遺産分割協議・調停に強い弁護士の選び方と費用・報酬の相場

仲の良かった家族でも遺産分割を巡って揉めてしまうケースはよくありますが、そのような場合でも、弁護士に相談したり間に入ってもらうことで、すんなりと話し合いがまとまることが多いです。
この記事では、弁護士に遺産分割協議の代理を依頼するメリットや依頼すべきケース、それから、遺産分割に強い弁護士の選び方や弁護士費用(報酬)の相場について、わかりやすく丁寧に説明します。
是非、参考にしてください。
[ご注意]
記事は、執筆日時点における法令等に基づき解説されています。
執筆後に法令の改正等があった場合、記事の内容が古くなってしまう場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをお勧めします。
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目次
弁護士に遺産分割協議の代理を依頼するメリット
弁護士に遺産分割協議の代理を依頼すると、次のようなメリットがあります。
- 協議を有利に進めることができる
- 感情的な対立を避けることができる
- 遺産の全容を把握できる
- 遺産分割協議書の作成や相続手続きも併せて依頼できる
これらの点について、以下、それぞれ説明します。
協議を有利に進めることができる
遺産分割協議の代理を弁護士に依頼することで、協議を有利に進めることができ、自分が希望する内容で協議を成立させられる可能性が高まります。
弁護士は法律と交渉事のプロフェッショナルです。
弁護士が代理人になることで、相手方が無茶な主張をしている場合は、冷静に法的根拠を基にこれを退けることができ、依頼者の希望する内容で協議を成立させられるように、例えば、次のような観点から交渉に当たります。
- 相手方が法定相続分以上の財産を取得しようとしていないか。
- 各財産の評価は適切か。依頼者の有利になるように(依頼者が取得予定の財産がなるべく低くなり、相手方の取得予定の財産がなるべく高くなるように)評価する余地はないか(詳しくは「遺産分割における不動産評価方法を弁護士がわかりやすく説明」参照)。
- 現物分割以外の分割方法(換価分割・代償分割)によって依頼者の希望を実現することはできないか。
- 依頼者の寄与分を主張することはできないか。相手方が寄与分を主張している場合、これを退けることはできないか。
- 相手方に特別受益があることを主張することはできないか。相手方が依頼者に特別受益があることを主張している場合、これを退けることはできないか。
このような観点から法定根拠を示して説得力のある主張を行うことは一般の方には難しいものです。
感情的な対立を避けることができる
遺産分割協議で揉める背景に感情的な対立があるケースがあります。
弁護士に依頼すると、余計に相手方を刺激するのではないかと心配される方もいますが、経験豊富な弁護士は、相手方の感情に配慮しつつ、冷静に法的根拠に基づき主張を展開することができるため、感情的な対立を和らげ、協議の成立に導くことが可能です。
もっとも、そのためには、遺産分割の経験豊富な弁護士に依頼した方がよいですし、依頼前の面談時に弁護士の人となりについても見定める必要があるでしょう。
遺産の全容を把握できる
弁護士は、相続人本人では情報を収集することが難しい場合であっても、弁護士会を通じて、金融機関や行政機関等に対して、亡くなった人の財産についての情報開示を求めることができる場合があります。
これを「弁護士会照会」又は「23条照会」といいますが、この照会等による遺産の調査によって、一部の相続人が隠していた遺産や誰も気づいていなかった遺産の存在が明らかになり、遺産の全容を把握することができる場合があります。
なお、弁護士会照会によって情報開示を受けられる財産には次のようなものがあります。
- 預貯金
- 有価証券
- 自動車
不動産については、弁護士会照会ではなく、名寄帳を用いて調査します。
名寄帳は、弁護士でなくても閲覧・取得することができますが、弁護士にまとめて依頼した方が間違いがないでしょう。
遺産分割協議書の作成や相続手続きも併せて依頼できる
遺産分割協議が成立したら、その内容を文書にします。
この文書を遺産分割協議書といいます。
弁護士に遺産分割協議の代理を依頼した場合は、通常、遺産分割協議書の作成も併せて依頼することができます。
また、名義変更等の相続手続きも弁護士や提携する司法書士にワンストップで依頼することができ、スムーズに進めることができます。
弁護士に遺産分割協議の代理を依頼するデメリット
弁護士に遺産分割協議の代理を依頼するデメリットは、弁護士に支払う費用(報酬)がかかることです。
この点については、次の項目で詳しく説明します。
弁護士に遺産分割協議の代理を依頼した場合の費用(報酬)
弁護士費用について説明します。
誰が払う?相続人全員で分担する?
