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遺産分割とは?流れやスムーズに話し合いを進めるポイント

大切な人が残してくれた遺産を親族等で分け合うとき、決して揉めたくはありませんよね。

しかし、相手の言いなりになって損をすることも避けたいところです。

また、遺産分割協議がまとまらず長引くことで不利益が生じることも。

そこで、この記事では、遺産分割で揉めず損せずスムーズに協議をまとめるために重要なポイントについて説明します。

また、遺産分割について基礎知識を身に付けておくことも重要なので、その点についても網羅的に分かりやすく説明します。

相続問題でお悩みの方はまずは弁護士にご相談ください

[ご注意]
記事は、公開日(2018年10月10日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。

遺産分割とは?

遺産分割とは、亡くなった人が所有していた財産(遺産)を、その人の死亡と同時にもらい受ける権利のある人が複数いる場合に、その人たちの間で遺産を分けることです。

また、遺産分割にあたって、遺産の分け方を決めるために行う協議のことを遺産分割協議といいます。

遺産分割に参加できる人

次の人は遺産分割に参加することができます。

  • 共同相続人
  • 包括受遺者
  • 相続分譲受人

以下、それぞれについて説明します。

共同相続人

共同相続人とは、被相続人の法定相続人が複数人いる場合に、遺産分割前の相続財産を共有している状態の相続人のことです。

相続人が一人しかいない場合は、相続開始と同時に、その相続人がすべての相続財産を単独所有するため、共同相続人にはならず、遺産分割を行う必要はありません。

包括受遺者

包括受遺者(ほうかつじゅいしゃ)とは、遺贈(遺言によって財産を贈られること)の対象となる財産を特定せずに、積極財産(プラスの財産)も負債などの消極財産(マイナスの財産)も包括的に承継する遺贈(包括遺贈)を受けた人のことです。

包括遺贈は、次の3つに分けることができます。

  • 全部包括遺贈
  • 割合的包括遺贈
  • 特定財産を除いた財産についての包括遺贈

全部包括遺贈とは、消極財産も含めて全財産を包括して遺贈することです。

例えば、「全財産を○○に遺贈する。」というような遺贈がこれに当たります。

この場合、すべての財産を一人の受遺者が単独で取得するため、遺産分割を行う必要はありません。

割合的包括遺贈とは、消極財産も含めて全財産の割合的な一部を包括して遺贈することです。

例えば、「全財産の3分の2を○○に、3分の1を××に遺贈する。」というような遺贈がこれに当たります。

この場合、割合的な一部を受け取った受遺者の中で遺産分割を行うことになります。

特定財産を除いた財産についての包括遺贈とは、特定遺贈(対象となる財産を特定して行われる遺贈)と包括遺贈の併存型の遺贈のうち包括遺贈の部分の遺贈のことです。

例えば、「○○県○○市○○町〇丁目〇番〇号の土地をAに、その余の財産のすべてをBに遺贈する。」というような遺贈におけるBに対する遺贈がこれに当たります。

この場合、特定財産を除いた財産の割合的な一部を受け取った受遺者が一人の場合は遺産分割を行う必要はありませんが、そのような受遺者が複数存在する場合(例えば、上記の例でAの取得する土地以外の財産について、BとCがそれぞれ2分の1ずつの割合で遺贈を受けた場合)には遺産分割協議を行うことになります。

相続分譲受人

相続分譲受人(そうぞくぶん ゆずりうけにん 又は そうぞくぶん じょうじゅにん)とは、相続人から、その相続分を譲り受けた人のことです。

相続人は、遺産分割を行う前に、遺産全体に対する共有持分である相続分を、第三者に有償又は無償で譲渡することができます(たとえば、相続人に借金等の負債がある場合に、相続人が、これの弁済として、自分の相続分(相続する権利)を債権者に譲渡する場合など。)。

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遺産分割が必要かどうかの判断

遺産分割が必要か、もしくは不要かについての判断の仕方について説明します。

遺産分割が必要な場合

遺産分割が必要な場合は、相続人等の遺産を受け取る権利がある人が複数いて、かつ、遺言によってすべての財産の処分(受取先)が決まっていない場合です。

遺産分割が不要な場合

遺産分割が不要な場合は、遺産を受け取る権利がある人が1人以下しかいないか、または、遺産を受け取る権利のある人が複数いたとしても遺言によってすべての財産の処分(受取先)が決まっている場合です。

遺産分割に期限はある?

