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遺産相続のトラブル事例15選|予防策・解決法を徹底解説

「どのような遺産があるのか誰もしらない」「故人に多額の借金があったことが発覚した」

遺産相続を巡っては、このようなトラブルがしばしば生じています。

財産を遺す人にとっても財産を受け取る人にとっても、遺産相続によってトラブルに発展することは、できるだけ避けたいでしょう。

この記事では、これらのようなトラブルに対する予防策と解決策について説明します。是非、参考にしてください。

[ご注意]
記事は、公開日(2019年3月26日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。

どのような遺産があるのか誰も知らない

どのような遺産があるのか誰も知らなければ、当然、相続することはできません。予防策と解決策について説明します。

予防策

予防策としては、基本的には、被相続人(亡くなって財産を遺す人)による対策で、生前に財産目録を作成しておくことが有効です。

財産目録とは、財産の一覧表のことです。現金や預貯金、不動産といった積極財産(プラスの財産)だけでなく、負債等の消極財産(マイナスの財産)についても一覧にします。

相続財産目録を作成するケースには、次のものがあります。

  • 自分の財産の目録を生前に作成するケース
  • 相続人らが被相続人(亡くなった人)の遺産の目録を作成するケース
  • 遺言執行者が遺言執行に先駆けて遺産の目録を作成するケース

このうち、作成が義務付けられているのは、遺言執行者だけです。

相続人らが遺産の目録を作成することは、義務ではないものの、相続財産が多岐に渡る場合、相続人らは遺産の目録を作成しなければ、遺産分割協議や相続税の申告の際に不便なので、遺産の目録を作成することが多いでしょう。

しかし、被相続人が亡くなった後に相続人らで遺産を調査するのはなかなか大変です。

自分の財産のことは自分自身が最もよく把握しているでしょうから、生前に財産目録を作成し、相続人の負担を減らしてあげられるとよいでしょう。

自分の財産目録を生前に作成するメリット

自分の財産目録を生前に作成することには次のようなメリットがあります。

  • 相続税対策を正確に検討できる
  • 遺言内容を詳細に検討できる
  • 相続人に遺産の全容を知らせることができる

なお、自分の財産の目録を作成する場合や、相続人らが遺産の目録を作成する場合は、前述の通り、法的な作成義務ではないので、書式も自由です。

分かりやすいようにまとめればよいでしょう。

パソコンが得意な人はパソコンで作成した方が手っ取り早いでしょう。パソコンで作成する場合の書式については、自分で一から作成しても構いませんし、以下に提示するものを利用しても構いません。

また、以下のものをアレンジしても構いません。

財産目録 excel(エクセル)版

パソコンにexcelのアプリケーションがインストールされていない人は、以下のPDF版を印刷して手書きでご利用ください。

財産目録 PDF版

解決策

被相続人が財産目録を作成していなかった場合に、相続人が、遺産を調査する方法について説明します。

遺産調査によって思わぬ財産が見つかることや、実は莫大な借金があったことが発覚することがありますが、これには地道な調査が必要です。

積極財産の調査方法

財産の種類によって次のような方法で調査を行います。

不動産

家にある権利証や固定資産税課税通知書(納付書)、市町村役場で発行してもらう名寄帳などから、被相続人がどこにどのような不動産を所有しているか調査します。

預貯金、有価証券、金融商品

預貯金、有価証券、金融商品

通帳やキャッシュカード、銀行や証券会社からの郵便物などから、預貯金や有価証券を預けている金融機関を調査します。

また、近年ではネット上の銀行に口座等を保有している場合もあり、通帳やキャッシュカードが発行されていない場合もあるので、被相続人のメール等を確認することも大切です。

また、銀行や証券会社で金融商品を保有している場合は、運用報告書等が届いている場合もあるので、確認してみるとよいでしょう。

株式の調査方法については以下の記事を参考にしてください。

動産

動産も相続の対象となります。動産にはほとんど価値のないものも多いことから忘れがちですが、車や宝石、貴金属、美術品等、一定の価値を有するものもあるので、きちんと調査する必要があります。

消極財産の調査方法

被相続人自身の負債

信用情報の照会によって、金融機関からの借入額を調べることができます。

信用情報機関には以下の3つがあります。

  • 株式会社日本信用情報機構(JICC)
  • 株式会社シー・アイ・シー(CIC
  • 一般社団法人全国銀行協会(JBA)の運営する全国銀行個人信用情報センター(KSC)

