弁護士監修記事

遺言書の効力に関する全知識!遺言が無効になるケースと申し立て方法

遺言書の効力について、分かりやすくまとめました。

是非、参考にしてください。

[ご注意]
記事は、執筆日時点における法令等に基づき解説されています。
執筆後に法令の改正等があった場合、記事の内容が古くなってしまう場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをお勧めします。

記事を読んでも問題が解決しない場合は、弁護士・税理士等の専門家に相談することをお勧めします。
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遺言書に記載すると法的な効力が認められる事項

遺言書に記載することで法的効力が認められるものを、法定遺言事項といいますが、法定遺言事項には、次のようなものがあります。

  • 財産の承継・処分に関する行為
  • 相続人に関する行為
  • 身分に関する行為
  • その他(祭祀承継者の指定、遺言執行者の指定など)

以下、それぞれについて説明します。

財産の承継・処分に関する行為

まずは、財産の承継・処分に関する行為から説明します。

財産の承継・処分に関する行為は、さらに次の4つに分けられます。

  • 相続分の指定
  • 特別受益の持戻免除
  • 分割方法の指定
  • 遺贈

初めて聞く言葉が並んでいて、げんなりさせてしまったかもしれませんが、以下でそれぞれ説明するので、安心してください。

相続分の指定

遺言によって、共同相続人の相続分(相続の割合)を定め、または定めることを第三者に委託することができます。

特別受益の持戻し免除

共同相続人の中に被相続人から遺贈を受けたり、婚姻・養子縁組・生計の資本のため贈与を受けたりしたものがいる場合、死亡時に残っていた財産に贈与を受けた価額を合計したものを相続財産とみなすことになっています。これを特別受益の持戻しといいます。

遺言で、特別受益の持戻しを免除(持戻しをしない)することができます。

特別受益について詳しくは「特別受益とは?特別受益によって相続分を減らされないための全知識」をご参照ください。

分割方法の指定

遺言によって、たとえば、長男に自宅土地建物を、二男に預貯金を取得させるなど、遺産分割の方法を指定することができます。

遺贈

遺言により、財産の全部または一部を人に譲ることができます。たとえば、相続人にあたらない長男の妻に対して、長年の介護に対する感謝の証として、財産の一部を譲る場合などが考えられます。

遺贈について詳しくは「遺贈とは?相続や贈与との違いは?最適な継承方法を選ぶための全知識」をご参照ください。

相続人に関する行為

相続人に関する行為には、相続人の廃除と廃除の取消しがあります。

相続人の廃除

相続人の廃除とは、相続人が、被相続人に対して虐待や重大な侮辱を加えたときなどに、その相続人から相続権をはく奪する制度をいいます。

相続人の廃除は、生前に家庭裁判所に請求するほか、遺言で行うこともできます。

相続人の廃除について詳しくは「相続廃除の意味とは?排除は誤字!推定相続人の廃除で遺留分をなくす」をご参照ください。

相続人の廃除の取消し

被相続人は、でも廃除の取り消しをすることができるとされており、遺言でもすることができます。

身分に関する行為

身分に関する行為には、認知と未成年後見人の指定があります。

認知

認知とは、結婚していない男女の子を主に父親が自分の子であると認めることです。

認知することによって、認知された子は遺産を相続できるようになります。

この認知は遺言によってもすることができます。

未成年後見人の指定

未成年者に対して最後に親権を行う者(父母の一方が死亡している場合や離婚している場合など)は、遺言で未成年後見人を指定することができます。

未成年後見人について詳しくは「未成年後見人とは?親権者がいなくなった場合に知っておくべき全知識」をご参照ください。

その他

祭祀承継者の指定

神仏や祖先を祭るための財産を祭祀財産といい、相続財産とは区別されています。

祭祀承継者は慣習に従って決められますが、遺言で指定があった場合には、その者が祭祀財産を承継します。

遺言執行者の指定

遺言で、遺言執行者を指定し、または指定を第三者に委託することができます。

遺言執行者とは、遺言者の死亡後に遺言の内容を実現させる手続を行う者をいいます。

遺言執行者について詳しくは「遺言執行者とは?どんな場合に必要?遺言執行者の選び方と役割、報酬」をご参照ください。

法定遺言事項以外のことを記載しても無効とはならない

遺言には、法定遺言事項以外のことを書くこともできます。

これを付言事項と言います。

付言事項は法的な効力はありませんが、遺言者が遺言をした真意を知る材料になりますし、付言事項の内容や遺言者と相続人の人間関係次第では、法的効力がなくても相続人が守ることを期待できる場合もあるので、書く意義は十分にあります。

