受贈者とは。意味や受遺者との違い、贈与税が非課税となる要件について
贈与を検討するとき、いろいろな本やサイトを参考にすることもあると思います。
しかし、そこで使われる言葉の意味を知らないと、余計な時間がかかってしまい、考えるのが嫌になってしまうことも…。
この記事では、「受贈者」の意味や受遺者との違い、それから贈与税が非課税となる受贈者の要件について説明します。
是非、参考にしてください。
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[ご注意]
記事は、公開日(2019年4月1日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。
受贈者とは?受贈者の意味
「受贈者」(じゅぞうしゃ)とは、贈与を受けた人のことをいいます。
反対に、贈与をした人のことを「贈与者」(ぞうよしゃ)といいます。
そして、贈与とは、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる契約のことをいいます。
贈与には、贈与契約書等の書面によるものと書面によらないものとがあります。
書面による贈与は、これを撤回することができないのに対し、書面によらない贈与は、既に履行した部分を除き、いつでも撤回することができます。
贈与には、いくつかの特殊な形態があります。
贈与者の死亡によって効力の生ずる贈与のことを「死因贈与」(しいんぞうよ)といいます(死因贈与について詳しくは「死因贈与とは?遺贈との違いは?最適な継承方法を選ぶための全知識」参照)。
受贈者に一定の給付をなすべき義務を負わせる贈与のことを「負担付贈与」(ふたんつきぞうよ)といいます(負担付贈与について詳しくは「負担付贈与を使ってよいケースと他の手段を強くおすすめするケース」参照)。
受遺者とは?受贈者と受遺者の違い
受遺者とは?
「受遺者」(じゅいしゃ)とは、遺贈を受けた人のことをいいます。
反対に、遺贈をした人のことを「遺贈者」(いぞうしゃ)といいます。
遺贈とは、遺言者が死後に財産を人に無償で譲与することをいいます(つまり、遺贈者は遺言者でもあります)。
受贈者と受遺者の違い
受贈者と受遺者は、無償で財産を譲与された点については同じですが、その原因が贈与か遺贈かという違いがあります。
贈与と遺贈には、次のような違いあります。
贈与 | 遺贈 | |
---|---|---|
分類 | 契約 | 単独行為 |
形式 | 自由 | 厳格 |
撤回の可否 |
| 生前はいつでも撤回できる |
年齢 | 未成年者は法定代理人の同意が必要 | 15歳から単独で可能(15歳未満は不可) |
対象となる税 | 贈与税(死因贈与は相続税) | 相続税 |
不動産の登記義務者 | 贈与者(死因贈与は相続人全員) | 遺言執行者(選任されていない場合は相続人全員) |
それぞれの項目について、以下、説明します。
単独行為か契約か、形式が厳格か自由か
遺贈は、相手の同意のいらない単独行為なので、自分の好きな内容で遺言を作成することができます。
ただし、遺言は民法に定められた形式に従って作成しなければならず、形式を守らずに作成されたものは無効になります。
遺贈は、受遺者があらかじめ同意していないものですので、受遺者の側が拒否する場合には、被相続人が死亡し、相続が開始されてから、放棄の手続きをすることになります。
一方、生前贈与と死因贈与は、契約です。
贈与契約は、双方の同意によって成立するため、口頭でも成立します。
もっとも、特に贈与者の死亡後に効力が発生する死因贈与契約は、その契約の存在を証明するためにも、通常は契約書を作成します。
契約書の作成には、遺言のような厳格な形式はありません。
撤回できるか
遺言は、被相続人の最終の意思を尊重する制度であり、相手の同意のいらない単独行為ですから、生きている間、好きなように撤回したり変更したりすることができます。
また、遺言は何通でも作成することができます。
複数ある遺言で内容に矛盾がある遺言が存在する場合には、一番日付の新しい遺言が有効になります。
一方、契約は、どちらかが理由もなく一方的に解除することはできないのが原則です。
贈与契約も書面によって成立した場合には、理由のない解除はできません。
しかし、死因贈与契約は、被相続人の最終の意思を尊重するべきという点において遺贈と共通しているため、その性質に反しない限り、遺贈の規定が準用されることになっています。
そこで、原則として、遺贈と同様に撤回が可能であるとされています。