借入れがある場合は、借入先の金融機関が加盟する信用情報機関の信用情報に登録されます。

複数に加盟している場合は複数の信用情報機関に登録されますが、一つしか加盟していないこともあるので、3つすべての開示請求を行った方がよいでしょう。

他人の債務の保証債務

連帯保証人となる場合は、法律上、金銭消費貸借契約書の連帯保証人欄に署名して押印しなければなりません。

そしてその場合には、連帯保証人の分の契約書も作成されるので、通常は連帯保証人も契約書を保管しているはずです。

ですので、被相続人が大切な書類を保管している場所に、金銭消費貸借契約書がないかどうかを探してみるとよいでしょう。

金銭消費貸借契約書が見つからない場合は、債権者から相続人に督促があって初めて被相続人が連帯保証人になっていたことを相続人が知ることが多いです。

故人に多額の借金があったことが発覚した

多額の借金が発覚

故人(被相続人)の借金は、原則として、相続人が相続して債務を負うことになります。

予防策

予防策としては、生前に債務整理をする等して借金問題に筋道をつけておくことが重要ですが、生前に借金問題がどうしても解決できないこともあるでしょう。

そのような場合は、相続開始後、速やかに相続人が借金の存在に気が付くようにしておくことが重要です。

具体的には、前述のとおり、財産目録を作成しておくとよいでしょう。

財産目録があっても借金が減るわけではありませんが、相続人が速やかに相続放棄を検討できるようになります。

解決策

遺産が、プラスの財産よりも借金等のマイナスの財産の方が多い場合は、相続人としては、相続を承認するよりも、相続放棄をした方が得です。

相続放棄をした相続人は、プラスの財産もマイナスの財産もひっくるめてすべての遺産の相続を放棄することになります。

また、プラスの財産とマイナスの財産とどちらが多いか判断が難しい場合は、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を相続する「限定承認」という方法もあります。

内縁者や隠し子等の相続人でない人が遺産分割を求めてくる

役場に婚姻の届出をしていない事実婚状態の内縁の妻や内縁の夫は、相続人になることはできません。また、認知されていない自称隠し子も相続人になることはできません。

しかし、被相続人によって認知されている子は、非嫡出子(法律上の夫婦以外の男女の間に生まれた子)であっても、相続人になることができます。

非嫡出子であっても嫡出子(法律上の夫婦の間に生まれた子)であっても、法定相続分は同じです(原則として、非嫡出子は嫡出子と同じ分の遺産を相続する権利があります)。

また、代襲相続についても、非嫡出子と嫡出子とで制度上の違いはありません。

つまり、非嫡出子が被相続人よりも先に死亡した場合等は、非嫡出子の子が、非嫡出子の相続人としての立場を代襲して相続することができます(非嫡出子の子も被相続人よりも先に死亡した場合は、さらにその子が代襲相続できます)。

非嫡出子として相続するためには前述のとおり被相続人による認知が必要ですが、生前に認知されていなくても、死後3年以内なら認知の訴えを提起することができ、これが認められると相続人となることができます。

予防策

内縁者の取りうる予防策

内縁者が財産を取得できるようにするためには、次の2つの方法が考えられます。

  • 役場に婚姻の届出をすることで内縁関係を解消し法律上の夫婦になる
  • 生前贈与や遺贈(遺言によって無償で財産を取得させること)によって財産を取得する

認知されていない子の取りうる予防策

認知されていない子が財産を取得できるようにするためには、次の2つの方法が考えられます。

  • 認知される
  • 生前贈与や遺贈(遺言によって無償で財産を取得させること)によって財産を取得する

生前に認知を受けるためには、生物学上の実の父に、認知届を役場に提出してもらう必要があります。遺言によって認知してもらう方法もありますが、やはり、生前に認知してもらった方が安心でしょう。

認知してくれない場合は、裁判で血縁関係を証明して強制的に認知させる方法もあります。

前述のとおり死後3年以内なら、認知の訴えを提起することができますが、裁判で認知を得るにしても、生前にしておいた方が、証明も比較的容易ですし、相続をスムーズに進めることができるでしょう。

被相続人の取りうる予防策

内縁者や未認知の子がいる場合は、自分の死後に彼らが困らないように、婚姻を検討したり、認知届を提出したり、彼らにも遺産が渡るように遺言書を作成したりといった対策が考えられます

