税理士監修記事

相続税の計算方法や土地評価方法、贈与税との比較など相続税の全知識

平成27年1月1日以後に発生した相続から、相続税がかかるか否かのボーダーライン(基礎控除)が引き下げられました。

また最高税率も50%から55%に引き上げられました。

基礎控除が引き下げられる前は、相続税を納める必要のある方が全体の4%~5%であったのに対し、引き下げ後は8%前後にまで増えています。

不動産価値の高い都市部では、この割合はさらに高くなっていることが予想されます。

相続税が以前に比べて話題になり、皆さんにとって身近な税金として感じられるようになったことと思います。

そこで今回はこの相続税について全般的な基礎知識について説明します。

相続税についてご理解を深めて頂く一助になれば幸いです。

[ご注意]
記事は、執筆日時点における法令等に基づき解説されています。
執筆後に法令の改正等があった場合、記事の内容が古くなってしまう場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをお勧めします。

相続税とは?

相続税とは、相続又は遺贈により財産を取得した場合に、その財産に対してかかる税金をいいます。

そもそも相続税という税金がなぜ課税されるのでしょうか。

せっかく先代が苦労して築いた財産を引き継ぐだけで、どうしてそのような税金を支払う必要があるのか。

それは「富の再配分」という大きな目的があるからです。

こうした観点から、代替わりする際に財産の一部を相続税として国へ納めることにより、それをまた世の多くの人の為に使いましょうというのが税金をかける趣旨です。

こうした趣旨をふまえ、相続税には一定の金額以下の財産には課税をしない「基礎控除」というものが設けられています(内容は後述いたします)。

基礎控除を超えた部分に相続税がかかる仕組みとなっており、財産総額が基礎控除以下であれば、申告・納税の必要はございません。

また、多くの相続財産を取得した方にはより多くの税金を課すために財産が増えるごとに税率が上がるしくみとなっており、財産額により10%から55%の税率が設定されています。

相続税と贈与税との違い

相続税とよく似た税金に贈与税があります。

贈与税は生存している人から財産を無償でもらった時にもらった人に対してかかります。

贈与税にも基礎控除は存在しますが、110万円と相続税に比べ極端に小額です。

また税率も10%から55%まで設定されているのは相続税と同じですが、税率の上がり方が相続税より急です。

相続税しか存在しないと、みんな贈与してしまって相続税を支払う人がいなくなってしまいます。

これを防止するために贈与税という税金が設けられており、基礎控除も少なく、税率の上がり方も急になっています。

法定相続人と法定相続分

相続税の計算は、民法で定める相続人(これを法定相続人といいます)が、民法で定める相続分(法定相続分)通りに財産を取得したものと仮定してその計算が始まります。

ですので、この民法に定める「法定相続人」、「法定相続分」についてまずは見ていきましょう。

法定相続人とは?

法定相続人とは、民法で定められた、財産を相続する権利のある人をいいます。

法律的に有効な遺言書が無い場合、法定相続人だけが財産を相続する権利を持ちます。

相続人には血族相続人と配偶者相続人がいます。

血族相続人

血族相続人には相続する順位があります

上位の順位に相続人がいる場合は下位の順位の人は相続人にはなれません。

第1順位は子及びその代襲相続人となります。

代襲相続人について説明します。

例えば、父の相続が発生したときに、その子が父より先に死亡していた場合、その子の子(孫)が相続人となります。

これを代襲相続といい、この場合の孫を代襲相続人と言います。

代襲相続について、詳しくは、「代襲相続とは?範囲は?孫や甥・姪でも相続できる代襲相続の全知識」をご参照ください。

第1順位において相続人がいない場合は、第2順位の父母・祖父母(直系尊属といいます)が相続人となります。

第1順位も、第2順位も相続人がいない場合は、第3順位の兄弟姉妹とその代襲相続人が相続人となります。

この場合の代襲相続人は一代限り(甥や姪の世代まで)となります。

配偶者相続人

配偶者がいれば配偶者は必ず相続人となります

この配偶者とは法的に婚姻関係にある者に限られますので、内縁の妻は相続人になれません

また配偶者がいない場合には上記の血族相続人のみが相続人となります。

法定相続分とは?

