弁護士監修記事
遺産相続で揉める家族の特徴を知って揉めないように対策する方法

仲の良い家族でも、遺産相続で揉めてしまい、家族仲が修復不可能なほどこじれてしまうことがあります。
一方で、遺産相続でまったく揉めない家族もあります。
遺産相続で揉める家族と揉めない家族はどう違うのでしょうか?
この記事では、遺産相続で揉める家族の特徴について説明します。
この記事で紹介する特徴に当てはまる場合は要注意ですが、事前に対策を講じておくことで、揉めるのを回避できることがあります。
記事では、相続争いの予防策についても紹介します。
また、揉めた後に取りうる対策もあります。
いつまでも仲の良い家族でいられるように、是非、参考にしてください。
[ご注意]
記事は、執筆日時点における法令等に基づき解説されています。
執筆後に法令の改正等があった場合、記事の内容が古くなってしまう場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをお勧めします。
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目次
遺産相続で揉めるのはお金持ちだけではない!
相続人が複数いる場合は、遺産を分割して相続することになります。
遺産分割の方法は、相続人間の遺産分割協議によって決めますが、協議が調わない場合は、家庭裁判所での調停や審判によって、遺産分割方法を決めることができます。
遺産分割で揉めて調停や審判までもつれ込んだ遺産分割事件についての統計を裁判所が公表しているので、これを参考に、遺産相続で揉める家族の特徴を見てみましょう。
遺産相続で揉めるというと、億単位のお金持ちを想像する人が多いのですが、実際に調停に持ち込まれた事件の遺産額は、下の図のようになっています。
(裁判所 司法統計 平成30年度のデータを基に作成)
このように、遺産額が1000万円以下が33%と全体の3分の1を占めており、1000万円超5000万円以下が43%と半数近くを占めいています。
これらを合算した5000万円以下は76%となり、全体の4分の3以上を占めます。
このように見ると、遺産相続で揉めるのは、お金持ちだけではないことが分かります。
遺産相続で揉める家族の特徴
遺産相続で揉める家族の特徴として、主に次のようなことが挙げられます。
- 家族・親族の1人が代わりに財産を管理している
- 親の介護負担が子供の間で平等ではない
- 親が一部の子供をひいきしている
- 親が事業をしている
- 主な遺産が自宅のみ
- 半血の兄弟がいる
- 内縁者がいる
以下、それぞれについて説明します。
主な遺産が自宅のみ
不動産は、現金のように均等に分けることが難しいため、主な遺産が自宅のみという場合は、遺産分割の方法を巡り、家族でも揉めることがあります。
遺産分割の方法には、現物分割、換価分割、代償分割という3つの方法があり、選択肢を広げて、全員にとってより良い分割方法を模索することが重要です。
家の相続については「家を相続することになったら絶対に知っておくべき相続の流れ」をご参照ください。
また、亡くなった自宅の所有者の配偶者が、そのまま自宅に住み続ける場合は、配偶者居住権を設定することが考えられます(「配偶者居住権によって自宅に住み続けながら老後資金も確保する方法」参照)。
また、遺産分割の方法を巡って揉めている場合、弁護士に協議に参加してもらうことによって解決できるケースが多々あります。
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親が一部の子供をひいきしている
親が一部の子供をひいきしているケースも、遺産相続で揉める家族の特徴の一つです。
一部の子供にだけ贈与や遺贈をしている場合は、相続開始後に、贈与や遺贈を受けていない子供が受けている子供に対して、特別受益の持戻しを求めることが多くあります。
特別受益とは、相続人が複数いる場合に、一部の相続人が、被相続人からの遺贈や贈与によって特別に受けた利益のことです。
特別受益があった場合は、特別受益の価額を相続財産の価額に加えて相続分を算定し、その相続分から特別受益の価額を控除して特別受益者の相続分は算定されます。
このようにして相続分を算定することを特別受益の持戻しといいます。
このような揉め事を避けるためには、一部の子供をひいきしない方が良いのですが、理由があってそうしている場合は、持戻し免除の意思表示をしておくことが有用です。
被相続人が特別受益の持戻しを免除する意思を表示した場合は、持戻しは免除されます。
特別受益の持戻しの免除とは、特別受益の持戻しをさせないことです。
特別受益の持戻しがあると、贈与財産の価額が控除されますが、持戻しが免除されると、控除されません。
持戻し免除の意思表示の形式に指定はありません。
ですが、遺贈による特別受益の持戻しの免除は、同じく遺言によるべきとする見解もあるので、念のため、遺言によって行うべきでしょう。
贈与による特別受益の持戻しの免除は、遺言で行う必要はなく、明示の意思表示は勿論、黙示の意思表示も認められます。
ですが、黙示の意思表示は、しばしば相続人間におけるトラブルを引き起こします。黙示の意思表示の有無で相続人同士が揉めることがあるのです。
持戻し免除の意思表示は、贈与による特別受益の場合でも、やはり公正証書遺言で行うのが最も確実でしょう。
遺言書の作成については弁護士に相談するとよいでしょう。
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特別受益については「特別受益とは?特別受益によって相続分を減らされないための全知識」をご参照ください。
なお、特別受益の持戻し免除があっても、贈与や遺贈が遺留分を侵害する場合は、遺留分を侵害された相続人は遺留分侵害額請求を行うことができます(「遺留分侵害額請求権とは。遺留分減殺請求権との違いは?」参照)。