相続人の取りうる予防策

自分の財産を誰に取得させるかは、その人の自由なので、ほかの人がどうこうすることはできません。

親が再婚していないかどうかや、親に認知した子がいないかどうかは、戸籍謄本から調べることができるので、気になる場合は、戸籍謄本を取得して確認するとよいでしょう。

解決策

内縁者の取りうる解決策

者が遺産を取得するために、相続開始後でもできることは、正直あまりありません。

被相続人の財産の維持や増加について内縁者による通常以上の特別の寄与があった場合は、相続人等に対して不当利得の返還を請求できることもありますが、内縁者の寄与と被相続人の財産の維持・増加の関係を証明することが難しく、これが認められるのはレアなケースだと考えた方がよいでしょう。

認知されていない子の取りうる解決策

前述のとおり、認知の訴えを提起しこれが認められることによって、相続人となることができます。

他の相続人から相続放棄を求められる

例えば、長男が、ほかの兄弟に対して相続を放棄するように求めるようなことがあります。相続人である以上、相続する権利はありますから、相続放棄をするかどうかは、その人の自由です。

しかしひとたび相続放棄をすると、後から撤回することができません。相続放棄を求められても、すぐには応じず、どうすべきかじっくり考えた方がよいでしょう。

相続放棄の期間は、原則としては相続の開始を知った時から3か月以内ですが、家庭裁判所への申立てによって伸長することもできます。

また、相続放棄ではなく相続分の放棄(または相続分の譲渡)を求められることもあります。

相続分の放棄や相続分の譲渡の場合は相続放棄のような家庭裁判所での手続きがないので、気軽に応じてしまいがちですが、ひとたび同意書に押印してしまうと基本的には撤回できないので、やはり慎重に判断するようにしましょう。

上記のようなケース以外にも債務などが心配などの理由で慌てて結論を出すと後悔することになりかねないので、専門の士業に相談する等して、よく考えたうえで結論を出しましょう。

遺産が勝手に使い込まれた

相続人の一人が被相続人の預貯金を勝手に引き出して使い込むトラブルは比較的よく起こります。

予防策

被相続人の預貯金がある金融機関は、死亡を把握すると、口座を凍結して勝手に引き出すことができないようにします。

相続人の一人が預金を勝手に引き出してしまうようなおそれがある場合は、金融機関に被相続人の死亡を伝えて口座を凍結してもらうとよいでしょう。

死亡の事実は誰から伝えても構いません。伝える先は、亡くなった人が口座を開設していた金融機関の支店です。直接赴いて伝えてもよいですし、電話で伝えてもよいでしょう。

亡くなった人の氏名、住所、生年月日、口座番号等の確認があるのでスムーズに答えられるように準備しておくとよいでしょう。

複数の金融機関に口座を持っている場合は、金融機関ごとに連絡する必要があります。

なお、一つの金融機関の複数の支店に口座を持っている場合は、一つの支店に連絡すれば十分です。

解決策

既に使い込まれた後の解決策としては、次のようなことが考えられます。

  • 口座の履歴等から使い込んだ金額を明確にして遺産分割の際に使い込み分を差し引く
  • 不当利得返還請求(または不法行為に基づく損害賠償請求)をする

使い込んだ人が使い込みの事実を認めた場合は、遺産分割の際にその分を差し引くことで解決することができますが、認めないような場合は、裁判等で争うことになります。

相続開始を知らないうちに他の相続人が相続していた

相続人が複数いる場合に相続手続きをして遺産を取得するためには、相続人全員が実印を押印した遺産分割協議書が必要になります(遺言がある場合は不要なケースもあります)。

したがって、基本的には、相続開始を知らないうちに他の相続人が相続していたということは起こらないのですが、相続人の一人が勝手に被相続人の口座から預貯金を引き出したり、手続きの必要がない動産を勝手に持って行ったりすることがありえます。

このような場合は、不当利得返還請求や不当行為に基づく損害賠償請求等をすることが考えられます。

遺言書が有効か無効かで意見が割れている

遺言書

遺言は次のような場合に無効となることがあります。

  • 遺言者が遺言時に認知症等で意思能力がなかった
  • 自書でない箇所がある
  • 日付がない
  • 署名がない
  • 押印がない
  • 変更が所定の方式にのっとられていない
  • 表現が曖昧