遺産分割には期限はありませんが、遺産分割をしないと次のようなデメリットがあります。

  • 知らない人と相続財産が共有されている状態が続き、遺産分割がより困難になるおそれがある
  • 預貯金や株式の名義変更が行えず、遺産を利用できない場合がある
  • 時効にかかるおそれがある
  • 相続税の申告・納付が二度手間になるおそれがある

以下、それぞれについて説明します。

知らない人と相続財産が共有される状態が続き、遺産分割がより困難になるおそれがある

遺産分割が済むまでは、遺産は共同相続人等の間で共有されている状態です。

共同相続人は、自分の共有持分を譲渡することができるので、その場合は、他の共同相続人は知らない人(共有持分の譲受人)と相続財産を共有することになります。

また、遺産分割が済む前に共同相続人等が亡くなって新たな相続が開始された場合は、亡くなった共同相続人の相続人(二次相続の相続人)も一次相続の遺産の共有者となり、ねずみ算式に共有者が増える可能性があります。

このように、面識のない人同士が遺産の共有者となったり、共有者が増えたりした場合は、遺産分割協議をまとめる難易度が高まり、遺産分割が困難になるおそれがあります。

預貯金や株式の名義変更が行えず、遺産を利用できない場合がある

被相続人(亡くなって財産を残す人)の預貯金口座は、名義変更か解約手続がとられるまでの間、凍結されます。

被相続人の預貯金口座の名義変更や解約は、遺産分割協議書及び共同相続人等全員の印鑑登録証明書がなければ、金融機関が手続を行ってくれません。

つまり、遺産分割が済むまでは、預貯金口座は凍結されたままで利用することはできないのです。

また、株式については、遺産分割を行って、名義書換をするまでは、配当を受け取ったり、議決権を行使したり、売却することが困難となります。

時効にかかるおそれがある

預貯金口座の払戻請求権は、銀行の場合は5年で、信用金庫や信用組合の場合は10年で消滅時効にかかってしまいます。

この期間までに遺産分割をしないと、金融機関から時効を援用されてしまい、払戻し請求ができなくなってしまうおそれがあります。

相続税の申告・納付が二度手間になるおそれがある

相続税の申告・納付は相続開始を知った日の翌日から10か月以内に行わなければなりません。

遺産分割協議が相続税の申告・納付期限までに終わらない場合は、法定相続分に応じた割合で相続したと仮定して相続税の申告・納付を行わなければなりません。

その後、法定相続分と異なる割合で遺産分割が行われた場合は、既に申告・納付した相続税額と差が生じてしまいます。

法定相続分よりも多くの割合で遺産分割を受けた場合は、修正申告をして追加納税を行わなければなりません。

法定相続分よりも少ない割合で遺産分割を受けた場合は、更正の請求をすることによって、払い過ぎた額を取り戻すことができます。

このように、相続税の申告・納付期限までに遺産分割協議が成立しない場合は、一度相続税の申告・納付を行った後に、再度、修正申告や更正の請求を行うことが必要となり、二度手間となってしまいます。

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遺産分割の流れ

遺産分割の流れは次のようになります。

  • 相続人の調査
  • 遺言書の確認
  • 相続財産の調査
  • 相続放棄の検討
  • 遺産分割協議
  • 遺産分割調停
  • 遺産分割審判

以下、それぞれについて説明します。

相続人の調査

まず、誰が相続人なのかを明確にするために、相続人の調査を行います。

調査は、被相続人の出生から死亡までの連続したすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本を収集して行います。