付言事項は、被相続人が自由に内容を決めることができますが、主に次のようなものがあります。

  • 葬儀の方法等についての指定
  • 特定の人の面倒を見るように依頼するもの
  • 特定の人への感謝や遺言をする理由を述べるもの

以下、それぞれについて説明します。

葬儀の方法等についての指定

特定の宗教による葬儀の希望、葬儀をしないあるいはできる限り簡素なものにするなど、葬儀の方法等について指定するものです。

特定の人の面倒を見るように依頼するもの

遺言者が子らに対し、子らが協力して遺言者の妻の面倒を見るようにと依頼したり、子の1人に対して、他の子の面倒を見るようにと依頼したりする場合があります。

特定の人への感謝や遺言をする理由を述べるもの

妻に長年の内助の功を感謝する言葉を述べるなどの場合です。

また、さきほど述べた遺留分との関係で、特定の相続人の貢献が大きいことからその者に全ての財産を譲ることにしたので、他の相続人は遺留分減殺請求をしないようにというように、遺言をした動機など遺言者の真情を述べることもあります。

付言事項の文例

付言事項を書く場合の遺言書の書き方については、以下の文例を参考にしてください。

遺言書

 

遺言者〇〇〇〇は、次の通り遺言する。

第★条

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

第★条

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(付言事項)

病気の私のために最後まで尽くしてくれた○○、〇〇には大変感謝しています。

また、長男の嫁である○○さんには、私の介護をお願いさせることになり大変な負担と苦労をおかけしました。

その苦労に報いるためにも、先に記載したとおりに遺産を遺贈したいと思います。

他の兄弟にも言い分はあるかもしれませんが、この遺言内容で兄弟同士で争うことなく、どうか最後まで仲良く暮らしてくれることを切に願います。

私が死んだ後の葬儀は、葬式や告別式などは行わずに直葬で済ませて下さい。

身内だけで葬儀をすることは私の強い希望です。

こうした葬儀の方法で家族皆が揉めることがないようにお願いします。

私は、皆が笑顔で私を送ってくれるのを切に望んでおります。

今まで本当にありがとう。

遺言書の効力が無くなるケース

遺言書の内容通りに財産が承継されないケースとして次のようなものが挙げられます。

  • 遺言自体が無効となるケース
  • 遺言内容の一部が無効となるケース
  • 遺言内容が遺留分を侵害しており減殺を請求されるケース
  • 相続人や受遺者の間の協議によって遺言内容とは異なる遺産分割がなされるケース

以下、それぞれについて説明します。

遺言自体が無効となるケース

普通方式の遺言には次の3つの種類があります。

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言

自筆証書遺言とは、自筆(自書)で書かれた遺言のことです(「自筆証書遺言が無効となるケースとケース別の正しい書き方を完全解説」参照)。

公正証書遺言とは、公証役場で公証人に遺言書を作成してもらってする遺言のことです(「公正証書遺言で最も確実かつ誰でも簡単に遺言をする方法を丁寧に解説」参照)。

秘密証書遺言とは、遺言の内容を誰にも明かさずに、かつ、遺言の存在が公証人によって証明される形式の遺言のことです(「秘密証書遺言を利用すべき場合と雛形から秘密証書遺言を作成する方法」参照)。

それぞれで無効になるケースが異なるため、遺言の種類ごとに説明します。

遺言の種類にかかわらず無効となるケース

遺言の種類にかかわらず無効となるのは、次のように遺言者に遺言能力がないケースです。

  • 遺言者が15歳未満
  • 遺言者が認知症等で意思能力がない

以下、それぞれについて説明します。

遺言者が15歳未満

遺言をすることができるのは、15歳以上の人です。

15歳未満の人がした遺言は、親権者等の法定代理人が同意の有無にかかわらず無効です。

15歳以上であれば、未成年であっても、法定代理人の同意なく遺言をすることができます。

遺言者が認知症等で意思能力がない

認知症等で意思能力(遺言能力)がない場合も遺言自体が無効になります。

意思能力とは、自己の行為の結果を判断することのできる能力であり、意思能力があるといえるには、一般的には7~10歳程度の知力があれば足りるとされますが、あくまで当該行為者について個別具体的に判断されます。

