税理士監修記事
贈与税は誰が払うのか?誰にかかるのか?課税されない場合とは?

贈与税は誰が払うのでしょうか?
贈与した人でしょうか、それとも、贈与された人でしょうか?
また、贈与税が課税されない場合や、贈与税の課税方式ごとの計算方法についても説明します。
是非、参考にしてください。
[ご注意]
記事は、執筆日時点における法令等に基づき解説されています。
執筆後に法令の改正等があった場合、記事の内容が古くなってしまう場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをお勧めします。
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目次
- 贈与税は誰が払うのか?
- 贈与税がかからない場合
- 扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの
- 奨学金の支給を目的とする特定公益信託や財務大臣の指定した特定公益信託から交付される金品で一定の要件に当てはまるもの
- 個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物又は見舞いなどのための金品で、社会通念上相当と認められるもの
- 直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金のうち一定の要件を満たすものとして、贈与税の課税価格に算入されなかったもの
- 直系尊属から一括贈与を受けた教育資金のうち一定の要件を満たすものとして、贈与税の課税価格に算入されなかったもの
- 直系尊属から一括贈与を受けた結婚・子育て資金のうち一定の要件を満たすものとして、贈与税の課税価格に算入されなかったもの
- 相続や遺贈により財産を取得した人が、相続があった年に被相続人から贈与により取得した財産
- 贈与税の課税方式は2つある
- 財産の評価方法
- まとめ
贈与税は誰が払うのか?
贈与税は、受贈者(贈与を受けた人)が払わなければなりません。
ただし、贈与者には贈与税の連帯納付義務があり、税務署が受贈者の資力を調査し催促や差し押さえをしたうえで納税が不可能と判断した場合は、贈与者が贈与税を払わなければなりません。
贈与税がかからない場合
贈与税は、原則として贈与を受けたすべての財産に対してかかりますが、その財産の性質や贈与の目的などからみて、次に掲げる財産については贈与税がかからないことになっています。
- 法人からの贈与により取得した財産
※贈与税は個人から財産を贈与により取得した場合にかかる税金であり、法人から財産を贈与により取得した場合には贈与税ではなく所得税がかかります。 - 夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの
※ここでいう生活費は、その人にとって通常の日常生活に必要な費用をいい、また、教育費とは、学費や教材費、文具費などをいいます。
なお、贈与税がかからない財産は、生活費や教育費として必要な都度直接これらに充てるためのものに限られます。したがって、生活費や教育費の名目で贈与を受けた場合であっても、それを預金したり株式や不動産などの買入資金に充てている場合には贈与税がかかることになります。 - 宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う一定の者が取得した財産で、その公益を目的とする事業に使われることが確実なもの
- 奨学金の支給を目的とする特定公益信託や財務大臣の指定した特定公益信託から交付される金品で一定の要件に当てはまるもの
- 地方公共団体の条例によって、精神や身体に障害のある人又はその人を扶養する人が心身障害者共済制度に基づいて支給される給付金を受ける権利
- 公職選挙法の適用を受ける選挙における公職の候補者が選挙運動に関し取得した金品その他の財産上の利益で、公職選挙法の規定による報告がなされたもの
- 特定障害者扶養信託契約に基づく信託受益権
※国内に居住する特定障害者(特別障害者又は特別障害者以外で精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあるなどその他の精神に障害がある者として一定の要件に当てはまる人)が特定障害者扶養信託契約に基づいて信託受益権を贈与により取得した場合には、その信託の際に「障害者非課税信託申告書」を信託会社などの営業所を経由して特定障害者の納税地の所轄税務署長に提出することにより、信託受益権の価額(信託財産の価額)のうち、6,000万円(特別障害者以外の者は3,000万円)までの金額に相当する部分については贈与税がかかりません。 - 個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物又は見舞いなどのための金品で、社会通念上相当と認められるもの