法定相続分とは民法で定められている、相続財産の分け方の基準となる割合をいいます。

遺産分割の結果、相続人の合意の下、この割合と違う財産分けを行う場合も多いですが、財産分けを行う上で重要な基準となる割合です。

血族相続人と配偶者相続人との組み合わせにより割合が異なってきます。

配偶者と子(第1順位)が相続人となる場合

配偶者が2分の1、残りの2分の1を子の人数で頭割り。

配偶者がいなければ全ての財産を子の人数で頭割り

配偶者と父母等(第2順位)が相続人となる場合

配偶者が3分の2、残りの3分の1を父母等で頭割り

配偶者がいなければ全ての財産を父母等で頭割り

配偶者と兄妹姉妹(第3順位)が相続人となる場合

配偶者が4分の3、残りの4分の1を兄弟姉妹で頭割り

配偶者がいなければ全ての財産を兄弟姉妹で頭割り

亡くなった人との生活上のつながりの濃淡によってそれぞれの割合が異なってきます。

常識的に考えて当たり前のことですよね。

このほか再婚した場合など、複雑なケースもありますが、ここでは原則的な相続分についてまずはご理解ください。

なお、法定相続人と相続分について、より詳しく知りたい場合は、「法定相続人とは?法定相続人の範囲と優先順位、相続割合を図で説明」をご参照ください。

相続税の計算方法

相続人とその相続分について民法上の規定を見てきましたが、いよいよ相続税の計算構造について見ていきましょう。

相続税の計算構造は複雑ですが、3つの段階に分けて見ていくと分かりやすくなります。

「相続財産の把握・評価」→「相続財産の合計額に対する相続税総額の計算」→「相続人ごとへの割り当て」というのが大きな流れとなります。

相続税の基礎控除

これから具体的に相続税の計算構造について見ていきますが、その前に「基礎控除」について先に触れておきます。

基礎控除とは相続財産のうちここまでの金額については課税しないとう、いわば最低保証額です。

被相続人が相続人全員の生計を立てている場合もありますし、財産が比較的少額であればそこまで税金をかけてしまってはあまりにも酷です。

相続人のその後の生活も考慮し設定されています。

その金額ですが、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算した金額です。

4人家族の父親が亡くなった場合、この式に当てはめると4,800万円となります。

次の第1段階で計算した金額が、4,800万円を超えれば超えた部分に対し相続税が課税されます。

一方、計算の結果4,800万円以下であれば相続税はゼロ円となります。

相続財産の把握・評価

それでは計算構造の本論に入ります。

相続税の計算ではまず相続税の対象となる財産を把握し、これを金額に評価します。

財産には現預金などのプラスの財産もありますが、借入金などのマイナスの財産も存在します。

税金を計算する上での財産は、「プラスの財産-マイナスの財産」となり、これを課税価格といいます。

プラスの財産とは?

相続税の対象となる財産とは経済的に価値があるもの、つまりはお金に換算・見積もりできる財産はすべてプラス財産として相続税の対象となり、大きく次の2つのグループに分かれます。

  • 本来の相続財産
  • みなし相続財産

本来の相続財産とは、民法の規定により相続等によって取得する財産をいい、遺産分割協議の対象となる資産を言います。

具体例として以下のものがあります。

列挙しますと、かなり幅広いラインナップとなります。

  • 現金、預貯金
  • 有価証券(上場株式、非上場株式、国債、投資信託など)、ゴルフ会員権、リゾート会員権

※なお、被相続人が経営していた自社の株式も非上場株式として相続税の課税対象となります。

  • 不動産(土地(借地権などの権利を含む)、家屋など、自ら使用するもの貸しているもの問わない。)
  • 個人事業主の事業用資産(売掛金、受取手形、機械装置、備品など)
  • 家庭用財産(家具、書画骨董、貴金属、自家用車など)
  • 貸付金や未収入金(自社の経営する会社に対するものも含む)