一般的な意思能力の説明としては以上の通りですが、遺言は普段の買い物等よりも複雑な法律行為ですし、前述の通り15歳以上でなければできないので、7歳~10歳程度の知力では遺言能力がないとされ無効となる可能性があります。

なお、遺言能力が問題となるのは自筆証書遺言の場合だけでなく、公正証書遺言の場合でも、遺言能力を欠いている状態であったことを理由に、遺言が無効となることがあります。

公証人は遺言者の遺言能力に疑いがあるときは、本人の判断能力が十分に備わっているかを確認するために質疑応答などを行ったりしますが、必ずしも遺言書の作成を拒否するわけではありません。

よって、公正証書遺言であっても、後に遺言能力が否定されることがあるのです。

それでは、具体的に、どの程度の認知症から遺言が無効になってしまうのでしょうか。

この点、成年被後見人(精神上の障害により事理を弁識する能力(自己の行為の結果を判断することのできる能力)を欠く常況にあって後見開始の審判を受けた人のこと。詳しくは「成年後見人とは?成年後見制度のデメリット、家族信託という選択肢も」参照)については、遺言をするための具体的な要件が民法に定められています。

第973条  成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師二人以上の立会いがなければならない。

2  遺言に立ち会った医師は、遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して、これに署名し、印を押さなければならない。ただし、秘密証書による遺言にあっては、その封紙にその旨の記載をし、署名し、印を押さなければならない。

成年被後見人は事理を弁識する能力を欠く常況にあるため、基本的には遺言はできませんが、一時的に回復した時は遺言をすることができます。

ただし、二人以上の医師に、事理を弁識する能力を欠く状態になかったことを証明してもらわなければなりません。

協力してくれる医師が都合よく見つからないこともあって、成年被後年人が遺言をすることは簡単ではありません。

それでは、成年被後見人ではない認知症の人の場合はどうでしょうか。

認知症の人がした遺言が有効かどうかは、主に次の要素から判断されます。

  • 遺言時における遺言者の精神上の障害の存否、内容及び程度
  • 遺言内容それ自体の複雑性
  • 遺言の動機・理由、遺言者と相続人又は受遺者との人的関係・交際状況、遺言に至る経緯

以下、それぞれについて説明します。

【遺言時における遺言者の精神上の障害の存否、内容及び程度】

遺言時における遺言者の精神上の障害の存否、内容及び程度は、次の観点から考察されます。

  • 精神医学的観点
  • 行動観察的観点

以下、それぞれについて説明します。

認知症患者の遺言能力の有無を精神医学的観点から判断する指標として、長谷川式スケールの点数が重視されています。

長谷川式スケールでは、点数に応じて、下表の通り、簡易的な診断をすることができます。

20点以上 異常なし
16~19点 認知症の疑いあり
11~15点 中程度の認知症
5~10点 やや高度の認知症
4点以下 高度の認知症

大まかな目安として15点以下の場合は遺言能力に疑いが生じ、10点以下の場合は遺言能力がないとする見解もありますが、遺言能力の有無の判断は精神医学的観点のみから行われるものではなく、裁判例でも4点で遺言が有効となったものから、15点で無効となったものまで様々です。

長谷川式スケールによる診断の際は、名古屋市医師会の作成のシートが見やすく説明も丁寧なのでお勧めです。

次に、行動観察的観点についてですが、行動観察観点からは、医療記録、看護記録、介護記録や、それらの作成者等の供述等から知ることができる遺言者の当時の行動等によって遺言能力の有無が判断されます。

【遺言内容それ自体の複雑性】

障害の程度が大きくても遺言内容が単純であれば遺言能力が認められやすくなりますし、反対に、障害の程度が小さくても遺言内容が複雑であれば遺言能力は認められにくくなります。

【遺言の動機・理由、遺言者と相続人又は受遺者との人的関係・交際状況、遺言に至る経緯】

例えば、親族や同居人を差し置いて、親戚関係も、深い付き合いもない人に全財産を遺贈(遺言によって財産を贈ること)しているようなケースでは、このような遺言をする動機や理由がなく、遺言に至る経緯も不自然であるので、遺言能力があったことに疑問が生じるでしょう。

