相続した遺産はいつもらえる?お金が振り込まれるまでの期間は?
家族が亡くなると、葬儀費用等のお金が必要になります。
家族が亡くなった悲しみの最中、お金の心配しなければならないのは辛いですよね。
この記事は相続した遺産はいつもらえるのか、お金が振り込まれるまでの期間について説明します。
さらに、お金が振り込まれるまでの流れや、相続手続きの完了前にお金が必要な場合の対処法について説明します。是非、参考にしてください。
[ご注意]
記事は、公開日(2019年11月5日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。
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まずは弁護士にご相談ください
遺産は相続手続が完了したらもらえる
遺産は相続手続きが完了したらもらえます。
相続手続きとは、預貯金の払戻手続や不動産の登記(名義変更)等のように、相続した遺産の取得するための手続きのことです。
相続人が一人しかいない場合
相続人が一人しかいない場合は、死亡届を提出後、速やかに相続手続きをすることができます。
相続人が複数いる場合
遺産分割協議によって誰がどの遺産を取得するかを決めた後、遺産分割協議書を作成し、相続手続きをします。
遺言書がある場合
また遺言書があって、遺言によって遺産の取得者が決まる場合は、遺言書が遺言執行(相続手続き)に必要です。
なお自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合は、遺言執行の前に、遺言書の検認が必要です。
お金が振り込まれるまでの期間
預貯金の相続手続きを申請してからお金が振り込まれるまでの期間は、金融機関によってまちまちです。
金融機関ごとの標準的な所要期間をまとめると概ね下の表のようになります。
金融機関名 | 標準的な所要期間 |
---|---|
ゆうちょ銀行 | 1週間~1か月 |
三菱UFJ銀行 | 2週間前後 |
みずほ銀行 | 1~4週間 |
三井住友銀行 | 10日前後 |
りそな銀行 | 1~2週間 |
横浜銀行 | 2~3週間 |
JAバンク | 即日 |
※2019年11月調べ
上の表の期間はあくまで標準的なものであり、また、申請書類や添付書類に不備がないことを前提としたものです。
書類に不備があった場合や、相続関係が複雑な場合等は、上の表に記載した期間よりも期間を要することもあります。
お金が振り込まれるまでの流れ
預貯金の相続手続きをしてお金が振り込まれるまでの流れは、金融機関によって細かな違いはありますが、概ね次のような流れで手続きをします。
- 死亡届を役所に提出
- 通帳、キャッシュカードを確認
- 引き落としや入金の予定がある場合は、引落口座や入金口座を変更
- 口座名義人が亡くなったことを銀行に連絡
- 必要書類の提出
- 払戻し
以下、それぞれについて説明します。
死亡届を役所に提出
死亡届が提出されていない場合は、相続手続きを開始することができません。
死亡届は、被相続人が亡くなったことが判明したら、7日以内(国外で死亡した場合は、死亡を知った日から3か月以内)に役所に提出しなければなりません。
葬儀を葬儀社に依頼する場合は、通常、葬儀社が提出を代行してくれます。
通帳、キャッシュカードを確認
亡くなった人が、どこの銀行に口座をもっているのか不明な場合は、それを明らかにしなければなりません。通帳やキャッシュカードを探しましょう。
引き落としや入金の予定がある場合は、引落口座や入金口座を変更
銀行に連絡をすると、口座が凍結され出入金が一切できなくなります。
公共料金やクレジットカード等の引落しがある場合は、決済方法の変更や解約などの手続きを並行して進めましょう。
凍結された口座に入金の予定がある場合は、早めに入金元に対して連絡するとよいでしょう。
そうしないと、被相続人が賃貸物件を持っている場合などは、借主が家賃を入金できなくなり困ってしまいます。
口座名義人が亡くなったことを銀行に連絡
通帳またはキャッシュカードを準備して、口座名義人が亡くなったことを銀行に連絡します。
必要書類の提出
必要書類はケースによって異なります。
口座名義人が亡くなったことを銀行に連絡した際に、銀行が必要書類について説明してくれます。
払戻し
提出書類に不備がなければ、数週間ほどで指定した相続人の口座に払戻しがあります。
相続手続きには理解の難しい仕組みや制度がたくさんあります。正しく、そして不利益が出ないようにするために、ぜひ専門家に相談してみることをご検討ください。
相続手続の完了前にお金が必要な場合の対処法
