弁護士監修記事

遺産相続の時効と期限について相続人なら絶対に知っておくべき7のこと

遺産相続に関する権利が侵害されているときに放置していると、時効が成立して、権利を主張することができなくなってしまうことがあります。

そのようことにならないように、この記事では、遺産相続の時効についてわかりやすく説明します。

是非、参考にしてください。

[ご注意]
記事は、執筆日時点における法令等に基づき解説されています。
執筆後に法令の改正等があった場合、記事の内容が古くなってしまう場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをお勧めします。

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相続回復請求権の消滅時効

相続回復請求権とは、相続権を有しないのに、相続人と称して遺産を占有・管理し、真正な相続人の相続権を侵害している者がある場合に、真正な相続人からその者に対し、遺産に対する侵害の回復を請求する権利のことです。

「相続権を有しないのに、相続人と称して遺産を占有・管理し、真正な相続人の相続権を侵害している者」のことを、「表見相続人」といいますが(「非相続人」または「僭称相続人」ということもあります)、表見相続人の典型例として次のようなものが挙げられます。

そして、このような、その相続の相続権をまったく有していない人のほか、相続人ではあるものの、相続財産のうち自己の本来の相続持分をこえる部分について、当該部分の表見相続人として当該部分の真正共同相続人の相続権を否定し、その部分もまた自己の相続持分であると主張してこれを占有管理し、真正共同相続人の相続権を侵害している人も含まれます。

相続回復請求権は次のいずれかに該当するときは時効によって消滅します(民法884条)。

  • 相続人またはその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から5年間行使しないとき
  • 相続開始の時から20年を経過したとき

不当利得返還請求権の消滅時効

不当利得返還請求権とは、文字通り、不当な利得の返還を請求する権利のことです。

相続権が侵害された場合は、前述の相続回復請求によることができますが、預貯金払戻請求権等の判例上遺産分割の対象とされている可分債権以外の可分債権については、遺産分割の対象とならない可能性が高いため、依然として相続権の侵害の問題ではなく、不当利得や不法行為の問題となり得ます。

なお、かつては、預貯金払戻請求権も当然に可分され、各相続人に帰属するとされ、遺産分割の対象外とされていたので、一部の相続人が遺産の預貯金を渡してくれない場合は、相続回復請求ではなく、不当利得返還請求や不法行為による損賠賠償請求によらなければなりませんでしたが、現在は、預貯金払戻請求権や定期預金債権及び定期積立金債権等は上述どおり最高裁裁判例により、遺産分割の対象となったため、相続回復請求によることもできるようになりました。

それに伴い相続絡みで不当利得返還請求をするケースは少なくなりましたが、預貯金払戻請求権等裁判例により遺産分割の対象とされた可分債権以外の可分債権の場合は、今でも不当利得返還請求等によることになるので、その時効について、ここで説明します。

不当利得返還請求権は、通常の債権と同じく、10年間で時効によって消滅します。

なお、不当利得返還請求ではなく、不法行為による損害賠償請求というかたち構成することもできますが、不法行為による損害賠償請求権は、不当利得返還請求権よりも時効期間が短く、権利侵害を知った時から3年間で時効によって消滅するので、請求者にとっては、不当利得返還請求による方が時効の面では有利です。

遺留分減殺請求権の消滅時効

遺留分とは、一定の相続人のために、相続に際して、法律上取得することを保障されている相続財産の一定の割合のことで、被相続人(亡くなった人)の贈与や遺贈によっても奪われることのないものです。

そして、遺留分減殺請求とは、遺留分を侵害された人が、贈与や遺贈を受けた人に対し、遺留分侵害の限度で贈与や遺贈された財産の返還を請求することです。

例えば、被相続人が亡くなって妻と子が相続人だったとします。

その場合に、全財産を妻に相続させる旨の遺言が残されていたり全財産が妻に生前贈与されている場合は、子は一切の財産を相続できないことになりかねません。

しかし、まったく相続できなかったり、あまりに少ない割合しか相続できないとかわいそうなので、被相続人と近しい間柄の一定の相続人には、相続財産の一定の割合を取得することが保障されているのです。