- 直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金のうち一定の要件を満たすものとして、贈与税の課税価格に算入されなかったもの
- 直系尊属から一括贈与を受けた教育資金のうち一定の要件を満たすものとして、贈与税の課税価格に算入されなかったもの
- 直系尊属から一括贈与を受けた結婚・子育て資金のうち一定の要件を満たすものとして、贈与税の課税価格に算入されなかったもの
- 相続や遺贈により財産を取得した人が、相続があった年に被相続人から贈与により取得した財産
この中には一般の方にあまり関係のないものもありますが、2、4、8、9、10、11、12については、関係のある方が多いと思われるため、以下、それぞれについて説明します。
扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの
夫婦、親子、祖父母と孫などは、お互いに扶養する義務があります。
扶養とは、自活できない状態の人の経済的な面倒をみることです。
例えば、未成年者の多くは自力で生活できないでしょうから、親などが、生活費や教育費を出してあげて扶養する義務があります。
このような扶養義務者からの生活費や教育費としての贈与は非課税となります。
なお、ここでいう生活費は、その人にとって通常の日常生活に必要な費用をいい、また、教育費とは、学費や教材費、文具費などをいいます。
そして、「通常必要と認められるもの」とは、贈与を受けた人(被扶養者)の需要と贈与をした人(扶養者)の資力その他一切の事情を勘案して社会通念上適当と認められる範囲の財産をいいます。
贈与税がかからない財産は、生活費や教育費として必要な都度直接これらに充てるためのものに限られます。
したがって、生活費や教育費の名目で贈与を受けた場合であっても、それを預金したり株式や不動産などの購入資金に充てている場合には贈与税がかかることになります。
奨学金の支給を目的とする特定公益信託や財務大臣の指定した特定公益信託から交付される金品で一定の要件に当てはまるもの
奨学金を受け取った場合ですが、貸与型の場合は借金と同じなので贈与税も所得税も発生しません。
一方、返済義務のない給付型により奨学金を受け取った場合ですが、法人から受け取った場合は前述のとおり所得税が課されます。しかし、所得税は学資に充てるため給付される金品は非課税としているため、所得税はかかりません。
次に法人以外から給付型の奨学金を受け取った場合ですが、上記4の一定の要件を満たす団体からの給付であれば贈与税が非課税となりますので、給付団体に確認しましょう。
なお、親が貸与型の奨学金の返済を肩代わりしたような場合は、原則として贈与税が課されてしまいます。
学費を必要な都度贈与しているような場合だと、上記2に該当し贈与税非課税となり、学費を一括贈与し、一定の要件を満たせば上記10で贈与税非課税となりますので、大学入学等を控えた子や孫のいるご家庭では、これらの制度も併せて検討すると良いでしょう。
個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物又は見舞いなどのための金品で、社会通念上相当と認められるもの
香典などについては、社会通念上相当と認められるものに限っては非課税です。
社会通念上とは、常識的にというような意味です。
常識的な額であれば非課税になりますが、常識的な額よりも高額なものについては贈与税の対象となります。
なお、相続税の計算をする時に、葬式費用はプラスの財産から控除されますが、香典が非課税となっているので、香典返しを葬式費用に加えることは当然できません。
直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金のうち一定の要件を満たすものとして、贈与税の課税価格に算入されなかったもの
このパターンについては、別の記事に詳しくまとめました。
「住宅取得資金贈与を非課税にする方法と使わない方が節税になるケース」をご参照ください。
直系尊属から一括贈与を受けた教育資金のうち一定の要件を満たすものとして、贈与税の課税価格に算入されなかったもの
このパターンについても、別の記事に詳しくまとめてあります。
「教育資金贈与は都度贈与なら元々非課税!制度利用で一括でも非課税に」をご参照ください。
なお、この制度は、2019年3月31日で、一旦、終了することになっていましたが、平成31年度税制改正にて、要件の見直し等を行った上で、2年間延長する方針が2018年12月に閣議決定されています。
平成31年度税制改正の変更点については、「相続税改正のポイント|平成31年(2019年)速報/平成30年(2018年)の内容」の「教育資金の一括贈与非課税措置の見直し」の項目をご参照ください。
直系尊属から一括贈与を受けた結婚・子育て資金のうち一定の要件を満たすものとして、贈与税の課税価格に算入されなかったもの
このパターンについても、別の記事に詳しくまとめてあります。
