弁護士監修記事

先順位の相続人の相続放棄で兄弟姉妹の相続人になった場合の注意点

兄弟の遺産を相続するということは通常はあまりありません。

ただ、例外的に兄弟の遺産を相続する場合、遺産がどのくらいあるのかわからなかったり、知らない間に相続権が回ってきていたりと、通常の相続に比べると判断が難しいことが少なくありません。

特に、亡くなった兄弟に借金があったりすると、思わぬ借金を背負ってしまう可能性もあります。

そのような場合でも、きちんと相続放棄をすることで借金を背負わずに済む方法があります(相続放棄について詳しくは「相続放棄によって借金を相続しないようにする方法と相続放棄の注意点」もご参照ください)。

ここでは、兄弟の相続を放棄する方法や兄弟の相続放棄の注意点など、兄弟の遺産相続を検討する際に知っておきたい点についてまとめました。

[ご注意]
記事は、執筆日時点における法令等に基づき解説されています。
執筆後に法令の改正等があった場合、記事の内容が古くなってしまう場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをお勧めします。

記事を読んでも問題が解決しない場合は、弁護士・税理士等の専門家に相談することをお勧めします。
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兄弟姉妹の相続放棄を検討する場面

通常、遺産は、亡くなった方の子が相続し、亡くなった方に子(及び孫などの直系卑属)がいない場合は、両親が相続することになります。

ただ、以下のような場合は、兄弟の遺産を相続することになります。

被相続人の子及び両親が、既に全員亡くなっている場合

ある方が亡くなった時に、まず優先的に遺産を相続するのは、亡くなった方(被相続人)の子です(第1順位の相続人)。

しかし、被相続人に子がいない場合や、子が既に全員亡くなっていて孫などの直系卑属もいない場合は、被相続人の両親(両親が既に亡くなっているときは祖父母などの直系尊属)が遺産を相続することになります(第2順位の相続人)。

そして、被相続人が亡くなった時点で、既にその両親(及び祖父母などの直系尊属)も亡くなっている場合は、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります(第3順位の相続人)。

このように、被相続人の子及び両親(及び祖父母などの直系尊属)が既に全員亡くなっている場合、兄弟の遺産を相続するか放棄するかを検討しなければならなくなります。

被相続人の子及び両親が、全員相続放棄をした場合

被相続人に子や両親がいる場合でも、その子及び両親が全員相続放棄をした場合は、兄弟姉妹に相続権が移ります。

この場合も、兄弟の遺産を相続するかどうかを検討する必要があります。

ただ、子も両親も相続放棄をしたということは、借金があるなど、相続をしたくない理由があるはずなので、相続するかどうかの判断には注意が必要です。

なお、子が相続放棄をしても、放棄した人の子が代襲相続することはありません。

相続放棄と代襲相続の関係について詳しくは「被代襲者が相続放棄したら代襲相続する?相続放棄と代襲相続の全知識」をご参照ください。

兄弟姉妹の相続放棄の手続方法

兄弟姉妹の相続放棄を行う場所

相続放棄の手続きは家庭裁判所に書類を提出する方法で行います。

ここで注意しなければならないのは、被相続人が住んでいた場所を管轄する家庭裁判所で手続きをしなければならないということです。

自分が住んでいる地域の家庭裁判所では手続きができません。

ただ、相続放棄をする際に家庭裁判所に提出する相続放棄申述書は、全国の家庭裁判所で入手できるので、近くの家庭裁判所で手に入れることができます(こちらのリンク先から入手することも可能です)。

また、提出先の家庭裁判所が遠方の場合は、郵送で書類を提出することも可能です。

相続放棄申述書について詳しくは「相続放棄申述書を記入例から誰でも簡単に作成する方法と提出の流れ」をご参照ください。

兄弟姉妹の相続放棄に必要な書類

兄弟の相続放棄を行う場合、相続放棄申述書と戸籍謄本を家庭裁判所に提出することになります。

兄弟が相続人となるのは、被相続人に子がいないか、既に全員亡くなっているか、全員相続放棄をした場合に限られます。

そのため、被相続人に子がいるか、また、子がいる場合に何人子がいるか、ということを確認するために、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を全て取得して家庭裁判所に提出する必要があります。

