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銀行口座を死亡後そのままにしておくとどうなる?相続手続き前に引き出せる?

被相続人(亡くなった人)の銀行口座の残高が少額の場合は、手間をかけて払戻しを受けるよりも、そのまま放置したいと思う人もいるでしょう。

被相続人の預金は、そのままにしておくとどうなるのでしょうか?罰則はないのでしょうか?

また、相続手続をしなくても預金を引き出すことはできないのでしょうか?

効率よく相続手続を行う方法はないのでしょうか?

この記事では、以上のような疑問に対して、丁寧に説明します。

是非、参考にしてください。

[ご注意]
記事は、公開日(2019年8月19日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。

銀行口座を死亡後そのままにしておくと、払戻手続きが煩雑になることがある

銀行口座を死亡後そのままにしておいても、罰則等があるわけでありません。

一部の銀行では、一定期間利用されていない銀行口座に対して口座管理手数料を徴収しています。

また、銀行口座を死亡後そのままにしておくと、いざ、払戻しを受けたいときに、その手続きが煩雑になってしまうことがあります。

最終異動日が2009年以降で、最終異動日から10年間経過した預金は休眠口座預金として預金保険機構の管理下に移されてしますのです。

休眠口座預金であっても払戻しを受けることはできますが、その手続きは通常の払戻手続よりも煩雑になってしまいます。

休眠口座となる預金は、前述のとおり、最終異動日から10年間経過したものです。相続から10年間ではありません。

ここでいう異動には、引出し、預入れ、振込入金、口座振替等が含まれます。金融機関による利子支払いは該当しません。

定期預金の場合は、満期日に異動があったものとみなされます。

例えば最終異動日が相続開始の9年前の場合は、相続開始後1年が経過すると休眠口座預金となります。

休眠口座の対象となる金融機関

なお、休眠口座の対象となる金融機関は、普通銀行、信用金庫、信用協同組合(信用組合)、労働金庫、 商工組合中央金庫、農業協同組合、漁業協同組合、水産加工業協同組合、商工組合中央金庫、農林中央金庫です。対象とならない金融機関は、外国銀行や長期信用銀行です。

休眠口座の対象となるものは、普通預金・通常貯金、定期(性)預金、当座預金、別段預金、貯蓄預金、定期積金、相互掛金、元本補填契約付金銭信託、保護預り金融債です。対象とならない物は、外貨預金、2007930日までに預け入れられた定額郵便貯金、マル優口座、譲渡性預金、保護預りなし金融債、財形貯蓄、仕組預金です。

なお、最終異動日が2008年以前の口座は、預金保険機構の管理下に移されることはありませんが、時効が完成して払戻請求権が消滅してしまう可能性があります。

最後に口座を利用してから時効完成までの期間は、個人の口座の場合、銀行口座が5年、信用金庫等の口座の場合が10年です。

時効が完成し、債務者(この場合は金融機関)が時効を援用(時効の利益を受けることを債権者等に伝えること)すると債権は消滅してしまいます。

実際は、金融機関が預金払戻債務の時効を援用することはなく、基本的には払戻しに応じてもらえます。

ただし、時効が完成した口座の払戻手続は煩雑です。

相続手続をしなくても預金を引き出す方法

相続手続をしなくても預金を引き出す方法には、次の3つがあります。

  • 生前に引き出す
  • 相続開始後、口座凍結前に引き出す
  • 口座凍結後に仮払いを受ける

以下、それぞれについて説明します。

生前に引き出す

口座の所有者が亡くなる前なら、当然、自由に預金を引き出すことができます。

生前に預金の全額を引き出しておけば、相続開始後、金融機関でも相続手続は不要になるので、預金が少額であれば、生前に引き出しておいてもよいでしょう。

口座の所有者自身が引出しに行けない場合は、本人から委任を受けた人が、代わりに引き出すこともできます。

ATMで引き出す場合

ATMで引き出す場合、委任状は不要ですが、1日当たりの引き出し限度額が設定されています。

引き出し限度額は金融機関によって異なります。引き出し限度額は変更することが可能です(ゆうちょ銀行の場合は最高で1,000万円まで引き上げることができます)。

窓口で引き出す場合

窓口で引き出す場合は、限度額はありませんが、本人以外の人が引き出す場合は委任状が必要です。

委任状の用紙は金融機関でもらえます(ウェブサイトからダウンロードできる金融機関もあります)。

本人が認知症等で委任状を書くことができない場合は、保佐や後見の制度の利用を検討してもよいでしょう。

相続開始後、口座凍結前に引き出す

被相続人が口座を開設していた金融機関が、相続の開始を把握すると、被相続人名義の口座は凍結され、以降は自由に引き出すことはできなくなりますが、金融機関は、口座名義人の死亡を即座に把握できるわけではないので、キャッシュカードの暗証番号を知っていれば、相続開始後でもATMで預金を引き出すことができます。