親の介護負担が子供の間で平等ではない
親の介護に見返りを求めるつもりはなくても、まったく介護に貢献しない兄弟と相続分が変わらなければ不公平に感じる気持ちもわかります。
そのような不公平が生じないように、寄与分や特別寄与料の制度があります。
寄与分とは、被相続人(亡くなった人)の生前に、相続人が、被相続人の財産の増加や維持に寄与した程度のことで、寄与分がある相続人は、その分多くの財産を相続することができます(「寄与分の正当な評価を受けて寄与分を当然に得るための最重要知識9選」参照)。
特別寄与料とは、被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族が、相続の開始後、相続人に対して支払いを請求することができる、その寄与に応じた額の金銭のことです(「特別寄与料とは?制度の施行はいつから?相続税は課税される?」参照)。
つまり、相続人が介護していた場合は寄与分、相続人以外の親族(お嫁さん等)が介護していた場合は特別寄与料の対象となります。
この寄与分や特別寄与料の存在や金額を巡って、相続開始後に、家族で揉めるケースが多く存在します。
寄与分を巡る家族の揉め事を避けるためには、介護を頑張ってくれた人に適切な額の財産が渡るように遺言をしておくことが重要です。
遺言書の作成については弁護士に相談するとよいでしょう。
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家族・親族の1人が代わりに財産を管理している
認知症等で自分で財産を管理することが難しくなると、家族や親族が代わりに財産を管理するケースがあります。
財産を管理している人が余程きちんとした人なら問題は生じないのですが、自分のお金とごっちゃになってしまったり、どうしてもお金が必要になって後で返すつもりで着服してしまうケースがあります。
そのようなケースでは、いざ遺産相続の時になって、「何か財産が少ない気がする……」ということになってしまいます。
このようなことにならないように、お金の管理は複数人で行うとよいでしょう。
費用はかかりますが、社会福祉協議会の日常生活自立支援事業を利用するという手もあります(「日常生活自立支援事業とは。成年後見制度との違い等をわかりやすく説明」参照)。
また、管理する財産の金額が大きい場合は、財産管理契約を結んだり(「財産管理委任契約のメリット・デメリット、他の財産管理方法との比較」参照)、後見制度を利用することも検討するとよいでしょう(「任意後見制度・任意後見契約とは。法定後見との違いを一覧表で解説!」参照)。財産管理契約は本人に判断能力がある場合に、後見制度は判断能力が不十分になった後に有用な制度です。
積極的な資産運用を行いたい場合は家族信託という選択もあります(「認知症で財産を失って侘しい老後にならぬように家族信託で備える方法」参照)。
また、既に使い込みが判明していて、お金が返還されない場合は、不当利得返還請求等の方法で、返還を求めることが考えられます。
このような場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
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疎遠な兄弟や会ったことのない兄弟がいる
長年音信不通の兄弟がいる場合や、亡くなった人が再婚していたり、婚外子がいたりして、会ったことのない半血の兄弟がいる場合は、遺産相続で揉めることが多いです。
絶縁状態の子供であっても、前婚の子供であっても、婚外子であっても、法定相続分に違いはありません。
相続分に差を設けたい場合は、遺言が必要です。
遺言については弁護士に相談するとよいでしょう。
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また、音信不通の相続人がいる場合に、遺産分割を進めるには、不在者財産管理人の選任が必要です。
詳しくは「相続人が音信不通の場合に不在者財産管理人を選任し遺産分割する方法」をご参照ください。
内縁者がいる
内縁とは、夫婦になる意思をもって共同生活を送っているが、婚姻の届出をしていないために法律婚とは認められない男女の関係とのことで、事実婚ともよばれます。
内縁者には、法定相続分も遺留分もないため、遺産を巡って、相続人を揉めることがあります。
内縁の妻・夫や愛人が遺産を受け取る方法には、次の4つがあります。
- 亡くなる前に結婚する
- 遺贈を受ける
- 生前贈与を受ける
- 特別縁故者の財産分与を受ける
詳しくは「内縁の妻・夫や愛人には相続権はないが遺産を受け取る方法はある!」をご参照ください。
内縁者と相続人との間で揉めている場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
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親が事業をしている
親が事業をしている場合、事業を継ぐ子供が事業用資産を相続することになり、結果として、事業を継がない子供の遺留分を侵害することになります。
事業承継については「事業承継を成功させるために経営者が知っておくべき選択肢と実施手順」をご参照ください。
事業承継を円滑に進めるためには、事業承継に精通した弁護士等に相談することをおすすめします。
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まとめ
以上、遺産相続で揉める家族の特徴について説明しました。
揉める前の対策についても、揉めた後の対処法についても、遺産相続に強い弁護士に早めに相談することで解決できることが多々あります。
いつまでも仲の良い家族でいられるように、専門家をうまく活用しましょう。
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