【相続税の計算方法】基礎控除や税率、税額控除までわかりやすく解説!
「自分は相続する遺産も少ないし、相続税なんて関係ない」という人、要注意です!
2015年から相続税の基礎控除が引き下げられ、その結果、相続税を納める人が8%前後まで増えているといいます。
さらに、都心部などは不動産価値も高いため、思ったより相続した実家に高い価値がついた場合もあります。うっかり相続税を納め忘れると、さらに税金を取られることになります(無申告加算税もしくは延滞税など)。
相続税がかかるかを調べるためにも、相続税の計算方法はきちんと理解しておきましょう。また、相続税がかからなくても、相続税申告をしなければいけない場合があるので注意です。
この記事では相続税の計算方法についてわかりやすく解説します。また、相続税を減らせる控除や特例、相続税申告についても紹介します。是非、参考にしてください。
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[ご注意]
記事は、公開日(2018年8月8日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。
相続税の計算のしくみ
相続税の税額は、各相続人がもらった遺産の金額からそれぞれ計算するわけではありません。故人(被相続人)の遺産を合算し、そこから相続税の総額を求めます。そして遺産を相続した割合にしたがって相続税を割り振ります。
相続税の計算には、いくつかの手順があります。
- 課税対象となる財産の総額を求める(正味の遺産額)
- 基礎控除額を差し引いて、課税遺産総額を求める
- 課税遺産総額を法定相続分で取得したと仮定して、課税遺産総額を分ける
- それぞれ相続税率をかけて相続税額を計算
- 相続税総額を、実際に取得した財産の取得割合に応じて負担する
具体的な事例にあてはめると、以下の通りになります。
相続税の計算から、申告までの流れなどは、こちらの関連記事もご覧ください。
課税対象となる財産の総額を求める
まずは遺産の総額のうち、課税対象となる財産の合計額を求めます。課税対象には現金などの故人の財産のほか、死亡保険金なども含まれます。
そこから債務や葬儀費用、非課税財産を差し引き、課税対象となる金額を求めます。
また課税対象となる財産をプラスの財産、差し引かれるもののうち債務や未払金をマイナスの財産とも言います。
課税対象となる財産
- 故人の財産(現金、株式、不動産、自動車、家具、ゴルフ会員権など)
- 死亡保険金・死亡退職金(いずれも非課税限度額は除く)
- 3年以内に生前贈与された財産
- 3年より前に生前贈与されて相続時精算課税を適用した財産
死亡保険金と死亡退職金はみなし相続財産と呼ばれ、相続税法により課税対象とされています。
差し引かれるもの
- 借金や未払税金などの債務
- 告別式までの葬儀費用・納骨費用など
- 一定の非課税財産(墓地、仏壇など)
- 国、地方公共団体、特定の公益法人などに寄付した財産
課税価格を求めるためには、故人の死亡日時点の遺産の価格を算出することが必要です。土地、不動産、株式など、その財産が金額に換算するといくらになるのかを計算します。
この財産を金額に換算することを財産評価と言い、相続税や贈与税を計算するための基準となる課税価格を相続税評価額と言います。
財産評価の方法は財産の種類ごとに「財産評価基本通達」に細かく規定されています。
財産の種類ごとの評価方法については、関連記事を参照してください。
基礎控除額を差し引いて、課税遺産総額を求める
最後に基礎控除額を差し引いたものが、課税遺産総額となります。
基礎控除とは
基礎控除とは「相続財産のうち、ここまでの金額までは相続税をかけません」という最低保障の金額です。故人が家族の生計をたてている場合もあり、財産が少なければ相続税を払う必要はありません。
基礎控除の金額については、下記の計算式で求めることができます。
この基礎控除を差し引いた金額を課税遺産総額と言います。
基礎控除額の具体例
夫婦で子ども2人の4人家族で夫が亡くなった場合、以下のようになります。
したがって、相続財産が4,800万円を超えていれば相続税が課税されます。それ以下であれば相続税はかかりません。
ここまでの流れをまとめると、以下の通りです。
課税遺産総額を法定相続分で取得したと仮定して、課税遺産総額を分ける
課税遺産総額がわかれば、相続人全員で支払う相続税の総額を計算することができます。
このときは、実際に遺産をどのように分割するかにかかわらず、民法で定められた法定相続分で仮に分配します。この各相続人の相続税の合計が、相続税の総額になります。
法定相続分とは
法定相続分とは、民法で定められた相続財産を受け取る(割合)です。この割合は相続人によって異なります。しかし、絶対に従わなければいけない、というものではありません。
法定相続分の具体例
法定相続分は、相続人に配偶者がいるかどうかで変わります。
配偶者がいなければ、相続人の数で均等に分けることになります。配偶者がいる場合は、相続人の組み合わせによって異なります。
下記の表のように、例えば相続人が配偶者と子の場合、配偶者が1/2、子が1/2となります。
相続人 | 相続人の相続割合 | 配偶者の相続割合 |
---|---|---|
子 | 1/2 | 1/2 |