その保障を実現するための手段が遺留分減殺請求です。

遺留分減殺請求について詳しくは「遺留分減殺請求で相続財産を取り戻す方法と遺留分減殺請求の排斥方法」をご参照ください。

遺留分減殺請求権は、次のいずれかに該当するときは、時効によって消滅します(民法1042条)。

  • 遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないとき
  • 相続開始の時から10年を経過したとき

遺産の取得時効

共同相続人の一人が、共同相続した遺産を、一定期間を占有し続けた場合、取得時効が成立することがあります。

時効取得とは、一定期間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した人が、その所有権を取得することができるという制度です。

取得時効の成立に必要な期間は、占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、10年間で、悪意であるか、または、過失があったときは20年間です。

法律用語としての善意とは、知らなかったことを意味し、悪意とは、知っていたことを意味します。

つまり、取得時効の成立に必要な期間は、占有の開始の時に、他人の物であること知らず、かつ、知らなかったことについて過失がないときは10年間で、他人の物であることを知っていたか、または、知らなかったが知らなかったことについて過失があったときは20年間です。

さて、時効取得が成立するためには、「所有の意思」が必要ですが、遺産を単独で占有している共同相続人は、他の共同相続人の持分については所有の意思をもっていないので、何年間占有しようとも取得時効が成立する余地はありません。

しかし、外形的客観的にみて独自の所有の意思に基づくものといえる事情がある場合は、所有の意思があったといえると解されていています。

例えば、その物について単独で贈与を受けたと信じているような場合は、外形的客観的にみて独自の所有の意思に基づくものといえる事情があると認められる可能性があると思われます。

ただし、このような特殊事情があることは、時効取得を主張する人が証明しなければならず、そう簡単に認められるものではないと思われます。

また、共同相続による共有者の一人である占有者が亡くなり、二次相続が生じた後にも、二次相続の相続人によって取得時効が完成することがあります。

もっとも、相続による承継は包括承継であり、占有の内容もそのまま承継するので、一次相続の相続人である占有者が、他の共同相続人の持分について所有の意思をもっていなかった(共有だと知っていた)場合は、基本的には、二次相続の相続人である占有者の占有の性質も同様になるため、要件を欠き、取得時効が成立する余地はありません。

しかし、二次相続の相続人である占有者について、外形的客観的にみて独自の所有の意思に基づくものといえる事情がある場合には、取得時効が成立する余地が生じます。

例えば、二次相続の相続人である占有者が、一次相続の相続人である占有者が一次相続の被相続人からその物について単独で贈与を受けたと信じていて、かつ、二次相続の相続人自身がその物について現実の占有をしているような場合は、時効取得が成立する余地があると解されています。

取得時効が成立するかどうかは、実際のケースに応じて個別具体的に判断されるので、ご自身のケースで取得時効成立の可能性があるかどうかは、弁護士に一度相談することをお勧めします。

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債権の消滅時効

被相続人に借金等の債務があった場合は、相続人は被相続人の債務(相続債務)についても相続分の割合に応じて承継します。

相続債務も通常の債務と同様に一定期間が経過すると時効にかかって消滅します。

時効期間は、商行為によって生じた債権は5年間、それ以外の債権は10年間です。

つまり、金融機関からの借金は5年、友人・知人からの借金は10年です。

消滅時効は、権利を行使することができる時から進行します。

つまり、履行期日の定めがある債権についてはその期日が、履行期日の定めがない債権については債権が生じた日(借金をした日等)が起算日になります。

なお、消費者金融等から継続的に借り入れていた場合は、最後に返済した日の次の返済日が起算日になります。

また、相続した債権(被相続人がもっていた債権)も同様に消滅時効にかかるので、ご注意ください。

遺産分割請求権には消滅時効がない

遺産分割請求権には消滅時効の制度はありません。

したがって、共同相続による共有状態のまま長年が経過していても相続人は他の共同相続に対して遺産分割を求めることができまし、遺産分割の調停や審判の申し立てもできます。

