の1月1日から死亡の日までの所得を相続人が申告します。

申告の期限は、相続があったことを知った日の翌日から4か月以内です。

期間内に申告も納税も完了しなくてはなりません。

準確定申告の期限を過ぎてしまったら

準確定申告の申告期限を過ぎると、15%~20%という高率の加算(無申告加算税)を受けてしまいます。

さらに期限内に納付できなかったときは、年2.6%から8.9%(平成30年1月1日から平成30年12月31日までの期間)という高利の延滞税が加わります。

相続税の申告と納税の期間

相続税がかかる場合

遺産総額が、基礎控除額(3,000万円+600万円☓法定相続人数)を超えるときは、相続税がかかります。

相続人が、妻1名、子ども3名の場合は、基礎控除額は、5,400万円となります。

相続税の申告手続きとその期間

相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。

期間内に納税も済ませなくてはなりません。

相続税申告について詳しくは「相続税の申告が不要なケース、自分で申告する方法と申告期限」をご参照ください。

相続税の申告期限までに遺産分割が終わらなかったときは

相続税の申告期限までに遺産分割が終わらない場合は、法定相続分に従って相続税を申告し納付しておく必要があります。

分割できた際に、改めて相続税を計算し「修正申告」又は「更正の請求」を行います。

相続税の期限を過ぎてしまったら

相続税の申告も、申告期限を過ぎると無申告加算税、納付期限を過ぎると延滞税が加わることは準確定申告と同じです。

まとめ

以上のように、ご家族がなくなった後には、相続を含めて、いろいろな手続きが必要で、期間制限も設けられています。

期限までに手続きを終えることに不安がある場合は、弁護士、司法書士、税理士などの法的手続きの専門家に相談されることをお勧めします。

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