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判断能力が不十分な相続人がいる場合に成年後見人と協議を進める方法

相続人の中に認知症等で判断能力が不十分な人がいる場合は、その人との間で遺産分割協議を進めることは難しいでしょうし、無理に進めるとその人の相続に関する権利を侵害してしまう可能性があります。また、遺産分割協議で決まったことが後に無効となる可能性もあります。 そのようなリスクを避けるためにも、また、判断能力が不十分な人の権利を保護するためにも、遺産分割協議前に成年後見人を家庭裁判所に選任してもらい、成年後見人と遺産分割協議をしなければなりません。 この記事では、相続人の中に認知症等で判断能力が不十分な人がいる場合の遺産分割協議の進め方について、わかりやすく説明します。 是非、参考にしてください。 なお、「そもそも成年後見人とは?」について知りたい人は「成年後見人とは?成年後見制度のデメリット、家族信託という選択肢も」をご参照ください。

[ご注意]
記事は、公開日(2019年9月18日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。

もともと成年後見制度を利用している場合

相続開始前から相続人に成年後見人が就いている場合は、基本的には、その成年後見人と遺産分割協議をします。 しかし、成年後見人と被後見人(後見される人)が共に相続人である場合には、利益相反(どちらかが得をすると、どちらかが損をする関係)になるため、成年後見人が被後見人を代理して遺産分割をすることができません。 このようなケースにおいて、成年後見監督人が選任されていれば、その相続に関しては成年後見監督人が被後見人を代理して遺産分割をします。 成年後見監督人とは、成年後見人の後見事務を監督する人のことです。 成年後見監督人が選任された場合には、成年後見人は行った後見事務の内容を定期的に、または随時に成年後見監督人に報告しなければなりません。 成年後見監督人が選任されていない場合や、成年後見監督人もその相続の相続人である場合は、特別代理人の選任が必要です。 特別代理人とは、本来の代理人が代理権を行使することが不適切な場合や代理人が不明な場合等に、本来の代理人に代わって代理行為を行う特別な代理人のことをいいます。 特別代理人を選任してもらうためには、被後見人の住所地(住民登録してある場所)を管轄する家庭裁判所に、特別代理人選任の申立てをします。 特別代理人選任の申立手続きについては、「特別代理人とは?未成年の我が子と共同相続の場合の遺産分割協議書案」をご参照ください。 上記の記事は、未成年者と親権者等の法定代理人が共同相続人となった場合について解説した記事ではありますが、手続きの流れは同じなので、記事中の「未成年者」を「被後見人」と、「親権者」を「成年後見人」と読み替えれば、内容はご理解いただけるかと思います。