戸籍を収集することによって、被相続人に婚外子(結婚していない男女の間に生まれた子)がいるかどうか等が明らかになり、相続人を確定することができます。

被相続人に子供(子供がすでに死亡している場合の孫なども含みます)がおらず、両親もすでに死亡しているという場合などには、両親の出生から死亡までの戸籍や、さらにその祖父母の戸籍、被相続人の兄弟の戸籍などが必要となることもあります。

遺言書の確認

遺言書の確認

遺言書の有無や内容を確認します。遺言によって、すべての相続財産の処分(受取先)が指定されている場合は、遺産分割の必要はありません。

もっとも、そのような遺言がある場合であっても、相続人と受遺者、遺言執行者の全員の同意がある場合は、遺言の指定と異なる遺産分割を行うことが可能です。

遺言があっても、すべての財産の処分が指定されていない場合は、指定されていない財産については分割が必要ですし、割合的包括遺贈の場合も遺産分割が必要です。

相続財産の調査

次に、遺産分割の対象となる財産を明確にするための調査を行います。積極財産(プラスの財産)だけでなく、負債等の消極財産(マイナスの財産)についても調査します。

現金や預貯金のような財産の価額が明確なものだけでなく、不動産や美術品・骨董品のように、いくらの価値があるのか、評価が必要な財産もあります。

納税のための財産評価の方法は法令で定められていますが、遺産分割のための財産評価の方法には決まりはありません。

当事者同士が納得をすれば、どのように評価をしても構いません。

通常は市場価格(その財産を売った時にいくらで売ることのできる価格)で評価します。

後述する換価分割を行った場合に、市場価格で評価していないと、計算が合わなくなってしまいます。

相続放棄の検討

相続財産の調査によって、積極財産よりも消極財産の方が多いことが判明することがあります。

そのような場合に相続すると損なので、相続を放棄することができるようになっています。相続を放棄する場合は、遺産分割協議に参加することはできません。

遺産分割協議

協議の形式

遺産分割は、共同相続人や受遺者等の当事者の間で協議して、内容を決めます。

全員が一堂に会して協議することができれば手っ取り早いですが、最終的に相続人全員で合意ができるのであれば、必ずしも全員出席で協議を行わなくても構いません。

文書や電話、メールなどで協議を行っても構いません。また、弁護士等の代理人を立てることも可能です。

寄与分と特別受益

遺産分割協議時に寄与分や特別受益についての主張があることがあります。

寄与分とは、被相続人の生前に、相続人が、被相続人の財産の増加や維持に寄与した程度のことです。

寄与分がある相続人は、他の相続人に比べて、その分多くの財産を相続することができます。

特別受益とは、続人が複数いる場合に、一部の相続人が、被相続人からの遺贈や贈与などによって特別に受けた利益のことです。

特別受益を受けた相続人がいる場合は、遺産分割における当該相続人の取得分を、特別受益を受けた価額に応じて減らす必要があるので、特別受益の価額を相続財産の価額に加えて相続分を算定し、その相続分から特別受益の価額を控除して特別受益者の相続分が算定されます。

分割の方法

遺産分割の方法

具体的な遺産分割の手順について、説明します。

遺言書がない場合は、各相続人が法定相続分に応じて財産を取得します(ただし、相続人間で合意ができる場合は、必ずしも法定相続分どおりに分割しなくても問題ありません。)。

財産の分割方法には(分割しない方法も含めて)次の4つがあります。

  • 現物分割
  • 換価分割
  • 代償分割
  • 共有

以下、それぞれについて説明します。

現物分割

現物分割とは、遺産を現物のまま分割する方法のことです。

例えば、相続人がAとBの2人で、相続分は2分の1ずつであったとします。

遺産は、現金1,000万円と、土地1筆(時価1,000万円)、自動車1台(時価100万円)であるとします。

このような場合に、土地を半分に分筆(1筆の土地を分けること。土地は1筆、2筆と数えます。)し、次のように遺産分割した場合、このような分割のことを現物分割といいます。

Aが相続する財産
現金450万円、分筆後の土地(時価500万円)、自動車(時価100万円)
Bが相続する財産
現金550万円、分筆後の土地(時価500万円)