そもそも、弁護士費用は誰が払うのでしょうか?
それは、「弁護士に依頼した人」です。
当事者間に利害の対立がある場合、弁護士は、依頼者の利益になるように主張を組み立て、相手方と交渉します。
なお、弁護士は、裁判所のような中立な機関ではないので、相続人全員で一人の弁護士に依頼して妥当な遺産分割方法を決めてもらうというような利用方法は、本来、予定されている弁護士の利用方法ではありません。
このような利用方法であれば、家庭裁判所の遺産分割調停や遺産分割審判の手続きを利用する方が一般的でしょう(遺産分割調停については「遺産分割調停前に知っておくべき調停を有利に進める方法と調停の流れ」参照)。
弁護士費用の内訳と相場
遺産分割の弁護士費用には、主に、着手金と成功報酬に分けられます。
着手金は、弁護士に依頼した段階で支払うもので、仮に遺産分割協議で期待する結果が得られなかったとしても、返金はされません。
報酬金は、遺産分割協議や遺産分割調停が成立したときや、遺産分割審判が下ったときに、その段階で支払うものです。
通常、報酬金は、取得することになった遺産の価額に対する割合で設定されます。
弁護士費用の相場については、4つの法律事務所の費用を紹介しますので、そこから相場観を掴んでいただければ幸いです。
なお、紹介する金額は、記事執筆時点のものであり、変更される可能性があります。
弁護士法人ALG & Associates
弁護士法人ALG & Associatesの遺産分割協議の弁護士費用は次のようになっています。
- 着手金:30万円~
- 報酬金:取得した遺産額の10%(ただし、最低30万円)
- 諸経費:2万円
弁護士法人ALG & Associatesは、以下の各都市に事務所があります。
所在地 | 対応地域 | 電話番号(通話無料) | メールフォーム |
---|---|---|---|
東京 | 全国 | 0120-435-029 | こちら |
宇都宮 | 栃木県 | 0120-464-026 | こちら |
さいたま | 埼玉県 | 0120-485-003 | こちら |
千葉 | 千葉県 | 0120-505-168 | こちら |
横浜 | 神奈川県 | 0120-618-029 | こちら |
名古屋 | 岐阜県、静岡県、愛知県、三重県 | 0120-527-045 | こちら |
大阪 | 滋賀県、京都府、大阪府、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、徳島県、香川県 | 0120-527-047 | こちら |
神戸 | 兵庫県 | 0120-529-007 | こちら |
姫路 | 兵庫県 | 0120-536-035 | こちら |
福岡 | 山口県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県 | 0120-587-034 | こちら |
30分の初回面談が無料となっているので、気軽に相談してみるとよいでしょう。なお、無料相談は面談のみで、電話での相談は有料となっています。
また、各事務所の詳細は、上の表の所在地名のリンク先ページにて確認できます。
弁護士法人東京新宿法律事務所
弁護士法人東京新宿法律事務所の遺産分割協議の弁護士費用は次のようになっています。
- 着手金:20万円
- 報酬金:20万円+取得した遺産額の10%
弁護士法人東京新宿法律事務所は、東京都新宿区にある法律事務所で、対応地域は、東京都、埼玉県、千葉県及び神奈川県です。
初回相談料は無料で、電話での相談にも応じているため、気軽に相談してみるとよいでしょう。
電話番号は、0120-175-043(通話無料)で、メールでのご連絡は、こちらのメールフォームから可能です。
事務所の詳細については、こちらのページにてご確認ください。
ブランシュ法律事務所
ブランシュ法律事務所の遺産分割協議の弁護士費用は、次のようになっています。
着手金について、事件の経済的な利益の額が
- 300万円以下の場合・・・8%(ただし、最低20万円)
- 300万円を超え3000万円以下の場合・・・5%+9万円
- 3000万円を超え3億円以下の場合・・・3%+69万円
- 3億円を超える場合・・・2%+369万円
報酬金について、事件の経済的な利益の額が
- 300万円以下の場合・・・16%
- 300万円を超え3000万円以下の場合・・・10%+18万円
- 3000万円を超え3億円以下の場合・・・6%+138万円
- 3億円を超える場合・・・4%+738万円
なお、こちらの料金体系は、遺産分割について特別に定められたものではなく、汎用的なもののようです。
