弁護士監修記事

借地権を相続する前にこれだけは絶対に知っておくべき8つの必須知識

借地権は、一般の方にとってあまり馴染みのない権利でしょうから、借地権を相続することになった時にとても戸惑ってしまいます。

そこで、この記事では、借地権を相続する前にこれだけは絶対に知っておくべきという、借地権の相続に関する必須知識を8つに絞ってわかりやすく説明します。

借地権を相続する相続人は勿論のこと、地主さんにとっても知っておくべき内容です。

是非、参考にしてください。

[ご注意]
記事は、執筆日時点における法令等に基づき解説されています。
執筆後に法令の改正等があった場合、記事の内容が古くなってしまう場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをお勧めします。

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借地権とは?

借地権とは、建物の所有を目的とする地上権、または、土地の賃借権のことをいいます。

地上権も土地の賃借権も、平たく言えば、いずれも土地を自ら使用したり土地によって利益を得たりする権利のことです。

両者の違いを簡単にいうと、地上権は地主の承諾なく譲渡したり地上権の目的物を賃貸したりすることができますが、賃借権を譲渡したり賃借権の目的物を転貸するためには地主の承諾が必要であるといった違いがあります(なお、相続の場合は、地上権でも賃借権でも地主の承諾は不要)。

このように、地上権を設定すると、地主にとって大きな不利益が生じるため、あまり利用されることはなく、借地権というと、土地の賃借権を指すのが一般的です。

借地権は相続財産

相続の対象となる財産(相続財産)は、相続開始時に被相続人(亡くなった人)の財産に属した一切の権利義務(権利と義務)のうち、被相続人の一身に専属した(ほかの人に移転しない性質をもつ)権利義務を除いたものです。

借地権は、譲渡することができ、一身に専属した権利ではないため、相続の対象となります。

相続財産について詳しくは「相続財産とは何?相続の対象となる財産と相続税の対象となる財産」をご参照ください。

相続放棄すると被相続人の借地権を取得しない

相続放棄をした人は、被相続人の借地権を取得しません。

なお、相続放棄をしたにもかかわらず、地主から、土地が不要なら建物を取り壊して更地にして返すように求められるケースがありますが、これに応じる義務はありません。

相続放棄については「財産放棄と相続放棄の違いを理解して財産放棄で損しないための全知識」をご参照ください。

相続開始後、遺産分割までの間は準共有になる

相続人が複数人いるときは、相続財産は、相続人の共有に属します(正確には、共有は所有権についての用語であり、借地権の場合は準共有といいます)。

相続人は、それぞれの相続分に応じた持ち分を有することになるのです(相続分については「法定相続分とは?相続人の組み合わせパターン別法定相続分の計算方法」参照)。

しかし、共有や準共有のままだと、財産の使い勝手が悪いので、通常は、誰がどの財産を取得するか決めるための遺産分割協議をして、遺産を分割します。

借地権がある場合の遺産分割方法

遺産分割協議に入る前に、まず、相続人が誰であるか、各相続人の相続分がいくらであるか、それから、遺産がいくらあるかを確認しなければなりません。

このとき、借地権をどのように評価するかが問題です。

ところで、遺産分割の方法には、現物分割、換価分割、代償分割の3つの方法があります。

現物分割とは、遺産を現物のまま分割する方法のことです。

換価分割とは、遺産を売って、お金に換えて、そのお金を分ける分割方法のことです(詳しくは「換価分割にかかる税金と換価分割の長所・短所、代償分割との比較」参照)。

代償分割とは、現物分割によると、法定相続分どおりにうまく分割できない場合等に、法定相続分よりも多く相続する人から、少なく相続するに人に対して、法定相続分との差額分の代償する分割方式のことです(詳しくは「代償分割により相続税を節税して贈与税も課税されないようにする方法」参照)。

換価分割の場合は、借地権の譲渡価格を評価額にすればよいので、評価については簡単です。

ただし、借地権の譲渡には、地主の承諾が必要です。

地主に承諾をもらうためには、通常、承諾料(名義変更料または名義書換料ともいいます)が必要です。

承諾料の相場は、借地権価格の10%程度と言われています。

借地権価格は、「自用地とした場合の価額×借地権割合」で計算します。

例えば、ある土地の自用地とした場合の価額が1億円で借地権割合が60%であるとすれば、その土地の借地権価格は6000万円となり、借地権の譲渡に対する地主の承諾料の相場は600万円程度となります。

地主の承諾を得たら、後から言った言わないのトラブルにならないように、借地権譲渡承諾書を作成しておいた方がよいでしょう。

承諾書の作成方法については、譲渡後に借地上の建物の所有権移転登記を依頼する予定の司法書士等に相談するとよいでしょう。

登記について相談する司法書士を探す場合はこちらの専門家検索のページをご参照ください。

なお、地主の承諾を得られない場合は、借地権譲渡に代わる許可を裁判所に申し立てて、許可されると譲渡することできます。

借地権を譲渡しても地主の不利にならない場合は許可されます。

譲受人が、この先、地代を支払っていくのに、十分な資力がないような場合や、反社会的勢力の関係者であるような場合は、許可されないでしょう。

借地権譲渡に代わる許可を申立てる場合は、事前に弁護士に相談することをお勧めします。

弁護士を探す際はこちらの専門家検索のページをご参照ください。

また、「自用地とした場合の価額」とは、借地権のような他人の権利が付いていない場合のその土地の価額のことです。

土地の価額は、不動産鑑定士に鑑定してもらうと、正確な金額を算定してもらえますが、鑑定料が数十万円かかってしまうので、承諾料の算定のために、そこまでする必要はないでしょう。