遺言書が無効になるケースについて詳しくは以下の記事を参考にしてください。

予防策

予防策としては、公正証書で遺言書を作成することが考えられます。

公正証書で遺言書を作成する場合は、法務大臣に任命された法律の専門家である公証人が本人から遺言内容を聴き取って遺言書を作成してくれるので、遺言書が無効になる可能性が低くなります。

この制度を利用することで自筆証書遺言でも無効になるケースは少なくなることが期待されますが、施行日までは利用できないので、公正証書遺言を利用するとよいでしょう。

解決策

遺言者が亡くなった後は遺言に不備が見つかっても修正することができません。したがって、遺言を有効化するような対策はありません。

遺言が有効か無効か判断するためには、高度な専門知識が必要となりますので、行政書士等に相談することをお勧めします。

遺言の内容が偏っている

遺言の内容が、一部の人ばかりが遺産を取得できるようになっていると、不公平感からトラブルに発展しやすいです。

また、一定範囲の相続人(配偶者、子(および、その代襲者)、直系尊属)には、遺留分といって、相続できる最低限の割合が法律上決められています。

遺留分を侵害する遺贈や贈与がなされた場合は、遺留分権利者は、遺贈や贈与を受けた人に対して、遺留分侵害の限度で遺贈や贈与された財産の返還を請求することができます。

遺留分は、直系尊属のみが相続人の場合は、法定相続分の3分の1で、それ以外の場合は2分の1です。

予防策

一部の相続人に多めに財産を取得させたい場合でも、遺留分は侵害しないように気をつけましょう。

解決策

遺留分を侵害された遺留分権利者は、遺留分侵害額請求によって、財産の返還を請求することができます。

そのようなことにならないよう、遺言は遺留分にも配慮して作成しましょう。

遺産の独り占め等、決められた相続分よりも多くの遺産を取得しようとする人がいる

遺言がなく相続人が複数いる場合は、法定相続分に応じて各相続人が遺産を取得できることになっていますが、相続人の間の力関係によって、一部の相続人が多くの遺産を取得しようとすることがあります。

予防策

相続人間の力関係に差がある場合に、遺産分割を相続人間の協議に委ねてしまうと、トラブルに発展しかねません。

そこで、予防策としては、遺言で、誰がどの財産を取得するか、きっちり定めておくことが考えられます。

もっとも、遺言があっても、相続人と受遺者(遺贈を受ける人)全員の合意があれば、協議によって遺言とは異なる遺産分割をすることも可能です。

解決策

実際にこのようなトラブルが生じて複雑化してしまい、当事者ではどうにもならなくなってしまった場合は、弁護士に間に入ってもらい、法的な見解から解決へのサポートをうけることになるでしょう。

特別受益について意見が割れている

特別受益とは、相続人が複数いる場合に、一部の相続人が、被相続人からの遺贈や贈与によって特別に受けた利益のことです。

特別受益があった場合は、特別受益の価額を相続財産の価額に加えて相続分を算定し、その相続分から特別受益の価額を控除して特別受益者の相続分は算定されます。このようにして相続分を算定することを「特別受益の持戻し」といいます。

遺贈や死因贈与(贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与)によって取得した財産については、基本的に、すべて特別受益に該当しますが、贈与によって取得した財産については特別受益に該当する場合としない場合があるため、その解釈を巡ってトラブルになることがあります。