また、分筆しなくても、次のような分け方も現物分割に含まれます

Aが相続する財産
現金50万円、土地(時価1,000万円)
Bが相続する財産
現金950万円、自動車(時価100万円)
換価分割

換価分割とは、遺産を売って、お金に換えて、そのお金を分ける分割方法のことです。

例えば、先ほどの例でいうと、土地と自動車とをそれぞれ1,000万円と100万円で売ると、元からあった現金1,000万円と併せて、現金2,100万円になります。

これをAとBとで1,050万円ずつ相続します。これが換価分割です。

土地だけを換価分割して、自動車は現物分割するということも可能です。

代償分割

代償分割とは、現物分割によると、法定相続分どおりにうまく分割できない場合等に、法定相続分よりも多く相続する人から、少なく相続するに人に対して、法定相続分との差額分の代償する分割方式のことです。

例えば先ほどの例で、次のように現物分割を行ったとします。

Aが相続する財産(合計1,100万円)
土地(時価1,000万円)、自動車(時価100万円)
Bが相続する財産
現金1,000万円

法定相続分どおりであれば、1,050万円ずつであるため、このままでは、Aが法定相続分よりも50万円多く相続し、Bが法定相続分よりも50万円少なく相続することになります。

そこで、Aの自己資産からBに対して50万円を代償することで、バランスをとるのが代償分割です。

共有

共有とは、財産を分割せずに、共同で所有することです。

例えば先ほどの例でいうと、土地と自動車は共有して共同で使用し、現金のみを現物分割するというような方法が考えられます。

不動産や自動車は共有名義で登記することも可能です。

遺産分割協議書の作成

当事者全員が同意できる内容が決まったら、遺産分割協議書を作成します。

遺産分割協議書は、名義変更等の相続手続で必要になる大切な書類です。遺産分割協議書はご自身で作成することも可能ですが、専門家に相談しても良いでしょう。

遺産分割調停

遺産分割協議で議論が平行線を辿る等して、成立する見込みない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます。

調停では調停委員会が間に入り、争点を整理する等して、合意形成を促します。

遺産分割審判

遺産分割調停でも合意に至らない場合は、自動的に審判手続に移行します。

審判では、裁判官がどのように分割するかを諸般の事情を踏まえて決定します。

相続人に未成年者や認知症の人がいる場合

未成年者や意思能力のない人(例えば重度の認知症の人など)は、単独で遺産分割協議に参加することはできません。

未成年者の場合は、親権者が代理人となりますが、未成年者と親権者の両者がともに相続人である場合は、未成年者と親権者の間で利害の対立が生じるため、代理人となることはできません。

その場合は、家庭裁判所に申し立てて特別代理人を選任してもらいます。

選任された特別代理人が未成年者の代理人として遺産分協議に参加します。

また、相続人が認知症などの場合は、その程度にもよりますが、遺産分協議に参加して適切な判断を下すことができない場合(意思能力がない場合)は、家庭裁判所に申し立てて、成年後見人を選任してもらわなければなりません。