また、被相続人に子がいて、既に亡くなっている場合には、被相続人の子の出生から死亡までの戸籍謄本も全て取得する必要があります。

出生から死亡までの戸籍謄本は複数あるのが通常で、一つの市役所で全て取得できない場合も多いので、市役所の窓口の方に「出生から死亡までの全ての戸籍謄本が必要」であることをしっかりと伝え、不明な点は聞きながら取得された方がよいでしょう。

また、被相続人の両親(及び祖父母)が既に亡くなっている場合は、両親(及び祖父母)が亡くなっていることがわかる戸籍謄本も必要になります。

なお、被相続人の子や両親などが相続放棄をしているかどうかは、家庭裁判所で確認できるので、そのことを証明するための書類を提出する必要はありません。

さらに、相続放棄の書類を家庭裁判所に提出する際には、手数料として800円分の収入印紙と郵便の実費として数百円分の郵便切手(金額は裁判所によって異なります)を一緒に提出する必要があります。

相続放棄の必要書類について詳しくは「相続放棄の必要書類とその集め方をケースごとにわかりやすく説明」をご参照ください。

兄弟姉妹の相続放棄の手続きの流れ

家庭裁判所に相続放棄の書類を提出すると、家庭裁判所から照会書が届きます。

照会書では、相続放棄をするのは本当に自分の意思かどうかといった確認に加え、相続放棄をする理由や、亡くなった方の遺産にはどのようなものがあるかといった点について質問がなされます。

家庭裁判所において相続放棄を認めてもらうためには、この照会書に回答を記載して返送する必要があります。

家庭裁判所が相続放棄を認めた場合、家庭裁判所から、相続放棄申述受理通知書が送付されてきます。

この通知書が、相続放棄をしたことの証明になります。

相続放棄申述受理通知書は一度しか発行されず、再発行してもらうことができないので、大切に保管し、債権者などに提出する必要がある場合は、コピーを提出された方がよいでしょう。

債権者などがあくまで原本の提出を求めてきた場合は、別途家庭裁判所で、相続放棄申述受理証明書を発行してもらい、この証明書を提出するようにしましょう(相続放棄申述受理証明書は何通でも発行してもらえます)。

相続放棄申述受理証明書と相続放棄新受理通知書ついて詳しくは「相続放棄申述受理証明書が必要なケースと申請方法・申請書の記入例」をご参照ください。

兄弟姉妹の相続放棄の注意点

知らない間に相続権が回ってくる

被相続人に子がいる場合や両親が健在の場合は、通常は兄弟に相続権が回ってくることはないので、遺産相続のことを気にかけない場合がほとんどでしょう。

しかし、被相続人の子や両親などが全員相続放棄をすると兄弟に相続権が回ってきます。

ただ、相続人が全員相続放棄をしたという事実は、裁判所等から通知があるわけではありません。

そのため、相続放棄をした本人などから聞かされていないと、知らない間に兄弟である自分に相続権が回ってくることになるので注意が必要です。

なお、被相続人に配偶者がいる場合、配偶者が相続人になるから兄弟には相続権は回ってこない、と思われている方もおられますが、それは誤りです。

被相続人に配偶者がいても、子や両親が既に亡くなっている場合や相続放棄をした場合は、配偶者と兄弟が一緒に相続人になるので注意が必要です。

遺産の内容を把握できない場合がある

被相続人の配偶者や子と異なり、兄弟の遺産がどの程度あるか、特に、借金がある場合にいくらの借金があるかなどは、よほど生前に親しくしていない限り把握していないことが多いと思います(借金の存在などはどちらかというと隠していることの方が多いでしょう)。

そのため、自分が相続人になったことはわかっても、兄弟の遺産(特にマイナスの遺産)がどの程度あるかわからない、という状況に陥ることも少なくありません。

そのため、マイナスの財産よりもプラスの財産の方が多いだろうと思って相続したところ、相続したプラス財産より借金の方が多いことが後から判明したということも十分あり得ます。

いったん相続をしてしまうと、後から相続放棄が認められることは原則としてないので、相続をする前に十分調査をすることが大切です。

兄弟姉妹の相続放棄に関するよくある質問

兄弟の相続放棄期限は?