自筆証書遺言で遺言自体が無効となるケース

自筆証書遺言は、次のような場合に無効となるおそれがあります。

  • 自書でない箇所がある
  • 日付がない
  • 署名がない
  • 押印がない

なお、相続法改正によって自筆証書遺言を法務局で保管する制度が新設されますが、この制度を利用する場合は、法務局で保管する際に形式不備の有無が確認されるので、形式不備によって遺言が無効となることは基本的には無くなるはずです(相続法改正について詳しくは「相続法改正で何が変わる?いつから適用?ポイントをわかりやすく説明」参照)。

また、形式不備によって遺言として無効となったとしても、死因贈与が成立していると解釈する余地があります。

死因贈与とは、自分の死後に財産を譲ることを、財産を譲り受ける者との間で生前に約束しておくことをいいます(「死因贈与とは?遺贈との違いは?最適な継承方法を選ぶための全知識」参照)。

遺贈(遺言によって財産を与えること)の場合は受遺者(遺贈を受ける人)の事前の承諾は不要ですが、死因贈与は契約なので、贈与内容について、贈与者の生前に双方の合意があること必要です。

以下、それぞれについて説明します。

自書でない箇所がある

遺言者が、遺言書の全文、日付および氏名を自書しなければならないとされています。

したがって、誰かに代筆してもらったり、パソコンなどで全文を作成して氏名だけ自書したりしたようなものは無効とされます。

なお、遺言を記載する紙や筆記用具については特に法律による定めはありません。

鉛筆やシャープペンシル等の消えやすいものは、改ざん(書換え)のおそれがあるため避けましょう。

また、ボールペンの場合は水性よりも油性の方が、万が一、水に濡れてしまった場合にも滲みにくいのでお勧めです。

万年筆の場合は、顔料インクが滲みにくいと言われています。

紙についても、極端の話、メモ帳の切れ端やチラシの裏に書いても有効です。

ですが、破損のリスクがあるので、ある程度の強度のある紙に記すべきでしょう。

なお、財産目録を、遺言書に添付することができますが、現状は、財産目録も手書きで作成しなければなりません。

改正法施行後は、財産目録をパソコンで作成することが認められるようになり、また、預貯金の通帳や不動産の登記簿謄本のコピーを添付することもできるようになります(「相続法改正で何が変わる?いつから適用?ポイントをわかりやすく説明」の「自筆証書遺言に添付する財産目録が自書でなくてもよくなる」の項目参照)。

財産目録の作成方法については「財産目録の書式をダウンロードしてカンタンに財産目録を作成する方法」をご参照ください。

日付がない

自筆証書遺言には、必ず作成日を記載しなければなりません。

そして、この日付も「自書」しなければならないので、スタンプ等を利用すると無効になってしまいます。

また、「平成〇〇年〇月吉日」というような書き方も、作成日が特定できず、無効となってしまうので、必ず、年月日をきちんと記載することが大切です。

署名がない

自筆証書遺言には、遺言者が、必ず、氏名を自書しなければなりません。

署名をするのは、必ず遺言者1名のみとされており、夫婦二人で共同で遺言をするということはできないので、注意が必要です。

押印がない

全文、日付、氏名の自書に加えて、押印することが要件とされています。

印は、実印でなくても構いません。

認印でも、拇印や指印でもよいことになっています。

シャチハタですら、実務上、認められる場合がありますが、念のため避けたほうがよいでしょう。

公正証書遺言で遺言自体が無効となるケース

公正証書遺言が無効となる可能性があるケースとしては、前述の遺言能力がなかったというケースのほか、次のような場合が考えられます。

  • 証人となることができない人が証人となっていた
  • 証人となることができない人が同席していて、遺言の内容が左右されたり、遺言者が自己の真意に基づいて遺言をすることを妨げられたりした

公正証書遺言では証人が2人必要であり、次のいずれかに該当する人は、証人となることができません。

  1. 未成年者
  2. 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
  3. 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人

1の未成年者は、ご存知の通り20歳未満の人のことです。

2の推定相続人とは、その時点において、最優先順位の相続権(代襲相続権を含みます。)を持っている人のことです。

つまり、その時点で相続が開始された場合に、相続人になると推定される人のことです。

なお、遺言書作成時に推定相続人でなければ、遺言書の作成後に、結果的に推定相続人になったとしても問題ないとされます。

また、受遺者とは、遺言によって財産を受け取る人のことです。

配偶者とは、ご存知の通り、妻や夫のことです。

直系血族とは、親子関係でつながる人のことで、祖父母、父母、子、孫などが、これに当たります。

例えば、Aさんの妻Bさんと、Aさんの子Cさんが、Aさんの財産の推定相続人であったところ、Aさんは、愛人Dさんに遺贈(遺言によって財産を与えるいこと)する旨の秘密証書遺言を作成したとします。