相続が始まってから成年後見制度を利用する場合

成年後見人が選任されていない場合は、特別代理人選任の申立てではなく、成年後見開始の申立てをします。 成年後見開始の申立ては、本人(判断能力が十分でなく後見開始の審判を受ける人)の、住所地(住民登録をしている場所)を管轄する家庭裁判所におこないます。 裁判所の管轄区域は、裁判所ウェブサイトのこちらページから確認できます。 申立てができる主な人は、次のいずれかに該当する人です。
  • 本人(後見開始の審判を受ける者)
  • 配偶者
  • 四親等内の親族
親族の定義と親等の数え方については「親等とは?誰でもわかる親等の簡単な数え方と一目瞭然の親等一覧図」をご参照ください。 後見開始の申立てについて詳しくは「成年後見申立てによって後見人を選任するための手続きの流れ」をご参照ください。 申立人は、申立時に、成年後見人候補者を推薦することができます。 なお、以下の欠格事由のうち、いずれか一つにでも該当する人は、成年後見人になることはできません。
  • 未成年者
  • 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
  • 破産者で復権していない人
  • 被後見人に対して訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族
  • 行方の知れない者
以上のうち、分かりにくそうなものについて説明します。 「家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人」には、家庭裁判所で親権の喪失や財産の管理権の喪失の宣告を受けた親権者、家庭裁判所の職権で解任された保佐人や補助人がこれに該当します。 「破産者で復権していない人」についてですが、復権とは、破産宣告を受けて破産者に課された権利の制限を消滅させ、破産者の本来の法的地位を回復させることをいいます。破産者は、例えば、免責許可の決定が確定した時等に復権します。 続いて、「被後見人に対して訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族」について説明します。 被後見人とは、後見を受ける人のことです。 直系血族とは、父母、祖父母、子、孫などのことです(直系血族について詳しくは「血族とは。血族の範囲と親族や姻族との違いについてわかりやすく説明」参照)。 つまり、被後見人に対して訴訟(裁判)をしたことのある人や、その人の妻、夫、父母、祖父母、子、孫などに当たる人は、後見人になれません。 また、欠格事由がないからといって、必ず、後見人になれるわけでありません。 家庭裁判所では、申立書に記載された候補者が適任であるかどうかを審理します。 その結果、候補者が選任されない場合があります。 次のいずれかに該当する場合は、候補者以外の方を後見人等に選任したり、監督人を選任したりする可能性があります。
  • 親族間に意見の対立がある場合
  • 流動資産の額や種類が多い場合
  • 不動産の売買が予定されているなど、申立ての動機となった課題が重要な法律行為を含んでいる場合
  • 遺産分割協議など後見人等と本人との間で利益が相反する行為について、監督人に本人の代理をしてもらう必要がある場合
  • 後見人等候補者と本人との間に高額な貸借や立替金があり、その清算の可否等について第三者による調査、確認を要すると判断された場合
  • 従前、後見人等候補者と本人との関係が疎遠であった場合
  • 年間の収入額及び支出額が過大であったり、年によって収支に大きな変動が見込まれたりなど、第三者による収支の管理を要すると判断された場合
  • 後見人等候補者と本人との生活費等が十分に分離されていない場合
  • 申立時に提出された財産目録や収支状況報告書の記載が十分でないなどから、後見人等としての適格性を見極める必要があると判断された場合
  • 後見人等候補者が後見事務に自信がなかったり、相談できる者を希望したりした場合
  • 後見人等候補者が自己もしくは自己の親族のために本人の財産を利用 (担保提供を含む。)し、または利用する予定がある場合
  • 後見人等候補者が、本人の財産の運用 (投資等)を目的として申し立てている場合
  • 後見人等候補者が健康上の問題や多忙などで適正な後見等の事務を行えない、または行うことが難しいと判断された場合
  • 本人について、訴訟・調停・債務整理等の法的手続を予定している場合
  • 本人の財産状況が不明確であり、専門職による調査を要すると判断された場合
遺産分割との関係では、4つ目の「遺産分割協議など後見人等と本人との間で利益が相反する行為について、監督人に本人の代理をしてもらう必要がある場合」が関係します。 成年後見人候補者が本人(被後見人となる人)と共同して相続する場合、候補者が成年後見人に選任されれば、監督人も選任され、遺産分割協議については、監督人が本人を代理することになります。 監督人が選任されると報告義務が生じる等、後見人の負担が増すため、なるべく監督人が選任されないようにしたいという人もいるでしょう。 その場合は、本人と共同相続人にならない人を候補者にするとよいでしょう。 その場合は、監督人が選任されない可能性もあります(それでも監督人が選任されることもありますし、そもそも候補者以外の専門職が後見人に選任されることもあります)。 なお、差し当たって遺産分割協議のために成年後見人選任の申立てをした場合であっても、遺産分割完了後も後見人としての職務は続くので、ご注意ください。 成年後見人の任務が終了するのは、被後見人が死亡した時か、被後見人の判断能力が回復して後見開始の審判の取消しの申立てが認められた時(完全には回復していない場合は保佐(又は補助)開始の申立てによって保佐(又は補助)に移行するケースがあります)、それから、成年後見人辞任の許可の申立てが認められた時(後見人が一人の場合は、同時に選任の申立てをしなければなりません)に限られます。 辞任が許可されるのは、病気などやむをえない事情がある場合に限られますし(将来的には後見人の交代が認められやすい制度に変更される可能性があります)、判断能力が十分に回復することも稀なため、基本的には、本人が亡くなるまで後見人であり続ける覚悟が必要です。 複数の後見人が選任されることもあるので、本人と共同相続人とならない候補者と、本人と共同相続人となるものの、遺産分割協議以外の後見事務については永続的に後見人として被後見人を支えたい候補者と、複数の候補者を立ててもよいかもしれません。 もっとも、思惑通りに、家庭裁判所が候補者を後見人に選任するとは限りません。

保佐、補助、任意後見の場合の遺産分割

成年後見制度は、大きく分けると、法定後見制度と任意後見制度の2つがあります。 法定後見制度は、「後見」「保佐」「補助」の3つに分かれており、判断能力の程度に応じた制度を利用するようになっています。 「後見」は、保護の必要性が最も高い人が利用すべき制度で、助」はその必要性が最も低い人が、「保佐」がその中間の人が利用すべき制度です。 この記事では、被後見人(又は「後見」相当の判断能力の人)と遺産分割協議をするケースについて説明してきましたが、被保佐人の場合も同様に、保佐人の同意又は代理がなければ遺産分割をすることはできません。 保佐人が被保佐人と共同で相続する場合は、保佐監督人が選任されている場合は、保佐監督人の同意又は代理が、保佐監督人が選任されていない場合は、臨時保佐人の選任が必要です。保佐について詳しくは「保佐人、被保佐人とは?被保佐人と成年被後見人や被補助人との違い」をご参照ください。 被補助人については、補助開始の審判で家庭裁判所が定めた「特定の法律行為」に遺産分割が含まれる場合は、遺産分割に補助人の同意又は代理が必要です。補助人が共同相続人の場合は、補助監督人や臨時補助人が必要です。補助について詳しくは「補助人とは?被補助人とは?保佐人・被保佐人との違いをわかりやすく説明」をご参照ください。 任意後見の場合は、任意後見契約の中に遺産分割が含まれている場合は、任意後見人が代理して遺産分割協議に参加することができます。任意後見人が共同相続人の場合は、任意後見監督人が代理します。任意後見について詳しくは「任意後見制度・任意後見契約とは。法定後見との違いを一覧表で解説!」をご参照ください。

まとめ

以上、相続人の中に認知症等で判断能力が不十分な人がいる場合の遺産分割協議の進め方について説明しました。 不明な点は、相続と成年後見制度に精通した弁護士にご相談ください。

この記事を書いた人

株式会社鎌倉新書 いい相続

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