固定資産税評価額は、実勢価格の7割程度に設定されているので、固定資産税評価額を7で割ったものに10を掛けると、およその実勢価格を求めることができます。

借地権割合は、借地事情が似ている地域ごとに定められており、路線価図や評価倍率表に表示されています。

借地権割合は30%から90%の間であり、都会の方が田舎よりも借地権割合が高い傾向にあります。

借地権割合について詳しくは「借地権割合を使って借地権や貸宅地の相続税評価額を計算する方法」をご参照ください。

現物分割や代償分割による場合も同様に、「自用地とした場合の価額×借地権割合」で借地権の価額を計算するとよいでしょう。

遺産分割協議がまとまったら、遺産分割協議書を作成します(「遺産分割協議書のひな形をダウンロードして自分で簡単に作成する方法」参照)。

借地権を相続と名義変更(登記)

借地権と借地上の建物の所有権を相続した場合、建物の所有権移転登記をすべきです。

被相続人が建物を登記していなかった場合でも、取得した相続人が登記すべきです。

登記をしなかった場合、底地を地主が事情の知らない第三者に譲渡した場合、第三者に対抗できず土地の明渡しを求められる可能性があるためです(なお、地主は、借地人が登記していないからといって明渡しを求めることはできません)。

なお、借地権(賃借権または地上権)も登記することができますが、借地上の建物を登記すれば、借地権についても第三者への対抗力を得られますし、建物の登記は所有者が単独でできるのに対して、借地権の登記は原則として地主の協力が必要なので、通常は、借地権は登記されません。

被相続人が借地権を登記している場合は、借地権についても移転登記をした方がよいでしょうが、そのようなケースは極めて稀です。

なお、相続登記の方法については「相続登記を自分でスムーズに行うため全知識と司法書士報酬の相場」をご参照ください。

また、登記について相談する司法書士を探す場合はこちらの専門家検索のページをご参照ください。

なお、相続に伴い、地主から土地の賃貸借契約書の名義変更料を求められるケースがありますが、これに応じる必要はありません。

契約書を書き換える必要もありませんし、書き換えたとしても、名義変更料等の対価は不要です。

地主の承諾は不要ですが、相続した旨の通知は送付しておいた方がよいでしょう。

通知書の書き方についても、登記と併せて司法書士に相談するとよいでしょう。

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相続人以外の人が借地権の遺贈を受ける場合は地主の承諾が必要

相続人以外の人が借地権を遺贈によって取得する場合は、地主の承諾が必要です。

遺贈とは、遺言によって遺産を与えることです。

相続の場合は、民法の定めに従って、誰が相続人となるかが決まりますが、遺贈の場合は、遺言者が誰にどの財産を与えるかを指定することができ、相続人以外の人に財産を与えることも可能です。

遺贈について詳しくは「遺贈とは?相続や贈与との違いは?最適な継承方法を選ぶための全知識」をご参照ください。

地主に承諾を得るためには、通常、承諾料(名義変更料、名義書換料)が必要となります。

承諾料の相場は、前述の譲渡の場合と同じく、借地権価額の10%程度と言われています。

借地権価額は、前述のとおり、「自用地とした場合の価額×借地権割合」で計算します。

借地権の相続税評価額の計算方法

借地権や借地上の建物にも、相続税がかかります。

相続税は、相続等により取得した財産の課税価格の合計額に対して課税されますが、課税価格を計算するためには、各財産の相続税評価額を算定しなければなりません。

借地権の相続税評価額は「自用地とした場合の相続税評価額×借地権割合」で計算します。

また、借地権であっても「小規模宅地等の特例」の適用を受けて、相続税評価額を減額することができます。

小規模宅地等の特例については「小規模宅地等の特例で8割減で大幅に節税する方法と意外な落とし穴」をご参照ください。

土地の相続税評価額の算定方法は複雑であり、一般の人が自分で正確に算定することは難しいので、相続税申告の際は、税理士に相談することを強くお勧めします。

税理士を探す際は、「相続税に強い税理士の検索ページ」をご利用ください。

相続税評価額の算定方法について知りたい場合は、「相続税を計算する際の土地の評価方法についてわかりやすく説明!」をご参照ください。

なお、相続等により取得した財産の課税価格の合計額が基礎控除額以下の場合は、相続税がかからず、申告も不要です。

相続税の基礎控除については「相続税の基礎控除額の計算方法と控除額を増やして節税する実践的な方法」をご参照ください。

課税価格の合計額が基礎控除額以下に納まるかどうかについてざっくりと計算する目的であれば、簡易的に、土地の固定資産税評価額から相続税評価額を算定することもできます。

土地の固定資産税評価額を7で割って8を掛けると(つまり、約1.14倍すると)、相続税評価額の概算を算出することができます。

土地の固定資産税評価額は、固定資産税台帳で確認することができます。

固定資産税台帳は、その土地が存在する市区町村の役所で閲覧することができます。

固定資産税台帳は誰でも閲覧できるわけではありませんが、借地権者は閲覧することができます。

また、建物の相続税評価額は固定資産税評価額と同じ額です。

建物の固定資産税評価額は、固定資産税台帳を閲覧するまでもなく、固定資産税評価明細書に記載されています。

固定資産税評価明細書は、賦課期日(11日)に建物の所有者であった被相続人の住所に送付されているはずです。

まとめ

以上、借地権の相続にかかわる知識について説明しました。

相続人間のトラブルや地主とのトラブルについては弁護士に、登記については司法書士に、相続税については税理士にご相談ください。

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