一般に、相続放棄の期限は、被相続人が亡くなってから(もしくは亡くなったことを知ってから)3か月以内に手続きを行わなければならないとされています。

通常は、「亡くなったとき」と「亡くなったことを知ったとき」はほとんど同じであることが多いのですが、兄弟の場合、生前疎遠であった等の理由で、亡くなったことをすぐに知らなかったということもあります。

被相続人が亡くなってから3か月以上経過していても、亡くなったことを知ってから3か月以内であれば相続放棄の手続きが可能なので、被相続人が亡くなって3か月以上経過しているからといって諦める必要はありません。

また、被相続人の子や両親が相続放棄をしたことによって自分が相続人となったときは、自分の前の順位の相続人が全員相続放棄を知ったときから3か月以内であれば相続放棄の手続きが可能です。

この場合も、被相続人が亡くなって3か月以上経過しているからといってすぐに諦める必要はありません。

なお、相続放棄をするかどうかを検討するのに、兄弟の遺産の状況を調査する必要があって3か月では判断ができないような場合もあると思います。

その場合、3か月の期限内であれば、家庭裁判所に申し立てをして、相続放棄の期限を延長してもらうことも可能です(ただし家庭裁判所の許可が必要です)。

相続放棄の期限について詳しくは「相続放棄の期限に間に合いそうにない場合や期限が過ぎた場合の対処法」をご参照ください。

兄弟が相続放棄をすると甥姪に相続権が移るのか

兄弟に借金があることが理由で相続放棄をした場合、自分が相続を放棄すると、自分の子(被相続人からみると甥姪)に相続権が移ってしまわないか心配される方もおられるでしょう。

しかし、相続放棄が認められれば、自分の子に、兄弟の相続権が移ることはありません。

ただ、兄弟が亡くなった後、自分が、相続をするか相続を放棄するかを意思表示する前に亡くなってしまうと、自分の子に兄弟の相続権が移ります。

その場合、被相続人からみると甥姪にあたる方が、相続するか放棄するかの判断をしなければならなくなるので注意が必要です。

兄弟の相続放棄をするのに他の兄弟の同意は必要か

兄弟が亡くなってその遺産を相続するか放棄するかを検討する際、相続する場合も、また相続放棄をする場合も他の兄弟の同意は必要ありません。

相続放棄の手続きは、単独で行うことができます。

ただ、限定承認(相続はするが、プラスの遺産よりもマイナスの遺産(借金)の方が多い場合や、マイナスの遺産(借金)がいくらあるかわからない場合に、プラスの遺産の範囲でしかマイナスの遺産を相続しない旨の意思表示をする手続き。家庭裁判所での手続きが必要)を選択する場合は、相続人となる他の兄弟と一緒に手続きを行う必要があります。

限定承認について詳しくは「限定承認のメリット・デメリットと利用すべき場合や手続きの流れ」をご参照ください。

兄弟姉妹の相続放棄について相談するには

兄弟の遺産を相続するかどうかを判断するには、後になって思わぬ借金がふりかかってしまうことが無いよう、親の遺産を相続する場面に比べて慎重な判断が必要です。

とはいえ、相続放棄には期限もあることから、兄弟の相続について迷われた場合には、早めに専門家に相談された方がよいでしょう。

相続するかどうかを迷っているような場合は、弁護士に相談されると良いでしょう。

もし、相続放棄をすることが決まっていて、手続きの代行を依頼されたい場合は、弁護士か司法書士に相談されるのが良いと思います。

なお、相続するかどうかを迷っている場合だけでなく、既に兄弟が亡くなったことを知ってから3か月以上経過しているけれども、当初想定していなかった借金が発覚した場合のように、相続放棄が認められない可能性がある場合も、例外的に相続放棄が認められる場合があるので、諦めることなく弁護士に相談してみることをおすすめします。

まとめ

兄弟の遺産の相続は、遺産の内容を把握しにくいことや、亡くなった順番や他の相続人が相続放棄をしたかどうかで相続人が変わってしまうことなど、通常の親の遺産の相続に比べると注意が必要な点がたくさんあります。

特に相続放棄には期限が伴うことから、思わぬ借金を背負ってしまうことのないよう、少しでも不安な点がある場合には、なるべく早く専門家に相談されることをおすすめします。

また、兄弟の遺産相続に関する問題については「遺産相続の兄弟問題を解説!親の遺産を兄弟で分割・兄弟間の遺産相続」もご参照ください。

記事を読んでも問題が解決しない場合は、弁護士・税理士等の専門家に相談することをお勧めします。
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