選任された成年後見人が代理人として遺産分割協議に参加します。

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揉めず損せず協議をまとめるためのポイント

自分に都合のよい主張ばかりをしていては揉め事に発展してしまいますし、相手に合わせてばかりでは損してしまいます。

揉めず損せずスムーズに協議をまとめるポイントは次の通りです。

  •  正しい法的知識を身に付ける
  •  相手の気持ちを考えて冷静に話をする

まず、正しい法的知識を知らなければ、無理な主張をしているのが自分なのか相手なのかが分かりません。

正しい法的な知識を身に付けて、いたずらに揉めるような無理な主張をしないようにしましょう。

相手が法的に通らないような主張をしてきたときは、法的な根拠に基づいて論理的に主張を退けられるようにしましょう。

また、いかに正しいことを言っていても、言い方の良くないと、相手の感情を逆なでしてしまい、理解を得ることはできません。

相手の気持ちを考えて言い方に気を付けましょう。過度に感情的な言い方は厳禁です。

相続問題でお悩みの方はまずは弁護士にご相談ください

大切な人が残してくれた遺産を親族等で分け合うとき、決して揉めたくはありませんよね。

しかし、相手の言いなりになって損をすることも避けたいところです。

また、遺産分割協議がまとまらず長引くことで不利益が生じることも。

そこで、この記事では、遺産分割で揉めず損せずスムーズに協議をまとめるために重要なポイントについて説明します。

また、遺産分割について基礎知識を身に付けておくことも重要なので、その点についても網羅的に分かりやすく説明します。

遺産分割とは?

遺産分割とは、亡くなった人が所有していた財産(遺産)を、その人の死亡と同時にもらい受ける権利のある人が複数いる場合に、その人たちの間で遺産を分けることです。

また、遺産分割にあたって、遺産の分け方を決めるために行う協議のことを遺産分割協議といいます。

遺産分割に参加できる人

次の人は遺産分割に参加することができます。

  • 共同相続人
  • 包括受遺者
  • 相続分譲受人

以下、それぞれについて説明します。

共同相続人

共同相続人とは、被相続人の法定相続人が複数人いる場合に、遺産分割前の相続財産を共有している状態の相続人のことです。

相続人が一人しかいない場合は、相続開始と同時に、その相続人がすべての相続財産を単独所有するため、共同相続人にはならず、遺産分割を行う必要はありません。

包括受遺者

包括受遺者(ほうかつじゅいしゃ)とは、遺贈(遺言によって財産を贈られること)の対象となる財産を特定せずに、積極財産(プラスの財産)も負債などの消極財産(マイナスの財産)も包括的に承継する遺贈(包括遺贈)を受けた人のことです。

包括遺贈は、次の3つに分けることができます。

  • 全部包括遺贈
  • 割合的包括遺贈
  • 特定財産を除いた財産についての包括遺贈

全部包括遺贈とは、消極財産も含めて全財産を包括して遺贈することです。

例えば、「全財産を○○に遺贈する。」というような遺贈がこれに当たります。

この場合、すべての財産を一人の受遺者が単独で取得するため、遺産分割を行う必要はありません。

割合的包括遺贈とは、消極財産も含めて全財産の割合的な一部を包括して遺贈することです。

例えば、「全財産の3分の2を○○に、3分の1を××に遺贈する。」というような遺贈がこれに当たります。

この場合、割合的な一部を受け取った受遺者の中で遺産分割を行うことになります。

特定財産を除いた財産についての包括遺贈とは、特定遺贈(対象となる財産を特定して行われる遺贈)と包括遺贈の併存型の遺贈のうち包括遺贈の部分の遺贈のことです。

例えば、「○○県○○市○○町〇丁目〇番〇号の土地をAに、その余の財産のすべてをBに遺贈する。」というような遺贈におけるBに対する遺贈がこれに当たります。

この場合、特定財産を除いた財産の割合的な一部を受け取った受遺者が一人の場合は遺産分割を行う必要はありませんが、そのような受遺者が複数存在する場合(例えば、上記の例でAの取得する土地以外の財産について、BとCがそれぞれ2分の1ずつの割合で遺贈を受けた場合)には遺産分割協議を行うことになります。

相続分譲受人

相続分譲受人(そうぞくぶん ゆずりうけにん 又は そうぞくぶん じょうじゅにん)とは、相続人から、その相続分を譲り受けた人のことです。

相続人は、遺産分割を行う前に、遺産全体に対する共有持分である相続分を、第三者に有償又は無償で譲渡することができます(たとえば、相続人に借金等の負債がある場合に、相続人が、これの弁済として、自分の相続分(相続する権利)を債権者に譲渡する場合など。)。

遺産分割が必要かどうかの判断

遺産分割が必要か、もしくは不要かについての判断の仕方について説明します。

遺産分割が必要な場合

遺産分割が必要な場合は、相続人等の遺産を受け取る権利がある人が複数いて、かつ、遺言によってすべての財産の処分(受取先)が決まっていない場合です。

遺産分割が不要な場合

遺産分割が不要な場合は、遺産を受け取る権利がある人が1人以下しかいないか、または、遺産を受け取る権利のある人が複数いたとしても遺言によってすべての財産の処分(受取先)が決まっている場合です。

遺産分割に期限はある?