ただし、負担付贈与契約は、生前に締結されるため、その負担する義務が、贈与者の生前に履行されるものである場合があります。
受贈者が、負担を履行した後では、贈与者は、負担付き死因贈与契約を撤回することが難しくなります(撤回が認められるかどうかは、個別具体的な事案によって変わります)。
年齢の違い
遺言は、15歳から単独ですることができます。
これに対して、贈与契約は契約ですから、未成年者である間は、親権者の同意を得て行うか、親権者が代理して行う必要があります。
税金の違い
相続には相続税が適用されます。
遺贈を受けた人にも相続税が課税されます。
これに対して、生前贈与には、贈与税が適用されます。
贈与税は、相続税よりも基礎控除額が低く、税率も高く設定されています。
もっとも、生前贈与については、各種の優遇制度がありますから、うまく優遇制度を利用すれば、相続税を払うよりももっと有利になる場合もあります(そのために節税対策として利用されます)。
生前贈与を行う場合には、税金の優遇制度をよく調べて利用するようにしましょう。
生前贈与について、詳しくは、「生前贈与で早く財産を引き継ぎ、かつ節税効果を最大限に引き出す方法」をご参照ください。
なお、死因贈与には相続税が適用されます。
ただし、不動産を死因贈与した場合、所有権移転登記の際の登録免許税の税率が遺贈の場合より高くなります。
また、包括遺贈の場合には、不動産取得税がかかりませんが(特定遺贈の場合は課税されます)、死因贈与の場合には、不動産取得税が課税されます。
不動産の所有権移転登記手続きの違い
遺言により遺言執行者が指定されている場合、遺言執行者と受遺者の協力によって所有権移転登記手続きができます。遺言執行者が指定されていない場合、遺言者の相続人全員と受遺者の協力によって所有権移転登記手続きができます。なお、相続開始後には、家庭裁判所に対して相続人が遺言執行者の選任の申立を行うこともできます。
これに対して、贈与契約の場合は、贈与者と受贈者が協力して所有権移転登記手続きをすることが必要になります。
死因贈与の場合、贈与者は死亡していますので、贈与者の地位を相続した相続人全員と受贈者とが協力して所有権移転登記手続きをすることになります。
贈与税の控除や非課税は受贈者ごとか贈与者ごとか
贈与税には、次のような控除や非課税の制度があります。
- 暦年課税の基礎控除
- 相続時精算課税の特別控除
- 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
- 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税
- 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税
それぞれの制度について詳しくは、上のリンクから各制度の個別記事をご参照ください。
これらの制度の適用は、受贈者ごとでしょうか。それとも、贈与者ごとでしょうか。
相続時精算課税の特別控除は、受贈者と贈与者の組み合わせごとに適用を受けることができ、それ以外はすべて受贈者ごとに適用されます。
例えば、暦年課税の基礎控除は、毎年110万円までの贈与財産が贈与税の課税対象から控除されるというものですが、これは、受贈者ごとに適用されます。
つまり、複数人から贈与を受けた場合でも、基礎控除額は年間110万円で変わりません。
一方、相続時精算課税では、受贈者と贈与者の組み合わせごとに2500万円までの特別控除の適用を受けることができます。
例えば、父からの贈与は暦年課税の基礎控除の適用を受け、母からの贈与は相続時精算課税の特別控除の適用を受けるということも可能です(暦年課税と相続時精算課税は選択制なので、同一の受贈者と贈与者の組み合わせで基礎控除と特別控除の両方の適用を受けることはできません。)。
また、一人の受贈者が、父から2500万円、母から2500万円、4人の祖父母からそれぞれ2500万円の計1億5000万円の贈与の特別控除の適用を受けることも可能です。
反対に、一人の贈与者が、長男に2500万円、長女に2500万円、孫に2500万円と、複数の受贈者に対してした贈与について、各受贈者がそれぞれ特別控除の適用を受けることも可能です。
まとめ
以上、受贈者について説明しました。
贈与税や相続税について不明な点は、税理士に相談するとよいでしょう。
税理士は以下のページから探すと探しやすいでしょう。
この記事を書いた人
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