遺産分割の場合、「事件の経済的な利益の額」は取得した(又は取得予定の)遺産額を指すものと思われます。
ブランシュ法律事務所は大阪の法律事務所ですが、全国対応しています。
初回相談料は無料となっているので、気軽に相談してみるとよいでしょう。電話相談にも応じているようです。
電話番号は、0120-682-043(通話無料)で、メールでのご連絡は、こちらのメールフォームから可能です。
事務所の詳細については、こちらのページにてご確認ください。
筒井法律事務所
筒井法律事務所の遺産分割協議の弁護士費用は次のようになっています。
着手金 | 30~50万円が標準(遺産の額、難易度等による) |
---|---|
報酬金 | (1)経済的利益3,000万円以下の場合 10万円+経済的利益の4%が標準 (2)経済的利益3,000万円を超え1億円以下の場合 50万円+経済的利益の2.25%が標準 (3)経済的利益1億円を超える場合 100万円+経済的利益の2%が標準 |
筒井法律事務所は、名古屋の法律事務所で、対応地域は愛知県内となっています。
初回相談料は無料となっているので、気軽に相談してみるとよいでしょう。
電話番号は、0120-673-032(通話無料)で、メールでのご連絡は、こちらのメールフォームから可能です。
事務所の詳細については、こちらのページにてご確認ください。
札幌パシフィック法律事務所
札幌パシフィック法律事務所の遺産分割協議の弁護士費用は次のようになっています。
着手金 | 20万円~ |
---|---|
報酬金 | 獲得した遺産の3~16% |
実費 | 1万円~ |
札幌パシフィック法律事務所は、札幌市の法律事務所で、対応地域は北海道内となっています。
初回相談料は無料となっており、電話相談にも対応しているようなので、気軽に相談してみるとよいでしょう。
電話番号は、0120-647-003(通話無料)で、メールでのご連絡は、こちらのメールフォームから可能です。
事務所の詳細については、こちらのページにてご確認ください。
払えない場合の対処法
弁護士費用は、前述のとおり、着手金と成功報酬に分かれていることが多いです。
成功報酬は、後払いなので、相続して遺産をもらい受けてから、もらい受けた遺産を原資に支払うことができます。
着手金は前払いなので、手持ちがないと支払うことができません。
しかし、事情を伝えれば、着手金の分割払いや後払いに応じてくれる弁護士はいるので、初回の相談時に併せて相談してみるとよいでしょう。
また、収入額や資産額等の一定の要件を満たす場合は、日本司法支援センター(法テラス)の民事法律扶助を受けられる可能性があります。
民事法律扶助を受けると、費用面で次のようなメリットがあります。
- 無料法律相談を3回まで受けられる
- 立て替え払いを利用できる
- 弁護士費用を通常よりも安く抑えられる可能性が高い
ただし、民事法律扶助を受ける場合は、自分で自由に弁護士を選ぶことはできず、法テラスに所属している弁護士か、法テラスと契約している弁護士に依頼しなければなりません。
また、審査に、通常、2週間ほどかかるため、急いでいる場合はおすすめできません。
このようなデメリットがあることも念頭に民事法律扶助を受けるかどうかを検討するとよいでしょう。
扶助を受けたい場合は、法テラスに詳細を確認するとよいでしょう。
法テラスサポートダイヤル:0570-078374
弁護士に遺産分割協議の代理を依頼すべきケース
次のようなケースでは、弁護士への依頼を検討することをおすすめします。
- 双方の主張に食い違いがあり、協議が難航している
- 他の相続人が無茶な要求をしてくる
- 他の相続人が威圧的で意見が言いにくい
- 感情のもつれによって協議が進まない
- 相続人の中に協議に応じない人や連絡のつかない人がいる
- 遺産を管理している人が遺産の内容を明らかにしない、遺産の一部を隠している気がする
- 財産目録がなく遺産の全容が把握できない
- 遺産分割協議書の作成や相続手続きを併せて依頼したい
このようなケースでは、一度、弁護士に相談してみることをおすすめします。
無料相談に応じている弁護士も多くいます。
『遺産相続ガイド』のオススメ【弁護士】はコチラ >>
遺産分割に強い弁護士の選び方
遺産分割に強い弁護士の選び方について説明します。
ランキング
弁護士を探す際に「相続 弁護士 ランキング」といったキーワードで探す人が多いようです。
しかし、「相続弁護士ランキング」なるランキングは、公的なものはありませんし、民間の格付け機関によるものも存在しないようです。
企業法務の分野では、日本経済新聞社が毎年、企業や弁護士にアンケート調査をおこなって集計しているランキングがありますが、相続分野では、そのようなランキング付けは行われていないようです。