次に、みなし相続財産について説明します。

民法においては相続財産と規定されていないものですが、実質的に本来の相続財産と同じ効果(死亡により金銭価値のある財産を相続人が取得する)があるものについては、相続税法が独自に課税の対象としています。

これを「みなし相続財産」といい、主に次のものがこれに該当します。

  • 死亡保険金
  • 死亡退職金

残された相続人に対する生活保障のため、上記のみなし相続財産のうち、「500万円×法定相続人の数」で計算した金額まではそれぞれ、相続税の対象としなくていいこととなっています

マイナスの財産とは?

金銭的に価値のあるプラスの財産にだけ課税したのでは、実態に則した課税とは言えません。

従って以下のものをプラスの財産からマイナスして課税対象となる相続財産を計算します

  • 借入金
  • 未払医療費
  • 未払金(クレジットカードや光熱費など)
  • 未払税金
  • 貸家の預り保証金・敷金
  • 個人事業主の事業債務(買掛金など)

相続税総額の計算

相続税は各相続人が相続した財産から直接税額を計算(遺産取得課税方式)するのではなく、相続財産全体にかかる相続税の合計額を計算してから、その合計額を各相続人に配分(法定相続分課税方式)する仕組みとなっています。

そこで第2段階では相続税の総額を計算します。

相続税の総額は、第1段階で計算した課税価格の合計額から基礎控除をマイナスした金額(課税遺産総額といいます)に税率をかけて計算します

具体的に数字を用いて計算してみましょう。

次の条件を元に計算します。

  • 相続人:妻と長男、長女の3人
  • プラス財産:3億7,500万円
  • マイナス財産:5,500万円

課税遺産総額の計算

まず、課税価格を次のように計算します。

3億7,500万円-5,500万円=3億2,000万円

そして、基礎控除額を、次のように計算します。

3,000万円+600万円×3人=4,800万円

課税遺産総額を次のように計算します。

3億2,000万円-4,800万円=2億7,200万円

相続税総額の計算

まず、課税遺産総額を妻、長男、長女が法定相続分どおりに取得したものとして各人の取得金額をまず計算します。

妻 2億7,200万円×1/2=1億3,600万円

長男 2億7,200万円×1/4=6,800万円

長女 2億7,200万円×1/4=6,800万円

次に、それぞれの取得金額にそれぞれ税率をかけて相続税を計算します。

相続税の税率は、相続額に比例して税率も高くなる累進課税方式で、具体的には下表のとおりです。

基礎控除後の相続額 税率 控除額
1000万円以下 10%
1000万円超3000万円以下 15% 50万円
3000万円超5000万円以下 20% 200万円
5000万円超1億円以下 30% 700万円
1億円超2億円以下 40% 1,700万円
2億円超3億円以下 45% 2,700万円
3億円超6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

税率を当てはめて相続税額を計算します。

妻 1億3,600万円×40%‐1,700万円=3,740万円

長男 6,800万円×30%‐700万円=1,340万円

長女 6,800万円×30%‐700万円=1,340万円

これらを合計すると、相続税総額は6,420万円となります。

各相続人への割り当て

第2段階で相続税の総額の計算が終わりました。

総額の計算では、各相続人が法定相続分通りに財産を取得したものとして税額を計算しましたが、実際の遺産分割は必ずしもそうとは限りません。

相続税の総額を各人が実際に取得した財産の割合に応じて配分され、各人が負担することとなります。

先ほどの例で言うと、仮に長男が遺産の全部を取得したのであれば6,420万円の全額を長男が負担することとなります。

財産評価の方法

相続税の対象となる財産とはお金に換算・見積もりできる財産であると先ほど述べましたが、こうした財産を金額に換算するといくらになるのかを計算しないと、課税価格が算出できず、税金を計算することができません。