しかし、これには次の2つの問題があります。

  • 他の共同相続人との間でトラブルになることがある
  • 相続を単純承認したことになる

以下、それぞれについて説明します。

他の共同相続人との間でトラブルになることがある

被相続人の預金口座は、遺産分割協議の対象ですから、勝手に引き出して使うことは本来許されません。

引き出す前に必ず他の共同相続人の同意を取り付けましょう。

また、引き出したお金を葬儀費用といった遺産から支出しても構わないものの支払いに充てた場合は、必ず領収書を取っておいて、自分のために使ったものではないことを証明できるようにしておきましょう。

相続を単純承認したことになる

葬儀費用だけのために引き出すのであればよいのですが、引き出したお金を自分のために使ってしまうと、相続を単純承認したことになります。

相続放棄を検討する必要がまったくなければそれで問題ないのですが、後日、プラスの財産よりも負債の方が大きかったことが発覚した場合に、相続放棄をしようと思っても、一度単純承認してしまうと、相続放棄ができません。

口座凍結後に仮払いを受ける

口座凍結後でも仮払いを受けることができます。

仮払いは、遺産分割協議が成立する前に、被相続人の預金を引き出すことができる手続きです。

遺産分割協議が成立している場合は、仮払いではなく、本来の相続手続によるべきですが、預金額が少額であれば、相続手続よりも簡便な仮払い手続を利用することも考えられます。

仮払いを受けるためには、相続人全員の同意書が必要でしたが、相続族法の改正によって、201971日からは、他の相続人の同意がなくても仮払いを受けられるようになりました。

施行日以前に相続が開始されていても、施行日以降であれば、仮払いを受けることができます。

仮払いを受けるための方法には、次の2つがあります。

  • 金融機関の窓口で直接仮払いを求める
  • 家庭裁判所に仮払いを申し立てる

以下、それぞれについて説明します。

金融機関の窓口で直接仮払いを受ける

銀行等の金融機関の窓口で直接仮払いを求める方法のメリットには、次の2つがあります。

  • 裁判所での手続きが不要(手間も日数も費用もかからない)
  • 仮払いが必要な理由を求められない

ただし、生活費や葬儀費用の支払,相続債務の弁済などの資金需要に対応できるよう,遺産分割前にも払戻しが受けられる制度として創設されるので、払戻し可能額に一定の上限額が設けられています。

上限額は、基本的には次の式で計算します。

相続開始時の預貯金債権の額(預貯金残高)× 1/3 × 仮払いを求める相続人の法定相続分

例えば、A銀行に600万円、B銀行に1,200万円の預金があって、仮払いを求める相続人の法定相続分が2分の1の場合は、A銀行からは、600万円×1/3×1/2=100万円なので、100万円以内の仮払いを受けることができ、B銀行からは、1,200万円×1/3×1/2=200万円以内の仮払いを受けることが出来るようになります。

ただし、一つの金融機関から仮払いを受けられる金額には、法務省令によっても上限が設けられます。上記算式の上限額が法務省令の上限額を超える場合には、法務省令で定められた上限額である150万円の範囲内で仮払いを受けることができます。

設例のケースでは、A銀行からは100万円、B銀行からは150万円の仮払いを受けることができます。

仮払いを受けた分は、遺産分割の際に相続分から差し引かれます。

家庭裁判所に仮払いを申し立てる

それほど緊急ではないが、遺産分割協議が長引きそうなので、遺産分割前に仮払いを受ける必要がある場合は、家庭裁判所に仮払いを申し立てることによって、預貯金債権の法定相続分の全額の仮払いを受けることも可能です。

この方法は、上限金額の縛りがないというメリットがある反面、次のようなデメリットがあります。

  • 家庭裁判所に遺産分割調停(または審判)を申し立てたうえで、さらに仮払いを申し立てなければならない(手間と日数と費用がかかる)
  • 仮払いを受ける理由が求められる

銀行での相続手続きを効率よく行う方法

相続手続は自分でもできますが、専門家に依頼した方が、面倒がないでしょう。

相続手続を依頼する場合、費用はかかりますが、面倒な手続きを自分で行う必要はありませんし、手続きについて理解する必要すらありません。

銀行での相続手続きを自分で行う場合は、こちらの記事をご覧ください。

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まずは弁護士にご相談ください

この記事を書いた人

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