また、遺産の範囲を決めるための遺産確認の訴えにも申し立ての期限はありません。

しかし、あまり悠長に構えていると、前述の通り、取得時効や消滅時効が成立し、遺産を手に入れることができるなくなることがあるので、遺産分割はむやみに先延ばしすべきではありません。

遺言や遺産分割の無効確認の調停や訴訟に申立期限はない

無効な遺言や遺産分割によって不利益を被った場合は、調停や訴訟において、無効かどうかを争うことができます。

このような調停や訴訟を申し立てに期限はなく、相続開始から長年が経過した後でも、申し立てることができます。

相続開始の何年前の生前贈与まで特別受益の持ち戻しの対象となるか?

特別受益とは、相続人が複数いる場合に、一部の相続人が、被相続人からの遺贈や贈与によって特別に受けた利益のことです。

特別受益があった場合は、特別受益の価額を相続財産の価額に加えて相続分を算定し、その相続分から特別受益の価額を控除して特別受益者の相続分は算定されます。

このようにして相続分を算定することを特別受益の持戻しといいます。

贈与の期間については、特に定められていません。

被相続人が亡くなる10年前の行われた贈与でも、50年前でも特別受益に当たる可能性があります。

「特別受益に時効はありますか?」という質問を受けることがありますが、特別受益に時効はありません。

なお、特別受益について詳しくは「特別受益とは?特別受益によって相続分を減らされないための全知識」をご参照ください。

相続税の時効

相続税の時効について以下説明します。

なお、相続税の時効についてより詳しく知りたい場合は「相続税の時効を狙おうとする前に絶対に知っておくべき8のこと」をご参照ください。

相続税の時効期間

相続税に限らず税金は一定期間納付せずにいると時効になって納付しなくてもよくなります。

時効が成立するまでの期間は、税の種類によって異なりますが、相続税の場合は、5年または7年です。

偽りその他不正の行為により税額を免れた場合は7年、それ以外の場合は5年です。

簡単に言うと、納付しなければならないことを知っていたのに納付しなかった場合は7年、納付しなければならないことを知らなかった場合は5年です。

ちなみに、相続税法や関連法規のことをよく知らなかっただけでは、納付しなければならないことを知らなかった場合には該当しません。

したがって、5年になるケースはあまり想定できないのですが、相続したことすら認識していなかった場合とか、申告したが額が過少だった場合が考えられます。

相続税の時効の起算日

相続税の時効期間の起算日(期間を数え始める日)は、相続税の法定申告期限の翌日です。

相続税の法定申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。

相続は基本的には死亡によって開始するので、相続税の法定申告期限は、基本的には、相続人が被相続人(亡くなって財産を残す人)の死亡を知った日の翌日から10か月後となります。

したがって、相続人が被相続人の死亡を知った日が2018年1月1日であるとしたら、その翌日である2018年1月2日から10か月以内である2018年11月1日が相続税の法定申告期限となり、この日から5年または7年を経過する日以降は時効によって免税されます。

そして、民法に初日不算入というルールがあって初日は算入しないことになっているので、法定申告期限である2018年11月1日の翌日である2018年11月2日から算入するので、この日が相続税の時効期間の起算日となります。

そして、起算日から5年または7年を経過する日である2023年11月1日または2025年11月1日をもって時効が完成し、この日以降は、この相続税の申告や納付を求められることはなくなります。

相続税の時効の中断

相続税に時効の中断はありません。

まとめ

以上、遺産相続の時効と期限について相続人なら絶対に知っておくべき7のことについて説明しました。

不明な点は、早めに相談することをお勧めします(相続税の時効については税理士にご相談ください)。

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