この財産を金額に換算することを財産評価と言います

そして財産評価の方法は財産の種類ごとに「財産評価基本通達」に細かく規定されています。

とても細かく規定されおり、全てを紹介できません。

代表的な財産について評価方法のアウトラインを見ていきます。

土地の評価方法

評価単位

宅地の評価は、登記されている「1筆」ごとに行うのではなく、利用の単位となっている1画地の宅地ごとに、実際の地目や面積に応じて行います

例えば自宅が2筆の土地にまたがっている場合、2筆を1つの画地として評価します。

宅地の評価方法

宅地の評価方法には、路線価方式と倍率方式があります。

いずれを採用するかは自ら任意に選択するのではなく、所在地ごとに国税局長が指定しています。

【路線価方式】

路線価図は国税庁のウェブサイトで公開されており、誰でも閲覧が可能です。

以下のリンクから閲覧することができます。

国税庁 財産評価基準書 路線価図・評価倍率表

まず、路線価方式について説明します。

路線価方式による宅地の評価を行うには、国税庁 財産評価基準書 路線価図・評価倍率表にアクセスし、宅地が存在する都道府県名をクリックします。

次に、「路線価図」をクリックし、宅地が存在する市区町村名をクリックします。

そうすると地名の一覧がでてくるので、宅地が存在する地名の右の路線価図ページ番号をクリックします。

路線価図ページ番号が複数に別れている場合は、それぞれクリックして宅地の接する道路が掲載されている路線価図を探してください。

所有する宅地に接する道路に路線価(道路ごとに付された1㎡あたりの標準的な価額をいいます。)が付されている場合は、その路線価に宅地の地積を乗じた金額が評価額の概算となります。

なお、路線価図の価額は1000円単位です。

ですので、100と書いてあれば、1㎡当たり10万円ということです。

土地の形状により、ここから減額又は増額を行いますが、評価額の概算を知る上ではこの金額で十分です。(なお、宅地が複数の路線価に接している場合には、一番高い路線価に地積を乗じた金額を評価額の概算とすると良いでしょう。)

詳細な評価額を算定するには税理士等の専門家に依頼するのが良いでしょう。

【倍率方式】

次に、倍率方式について説明します。

田舎の土地などでは路線価が付されていない土地があります。

そのような土地については倍率方式により評価します

路線価が付されていない場合は、路線価図のページ番号の一覧ページに戻り、「この市区町村の評価倍率表を見る」をクリックします。

そうすると、五十音順に町名、土地の地目ごとに「1.1」や「2.0」などの数字が並んでいます。

この1.1や2.0が国税局長の定めた倍率です。

倍率方式では、(固定資産税評価額×国税局長の定めた倍率)という計算式により相続税評価額を算定します。

なお、固定資産税評価額の確認方法ですが、固定資産税の納付書と一緒に土地や家屋の評価明細が添付されており、その明細に「価格」又は「評価額」と記載されている金額が固定資産税評価額となります。

家屋の評価方法

固定資産税評価額が家屋の評価額となります。

非上場株式の評価方法

非上場株式も相続財産としてよく登場する財産です。

特に会社経営をされている方は自社の株式を保有しているケースが多くあります。

この評価額について説明すると非常に長くなりますので、国税庁のウェブサイトにそのアウトラインが示されていますのでご参照ください。

国税庁 取引相場のない株式の評価

自社の株式がどれくらいの価値があるのか、相続税対策を有効に行う上で必ず知っておいてください

優良な企業ほど自社株式の評価も高額となります。

相続が始まってから自社株式の評価をしていては多額の相続税負担を強いられることにもなります。

また、自社株式の評価は非常に難しいので、専門家に前もって相談し、生前贈与などによる相続税対策のレクチャーを受けてください。

まとめ

以上、相続税についてそのアウトラインを見てきましたが、今回お伝えできたのはほんの一部の内容です。

しかし、基本的な事からご理解いただかないと、その背後にある個別の難しいケースについてなおさらどうしていいのか分からなくなります。

まずは今回のような基礎的な情報を知った上で、有効かつ円満な相続を実現して頂けることを願う次第です。

今回の内容が皆様にとって少しでもお役にたてれば幸いです。

SNSで記事をシェアする