予防策

この予防策としては、持戻しの免除が考えられます。特別受益の持戻しの免除とは、特別受益の持戻しをさせないことです。

特別受益の持戻しがあると、贈与財産の価額が控除されますが、持戻しが免除されると、控除されません。持戻し免除の意思表示の形式に指定はありません。

ですが、遺贈による特別受益の持戻しの免除は、同じく遺言によるべきとする見解もあるので、念のため、遺言によって行うべきでしょう。

贈与による特別受益の持戻しの免除は、遺言で行う必要はありません。明示の意思表示は勿論、黙示の意思表示も認められます。

ですが、黙示の意思表示は、しばしば相続人間におけるトラブルを引き起こします。黙示の意思表示の有無で相続人同士が揉めることがあるのです。

黙示の意思表示の有無については、総合的に判断されますが、次のような事情があれば、意思表示があったと認められやすいでしょう。

  • 受贈者(贈与を受ける人)により多くの財産を与えようという被相続人の意図がある場合
  • 贈与の代わりに被相続人も利益を得ている場合

しかし、被相続人の立場としては、死後に相続人間でトラブルにならないように、明示の意思表示をしておいた方がよいでしょう。

なお、被相続人は持戻しの免除の意思を表示した後でも自由にこれを撤回することができます。

また、持戻しの免除があったとしても贈与や遺贈が遺留分を侵害する場合は、遺留分を侵害された相続人は遺留分侵害額請求を行うことができます。

解決策

生前贈与が特別受益の当たるかどうかの判断には高度な法的知識が必要ですので、行政書士等に相談することをお勧めします。

寄与分について意見が割れている

寄与分とは、被相続人の生前に、相続人が、被相続人の財産の増加や維持に寄与した程度のことです。

寄与分がある相続人は、その分多くの財産を相続することができます。

寄与分の有無や金額については杓子定規に決まるものではないので、寄与分を主張する相続人と、それを否定する相続人との間でトラブルになることがあります。

予防策

被相続人が取りうる予防策としては、寄与分がありそうな相続人には、贈与や遺贈をして、かつ、必要に応じて特別受益の持戻し免除の意思表示をすることが考えられます。

寄与分自体を遺言で定めることはできません。

例えば、「長男○○の寄与分は○○円とする。」とか「長女○○の寄与分は相続財産の〇割とする。」というような遺言をすることはできないのです。

しかし、遺言で、相続分や遺産分割方法を指定することは、当然できます。

寄与分がありそうな相続人に対して、例えば、法定相続分が4分の1であるところ、2分の1を相続させる旨の遺言をしたり(「相続分の指定」といいます)、法定相続分が2分の1のところ、相続財産の4分の3の価値を占める不動産を相続させる旨の遺言をしたり(「遺産分割方法の指定」といいます)することは当然ながらできるのです。

解決策

寄与分が認められるどうかや、認められるとして何円分の寄与分が認められるかの判断には、高度な法的知識が必要なので、寄与分について意見が割れている場合は、行政書士等に相談することをお勧めします。

誰がどの財産を取得するかで意見が割れている

遺言がない場合は、法定相続分に従って遺産分割することになります。

遺産が現金や預貯金などの簡単に分けられるものだけなら問題ないのですが、現金や預貯金以外の財産について、誰がどの財産を取得するか意見が割れ、トラブルになることがあります。

予防策

予防策としては、誰にどの財産を相続させるのか、主要な財産についてはすべて遺言で指定することが考えられます。

また、財産に変更が生じた場合には、遺言書の書き換えを忘れないようにしなければなりません。

解決策

遺言がなく、遺産分割協議で意見が割れた場合、まず、各財産を正しく評価することが重要です。

財産の評価は時価で行います。時価とは、その時に売った場合に買い手がつく値段のことです。財産が正しく評価されていないと不公平が生じてしまいます。

遺産分割協議と財産評価を同時並行で進めようとするとうまくいかないことがあります。

ある財産を取得する人にとってはその財産が低く評価をされた方が得で、取得しない人は高く評価された方が得だからです。

この点、各財産の評価額を固めてから遺産分割協議に入った方が協議がうまくいくことが多いです。

また、遺産分割協議が上手くいかない場合は、遺産分割調停や遺産分割審判を申立てる方法があります。

不動産の分割方法で意見が割れている

不動産の分割

不動産の分割方法を巡っては、遺産分割協議の中でも特にトラブルになることが多いです。

不動産は、遺産の財産価値の多くを占めることが少なくありませんし、自宅の場合は特に相続できるかどうかによって住む場所が変わってくるので生活に与える影響も大きいためです。

また、不動産の分割方法(分割しない方法も含みます)は、選択肢も豊富で、それぞれにメリットとデメリットがあるので、なかなか意見がまとまらない原因になっています。

予防策

予防策としては、やはり、遺言によって分割方法を指定することが考えられますが、相続人のためになる合理的な内容にすることが重要です。

解決策

当事者間で解決できない場合は、前述のとおり、調停や審判を申立てるという方法があります。

不動産の評価額について意見が割れている

前述のとおり、ある財産を取得する人にとってはその財産が低く評価をされた方が得で、取得しない人は高く評価された方が得なため、評価額について意見が分かれることがあります。