遺産分割には期限はありませんが、遺産分割をしないと次のようなデメリットがあります。

  • 知らない人と相続財産が共有されている状態が続き、遺産分割がより困難になるおそれがある
  • 預貯金や株式の名義変更が行えず、遺産を利用できない場合がある
  • 時効にかかるおそれがある
  • 相続税の申告・納付が二度手間になるおそれがある

以下、それぞれについて説明します。

知らない人と相続財産が共有される状態が続き、遺産分割がより困難になるおそれがある

遺産分割が済むまでは、遺産は共同相続人等の間で共有されている状態です。

共同相続人は、自分の共有持分を譲渡することができるので、その場合は、他の共同相続人は知らない人(共有持分の譲受人)と相続財産を共有することになります。

また、遺産分割が済む前に共同相続人等が亡くなって新たな相続が開始された場合は、亡くなった共同相続人の相続人(二次相続の相続人)も一次相続の遺産の共有者となり、ねずみ算式に共有者が増える可能性があります。

このように、面識のない人同士が遺産の共有者となったり、共有者が増えたりした場合は、遺産分割協議をまとめる難易度が高まり、遺産分割が困難になるおそれがあります。

預貯金や株式の名義変更が行えず、遺産を利用できない場合がある

被相続人(亡くなって財産を残す人)の預貯金口座は、名義変更か解約手続がとられるまでの間、凍結されます。

被相続人の預貯金口座の名義変更や解約は、遺産分割協議書及び共同相続人等全員の印鑑登録証明書がなければ、金融機関が手続を行ってくれません。

つまり、遺産分割が済むまでは、預貯金口座は凍結されたままで利用することはできないのです。

また、株式については、遺産分割を行って、名義書換をするまでは、配当を受け取ったり、議決権を行使したり、売却することが困難となります。

時効にかかるおそれがある

預貯金口座の払戻請求権は、銀行の場合は5年で、信用金庫や信用組合の場合は10年で消滅時効にかかってしまいます。

この期間までに遺産分割をしないと、金融機関から時効を援用されてしまい、払戻し請求ができなくなってしまうおそれがあります。

相続税の申告・納付が二度手間になるおそれがある

相続税の申告・納付は相続開始を知った日の翌日から10か月以内に行わなければなりません。

遺産分割協議が相続税の申告・納付期限までに終わらない場合は、法定相続分に応じた割合で相続したと仮定して相続税の申告・納付を行わなければなりません。

その後、法定相続分と異なる割合で遺産分割が行われた場合は、既に申告・納付した相続税額と差が生じてしまいます。

法定相続分よりも多くの割合で遺産分割を受けた場合は、修正申告をして追加納税を行わなければなりません。

法定相続分よりも少ない割合で遺産分割を受けた場合は、更正の請求をすることによって、払い過ぎた額を取り戻すことができます。

このように、相続税の申告・納付期限までに遺産分割協議が成立しない場合は、一度相続税の申告・納付を行った後に、再度、修正申告や更正の請求を行うことが必要となり、二度手間となってしまいます。

遺産分割の流れ

遺産分割の流れは次のようになります。

  • 相続人の調査
  • 遺言書の確認
  • 相続財産の調査
  • 相続放棄の検討
  • 遺産分割協議
  • 遺産分割調停
  • 遺産分割審判

以下、それぞれについて説明します。

相続人の調査

まず、誰が相続人なのかを明確にするために、相続人の調査を行います。

調査は、被相続人の出生から死亡までの連続したすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本を収集して行います。