「結婚資金の贈与やご祝儀を非課税で受け取れる範囲をわかりやすく説明」をご参照ください。
なお、この制度についても、2019年3月31日で、一旦、終了することになっていましたが、平成31年度税制改正にて、要件の見直し等を行った上で、2年間延長する方針が2018年12月に閣議決定されています。
平成31年度税制改正の変更点については、「相続税改正のポイント|平成31年(2019年)速報/平成30年(2018年)の内容」の「結婚・子育て資金の一括贈与非課税措置の見直し」の項目をご参照ください。
相続や遺贈により財産を取得した人が、相続があった年に被相続人から贈与により取得した財産
相続税は人が亡くなった時に課税されます。そうすると、相続税がかからないように、亡くなる直前に子供たちに財産をあげてしまおうという人が出てきてしまいます。そのため国は、相続税よりも税率を高くした贈与税という税金を設けています。
しかし、平均寿命が80歳を超える現代では、様々なタイミングで高い税率だと知りながらも贈与税を負担し、生前贈与を行なわなければならない時もあるでしょう。
そのような場合の救済措置として、要件を満たせば、亡くなる前3年以内の贈与については、贈与税ではなく相続税を課すこととしています。
したがって、亡くなった年に行なわれた贈与には贈与税を課さない(相続税が課される)ため、贈与税の非課税財産として列挙されています。
贈与税の課税方式は2つある
贈与税の課税方法には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあり、一定の要件に該当する場合に「相続時精算課税」を選択することができます。
それぞれの方式に基礎控除額があり、基礎控除額までの贈与について贈与税が非課税になります。
以下、それぞれについて説明します。
暦年課税
贈与税の申告時に相続時精算課税を選択しない限りは、暦年課税方式によって、贈与税がかかることになります。
暦年課税方式では、贈与税は、一人の人が1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。
したがって、1年間にもらった財産の合計額が110万円以下なら贈与税はかかりません(この場合、贈与税の申告は不要です。)。
ただし、複数人から贈与を受けた場合でも、基礎控除額は110万円で変わりありません。
例えば、同じ年に、父と母からそれぞれ100万円の贈与を受けた場合、100万円+100万円-110万円=90万円となり、90万円に対して贈与税がかかります。
贈与税額は、計算方法を理解しなくても、贈与税計算シミュレーションツール(贈与税計算機)を利用することで、簡単に算出することができます。
以下のリンクからご利用ください。
「贈与税計算シミュレーションツール(贈与税計算機)で税額を簡単に計算!」
計算方法についても説明しておきます。
基礎控除の後の金額のことを「課税価格」といいますが、贈与税の税額は、次の算式で求めることができます。
課税価格×税率-控除額=贈与税額 |
暦年課税方式による贈与税の税率は、特例贈与財産と一般贈与財産とで異なり、特例贈与財産の方が税率が低く設定されています。
特例贈与財産とは、直系尊属(親や祖父母等)から、贈与を受けた年の1月1日時点で20歳以上の直系卑属(子や孫等)への贈与財産のことで、一般贈与財産とは、特例贈与財産に該当しない財産のことです。
一般贈与財産用の税率(一般税率)の速算表は次のとおりです。
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | - |
200万円超300万円以下 | 15% | 10万円 |
300万円超400万円以下 | 20% | 25万円 |
400万円超600万円以下 | 30% | 65万円 |
600万円超1000万円以下 | 40% | 125万円 |
1000万円超1500万円以下 | 45% | 175万円 |
1500万円超3000万円以下 | 50% | 250万円 |
3000万円超 | 55% | 400万円 |
特例贈与財産用の税率(特例税率)の速算表は次のとおりです。
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | – |
200万円超400万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円超600万円以下 | 20% | 30万円 |
600万円超1000万円以下 | 30% | 90万円 |
1000万円超1500万円以下 | 40% | 190万円 |
1500万円超3000万円以下 | 45% | 265万円 |
3000万円超4500万円以下 | 50% | 415万円 |
4500万円超 | 55% | 640万円 |
贈与税の計算方法を説明します。
例えば、30歳のAさんが、ある年の1年間に父母や祖父母といった直系尊属から受けた贈与の総額が1000万円であったとします。