その場合、Bさん、Cさん、Dさん、それから3人の配偶者と直系血族は、Aさんの遺言の証人になることはできません。

3の公証人とは、事実の存否や、契約や法律行為の適法性等について、証明したり認証したりする公務員のことです。

公証人は秘密証書遺言の存在を証明する手続を行いますが、同じく秘密証書遺言の存在を証明する証人が、公証人と関係がある人であることが許されるのであれば、公証人とは別に証人を求める意義が乏しくなってしまいます。

したがって、証人は、公証人と関係のある人(配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人)ではいけません。

このような証人となることができない人が証人となっていた場合、遺言は無効になります。

また、証人となることができない人が証人としてではなく立ち会っていた場合は、このことだけで直ちに無効となるわけでなりませんが、その人によって、遺言の内容が左右されたり、遺言者が自己の真意に基づいて遺言をすることを妨げられたりした場合は無効となる可能性があります。

秘密証書遺言で遺言自体が無効となるケース

秘密証書遺言の場合も、公正証書遺言と同様、証人となることができない人が証人となっていたり、証人となることができない人が、証人としてではなく、単に同席していたという場合であっても、そのことによって遺言の内容が左右されたり、遺言者が自己の真意に基づいて遺言をすることを妨げられたりした場合は、無効となる可能性があります。

また、秘密証書遺言独自の無効原因としては、遺言書本文に使用された印鑑と封筒にした押印の印鑑が異なっているケースが挙げられます。

遺言内容の一部が無効となるケース

自筆証書遺言と秘密証書遺言の場合では、次のような場合に、遺言内容の一部が無効となることがあります。

  • 変更が所定の方式にのっとられていない
  • 表現が曖昧

なお、相続法改正後に自筆証書遺言を法務局で保管する制度を利用する場合は、この問題が生じることはありません。

以下、それぞれについて説明します。

変更が所定の方式にのっとられていない

自筆証書遺言の記載内容を訂正する場合もそのやり方が厳格に決められています。

必ず、訂正した場所に押印をして正しい文字を記載した上で、どこをどのように訂正したのかを余白等に記載してその場所に署名しなければなりません。

具体的には、訂正したい箇所に二重線等を引き、二重線の上に押印し、その横に正しい文字を記載します。

そして、遺言書の末尾などに、「〇行目〇文字削除〇文字追加」と自書で追記して署名をする、ということになります。

このように、訂正方法もかなり厳格なので、万が一、遺言書を訂正したいときは、できる限り始めから書き直した方がよいでしょう(訂正前のものは無用な混乱を避けるため必ず破棄するようにしましょう)。

表現が曖昧

遺言書の内容は、遺言者が亡くなった後に他人が読んで明確に意味がわかるように記載する必要があります。

記載の内容が曖昧であったり、誤記があったりした場合、遺言書を開封したときには、遺言者は既に亡くなっているので、その意味を遺言者本人に確認することはできません。

裁判例においては、「遺言書に表明されている遺言者の意思を尊重して合理的にその趣旨を解釈すべきであるが,可能な限りこれを有効となるように解釈する」と判断されており、遺言書の内容に曖昧な部分や不明確な部分があっても、それだけで無効になるわけではありませんが、趣旨を解釈することが難しいくらい曖昧な記述については、効力が生じない可能性があります。

また、相続人間に無用なトラブルを生む可能性があるので、曖昧な表記等には気を付ける必要があります。

遺言内容が遺留分を侵害しており減殺を請求されるケース

遺留分とは、一定の相続人が、相続に際して法律上取得することが保障されている、遺産の一定の割合のことをいいます。

相続人となる人や各相続人の相続分については民法に定められていますが、これは遺言によって変更することができますし、生前贈与や死因贈与(贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与)によって相続財産が減ってしまったり無くなってしまったりすることもあります。

そのような場合でも、一定の相続人は、遺産の一定の割合を遺留分として取得することが保障されているのです。

遺留分が遺言よりも優先されるとはいえ、遺留分を侵害する遺言が無効になるわけではありません。

遺留分を侵害された人は、贈与や遺贈を受けた人に対し、遺留分侵害の限度で贈与や遺贈された財産の返還を請求することできます(これを「遺留分減殺請求」と言います)。

つまり、遺言自体は有効であって、遺留分減殺請求があるまでは遺言の内容に沿って遺産が承継されますし、遺留分減殺請求があれば、遺留分侵害の限度で減殺されるだけであって、残りの遺産は遺言で指定された人が取得します。