直系尊属 | 1/3 | 2/3 |
兄弟姉妹 | 1/4 | 3/4 |
法定相続人とは
また誰が相続人になるか、も法律で決まっています。この相続人を法定相続人と言います。配偶者、子は必ず相続人となります。子がいなければ、直系尊属(親や祖父母)が相続人となり、直系尊属がいなければ兄弟姉妹が相続人となります。
各相続人の財産に相続税率をかけて相続税額を計算
それぞれの相続人が仮で納める相続税額について計算していきます。これには以下のような速算表を使用します。
相続税の税率は課税遺産総額に応じて高く課税されます。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1000万円以下 | 10% | - |
3000万円以下 | 15% | 50万円 |
5000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
引用:国税庁「No.4155 相続税の税率」
相続人の取得金額が4,000万円の場合、相続税の金額はこのようになります。
相続税総額を、実際に取得した財産の取得割合に応じて負担する
各相続人の相続税を合計したものが、相続税の総額です。これを実際に遺産を分けた割合に応じて分けます。これで相続人ごとの納税額を求めることができました。
このとき相続人によっては「配偶者の税額軽減」「未成年者控除」などを利用することができます。それにより相続税額が0円になる場合も。
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相続税の税額控除
相続税を減らすことができる税額控除の制度をいくつか紹介します。配偶者の税額軽減や未成年者向上が一般的ですが、障害者控除や相次相続控除などもあります。それぞれ適用条件を満たす必要があるため、よく理解してから検討してください。
配偶者の税額軽減
配偶者が遺産分割や遺贈により取得した遺産額から、配偶者の法定相続分相当額か1億6,000万円のいずれか大きい方の金額を差し引いて、残った金額にのみ課税するという制度です。
つまり、相続税額が1億6,000円以内であれば、相続税を支払う必要はありません。
この特例を受けられる配偶者は、法律上婚姻関係があった場合に限られます。そのため、離婚した元配偶者や事実婚での配偶者は利用できません。
未成年者控除
未成年者控除は相続人が未成年の場合に利用できる、相続税の軽減制度です。適用を受けるには要件を満たす必要があります。
- 相続や遺贈で財産を取得したときに日本国内に住所がある人
- 相続や遺贈で財産を取得したときに20歳未満である人
- 相続や遺贈で財産を取得した人が法定相続人
控除額は年齢によって異なり、年齢が低いほど控除額が大きくなります。具体的には、次の計算式となります。
未成年者控除の詳細な要件などは、関連記事をご覧ください。
小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例は、土地の相続税評価額を減額することで、相続税の税額を減らすことができる制度です。この制度も要件を満たす必要がありますが、利用できれば最大で相続税評価額を8割引きになります。
特例が認められる主な対象の土地は、被相続人の自宅の土地か事業用の土地に限られます。また、配偶者、同居の親族などの人の要件、またその土地の広さなど細かく要件が決まっています。
小規模宅地等の特例については、関連記事を合わせて参照してください。
相続税シュミレーション
上記の通り、相続税の計算は複雑な手順もあり一般の人が行うのは大変です。「正確な金額の前にざっくりと納税額が知りたい」という方は、相続税計算シミュレーターを利用してみてください。
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相続税申告
上記の計算により、相続税の金額がわかったかと思います。相続税を納める必要がある人は、税務署で相続税申告を行う必要があります。
相続税申告の期限
相続税の申告・納付期限は決まっており、相続の開始があったことを知った日(通常は、相続人の死亡日)の翌日から10か月以内です。納付もこの日までに銀行、インターネット、コンビニなどから行います。
もし相続税の申告期限に遅れてしまうと、延滞税や無申告加算税などのペナルティが加算される可能性があります。早め早めに準備するようにしましょう。
相続税申告が不要な場合
課税遺産総額が基礎控除額を超えなければ、相続税申告は不要です。
相続税を納めなくても相続税申告が必要な場合
一方、配偶者の税額軽減などの特例を利用して相続税が0円になった場合は、相続税申告が必要になります。
以下の制度を利用した場合、相続税申告が必要です。
- 配偶者の税額軽減
- 小規模宅地等の特例
- 地積規模の大きな宅地の評価
地積規模の大きな宅地の評価とは、広い宅地を相続や贈与によって取得したときに、その土地の相続税評価額を減額できる制度です。詳しくは関連記事をご覧ください。
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この記事を書いた人
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