戸籍を収集することによって、被相続人に婚外子(結婚していない男女の間に生まれた子)がいるかどうか等が明らかになり、相続人を確定することができます。

被相続人に子供(子供がすでに死亡している場合の孫なども含みます)がおらず、両親もすでに死亡しているという場合などには、両親の出生から死亡までの戸籍や、さらにその祖父母の戸籍、被相続人の兄弟の戸籍などが必要となることもあります。

遺言書の確認

遺言書の確認

遺言書の有無や内容を確認します。遺言によって、すべての相続財産の処分(受取先)が指定されている場合は、遺産分割の必要はありません。

もっとも、そのような遺言がある場合であっても、相続人と受遺者、遺言執行者の全員の同意がある場合は、遺言の指定と異なる遺産分割を行うことが可能です。

遺言があっても、すべての財産の処分が指定されていない場合は、指定されていない財産については分割が必要ですし、割合的包括遺贈の場合も遺産分割が必要です。

相続財産の調査

次に、遺産分割の対象となる財産を明確にするための調査を行います。積極財産(プラスの財産)だけでなく、負債等の消極財産(マイナスの財産)についても調査します。

現金や預貯金のような財産の価額が明確なものだけでなく、不動産や美術品・骨董品のように、いくらの価値があるのか、評価が必要な財産もあります。

納税のための財産評価の方法は法令で定められていますが、遺産分割のための財産評価の方法には決まりはありません。

当事者同士が納得をすれば、どのように評価をしても構いません。

通常は市場価格(その財産を売った時にいくらで売ることのできる価格)で評価します。

後述する換価分割を行った場合に、市場価格で評価していないと、計算が合わなくなってしまいます。

相続放棄の検討

相続財産の調査によって、積極財産よりも消極財産の方が多いことが判明することがあります。

そのような場合に相続すると損なので、相続を放棄することができるようになっています。相続を放棄する場合は、遺産分割協議に参加することはできません。

遺産分割協議

協議の形式

遺産分割は、共同相続人や受遺者等の当事者の間で協議して、内容を決めます。

全員が一堂に会して協議することができれば手っ取り早いですが、最終的に相続人全員で合意ができるのであれば、必ずしも全員出席で協議を行わなくても構いません。

文書や電話、メールなどで協議を行っても構いません。また、弁護士等の代理人を立てることも可能です。

寄与分と特別受益

遺産分割協議時に寄与分や特別受益についての主張があることがあります。

寄与分とは、被相続人の生前に、相続人が、被相続人の財産の増加や維持に寄与した程度のことです。

寄与分がある相続人は、他の相続人に比べて、その分多くの財産を相続することができます。

特別受益とは、続人が複数いる場合に、一部の相続人が、被相続人からの遺贈や贈与などによって特別に受けた利益のことです。

特別受益を受けた相続人がいる場合は、遺産分割における当該相続人の取得分を、特別受益を受けた価額に応じて減らす必要があるので、特別受益の価額を相続財産の価額に加えて相続分を算定し、その相続分から特別受益の価額を控除して特別受益者の相続分が算定されます。

分割の方法

遺産分割の方法

具体的な遺産分割の手順について、説明します。

遺言書がない場合は、各相続人が法定相続分に応じて財産を取得します(ただし、相続人間で合意ができる場合は、必ずしも法定相続分どおりに分割しなくても問題ありません。)。

財産の分割方法には(分割しない方法も含めて)次の4つがあります。

  • 現物分割
  • 換価分割
  • 代償分割
  • 共有

以下、それぞれについて説明します。

現物分割

現物分割とは、遺産を現物のまま分割する方法のことです。

例えば、相続人がAとBの2人で、相続分は2分の1ずつであったとします。

遺産は、現金1,000万円と、土地1筆(時価1,000万円)、自動車1台(時価100万円)であるとします。

このような場合に、土地を半分に分筆(1筆の土地を分けること。土地は1筆、2筆と数えます。)し、次のように遺産分割した場合、このような分割のことを現物分割といいます。

Aが相続する財産
現金450万円、分筆後の土地(時価500万円)、自動車(時価100万円)
Bが相続する財産
現金550万円、分筆後の土地(時価500万円)