予防策

各財産の評価額を固めてから遺産分割協議に入った方が協議がうまくいくことが多いです。

解決策

不動産については、通常は実勢価格(実際に取り引きされる価格)で評価されます。

不動産を売却して価額弁償を行う場合は、売却価格を評価額とすればよいのですが、売却しない場合は、どのように実勢価格を見積もるかという問題になります。

この点、固定資産税評価額や相続税評価額から実勢価格を見積もる方法が手軽です。

固定資産税評価額は実勢価格の7割程度、相続税評価額は実勢価格の8割程度になっているので、固定資産税評価額に7分の10を掛け算するか、相続税評価額に8分の10を掛け算することで、およその実勢価格を見積もることができます。

なお、土地の場合は固定資産税評価額と相続税評価額がありますが、建物の場合は固定資産税評価額しかありません。

建物の固定資産税評価額は、固定資産税の納税通知書に記載されている課税明細書の「価格」(または「評価額」)欄に記載されています。

マンションの場合は、価格欄は一棟丸ごとの評価額になっており、自分の所有している部屋の固定資産税評価額は課税標準額の欄に記載されています。

この方法で算定した評価額で双方納得できればそれでよいのですが、この方法では実勢価格との乖離が生じることもあります。

相続税評価額や固定資産税評価額から算定した評価額に納得がいかない場合は、不動産鑑定士に鑑定してもらうとより正確な算定が期待できます。ただし、鑑定料が数十万円かかります。

また、双方が別々に鑑定を依頼すると、鑑定料も倍かかりますし、鑑定結果に開きが生じた場合に、せっかく鑑定したのに、争いが収束しないこともありえます。

合意形成のためには、鑑定を依頼する専門家を双方の合意の下で選び、鑑定結果に従うことを合意のうえで、鑑定を依頼するとよいでしょう

不動産を取得することになったが他の相続人が登記に協力してくれない

取得した不動産の登記に、他の相続人の協力が必要な場合があります。

遺産分割協議によって取得した不動産の登記には、すべての相続人の実印が押された遺産分割協議書(または遺産分割協議証明書)と印鑑登録証明書が必要です。

遺贈によって取得した不動産の登記には、すべての相続人または遺言執行者と不動産の取得者が共同で登記申請をしなければなりません。

遺産分割協議によって不動産を取得した場合

まず、遺産分割協議によって不動産を取得した場合から説明します。

遺産分割協議書の押印に時間がかかってしまう場合に、遺産分割協議証明書にすることでスムーズに進むことがあります。

両方とも遺産分割協議で決まった内容を証明する文書ですが、両者の違いは各相続人が個別に証明するものが遺産分割協議証明書、すべての相続人がまとめて証明するものが遺産分割協議書です。

相続人が近くに住んでいる場合は、全員が一堂に会して遺産分割協議書に署名・押印することができるので、このような場合は、遺産分割協議書が適しています。

しかし、相続人全員が集まることができない場合は、郵送等で各相続人に順次回していき、署名・押印を集めることもできます。

相続人の数が多いと、全員の署名・押印が終わるまでに日数がかかるでしょうし、途中で紛失することもあるでしょう。

この点、遺産分割協議証明書の場合は、各相続人が個別に署名・押印することができるので、遺産分割協議書の場合よりも日数が短縮できることが期待できますし、途中で紛失されて一からやり直しということもありません。

したがって、相続人の数が多く、かつ、散り散りに住んでいる場合は、遺産分割協議書よりも遺産分割協議証明書の方が便利であるといえます。しかし、遺産分割協議証明書にも欠点があります。

遺産分割協議書の場合は、各相続人がそれぞれ原本を1通ずつ持ちますが、遺産分割協議証明書の場合は、基本的には代表者しか原本を持ちません。

一人が代表してすべての相続手続を行う場合は、遺産分割協議証明書で問題ありませんが、それぞれが相続手続を行うのであれば、遺産分割協議書の方が便利でしょう。

遺言によって不動産を取得した場合

次に、遺言によって不動産を取得した場合について説明します。

遺贈によって取得した不動産の登記は、相続人全員または遺言執行者の協力が必要です(なお、遺贈ではなく「相続させる旨の遺言」によって取得した不動産の登記は不動産の取得者が単独で申請できます)。

協力してくれない相続人がいる場合は、遺言執行者を選任することで、相続人の協力は必要なくなります。

まとめ

以上、遺産相続トラブルについて説明しました。
遺産相続トラブルを未然に防ぐためには、事前に相続対策をおこなうことが重要です。
まずは、気軽に相続の知識がある専門家へ相談してみるとよいでしょう。

この記事を書いた人

株式会社鎌倉新書 いい相続

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