Aさんは、どの贈与者からの贈与についても暦年課税を選択したとします。
1000万円から暦年課税の基礎控除額110万円を控除すると、「1000万円-110万円=890万円」となります。
贈与を受けた年の1月1日時点で20歳以上の人が直系尊属から贈与された財産は特例贈与財産に該当するので、特例税率の速算表に沿って贈与税額を計算します。
890万円は、「600万円超1000万以下」に該当するので、税率30%と控除額90万円を適用します。
そうすると、「890万円×30%-90万円=177万円」が贈与税額となります。
少し複雑なケースについても説明します。
Aさんは、ある年の1年間に、直系尊属から600万円、直系尊属以外の人から400万円、合計1000万円の贈与を受けたとします。
この場合は、特例贈与財産と一般贈与財産の両方があることになります。
その場合は、次の手順で計算します。
- すべての財産を「一般税率」で計算した税額に占める「一般贈与財産」の割合に応じた税額を計算します。
- すべての財産を「特例税率」で計算した税額に占める「特例贈与財産」割合に応じた税額を計算します。
- 1で算出した税額と、2で算出した税額を合計して、贈与税額を計算します。
※1と2はどちらを先に計算しても構いません。
上記の事例をこの計算手順に当てはめて計算してみましょう。
まず、1の税額を計算します。
最初に、すべての財産を一般税率で計算します。
基礎控除後の課税価格890万円(=1000万円-110万円)を一般税率の速算表に当てはめると、600万円超1000万円以下の行を見ればよいので、税率が40%で、控除額が125万円であることが分かります。
そうすると、すべての財産を一般税率で計算した税額は、「890万円×40%-125万円=231万円」となります。
そして、この231万円に占める一般贈与財産の割合に応じた税額を計算します。
Aさんがその年に贈与を受けた1000万円のうち、一般贈与財産は、直系尊属以外の人から受けた400万円なので、1の税額は、「231万円×400万円/1000万円=92万4千円」となります。
続いて、2の税額も同様に計算すると、「177万円×600万円/1000万円=106万2千円」となります(177万円は、特例税率の速算表に沿って「890万円×30%-90万円=177万円」と計算できます)。
3に進んで、Aさんがその年に納めるべき贈与税額は、「92万4千円+106万2千円=198万6千円」となります。
相続時精算課税
相続時精算課税制度とは、親や祖父母から贈与された財産の価額が、2500万円まで贈与税が非課税になる制度です。
この説明だけだと大変お得な制度に思えます。
しかし、贈与税はかかりませんが、相続時には、この制度により取得した贈与財産とその他の相続財産とを合わせた遺産総額に相続税が課税されるので、注意が必要です。
相続時には、他の遺産と合算して、相続税の対象となるのです。
「相続時精算課税制度」は、その名の通り、「相続時」に「精算」して「課税」する「制度」なので、当然といえば当然ですね。
なお、2500万円を超える部分については、一律20%の贈与税が課せられます。
つまり、1億円の不動産の贈与の際に、相続時精算課税制度を利用することはできますが、7500万円については贈与税を支払わなければなりません。
(1億円-2500万円=7500万円)✕20%=1500万円の贈与税が課されます。
ただし、課された贈与税は、贈与者が亡くなった時の相続税から控除され、贈与税額が相続税額を上回る場合は、差額の還付を受けることができます。
なお、相続時精算課税を選択した贈与者からの贈与は、その年以降すべて相続時精算課税となり、暦年課税の110万円の非課税枠を利用することはできなくなるため、選択しない方が税金が安く済むケースも多いので、注意が必要です。
相続時精算課税の適用を受けたい場合は、贈与税の申告時に、税務署に、相続時精算課税選択届出書等の必要書類を提出しておこないます。
相続時精算課税について詳しくは「相続時精算課税制度を迂闊に利用して大損しないために知るべきこと」をご参照ください。
財産の評価方法
金銭の場合は贈与額がはっきりしますが、不動産や非上場株式等の贈与を受けた場合は、贈与税の計算に当たって、財産の価額をどのように評価すればよいのかという問題に直面します。
この点、贈与税の計算の基礎となる財産の評価は、相続税と同様、「相続税評価額」によって行われます。
相続税評価額については「相続税評価額の基本的な計算方法と評価額を低く計算して節税する方法」をご参照ください。
まとめ
以上、「贈与税は誰が払うか?」についてと、贈与税がかからない場合、それから、課税方式ごとの税額の計算方法について説明しました。
贈与税について不明な点は、税理士に相談しましょう。
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