また、分筆しなくても、次のような分け方も現物分割に含まれます

Aが相続する財産
現金50万円、土地(時価1,000万円)
Bが相続する財産
現金950万円、自動車(時価100万円)
換価分割

換価分割とは、遺産を売って、お金に換えて、そのお金を分ける分割方法のことです。

例えば、先ほどの例でいうと、土地と自動車とをそれぞれ1,000万円と100万円で売ると、元からあった現金1,000万円と併せて、現金2,100万円になります。

これをAとBとで1,050万円ずつ相続します。これが換価分割です。

土地だけを換価分割して、自動車は現物分割するということも可能です。

代償分割

代償分割とは、現物分割によると、法定相続分どおりにうまく分割できない場合等に、法定相続分よりも多く相続する人から、少なく相続するに人に対して、法定相続分との差額分の代償する分割方式のことです。

例えば先ほどの例で、次のように現物分割を行ったとします。

Aが相続する財産(合計1,100万円)
土地(時価1,000万円)、自動車(時価100万円)
Bが相続する財産
現金1,000万円

法定相続分どおりであれば、1,050万円ずつであるため、このままでは、Aが法定相続分よりも50万円多く相続し、Bが法定相続分よりも50万円少なく相続することになります。

そこで、Aの自己資産からBに対して50万円を代償することで、バランスをとるのが代償分割です。

共有

共有とは、財産を分割せずに、共同で所有することです。

例えば先ほどの例でいうと、土地と自動車は共有して共同で使用し、現金のみを現物分割するというような方法が考えられます。

不動産や自動車は共有名義で登記することも可能です。

遺産分割協議書の作成

当事者全員が同意できる内容が決まったら、遺産分割協議書を作成します。

遺産分割協議書は、名義変更等の相続手続で必要になる大切な書類です。遺産分割協議書はご自身で作成することも可能ですが、専門家に相談しても良いでしょう。

遺産分割調停

遺産分割協議で議論が平行線を辿る等して、成立する見込みない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます。

調停では調停委員会が間に入り、争点を整理する等して、合意形成を促します。

遺産分割審判

遺産分割調停でも合意に至らない場合は、自動的に審判手続に移行します。

審判では、裁判官がどのように分割するかを諸般の事情を踏まえて決定します。

相続人に未成年者や認知症の人がいる場合

未成年者や意思能力のない人(例えば重度の認知症の人など)は、単独で遺産分割協議に参加することはできません。

未成年者の場合は、親権者が代理人となりますが、未成年者と親権者の両者がともに相続人である場合は、未成年者と親権者の間で利害の対立が生じるため、代理人となることはできません。

その場合は、家庭裁判所に申し立てて特別代理人を選任してもらいます。

選任された特別代理人が未成年者の代理人として遺産分協議に参加します。

また、相続人が認知症などの場合は、その程度にもよりますが、遺産分協議に参加して適切な判断を下すことができない場合(意思能力がない場合)は、家庭裁判所に申し立てて、成年後見人を選任してもらわなければなりません。

選任された成年後見人が代理人として遺産分割協議に参加します。

揉めず損せず協議をまとめるためのポイント

自分に都合のよい主張ばかりをしていては揉め事に発展してしまいますし、相手に合わせてばかりでは損してしまいます。

揉めず損せずスムーズに協議をまとめるポイントは次の通りです。

  •  正しい法的知識を身に付ける
  •  相手の気持ちを考えて冷静に話をする

まず、正しい法的知識を知らなければ、無理な主張をしているのが自分なのか相手なのかが分かりません。

正しい法的な知識を身に付けて、いたずらに揉めるような無理な主張をしないようにしましょう。

相手が法的に通らないような主張をしてきたときは、法的な根拠に基づいて論理的に主張を退けられるようにしましょう。

また、いかに正しいことを言っていても、言い方の良くないと、相手の感情を逆なでしてしまい、理解を得ることはできません。

相手の気持ちを考えて言い方に気を付けましょう。過度に感情的な言い方は厳禁です。

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この記事を書いた人

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