また、事務所の所属弁護士数によるランキングは存在していますが、所属弁護士数が多い事務所が必ずしも遺産分割案件に強いというわけではありませんので、遺産分割の弁護士を、所属弁護士数ランキングを元に選ぶというのは得策ではないでしょう。
口コミ
レストラン等を選ぶ際はウェブ上で口コミ(クチコミ)を確認してお店を選ぶということをしている人も多く、レストラン等の口コミを投稿し閲覧できるサイトも多くあります。
しかし、弁護士については、そのような口コミサイトは現状ほとんどありません。
現状、弁護士の口コミを掲載しているほぼ唯一のサイトは、Googleマップです。
Googleマップでは拠点ごとに口コミが掲載される仕組みになっています。
したがって、同じ事務所でも東京のオフィスと大阪オフィスでは異なる口コミが掲載されています。
このような口コミを閲覧できる機能は、一見、弁護士選びに有用に思われますが、注意点もあります。
一つ目の注意点としては、口コミの掲載数があまり多くないということです。
まだ口コミが一つも掲載されていない事務所も多いです。
二つ目の注意点としては、口コミは誰でも投稿でき、その口コミが事実に基づくものか検証されていないという点です。
Googleマップの口コミは、Googleアカウントさえあれば、誰でも投稿することができます。
その口コミが事実に基づく正当なものかどうかは分からないので、あくまで参考程度に留めておくことが賢明でしょう。
おすすめの選び方
最もおすすめの選び方は、相続問題に精通した弁護士を探して問い合わせることです。
弁護士は、法律全般の専門家であり、基本的には、どの弁護士でも対応することができます。
しかし、医者に専門分野があるように、弁護士にも得意分野をもっている人がいます。
相続問題に特化して経験を積み、あらゆる相続問題に精通している弁護士がいるのです。
やはり、相続問題に精通した弁護士に依頼した方が、より良い結果が得られる可能性が高いでしょう。
当サイトにも全国の弁護士が掲載されています。弁護士検索ページには以下のリンクからアクセスできます。
『遺産相続ガイド』のオススメ【弁護士】はコチラ >>
事務所名をクリックすると、詳細な情報を確認することができます。
弁護士を選ぶ際は、依頼したい問題に精通しているかどうか以外に、事務所の立地、自分(依頼者)との相性(相談しやすさ)、信頼できるか等の指標も重要です。
依頼内容によっては、何度も事務所を訪問することになりますので、あまり遠方だと交通費や移動時間が嵩んでしまいます。
遠方の弁護士に依頼してはいけないわけではありませんが、遠方の弁護士に依頼する場合は、遠方であることのデメリット以上のメリットがあるかどうかを判断した方がよいでしょう。
また、弁護士との相性も重要です。
弁護士との間に心理的な垣根を感じてしまう場合、訊きたいのに訊けないとか、伝えた方がよいかもしれないが伝えにくいとかということが生じてしまいます。
弁護士のコミュニケーションがうまくいかないと、ストレスになってしまいますし、よりよい結果を得られない可能性が生じてしまいます。
そして、いくら気さくで話しやすくても、信頼できない弁護士は避けた方がよいでしょう。
例えば、連絡するといったのに連絡がないとか、費用についてしっかりと説明してくれないというような弁護士は避けるべきです。
初回の面談時に、気になる点は遠慮なく質問し、疑念が残る場合は、依頼せずに、他の弁護士にも相談してみた方がよいでしょう。
面談前に準備は必要?
面談前に事前準備が必要かどうかは、相談内容によります。
まずは、電話やメール等で弁護士に問い合わせましょう。
問い合わせる際には事前準備は不要です。
弁護士や事務員が、必要な情報を質問して引き出してくれます。
面談時に用意した方がよい資料等がある場合は、弁護士や事務員から指示があるでしょうから、あれこれと気を揉むよりも、まずは問い合わせた方がよいでしょう。
まとめ
以上、遺産分割協議・調停に強い弁護士の選び方と費用・報酬の相場について説明しました。
無料相談に応じている弁護士も多いので、次のようなケースでは、一度、相談してみることをお勧めします。
- 双方の主張に食い違いがあり、協議が難航している
- 他の相続人が無茶な要求をしてくる
- 他の相続人が威圧的で意見が言いにくい
- 感情のもつれによって協議が進まない
- 相続人の中に協議に応じない人や連絡のつかない人がいる
- 遺産を管理している人が遺産の内容を明らかにしない、遺産の一部を隠している気がする
- 財産目録がなく遺産の全容が把握できない
- 遺産分割協議書の作成や相続手続きを併せて依頼したい