なお、遺留分は権利なので、遺留分減殺請求しなければならないわけではありません。

請求するかしないかは、遺留分権利者の自由です。

遺留分を侵害する遺言もそれ自体は有効なので、遺留分減殺請求しない場合は、そのまま遺言の内容に沿って遺産が承継されます。

遺言書と遺留分の関係について詳しくは「遺留分を侵害する遺言書があっても遺留分減殺請求権が優先!対策は?」をご参照ください。

相続人や受遺者の間の協議によって遺言内容とは異なる遺産分割がなされるケース

遺言によって、すべての相続財産の処分(受取先)が指定されている場合は、遺産分割の必要はありませんが、その場合でも、相続人と受遺者、遺言執行者(「遺言執行者とは?どんな場合に必要?遺言執行者の選び方と役割、報酬」参照)の全員の同意がある場合は、遺言の指定と異なる遺産分割を行うことが可能です。

遺言書の効力に期間制限はない

遺言書に効力がある期間はいつからいつまでですかと質問を受けることがありますが、期間制限はありません。

大昔に作成した遺言書でも、それよりも新しい遺言書が見つからなければ、効力を有します。

なお、新しい遺言書が見つかった場合でも、古い遺言書の内容を取消したり変更したり、古い遺言書と矛盾する内容の記載がなければ、古い遺言書も効力を有します。

また、遺産分割後に遺言書が見つかった場合でも、遺言書は効力を有します。

遺言の効力が時効によって消滅するようなことはないのです。

よって、相続人の誰かが遺産分割の無効を主張すれば、基本的には、遺産分割は無効となり、遺言に沿って遺産分割をやり直すことになります。

ただし、遺産分割から長い年月が経った後に遺言書が見つかった場合は、既に財産が相続人の元に残っていなかったりして、再分配が難しくなることもあります。

そのような場合は、どうすべきか、弁護士に相談することをお勧めします。

なお、遺言書があっても、前述の通り、相続人全員の同意があれば、遺言の指定と異なる遺産分割をすることができるので、全員が同意すれば、そのまま遺産分割を有効としても構いません。

また、遺言書の存在を元から知っていた人や、遺言書が見つからなかったことについて重大な過失がある人による遺産分割の無効を主張は認められない可能性があります。

開封された遺言書の効力

自筆証書遺言では、偽造や変造を防止するため、相続開始後、遺言書が見つかったら、開封せずに、遺言書の検認を行わなければなりません。

検認前に開封してしまった場合は、開封者が5万円以下の過料(行政罰)が科される可能性がありますが、遺言自体が無効となるわけではありません。

遺言書の検認については「遺言書の検認とは?遺言書が見つかったら知っておくべき検認の全知識」をご参照ください。

また、遺言書が元々封印されていなかった場合も、遺言書は無効とはなりません。

遺言書に記載されている財産と実際の財産が異なる場合の遺言書の効力

遺言書が記載されている財産と実際の財産が異なる場合でも、遺言書自体が無効となるわけではありません。

ただし、実際には存在しない財産についての記載は、無効となります。

このような場合は、一度、弁護士に相談することをお勧めします。

遺言の無効申立ての方法

遺言の無効について当事者間で争いがある場合、当事者間の話し合いで決着すればよいですが、話し合いで決着しない場合は、遺言無効確認調停か遺言無効確認訴訟を申し立てます。

調停は、家庭裁判所の調停委員会(裁判官1名と調停委員2名で構成)が、当事者に対して解決のための助言や説得をして、合意を目指して話合いを進める手続です。

遺言が有効か無効かを争っている場合、1か0かの決着になるので、お互い歩み寄って合意に至るということが難しく、あまり調停向きではありません。

したがって、遺言の無効が争点のケースでは、調停を経ずに、訴訟を提起することが多いです。

遺言無効確認訴訟を検討する場合は、弁護士に相談しましょう。

まとめ

以上、遺言書の効力について説明しました。

遺言が有効なのか無効なのかは、正直、ケースによりけりなので、遺言の有効性に疑念がある場合は、弁護士に相談することをお勧めします。

記事を読んでも問題が解決しない場合は、弁護士・税理士等の専門家に相談することをお勧めします。
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