相続手続の完了前にお金が必要な場合の主な対処法として、次の2つが挙げられます。
- 口座凍結前に預貯金を引き出す
- 仮払いを受ける
以下、それぞれについて説明します。
口座凍結前に預貯金を引き出す場合の注意点
葬儀費用等が急ぎで必要な場合で、かつ、キャッシュカードの暗証番号が分かる場合は、口座凍結前にATMで預金を引き出すことも可能です。しかし、これには次の2つの問題があります。
- 他の共同相続人との間でトラブルになることがある
- 相続を単純承認したことになる
以下、それぞれについて説明します。
他の共同相続人との間でトラブルになることがある
被相続人の預金口座は、遺産分割協議の対象ですから、勝手に引き出して使うことは本来許されません。
引き出す前に必ず他の共同相続人の同意を取り付けましょう。
また、引き出したお金を、葬儀費用といった「遺産から支出しても構わないもの」の支払いに充てた場合は、必ず領収書を取っておいて、自分のために使ったものではないことを証明できるようにしておきましょう。
相続を単純承認したことになる
葬儀費用だけのために引き出すのであればよいのですが、引き出したお金を自分のために使ってしまうと、相続を単純承認したことになります。
相続放棄を検討する必要がまったくなければそれで問題ないのですが、後日、プラスの財産よりも負債の方が大きかったことが発覚した場合に、相続放棄をしようと思っても、一度単純承認してしまうと、相続放棄ができません。
仮払いを受ける方法
口座凍結後、遺産分割協議が長期化していて、葬儀費用等を支払いたいのに、預金の払戻しを受けられないということがあります。そのような場合には、仮払い手続きを利用するとよいでしょう。
また、遺産分割協議が成立している場合は、仮払いではなく、本来の相続手続きによるべきですが、預金額が少額であれば、相続手続きよりも簡便な仮払手続を利用することも考えられます。
仮払いを受けるためには、相続人全員の同意書が必要でしたが、相続法の改正によって、2019年7月1日(改正法の施行日)からは、他の相続人の同意がなくても仮払いを受けられるようになりました。
施行日以前に相続が開始されていても、施行日以降であれば、仮払いを受けることができます。
仮払いを受けるための方法には、次の2つがあります。
- 金融機関の窓口で直接仮払いを求める
- 家庭裁判所に仮払いを申し立てる
以下、それぞれについて説明します。
金融機関の窓口で直接仮払いを受ける
銀行等の金融機関の窓口で直接仮払いを求める方法のメリットには、次の2つがあります。
- 裁判所での手続きが不要(手間も日数も費用もかからない)
- 仮払いが必要な理由を求められない
ただし、生活費や葬儀費用の支払い、相続債務の弁済などの資金需要に対応できるよう、遺産分割前にも払戻しが受けられる制度として創設されるので、払戻可能額に一定の上限額が設けられています。
上限額は、基本的には次の式で計算します。
※法定相続分については、関連記事を参考にしてください。
例えば、A銀行に600万円、B銀行に1,200万円の預金があって、仮払いを求める相続人の法定相続分が2分の1の場合は、A銀行からは、600万円×1/3×1/2=100万円なので、100万円以内の仮払いを受けることができ、B銀行からは、1200万円×1/3×1/2=200万円以内の仮払いを受けることが出来るようになります。
ただし、一つの金融機関から仮払いを受けられる金額には、法務省令によっても上限が設けられます。上記算式の上限額が法務省令の上限額を超える場合には、法務省令で定められた上限額である150万円の範囲内で仮払いを受けることができます。
設例のケースでは、A銀行からは100万円、B銀行からは150万円の仮払いを受けることができます。
仮払いを受けた分は、遺産分割の際に相続分から差し引かれます。
家庭裁判所に仮払いを申し立てる
それほど緊急ではないが、遺産分割協議が長引きそうなので、遺産分割前に仮払いを受ける必要がある場合は、家庭裁判所に仮払いを申し立てることによって、預貯金債権の法定相続分の全額の仮払いを受けることも可能です。
この方法は、上限金額の縛りがないというメリットがある反面、次のようなデメリットがあります。
- 家庭裁判所に遺産分割調停(または審判)を申し立てたうえで、さらに仮払いを申し立てなければならない(手間と日数と費用がかかる)
- 仮払いを受ける理由が求められる
遺産分割調停については、以下の記事を参考にしてください。
この記事を書いた人
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